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2018年・東日本大震災
復旧実態調査(宮城県北部編)

気仙沼市沿岸3がれき処理

青山貞一・池田こみち 
環境総合研究所顧問
掲載月日:2019年5月20日 2020年3月11日第2次公開
 独立系メディア E-wave Tokyo
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◆気仙沼市沿岸3がれき処理 


出典:東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会配付資料

◆気仙沼市沿岸3

 ところで 2012年11月22日~25日、青山貞一、池田こみち(ともに環境総合研究所顧問、東京都品川区)は、宮城県、仙台市および岩手県内の「がれき処理状況」を調査するため仮設焼却事業の現地視察を行ってきたが、階上(はしかみ)地区でも仮設焼却事業の現地視察を行っていた。

 本以下はがれき処理実態調査で気仙沼市階上(はしかみ)地区を調査したい際の報告の再掲である。


◆気仙沼市階宇上地区がれき焼却処理実態調査~詳細報告~

第1日目 2012年11月23日(金)



■気仙沼ブロック階上処理区
焼却施設 処理能力:400t/日 (200t/日×2基)
(気仙沼市波路上瀬向外 地内)

◆がれき仮設焼却事業の概要
 (気仙沼ブロック・気仙沼処理区階上地区)
 ①処理量合計:   400トン/日
 ②焼却炉内訳:   200トン/日 2基
 ③対象地域     気仙沼市
 ④現状況:      工事中 2012年12月試験焼却
 ⑤請負業者:   大成建設JV(全10社)
 ⑥参考業務価格: 575億円(全体業務額*)
 ⑦当初請負額:   484億円(全体業務額*)
             *2つの気仙沼処理区合計額

 次に、国道45号を北上し、気仙沼市階上処理区に向かった。気仙沼線の陸前階上駅の少し手前を右折し海側に入る。なだらかな傾斜で岩井崎まで住宅地や農地が広がっていたことが想像されるが今は見る影もない。



宮城県内 気仙沼階上地区
出典:グーグルマップ

 岩井崎の手前、波路上瀬向地区に立地していた100年余の歴史を誇る気仙沼向洋高校は、海から200mの距離にあり、コンクリート4階建ての校舎は津波の直撃を受け、生徒一人が死亡、一人が行方不明となったと言う。向洋高校の校庭だったと思われるところに階上処理区の仮設焼却炉の建設が進められていた。

 ここもまだ建設工事中で多くのクレーンが動いていたが、連休ということもあり比較的静かな様子だった。回りをぐるりと壁に囲われているため中の様子を詳しく見ることは出来なかったが、ここも津波の被害が大きく水路もあったことから地盤の整備にも時間を要したと思われる



宮城県気仙沼ブロック階上処理区の仮設焼却施設(建設工事中)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-23

 気仙沼ブロックの二カ所の仮設焼却炉はいずれも気仙沼中心地からはかなり離れており、災害廃棄物の輸送、仮置きがこれから大きな作業となると思われる。



宮城県気仙沼ブロック階上処理区の仮設焼却施設(建設工事中)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-23

 この地域のこれまでの津波被害について、文献から以下のことがわかった


事例No/都道府県名/市町村名/災害伝承情報の内容/データ形態/出典情報

6-1 宮城県 気仙沼市

・災害伝承情報の内容
 【災害名】明治三陸地震津波
 【発生日時】明治29年(1896年)6月15日
 【被災地】気仙沼市(波路上地区)
 【災害概要】震度2~3の弱い地震の後、約10mともいわれる大津波が沿岸を襲った。本市の海沿いの集落では442名が亡くなり、ほとんど壊滅に近い状態となった。

 【教訓等】その後には「地震があったら津波の用心」という、言い伝えがなされ、昭和8年の昭和三陸地震津波の際の被害を軽減させたという。

・データの形態:文献(気仙沼市史)、 碑文(気仙沼市岩井崎「大震災記念」碑等)
・出典情報:1993年発行・気仙沼市史( P212~222)、 碑文の写真

6-2 宮城県気仙沼市

・災害伝承情報の内容
 【災害名】昭和三陸地震津波
 【発生日時】昭和8年(1933年)3月3日
 【被災地】 気仙沼市(波路上地区)
 【災害の概要】震度5程度の地震の後、大津波が襲った。

本市では66名が亡くなり、流失家屋が300を超える被害が出ている。

 【教訓等】「地震があったら津浪の用心」
 「大地震それ来るぞ大津浪」
 「大津波どんと沖鳴りそら津浪」
 地震後の津浪についての教訓を示した物。

 また、場所によっては津波が襲う前に「どん」という沖鳴りが聞こえたとの伝承。

・データの形態:文献(気仙沼市史)碑文(気仙沼市鹿折地区「大震嘯災記念」碑等)の写真
・出典情報  :1993年発行・気仙沼市史(P212~222) 碑文の写真

http://www.fdma.go.jp/html/life/saigai_densyo/01.pdf

 
 2012年11月、気仙沼市では、階上地区とは別に、もう一か所がれき処理のための焼却処理施設が置かれた地域があった。以下はその小泉地区でのがれき処理の実態である。

■気仙沼ブロック小泉処理区
焼却施設 処理能力:300t/日(200t/日×1基、100t/日×1基)
(気仙沼市本吉町新南明戸外 地内)

◆  がれき仮設焼却事業の概要
 (気仙沼ブロック・気仙沼処理区小泉地区)
 ①処理量合計:   300トン/日
 ②焼却炉内訳:   200トン/日 1基、100トン/日 1基
 ③処理対象:    気仙沼市 
 ④現状況:      工事中 2013年1月に試験焼却
 ⑤請負業者:   大成建設JV(全10社)
 ⑥参考業務価格: 575億円(全体業務額*)
 ⑦当初請負額:   484億円(全体業務額*)
             *2つの気仙沼処理区合計額

 朝、古川駅前の東横インを8時過ぎに出発し、国道108号で涌谷町を経由し、さらに国道346号(佐沼街道)を抜けて登米市へと北上、登米市からは同じ国道346号(西郡街道)を海側(東側)へと進み、気仙沼の南部地域に向かった。



宮城県内 気仙沼市小泉地区
出典:グーグルマップ



宮城県内 気仙沼市本吉町新南明戸
出典:グーグルマップ

 海に面する町は、気仙沼市本吉町、JR気仙沼線の本吉駅もあり、南部の主要都市となっている。国道45号(東浜街道)に出て右折し、目指す小泉処理区へと車を走らせた。



宮城県気仙沼ブロック小泉処理区の仮設焼却施設(建設工事中)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-23

 そこは、太平洋に向かって津谷川が注ぎ込み、震災前は川の両側(新北明戸、新南明戸)に水田が広がっていた。しかし今は見る影もない。気仙沼南部では本吉町の中心市街地を除けば、このあたりしか仮設焼却炉を建設できる平地がなかったことが伺われる。

 環境省の災害廃棄物処理サイトには、気仙沼の仮設焼却炉は建設中であり、試験焼却(試運転)が来年にずれ込むと記載されていたが、現場はまさにプラント建設の真っ最中、多数のクレーンが稼働し、連休中にも拘わらず大勢の作業員が動いていた。



宮城県気仙沼ブロック小泉処理区の仮設焼却施設(建設工事中)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-23


宮城県気仙沼ブロック小泉処理区の仮設焼却施設(建設工事中)の解説
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012-11-23
解説:鷹取敦

 プラント立地位置は津谷川の沖積低地であり、水田が広がっていたところに津波が押し寄せた地域である。そのためプラント建設のためにはまず地盤の整備が必要となり、それだけでもかなりの時間を要したものと思われる。

 最も近い民家は背後の里山の影にあり、プラントから数100mの距離がある。現在はまだ工事中なので工事車両や建設機械の騒音が激しいが、稼動すれば低い煙突からの排ガスも日常的に大きな問題となることが予想された。


気仙沼4
つづく