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●ナチス・ドイツによるユダヤ人などの推定殺害数 本現地調査(視察)は、「戦争と人間」、「戦争と環境」に関連した公共政策論研究の一環として実施したものであり、現地調査には日本初の情報、資料、写真も多数含まれている。 今回の調査の目的のひとつは、ナチス・ドイツが欧州全体でユダヤ人などを殺害した数を推定することにあった。 今回の現地調査及び各種文献資料調査を元に推計すると、最大で645万人、最小でも420万人となった、そのうち今回視察したポーランドで殺害された人数は、推定で最大582万人、最小で335万人である。 ただし、上記の推計では、アウシュビッツ、ビルケナウ、モノビッツにおける最大の殺害数を250万人、最小の殺害数を現在の公称値である150万人としている。 最大値と最小値の違いの最大の原因は、主にマイダネク強制収容所にある。これについても現地視察をもとに推察した。たとえば収容者数、施設の稼働年月、稼働日数、ガス室規模、焼却炉数(規模)、一日の想定焼却人数などから推計すると、現在の通説となっている約8万人よりはかなり多いのではないかと思えるが、具体的な数値を出すまでには至らなかったが、30万人前後と推察できる。 割合で言うとポーランドで殺害された数は、80%から90%となる。いかにポーランドでの殺害数が多いかが分かる。 本論考では、クラクフ近い有名なアウシュビッツ、ビルケナウ強制収容所だけでなく、日本ではあまり知られていないルブリン近郊のマイダネク強制収容所、さらにウクライナ、ベラルーシュ、リトアニアとの国境沿いにあるベルゼック、ソビボル、トレブリンカの3大絶滅収容所についても触れている。 ナチス・ドイツが欧州で殺害したユダヤ人などの国別、収容所別の推定値 ※ 赤色部分が今回の現地視察対象 出典:青山貞一、ポーランド南部、東部強制収容所現地調査報告書、2009.3 ※バルト三国は、別途2010年2月に行った現地調査報告書による。 ●町の修復、保存 他方、ナチス・ドイツはじめ近隣各国に破壊されたまちを市民らの手で元通りに景観、建築を修復した事例調査では、ワルシャワはじめクラクフ、ルブリンなどできわめて秀逸な修復、復元の現場を視察することができた。さらに、プジェミシェル、カジミエーシュ・ドルニーなど、日本ではあまり知られていない歴史と文化を持った小さな美しい町も視察することができた。 ポーランドはイタリア、ドイツ、フランスなどの西欧諸国、オーストリア、チェコ、ハンガリーなどの中央ヨーロッパと比べるとあまり日本人になじみが薄い国といえるが、実に多くに歴史、文化遺産がきめ細かく、保存されており、中世から近世、さらに第2次世界大戦に至る世界史を知る上で格好の場所であることが分かった。 その意味で、より多くの日本人に本論考に記した町、場所に足を運んでもらいたい。 青山貞一、池田こみち 2009年7月2日 |