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真夏の群馬北西部短訪

Lパノラマライン北ルート
青山貞一
掲載月日:2012年8月24日
 独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁

 ◆特集:真夏の群馬北西部短訪 2012.8.17-8.20
@浅間山大噴火と鎌原観音  H暮坂高原の「花楽の里」
A迷走つづける八ツ場ダムと工事現場  I上信越県境の野反湖
B八ッ場ダムは公費乱費の典型  J品木ダムと草津温泉
C江戸の中山間地の生活を今に伝承  K四阿山とバラギ湖
D群馬満蒙拓魂之塔と浅間牧場  Lパノラマライン北ルート
E六合村の赤岩養蚕集落  M白根山をトレッキング
F六合村の赤岩神社  N「毛無峠」と小串硫黄鉱山跡
G六合村の上の観音堂  OGPSによる移動経路図
 
 バラギ湖畔の自然散策後、私達は嬬恋村のパノラマライン北ルートを通り、白根山に向かった。

●パノラマライン北ルート

 群馬県北西部の嬬恋村には、広大なキャベツ畑を横断するパノラマラインがある。パノラマラインは北ルート、南ルートの2つがある。いずれもその名が示すように、パノラマ状の自然景観や眺望が満喫できる。

 このパノラマラインの沿道には、ほとんど知られていないが由緒ある集落や史跡、寺社や景勝地が多数存在している。

 ところで、このパノラマラインの北及び南ルートは、いずれも幅員7m、2車線、南北コースあわせた道路の総延長は約30kmもある。東京23区がすっぽり入ってしまう規模である。しかも、これらはいずれも広域農道を高規格化としたものである。

 このパノラマライン道路は、「ガット・ウルグアイ・ラウンド対策」の一環としてつくったらしい(下の看板参照)。しかし、圧倒的大部分の作柄がキャベツの嬬恋村に、なぜ、ウルグアイ・ラウンドなのか、よくわからない。




 通常の広域農道は、幅員がせいぜい5m程度のはずだ。しかし、パノラマラインと呼ばれるこの広域濃度は約7mもあり、舗装も上等である。

 ひょっとして昔からあった農道を拡幅し、用地費や事業損失費(営業補償)の名目で農地の所有者(農民)に公費を支払うことと、農業土木業者に工事費を払うことが<ウルグアイ・ラウンド対策費>だったのではないかと勘ぐってしまう(笑い)。

 というのも、片道30kmを走って、対向車線を走っている車は多くて数台であったからだ。日本国得意の<ためにする公共事業>の典型のような気もした。

ウルグアイ・ラウンド(Uruguay Round、1986年 - 1995年)
 世界貿易上の障壁をなくし、貿易の自由化や多角的貿易を促進するために行なわれた通商交渉。 ウルグアイ東方共和国の保養地プンタ・デル・エステで1986年に開始宣言されたことからこの名がついた。
  この協議では、サービス貿易や知的所有権の扱い方、農産物の自由化などについて交渉が行われた。中でも農業分野交渉が難航し、将来的に全ての農産物を関税化に移行させること、最低輸入機会(ミニマム・アクセス)を決定するにとどまり、完全な自由化には至らなかった。


出典:WIkipedia

 本当にこれほど立派な道路がこの地に必要かどうかは疑問だが、せっかく立派な道路があるのだからバラギ湖近くのパノラマライン北ルートから赤川が流れる終点まで走ってみた。
 
 下はバラギ湖近くの茨木山方面を望んだところ。


パノラマライン北ルート  真っ青の夏空が美しい
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8


 下はパノラマライン北ルートの上の貝地区手前。キャベツ畑が延々と続く。 


パノラマライン北ルート  上の貝地区 高原の丘近く  
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月20日

 下はパノラマラインが万座川と交差する門貝北地区。

 交差点は巨大な橋梁(くまの大橋)となっている。
くまの大橋の標高は約1000m。



パノラマライン北ルート  門貝北の「くまの大橋」
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月17日


 下は「くまの大橋」から見た万座川。ここには万座川第2ダムがある。

 3年前の5月、このダムまで下り、松葉を採取したことがある。万座川は上流から吾妻川に合流する下流まで、川やその周辺の砂利や岩は「真っ赤」である。おそらく強酸性の河川水で重金属類、とくに鉄が溶けだしているためだろう。



パノラマライン北ルート  「くまの大橋」から見た万座川第2ダム
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8



パノラマライン北ルート  門貝北から
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8

 
このあたりもキャベツ畑が延々と展開されている。


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8

 下はパノラマライン北ルートが万座ハイウエーとの交差点近い地点。近くには嬬恋牧場、嬬恋高原がある。標高は約1200mあり、眺望はすばらしい。



パノラマライン北ルート  干俣地区
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8


 さらに進むとカルバート(トンネル)に出会う。上を走っている道路は万座ハイウェー(有料道路)だ。



パノラマラインと万座ハイウェーの立体交差。上が万座ハイウェー
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8, 2010年8月


 万座ハイウェーをくぐり、少し行くとパノラマライン北ルートの左側に、下の写真にある<白根林道石津支線起点>という道標がある。

 この林道は、ここを起点とし、本白根山(もとしらねさん)に繋がる登山道に通ずる道である。本白根山はいわゆる草津白根山の南にある標高2164mの著名な山である。


本白根山道入り口(起点)


 ところで、群馬県嬬恋村には日本を代表する硫黄(いおう)鉱山が4つもある。いずれも明治から昭和の中頃までに興隆した鉱山である。現在は廃鉱となっている。たとえば上の地図の一番上にある石津硫黄鉱山は、昭和7年に発足し昭和46年に閉山されている。

 下の地図に群馬県嬬恋村にあったそれら4つの硫黄鉱山跡地の位置を示す。これらの硫黄鉱山はいずれもパノラマライン北ルートの北側にある。下図ではパノラマラインを<
ブルーの太い点線>で入れてみた。



嬬恋村にあった4つの硫黄鉱山の位置。いずれもパノラマライン北ルートの北部にある

出典:グーグルマップをもとに筆者が作成

 下はパノラマライン北ルートの東端(終点)。ここでパノラマラインは、草津町に向かう県道59号にぶつかる。そして県道59号線の北の終点は、国道292号線の草津入口となる。

 その下を流れる川は赤川。この赤川の源流は標高2000m超の本白根山にあり、その近くには「石津硫黄鉱山跡」もある。



撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S8

つづく