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    ボロブドウール寺院遺跡群
  Archaeological site of Borobdur temple

ボロブドゥール寺院 仏像と三界の思想
 
青山貞一 Teiichi Aoyama  池田こみち Komichi Ikeda
掲載月日:2017年1月31日
独立系メディア E−wave Tokyo
 
無断転載禁
@ ボロブドゥール寺院遺跡へ A 寺院の概要・場所 B 寺院の歴史概要
C 仏像と三界の思想 D 寺院の外観・構造・建築 E 方形壇回廊レリーフ
F 方形壇東第1壇レリーフ G 方形壇東第2壇レリーフ H 方形壇東第3壇レリーフ
I 方形壇東第4壇レリーフ J 方形壇東第5壇レリーフ K 方形壇回廊スナップ
L 方形壇個別レリーフ M ストゥーパ(仏塔) N ストゥーパ(仏塔)撮影
O ストゥーパ・スナップ撮影 P 仏像スナップ撮影 Q 寺院の夕焼け・朝焼け

仏像

 ボロブドゥール寺院の方形壇回廊の外縁をめぐる壁には423体(各面103体)の仏像が安置されています。

 各面第4層(第三回廊)までの368体(各面92体)については、それぞれ以下のようになっています。

 東側:阿しゅく如来で指地の印 (指先で地に触れる「触地印」(そくちいん))

 南側:宝生如来で満願の印

 西側:阿弥陀如来で弥陀定印

 北側:不空成就如来で無畏の印

 以下にそれぞれの容易に対応した仏像を示します。

 仏像は、方形壇の各面で面ごとに異なった印相を結んでいます。


 
阿しゅく如来(東面)                     宝生如来(南面)

 
阿弥陀如来(西面)                   不空成就如来(北面)

 なお、方形壇回廊の第5層(第4回廊)の64体は、東西南北ともに毘盧遮那仏で法身説法印を結んでいます。

 円形壇の72体の
転法輪印の仏像は釈迦如来と考えられており、このことより、ボロブドゥール全体が密教の系統を引く巨大な立体曼荼羅であるとする説が有力です。



転法輪印を結ぶ釈迦如来       出典:Wikipedia

 以下は転法輪印を結ぶ釈迦如来です。はるか先にムラビ火山の頂が見えます。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 2016-11-17   

吐水口の彫刻

 5層の方形壇の縁には壁がめぐらされ、壁には計20の吐水口が取り付けられています。吐水口は、想像上の生き物の彫刻で飾られています。



撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S9900 2016-11-17


吐水口は、想像上の生き物の彫刻で飾られています。
出典:Wikipedia

 また、壇の上下を結ぶ階段の入口は、カーラ(鬼面)とマカラ(海竜)で装飾された拱門(アーチ)になっています。


 次はボロブドゥール寺院における大乗仏教の<三界の思想>です。

◆三界の思想

 ボロブドゥールの構造は、仏教の三界をあらわしているとされています。

 つまり、下から、基壇は人間のいる欲界、その上は神と人間が触れあう世界である色界、さらに、その上部が神のいる無色界です。

 ・欲界
    淫欲と食欲の2つの欲望にとらわれた有情の住む処。六欲天から人間界を
   含み、無間地獄までの世界。 

 ・色界
    欲界の2つの欲望は超越したが、物質的条件(色)にとらわれた有情が住む世界。

 無色界
   欲望も物質的条件も超越し、ただ精神作用にのみ住む世界であり、「禅定」に
   住している世界。

 ボロブドゥールでは、
基壇(赤)が欲界、方形壇(橙)は色界、円壇(黄)は無色界として表現されています。

 人は下から上へ登っていくにつれ、欲望にあふれ罪悪に満ちた世界から、禅定に達した世界へと移っていくものとされています。すなわち、悟りをめざす菩薩の修行を表現しているとみなすことができるわけです。



ボロブドゥールの平面基本構造   出典:Wikipedia

 基壇においては、『分別善悪応報経』が160面のレリーフに彫られており、衆生の日常生活を描写しながら因果応報の教えが説かれています。

 質的条件も超越し、ただ精神作用にのみ住む世界であり、「禅定」に住している世界です。

 ボロブドゥールでは、基壇が欲界、方形壇は色界、円壇は無色界として表現されており、人は下から上へ登っていくにつれ、欲望にあふれ罪悪に満ちた世界から、禅定に達した世界へと移っていくものとされます。すなわち、悟りをめざす菩薩の修行を表現しているとみなすことができます。

 経典によって説は異なりますが、大乗仏教初期の代表的な分類を以下に示します。ここでは阿修羅はまだ天竜八部衆に属し、人と畜生の間には置かれていません。



出典:Wikipedia


◆方形壇回廊のレリーフ

 方形壇の回廊のレリーフは、歴史上の出来事が中心となっています。釈迦(ガウタマ・シッダールタ)の前世の物語であるジャータカなどを絵巻物風に示し、前世の善財童子が巡礼の旅をする仏教経典『華厳経入法界品』などが描かれており、とくに釈迦の生誕から最初の説法にいたるまでの経緯については史実とともに数々の伝説もまじえて詳細に表現されています。



方形壇回廊のレリーフ   出典:Wikipedia

 その構図の多様性や人物表現の巧みさはボロブドゥールならではのものがあります。

 方形壇最上層の72面には普賢菩薩の大慈悲心を讃歎する様子が具象化されています。

 また、円形壇にはレリーフはなく、幾何学的な建築意匠によって抽象的な悟りの境地が示されており、全体でいわば石上に図解された経典とも呼びうるものとなっています。



胎蔵曼荼羅(中央に大日如来を配す)      出典:Wikipedia


つづく