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先日、西日本新聞の一面トップにフルカラーで私達の研究所が行った玄界原発事故時の放射性物質拡散シミュレーションについての大きな記事がでました。 ◆30キロ圏外焦る自治体 原発事故民間試算(玄海原発) (PDF) 西日本新聞 http://eritokyo.jp/independent/nishinihonshimbum2014-06-23-1air3dnpp.pdf 下は青山が委員として参加したニセコ町 原子力防災計画 避難・退避編の全体構成です。 ニセコ町 原子力防災計画 避難・退避編の全体構成(素案) 実は記事が出た直後、壱岐・対馬で有名な壱岐島にある新聞社(壱岐日日新聞)から連絡があり、シミュレーションの対象範囲の中には壱岐島が含まれていないが、可能ならぜひ、含まれているシミュレーションをお願いできないかということでした。 確かに、西日本新聞の巨大な記事には対馬はまだしも、壱岐島が含まれていません。 3.11以降、私達が日本各地にある原発が事故を起こした場合、それも福島第一原発事故並みの事故が起きた場合、周辺地域の放射線量はどうなるかにつき、広域を対象に都合2年かけシミュレーションを行いましたが、その範囲は1メッシュの大きさとメッシュ数で一定の規模としたものの、どこまで含めるかについて明確な基準をもってやったわけではありません。 もちろん、皆さんがご覧になっている範囲を表示するためには、東西南北その背後にある100km以上についても数値計算をしています。しかし、背後の100kmの計算は境界領域との関係で対象範囲を設定しており、そこでは必ずしも詳細な地形まで考慮していないのです。 いろいろ思案した結果、今回は壱岐日日新聞の要望を応え、新たに壱岐島を含めた範囲を数値計算することにしました。 ところで、数日前ある新聞を見ていたら佐賀県議会に経産省官僚が来て玄海原発の再稼働問題で議論したようですが、官僚側は何はともあれ「地元協議が先」を繰り返すばかりだったそうです。 しかし、こと玄界はまさに「限界」であることを認識なければいけません。というのも玄界原発の周りには、馬渡島や壱岐島など多数の島嶼があり、結果的に島民は「原発棄民」となりかねないことになると言えるからです。 さらに玄界原発がある周辺には名護屋、唐津、伊万里、呼子などがあり、日本の歴史、文化の宝庫のような地域であるからです。それらがすっぽり高濃度の放射能汚染地域に含まれることになり兼ねません。 玄界原発周辺の佐賀県の小さな島嶼。私が渡ったのは、馬渡島です。壱岐島はこの北にあります。 出典:玄界諸島の概況、日本財団 図書館 九州電力の玄海原子力発電所と唐津市、馬渡島、壱岐島、伊万里などの位置関係を示す簡単なUPZ図をつくってみました。 隠れキリシタンの島(馬渡島、まだら島)とは目と鼻の先ですが、壱岐対馬の壱岐島も30km圏内、シミュレーション結果では、浪江村、飯舘村いや、途中海しかないのでそれ以上の高い線量率になります。 馬渡島はもちろんのこと壱岐島にあっても避難が非常に難しくなります。果たして壱岐島の場合、フェリーが使えるのか?が問題になります。 図 九州電力の玄海原子力発電所と唐津市、馬渡島、壱岐島、 伊万里などの位置関係を示す簡単なUPZ図 ※ 九州電力 玄界原子力発電所について 出典:九州電力 海向こうの丸い屋根の施設が玄海原発 出典:グーグルストリートビュー 上の地図を見れば一目瞭然なように、玄海原発から壱岐島は見通し距離の途中にホトンド障害物がないので、今回、追加で行った3次元流体シミュレーションの結果では、島中が真っ赤っかになりました。OILどころではなく非常に高濃度です。 ※OIL※(OIL:Operational Intervention Level (運用上の介入レベル)による判断基準 放射性物質の環境放出後に、環境モニタリング等の結果を踏まえ、屋内退避、 避難、安定ヨウ素剤の予防服用等の措置を行うための判断基準 ところで、数年前、全国私学図書館長会議が福岡市の西南学院大学であり、終了後、唐津、呼子さらに壱岐島に近い馬渡島(まだらじま)に船で行ったことがあります。玄海原発から非常に近い島です。この島にはタクシーもバスもなにもなく思案に暮れていたところ、漁師のおばあさんが軽トラックであちこち案内してくれました。 おばあさんがいらした馬渡島の漁港 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2010.9.11 おばあさんは、大阪に行っている自分の孫がいつなんどき大都会の人に世話になるかわからない。だから貴方が困っているようなので..と仰って、案内して下さいました。。本当にうれしかったです。 馬渡島は、玄海原発と壱岐島の間にある島で江戸時代、隠れキリシタンが多数住んでいたそうで、今でもカソリックの小さな教会があります。おばあさんは、東京から来られたのならと、わざわざ牧師さんの自宅にまで案内してくれ、牧師さんともお話しすることができました。 馬渡島の天主教教会 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2010.9.11 それを思い出し、壱岐島(長崎県所属)の住民の方々へのスチュワードシップ的奉仕として鷹取さんと今週、壱岐島を含めた広域の3次元流体シミュレーションを行いました。 玄海原発近くにポツンとあった風力発電 出典:グーグルストリートビュー 実は馬渡島からの船による帰途、私は呼子ではなく名護屋の漁港に到着しました。この漁港はやはりタクシーはもとよりバスもなにもありません。 私は名護屋城博物館に行くべく、グーグルの地図を印字してもっていたので、炎天下、地図を片手に漁港で途方に暮れていました。この漁港がある場所は、以下のグーグル地図にあるように、玄界原発の数kmすぐ右隣にあります。 名護屋魚港の位置(A)、郵正丸は漁港の南に接岸した。 出典:グーグルマップ 名護屋漁港の位置 出典:グーグルマップ すると、こんどは軽トラックで漁港近くに来ていたおじさんが、私にどこに行かれますか?と聞いてきました。すかさず名護屋博物館に行きたいのですが、と言うと、ここからはバスもありません。歩いても1時間以上かかります。この軽トラでよろしければお送りしますよ、とこれまた大変親切に対応してくれました。本当にありがたいことです! 下の衛星写真は玄海原発と名護屋城周辺地域を撮影したもの。当時、豊臣秀吉の号令一下で全国の諸大名がこの半島に集められ朝鮮半島から中国への侵攻の拠点となっています。写真を見ると、島津義弘、羽柴秀俊、上杉景勝、福島正則、加藤清正など錚々たる陣が築かれていたことが分かります。 名護屋。歴史と文化を背負った名護屋だけあって、立派なお寺が見えます 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2010.9.11 原発立地は、人々の生活や位置のばかりか日本の貴重な歴史と文化をも破壊することになりかねないのです! 玄海原発と名護屋城周辺地域 以下はそのとき書いたブログの数々です。 壱岐日日新聞の記事が発刊されたらPDFなどで公表する予定です。 |