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緊急報告1では、ここ1年半の「先物原油」と「小売りガソリン」価格の推移を見てきた。ハッキリしたことは、2008年1月以降、WTIの先物原油価格は一本調子で高騰していることであった(その1参照)。 もし、この傾向がこのまま推移すると、現在1バレル当たり140ドルを超えたWTI原油価格が1バレル=200ドルとなる可能性は否定できない。 そのとき、日本のガソリン小売り価格は、推定1リットル当たり約257円となる。もちろん、WTI原油価格が1バレル=200ドルで止まるという保証などないが....。 では、今回の一連のWTI先物原油価格の高騰の原因は何か? まず、いつからWTI価格の高騰が起きているか、だ。 既に何度も繰り返し述べたことであり、その1の図1から図4を見れば誰でも分かるように2008年1月から一本調子で高騰しているが、図1から図4をよく見ると、2007年6月からWTI価格の起きていることが分かる。 ガソリンの小売価格は波をうっているものの、それでも2007年6月から単調増加していることが見て取れるのである。 では、次に、この時期に一体何が起きたのか? これは多くのエコノミストが指摘するように、これ米国経済がいわゆるサブプライムローンバブル崩壊によって、米国初の経済危機が顕在化した時期なのである。たとえば、以下の記述はWikipediaにおけるサブプライムローンについての記述である。 サブプライムローン(米:subprime lending)は、主にアメリカ合衆国において貸し付けられたローンのうち、優良顧客(プライム層)向けでないものをいう。狭義には、住宅を担保とする住宅ローンに限定されるが、広義には、自動車担保など住宅以外を担保とするものを含む。一般的に他のローンと比べて信頼度が低いとされている。 2007年夏頃から、主に住宅ローン(狭義のサブプライムローン)返済の延滞率が上昇し、これを組み入れた金融商品の劣化をきっかけとした金融不安に関わる問題が起きている。 かくして米国のサブプライムローン返済遅滞問題はサブプライムローンのシステム破綻となる。 そして、もともとこれを組み入れた金融商品の劣化を招来し、まさに米国発の一大金融不安に発展した。 周知のように、米国で起きたサブプライムローン返済破綻問題は、米国だけでなく、欧州、日本始め世界中の金融機関に甚大な損害をもたらしたことになる。 巻末に添えたデータにあるように、サブプライムローンによる全世界の損失額は実に日本の一般会計予算額に近い78兆円という報告もある。 さらにサブプライムローンの影響は世界的な証券大手にも甚大は損失をもたらしている。モルガン・スタンレーが42%の減益、リーマン・ブラザーズが57%、ゴールドマン・サックスが53%の減益と発表している。
では、WTIの原油先物取引価格の上昇がなぜ、サブプライムローン返済遅滞の顕在化に関係しているのであろうか? この答えは簡単である。 サブプライムローン返済遅滞顕在化は、即、米国を中心に世界の株式市場における株価の低下を招いたからである。 事実、WTI原油先物取引価格の上昇は、このサブプライムローン返済遅滞顕在化時期に明確に(逆)相関している。 そこで世界の証券会社、金融機関、ヘッジファンド、機関投資家などは、サブプライムローンによる甚大な損害を挽回するため、サブプライムローンに起因し長期低迷する株式市場を嫌い、2007年夏以降、原油や穀物などの先物市場に過剰な資金を投入し始めたのである。おそらくこれが直接的な先物原油高騰の原因であろう! 従来、株式市場で巨額の投資、運用をしてきた機関投資家は、低迷する株式市場に見切りを付け、先物市場に一挙に流れ込んだということである。 一部マスコミや評論家は、原油先物投機について、いわゆるヘッジファンドだけを悪者としている。しかし、先物市場へ流れ込んでいる投機資金(投機マネー)などの過剰流動性の原資は、何もヘッジファンドだけではない。 身近なところではサブプライムローンの金融商品を扱って巨額の損益を出した機関や各国の社会保険などを原資とした資金用が原油投機に拍車を掛けているという情報もある。いわばサブプライムローンの損失補填のために、各種金融機関、証券会社などがなりふり構わず、こともあろうか原油先物に投資しているということだ。 もちろん、中国、インド、ブラジルなどの新興国の興隆による原油の実需要の増加もあるだろうが、今回の急騰はそれだけで説明がつくものではない。 <参考データ>
つづく |