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秩父事件を知らない日本人の多くに、その本質を語りかけたのは、神山征二郎監督、緒方直人主演の「草の乱」ではなかろうか。 1918年(大正7年)、北海道野付牛町。一人の老人が妻と長男を呼び寄せ、自らの秘密を告白する。老人の本当の名は井上伝蔵、“秩父事件”の首謀者の一人で逮捕を逃れ北海道に渡り、33年のあいだ身分を偽り生きてきたのだった――。1883年(明治16年)秋、秩父郡下吉田村。山間のこの一帯は蚕を育て生糸を売って暮らしていた。しかし、松方デフレや軍備拡張の増税、世界的不況が重なり、人々は借金に頼らざるを得ない状況に陥っていた。生糸商家“丸井”を営む井上伝蔵は、そんな人々の窮状に心を痛め、彼らの助けになりたいと行動に出るのだったが…。 |