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(1)序論 (2)富士山型 (3)釣り鐘型 (4)砲弾型 (5)航空管制型 (6)中東特別型 (7)日本の消費高齢化の現状と将来 (8)世界の人口問題と持続可能性 先に日本における人口ピラミッドの現状と将来についてみてきましたが、ここでは世界の人口問題と持続可能性について分析、評価してみます。 青山貞一と池田こみちは、ローマクラブ(The Club of Rome)日本事務局(社団法人科学技と経済の加)に勤務していたことから、ここでは、地球規模の視点から人口問題と持続可能性について検討してみます。 分析は、以下の報告をもとにしています。 (1)Population Pyramid 2017 (2)APDA RESOURCE SERIES NO.38 人口と環境に関するグローバル・サイエンス・パネル 持続可能な開発における人口 分析、目標、行動、現実 次世代の生活を犠牲にすることなく現代の人たちのニーズに応えるためには、持続可能性という概念をもとに、世界各国の社会経済開発と人口問題を有機的に統合して考えることが不可欠となります。 持続可能な社会経済開発にとって、人口は二つの重要な意味を持っています。第一に、人口は世界の環境、経済、社会に多くの変化をもたらす変化・影響要因であり、人口によって引き起こされている様々な変化が現在の社会経済開発方針の持続可能性を危ういものとします。 第二に、人口と人間の生活環境の確保は社会経済開発の最終的な目標であり、長期にわたり健康、福利、生存とともに、社会経済開発が持続可能か否かを判断するための基準となります。持続可能ではない社会経済開発によって、最終的に報復を受けるのは、国家、人類とその構成員の人間なのです。 リオ・デジャネイロの地球サミットで、国際社会は、持続可能な開発に向けた共通の枠組みである「アジェンダ21」を採択し、それを支持しました。貧困の撲滅、食料、水、エネルギー、医療と公共医療サービス、避難所と安全確保、そして教育と知識による権利や対応能力の強化(エンパワーメント)は、現在もそして未来も、持続可能な開発の達成のために欠かすことができません。 これらの課題は、ローマクラブの「成長の限界」報告(The Report of Limits to Growth)以降、半世紀近くの長きにわたって世界の政治と開発に関する協議の舞台で議論されてきました。 以下の図はローマクラブの「成長の限界」報告の標準モデルにおける人口爆発(赤く太い線)と地球危機についてのシミュレーション結果です。 出典:ローマクラブの「成長の限界」報告(The Report of Limits to Growth) 政治家や政策決定者が一堂に会して相次いで開催された会議の場で、人間の福利を改善し、自然と環境を守るための目標が設定されました。21世紀の幕開けは、前例のない経済成長と技術変革の時代となっていますが、同時に人類の5分の1以上の人たちが深刻な貧困と苦しみの中に暮らしている時代でもあります。 持続可能な開発における人口 持続可能な社会経済開発に関するアジェンダ(協議事項)の中心に人口問題を据えなければ、人間の福利を改善し環境の質を保とうとする私たちの努力は失敗に終わります。 持続可能な社会経済開発では、特に貧困撲滅、男女間の平等の増進、健康と人的資源の改善、そして自然環境管理の改善を通じて、人間の福利を向上させることを目指しています。これらの目標は人口学的要因と密接に関連しているため、人口を考慮した戦略こそ、成功する確率が高いのです。 私たちは、前例のないほどに人口構造が変化する時代を生きています。 世界の人口は、20世紀の最後の25年間に20億人増え、2000年には60億人に達しました。出生率が低下しているにもかかわらず、人口は21世紀の最初の数十年間にさらに20億人増加すると見られています。事実、以下の人口ピラミッドにあるように、2017年時点で世界の総人口は約75億人に達しています。 2017年の世界の人口 7,515,284,153人 (75億人)です。 出典:Population Pyramid しかも、このまま推移すると、下図にあるように2100年には世界の総人口は約112億人となることが予想されています。 出典:Population Pyramid 分かっていることは、こうした増加のほぼすべてが、<富士山型の人口ピラミッド>をもつ開発途上国で起き、最貧の地域や都市部に集中することになるのです。 私たちは前例のないほどに人口学的に見て多様な世界に暮らしています。これまでのような人口学的観点から見た国のグループ分けは通用しなくなってきています。サハラ以南のアフリカ、南アジア、中近東で起きる人口増加の規模は前例がないほど大きくなることが予想されており、また北米でもかなりの人口増加が見込まれています。 それに対し、欧州および東アジアのほとんどの国では人口増加が減速または停止しており、逆に急激な高齢化が深刻な問題となっています。死亡率も地域によって大きく異なっており、特にアフリカにおいてHIV/AIDSをはじめとする感染症が大きな重荷となっています。 以下は、爆発的な人口増が起きている<富士山型の人口ピラミッド>の国々と人口成長率が高いアフリカ(一部中東)開発途上国の一覧です。
世界各国の人口成長率 Source:Population Pyramid Source:Population Pyramid 人口は社会経済開発と環境にとって重要なヨウ素であり、人口の増加とその年齢構成、そして人口分布における変化は、環境および社会経済開発と密接に関わり合っていることが研究によって明らかになっています。急速な人口増加によって、淡水の枯渇、気候の変動、生物多様性の喪失、水産資源やその他の沿岸資源の減少、農地の劣化といった問題が悪化しています。 出生率が高い国での出生率が低下し、人口の増加が緩やかになることで、多くの環境問題を解決しやすくすることができるのです。また、労働力人口に対する子どもの数を少なくすることで、保健、教育、インフラ、環境保護への投資を増やすという、またとない機会が生み出され、重要な経済的恩恵をも、もたらすことができるのです。 高所得国では、人口増加と人口分布がもたらす環境への影響について、その高い消費水準を併せて考察する必要があります。ほとんど人口増加が見込まれていない国々においても、その消費様式は持続可能でなく、そのため地球的規模で環境や人間の福利が影響を受けることになるために、適切な政策によって取り組まなければなりません。 今後は益々世界の人口の大半は都市部に住むことになります。都市化によって、人々が教育や保健サービスを受ける機会がより多くなります。しかし、都市化は他方で、水質汚3染や大気汚染などの環境に関わる健康被害を生み出し、また消費水準の上昇を伴うことで、遠く離れた農村部の環境にも影響を及ぼしうるのです。 (特に地方や地域レベルでの)人口の流動性と人口分布は、持続可能性にとって重要な決定要因です。人間がその地域の自然資源と関係して、生き、そして働くような場所では、環境の質が大きな影響を受けるのです。世界の多くの地域では、農業開拓地の拡大や人間の活動の拡大が脆弱な生態系の脅威となっています。 環境の悪化や極端な地球規模の出来事(災害等)は、すべての国、人口、世帯に同じような影響を及ぼす訳ではありません。各国や地域の政策によって、また、それぞれの国の置かれた状況によって被害の受けやすさが異なるからです。そのため、被害の受けやすさ(脆弱性)を考慮する際は、国のことだけでなく、国内の最も弱い立場にある人たちに焦点を合わせる必要があります。 貧困、健康障害、低い教育水準、ジェンダーの不平等、資源やサービスを十分に利用できるようになっていないこと、好ましくない立地など、多くの要素が被害の受けやすさ(脆弱性)をもたらす要因となります。社会的弱者や政治的発言をできない人々はさらに大きな危険にさらされます。特に弱い立場にいるのは、女性と子どもなど、最も貧しく、最も力のない(エンパワーされていない)人たちです。立場の弱い人たちは、大気汚染や水質汚濁、大規模災害といった環境災害に現在そして将来にわたって弱く、また土壌の劣化、生物多様性の喪失、気候変動といった大規模な環境の変化がもたらす悪影響から自らを守る術をほとんど持っていません。 被害を受けやすいという脆弱性は、能力強化(エンパワーメント)の推進、人的資源への投資、公共業務や意志決定への参画を促進するによって改善することができます。 教育とリプロダクティブ・ヘルスを通じたエンパワーメントによって、人間と環境に恩恵が及ぶ個人の厚生、社会と経済の発展、そして環境に対して、複合的に利益をもたらす政策は二つあります。一つは、自発的な家族計画およびリプロダクティブ・ヘルス・プログラムへの投資です。調査によれば、出生率の高い国では、多くの女性が、自分が本当に欲するよりも多くの子どもを産んでいることが明らかになっているため、これらのプログラムによって、カップルは自ら希望するだけの子どもを持つことができるようになり、望まない出産を減らし、出生率を下げられるのです。出生率の低下によって人口増加がゆるやかになり、人口増加に伴う悪影響に対処する時間が与えられるとともに、環境に与える負荷を緩和することができるのです。 もう一つの政治的に優先される政策は教育です。教育は個人の選択肢を増やし、女性のエンパワーメントを育み、男女間の平等を推進します。学歴が高い人ほど、健康状態が良く、環境に対する意識の向上に寄与する傾向があります。教育がもたらす経済生産性の増大と科学技術の進歩によって、汚染のより少ない生産を実現する可能性が生じます。また、教育によって情報にアクセスできるようになり、また自らを守る手段を入手しやすくすることになり、環境の変化に対する脆弱性が低減することも考えられます。そのうえ、 急激な人口増加が生じている国では、教育による出生率の低減効果によって、人間が環境に及ぼす影響を減少されることも期待されます。 教育とリプロダクティブ・ヘルス・プログラムというこれら二つの政策は、それによってもたらされる利益が多岐に渡っているため、世界中のほとんどすべての人たちから強く求められています。また、それによって、人々が十分な知識を得た上で選択できるようになるのです。持続可能な開発の達成に向けた努力を行うにあたっては、この二つの政策を最優先する必要がありま す。 学際的なトレーニングと研究の強化 人口、開発、環境を統合した分析を推進するため、これらのテーマと取り組む学際的な研究と教育が、あらゆるレベルで、ますます必要となります。異なる分野間の研究でも、成果をお互いに共有できるような形で行われる必要があります。こうした学際的な取り組みを考慮することこそ、政策決定機関、マスコミ、科学者の間で優先されるべき課題なのです。 注:持続可能な開発における人口に関するこの記述は、グローバル・サイエンス・パネルの意見を反映するものであり、その制定に協力した各機関の意見を必ずしも反映するものではありません。 <参考データ> Source:PDA RESOURCE SERIES NO.38 Source:PDA RESOURCE SERIES NO.38 おわり (1)序論 (2)富士山型 (3)釣り鐘型 (4)砲弾型 (5)航空管制型 (6)中東特別型 (7)日本の消費高齢化の現状と将来 (8)世界の人口問題と持続可能性 |