■ブッシュ政権、悪魔の8年間
米国と言えば、ブッシュ大統領の8年、とくに「9.11」と呼称される2001年9月11日以降、米国はいわゆる単独行動主義を鮮明にし、アフガン、イラクに大量の軍隊を投入した。しかもブッシュ政権には、大統領自身がそうであるように石油、天然ガス利権に満ちた閣僚が多数存在していた。
振り返ってみると、ブッシュ政権の8年間は、米国民のみならず世界各国のひとびとにとり「悪魔の8年」であったに違いない。世界はわずかひとりの人間に生活、環境、経済、金融はては戦争でかき回されたものだ。
これは第二次世界大戦の欧州におけるナチス・ドイツのアドルフ・ヒットラー以来の事かも知れない! よくもまぁ、米国民はこんな酷い大統領を選んだ、と思うが、同じ事がドイツのヒットラーについても言えるから、まさに歴史は繰り返すのだろう。
とりわけ世界各国を巻き込み「対テロ戦争」、「テロとの戦い」の名の下に行われたアフガンそしてイラク戦争は、なんのことはない、ブッシュ政権とその仲間によるエネルギー新植民地主義、さらにエネルギー新帝国主義とでもいえる侵略戦争の様相を強めたものであったと云っても過言ではないだろう。
◆青山貞一:長編コラム 正当性なき米国のイラク攻撃 | |||||
◆青山貞一:エネルギー権益からみたアフガン戦争、「世界」、岩波書店 |
しかも、ブッシュ政権はアフガンやイラクへの米軍駐留費や戦後復興費用の多くを日本に求め、日本政府はろくにまともな国会審議をするまもなく、これに応じている。以下の申し入れはいずれも私達が日本政府に対しおこなったものである。
◆正当性なき米国のイラク攻撃への日本政府の支持撤回の意見申し入れ | |||||
◆日本政府へのイラク戦後復興拠出の不支持の意見申し入れ | |||||
◆自衛隊イラク派兵を勇気を持って断念させる意見申し入れ |
さらに2008年12月も押し迫ってからイスラエルによるガザ地区への衝撃的な殲滅攻撃は、ブッシュ政権の了解なしに行われるはずもないものであった。事実、2009年1月19日、ブッシュ政権の終焉とともに、ピターッとガザ攻撃は停止した。その間、何の罪もない幼児、子供、おとり寄りを含む1300名もの命が一方的なイスラエル軍の攻撃により命を落としたのである。
◆青山貞一:イスラエルが攻撃を突然止めた2つの訳
◆青山貞一:「ならず者国家」イスラエルは、いかに軍事大国化したか?
数年前、「サブプライムローン」という言葉を聞いたとき、それは一見して米国低所得者層への住宅政策の一種のように思われた。サブプライムローンは不動産担保商品とよばれたが、2006年債券化され世界中にまかれた「サブプライムローン」の価値が急激に下落、2007年になって「サブプライムローン問題」が顕在化するに及んだ。
◆青山貞一:<緊急解説>米サブプライムローン問題、一層の深みに
そして2008年秋の米国大手投資銀行、リーマンブラザースが倒産するに及んで、この「サブプライムローン」システムは低所得者層にリーズナブルで良質な住宅を提供するための政策ではなく、結果的に米国の格差社会を拡大し、世界中を金融危機に陥れる時限爆弾であることが分かったのである。
それより前、世界的な株安が進行し、米国を中心としたヘッジファンドや投資銀行は、先物原油や先物穀物などに投資先の照準を絞った。これにより原油価格、ガソリン価格、灯油などの価格が世界各地で急騰し、世界中の人々の生活を窮地に追い込んだ。
さらに問題はこれだけではなかった。上記の先物取引、すなわち従来のデリバティブに加え、クリントン政権末期に議会がこぞって賛成した金融票品の自由化の結果できたCDSが、あらゆるものを投機、賭の対象としてしまったのである。その意味ではクリントンにも大きな責任があると言える。
※CDS クレジット・デフォルト・スワップ (credit default swap)
- クレジットデリバティブ商品の一種。
CDS関連商品の元本想定金額の世界総計
- 2001年6月末 6315億$
- 2001年末 9189億$
- 2002年末 2.2兆$
- 2003年末 3.8兆$
- 2004年末 8.4兆$
- 2005年末 17.1兆$
- 2006年末 34.5兆$
- 2007年6月末 45.5兆$
- 2007年末 62.2兆$
ブッシュ政権になって金融取引に関わる規制は一層緩和され、史上空前のバブルに突入した。そこではカネがカネをよぶ空前の金融経済が我が物顔で跋扈していたのである。
すべてが右肩上がりで価格上昇するとすれば、持ち金の10倍、20倍はおろか100倍、200倍のデリバティブを行ってもリスクは感ぜず、逆に一夜にして億万長者となれるという夢に酔いしれたのである。
だが、リスクを負うことなく巨大な利益を得られる道理がない。
いつの世にあっても、このような錬金術は何時までも続かない。まして米国だけでなく世界中の投資家が引き時をわきまえないなかで、突如、バブルがはじけ、一気に100年に一度の金融危機が襲来したのである。
これらは、自分たちの私利私欲のために世界各国をアフガン、イラク戦争に巻き込んだブッシュ大統領や閣僚が、抱え込んだ米国の財政赤字解消策と無縁ではない。すなわち、ブッシュ政権は、巨額の戦費を拠出するためにバブル景気、それも実体経済と無縁にカネを捻出する金融資本主義的バブルを徹底して推し進めてきたのである。
かくして2008年春に始まった「サブプライム・ローン・バブル」の完全崩壊に端を発する株価の激落は、機関投資家を先物原油や先物穀物への投資に向かわせた。その結果、本来1バレル当たり50−60米ドルであった原油を7月には147ドルまで暴騰させたのである。エネルギー権益に満ちたブッシュ一族は実はここでも利権を得ていたのである。
◆青山貞一<緊急報告0>外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹
◆青山貞一<緊急報告1>まったなし!「油上の楼閣」を崩壊する原油高騰
◆青山貞一<緊急報告2>世界的株下落が投機マネーを先物原油に向ける
◆青山貞一<緊急報告3>今後も原油先物価格の高騰は続くのか?
◆青山貞一<緊急報告4>原油価格が下落してもガソリン価格は依然高値!
本来、世界中の生活や生産のもととなる原油を投機の対象としたWTI先物原油へのヘッジファンドなど機関投資家のカネの集中を米国政府は監視し、規制すべきであった。実際、米国下院の民主党はそのような法案を提出していたが、ブッシュ政権は法案化を阻止し、それがきっかけとなり先物の原油や穀物価格は暴騰したのである。
◆青山貞一<緊急報告0>外交なき「油上の楼閣」ニッポンの行く末は暗澹
同時期、ブッシュはガソリンにエタノールを混合させる燃料をトウモロコシなど穀物を原料に製造する政策を具体化した。その結果、先物穀物価格が暴騰し、それに端を発した食物価格の高騰は、貧しい途上国の人々だけでなく、格差社会のもと日々の生活もままならない人々を直撃した。
◆青山貞一:世界的な穀物・原油暴騰の元凶は米国だ
間違って当選したブッシュだが、その後の8年を見ると、ブッシュがしたことの多くは、無謀な規制緩和による弱肉強食の大企業や金持ちの徹底優遇、中東の天然ガスや石油を世界を巻き込む侵略戦争による搾取、そのための巨額の戦費による財政悪化、挙げ句の果ては米国初のサブプライムローンのシステム崩壊による世界的金融、経済危機の招来と、踏んだり蹴ったりであった。
これは世界各国に対し劇的な悪影響をもたらすだけでなく、本場米国の国民にあっても同様だったはずだ。ごく一部の富裕層や金融バブルの恩恵を受けたものを除けば、圧倒的多くの米国民にとっても悪夢の8年であったに違いない。
■政権交代のない腐りきった日本の政治
そんなブッシュ政権にひたすら追随、盲従してきたのが日本だ。
米国の巨額な戦費を米国債の購入だけでなく、アフガン、イラクへの戦後復興の名の下での巨額財政支援を積極的に行ってきたのは小泉総理以来の日本である。
◆正当性なき米国のイラク攻撃への日本政府の支持撤回の意見申し入れ | |||||
◆日本政府へのイラク戦後復興拠出の不支持の意見申し入れ | |||||
◆自衛隊イラク派兵を勇気を持って断念させる意見申し入れ |
周知のように日本では小泉氏がマスメディアを使って行った情報操作による世論誘導による郵政民営化選挙で衆議院議員の2/3に迫る議席をとって以来、ブッシュ政権への盲従を一段と強めた。
小泉氏は政権途中で安倍、福田に総理の座を実質禅譲した。しかも正当性も正統性もない安倍、福田政権は、それぞれわずか1年で政権を放り出し、その後、またまた実質禅譲によってトンデモの麻生政権が誕生した。この間、一切総選挙はない。
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◆青山貞一:大マスコミが報じない自民議員過半が二世三世議員
民主主義の根幹をなす民意を無視し、ひとたび世論操作で得た多くの議席をもとに、小泉、安倍、福田、麻生の各政権はブッシュ政権同様日本を壊してきたのである。
これら小泉、安倍、福田、麻生の各政権に共通していることといえば、いうまでもなく二世、三世の国会議員である。まさに「親の七光り」そのものである。
国会議員としての資質をもっているとは思えない三百代言的政治家、小泉氏、幼稚で稚拙な右翼思想をもった安倍氏、それにまったくリーダーシップをもたない不作為の福田氏、どれも首相、総理以前に国会議員としても不適格者と言われても仕方ない人ばかりだ。
日本はブッシュが政権にいた8年の間、そんなトンデモの宰相を総理としてきたのである。親の七光り、二世、三世、さらに安倍、福田、麻生に至ってはまったく国民の審判を得ないで総理となった「日本の民主主義の民度を象徴する人物」である。
■腐っても鯛の米国となれるかオバマ新政権
ブッシュのやりたい放題、悪夢の8年を米国や世界は経験した。
しかし、そこはチェック・アンド・バランスの国、米国は「腐っても鯛」であるはずだ。 バラク・オバマ氏が圧倒的大差でマケイン候補破り第44代の米国大統領に当選した。
オバマ氏はアフリカ系黒人の血を引く政治家だ。オバマ氏はわずか上院議員一期で黒人初の米国大統領になった。コロンビア大学、ハーバード大学ロースクールを卒業した弁護士でもあるというから、エリートには違いないが、米国民が選んだ米国のブランドニューのリーダーである。
米国は建国以来の危機にあることは間違いないが、その頂点で親の七光り、二世、三世でない、アフリカ系黒人を米国民はリーダーに選んだのである。
腐っても鯛の米国、およそ民主主義から程遠い世襲で民意をまったく反映しない総理をいただく腐りきった日本である。
だが、現在直面している金融、経済危機は、それこそ100年に一度クラスのものであって、経済、金融、外交などいずれも素人といわれるオバマ大統領が、果たしてどこまでやれるかは未知数である。
巨額の財政出動は、当然のこととして累積財政赤字を増やす。日本はこれ以上ないほどの財政赤字に悩んでいるが、今後、財政赤字の兄弟となりかねない。
またアメリカの成長物神、それも物的な成長にとりつかれた価値観やライフスタイルをそのままに、果たして持続可能な社会はできるはずもない。ブッシュは京都議定書から脱退したように、経済成長至上主義だった。オバマは環境に力を入れると言っており、財政出動の予算案も準備している。
しかし、経済・技術至上主義的な「環境」主義は、ダボス会議における世界の環境保全力ランキング結果を見るまでもなく、必ず破綻する。
「環境」は技術や経済で汚染を押さえ込むことより、まさに私達が物質的な「成長の限界」を強く認識し、技術や経済に極度に依存しないサステイナブルな生き方を実現することが最も重要なのだから。
◆青山貞一:世界の「環境保全持続力」ランキング AISブログ