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WTIの先物原油は、この夏、何と1バレル当たり147ドルまで上昇し、日本のガソリン小売価格は1リットル当たり最高で190円近くまで暴騰した。 しかし、7月に入りWTIの先物原油は、一本調子の高騰から投資家による利益確定による売りが殺到し、8月15日には1バレル=111ドル台まで下落した。その背景として、株式市場問題研究家の大山巖氏は「原油価格はピークアウトか」のなかで、@空売り規制説、A批判回避説、B選挙対策説などが挙げられるという。 @の空売り規制説は、SECが発動した株の空売り規制が効いて、原油売りにつながったと見る。この規制措置は、信用不安が取り沙汰されたフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)とファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)を含む世界の金融株(みずほフィナンシャルグループと大和証券グループ本社も含む)のネイキッドショート、現物株を手当てしない空売りを期間限定で禁止したものである。 理由はともかく、現実に1バレル当たり147ドルまで暴騰した先物原油の最高値に対し、この2008年8月以降、32%も下落したことになる。その後、一旦、バレル当たり約10ドル値上がりしたが、8月22日段階で1バレル当たり114.6ドルとなった。
以下の図4は、米国政府エネルギー情報局のレギュラーガソリン及び軽油価格の最新データ(2008/8/18)である。米国のガソリンおよび軽油は、8月18日の時点でも1ガロン当たりの価格は先物原油が1バレル当たり147円の最高値に比べると低くなっていることが分かる。 図4 レギュラーガソリン・軽油価格のここ2年間の推移(最新データ) 出典:米国政府公式エネルギー統計 1バレル当たりの原油価格について、もう少し詳しく見てみると、2008年7月18日(これがおそらくピーク)には、全世界では1バレル当たり136.3米ドル、米国平均では134.4ドルであった。全世界で最も高額の原油価格はマレーシアのタビスブレンド原油だが、その価格は152ドルであった。 これが2008年8月15日には、全世界では1バレル当たり110.5米ドル、米国平均では108.1ドルとなった。マレーシアのタビスブレンド原油だが、その価格でも123.4ドルまで下落した。割合にして23%程度である。 表1 2008年7月上旬から8月中旬までの世界の原油価格の推移 単位:1バレルあたりの米ドル価格
さらに一日単位でのスポットの先物原油価格を見ても、米国、欧州ともに、8月12日から8月19日までの間はほとんど同じ価格となっており、米国が1バレル当たり113−115ドル、欧州が108ー111ドルであり、上記の読売新聞の記事に符合する! 表2 2008年8月11日から8月19日までの米欧州の原油価格の推移 単位:1バレルあたりの米ドル価格
この間の急激なアップに対し、日本のガソリン小売りはその都度、価格を改定し、最高1リットル当たり180から190円近くで小売りしてた。 だが、7月以降の急激な値下がりにもかかわらず、ガソリン価格地図 ベータ版によれば、小売価格は1リットル当たり170〜180円台となっている地域が多い。もちろん、平均で160円台となっているものもあるが、平均価格は以下のように高値安定となっている。 以下ではRがレギュラー、Hは多く、Kは経由である。 出典:ガソリン価格地図 ベータ版 2008.8.24現在 都道府県別のレギュラーガソリン価格を見る。 出典:ガソリン価格比較 ※ 都道府県別ガソリン最安値(全国価格情報) たとえば高知県では、現在でも1リットル当たり180円台となっている。四国の他県ではすでに170円となっているのに、高知県では、なぜか180円台である。 関東甲信越でも、長野県は平均で1リットル180円近い170円台後半で小売りしているスタンドが多い。長野県のお隣の群馬県では、長野県約10円低いのに、なぜ長野県のガソリン価格は常時高額なのか? 事実、私が長野県に特別職で赴任していたときにも、生活環境部による長野県のガソリン小売業者の小売価格調査に非協力的であったことを当時の幹部から聞いている。 日本の小売各社は、WTI価格が上昇する度に、それを理由として小売価格を上昇させてきたが、最高値に対比し23〜30%も下落しているにもかかわらず、大して価格を下げないのは、どういうことか? おそらく実勢価格は、暫定税率分があったとしても、現在なら1リットル当たりせいぜい140〜150円ではなかろうか? 130円台であってもよいはずである。 いずれにせよ、WTI価格の上昇の度に、大幅値上げしてきた小売業界が、大幅値下げとなり数週間が経ったにもかかわらず、依然として高値安定となっているのはまか不思議である。 公正取引委員会は、WTI価格上昇に便乗したガソリン小売価格のカルテルや談合に最目を光らせるべきである! もちろん、中長期的に見るとWTI先物原油価格は再上昇する可能性は否定できない。とはいえ、だからといって、当然、原油価格が上がるときはすぐさま上げておきながら、下がっても小売価格を下げないのでは、日本の石油業界への不信感が高まるばかりであろう! そもそも日本政府は米国政府のエネルギー情報局のようにきわめて詳細な燃料関連のあらゆるデータを1日単位で国民に情報提供していないことこそ、問題である。これが業界の便乗値上げやカルテル、談合の温床となっているのではないだろうか? 国民の立場からすれば政府・業界による不作為はフザケルナであろう! つづく |