敢然と東九州道 の路線変更に挑む農園主@ 〜国土交通省道路局は現代の「関東軍」か〜 青山貞一 東京都市大学名誉教授 掲載日:2008年1月16日、1月18日拡充 独立系メディア E-wave Tokyo 転載禁 |
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私は常々、旧建設省道路局、今の国土交通省道路局は、戦前の「関東軍」に類する存在である、と思っている。 「関東軍」は、政府や議会のアウト・オブ・コントロール、すなわち政府や議会の言うことを聞かず勝手に傀儡国家、満州国を中国につくり上げたあの関東軍のことを意味する。
ガソリン、軽油の暫定税率もさることながら、道路特定財源の使途、世界一高額の有料道路、まさに「道路が通れば道理が引っ込まざるをえない」強引な道路建設手法など、この国は、まさに「道路やダムをめぐる政官業功成りて、万骨枯る」状況にあるとさえ思えてくる。 国土交通省の道路局や河川局は、まさに日本政府や国会のアウト・オブ・コントロールにあり、巨額な特別会計を使い、不要な道路やダムを推進している。そのありさまは、あたかも現代の「関東軍」である。 周知のように旧建設省、現国土交通省の道路局や河川局は、一度決めたら、どんなに時代状況が変わろうと、何十年かかろうと、はたまた社会経済情勢が変わろうと、道路やダムをつくり続ける。 首都圏で毎日粛々と建設工事が進められている八ツ場ダムはその一例だ。東京都はじめ下流の水使用量は減っており、今後間違いなく進む少子化でさらにあらゆる水使用量が減るにもかかわらず、日本でも有数の景勝渓谷を壊し、不要なダムを強引に作り続けている。 2007年8月30日の日本経済新聞によれば、八ツ場ダムの建設事業予算は4600億円を超え現在工事中のダムとしては日本一無駄に公金が使われているダムといえる。 事実、公金の不正、不当な使用に向けられる関連自治体の監査請求そして地方自治法の住民訴訟が八ツ場ダムに対し起きているが、東京都、千葉県、群馬県、埼玉県などの関連自治体は、現代の「関東軍」、国土交通省の号令一家、被告として公費を浪費すべく頑張っている様は、異様である。まるでかつての社会主義国家のようだ(=官僚社会主義国家のゆえん)。 ●ダム建設費膨張9兆円、一段の肥大化も 当初計画比1.4倍 日本経済新聞 2007.8.30 表1 日本におけるダム建設費 単位:億円
この分野における私の友人である福井秀夫氏は、東大卒業後、事務次官を嘱望されエリート官僚として建設省に入省したが、建設官僚や省庁組織の体質に嫌気をさし、30代半ばで建設官僚を辞めている。私は福井氏から旧建設省の実態をくまなくうかがってきたが、なぜ福井氏が若くして建設官僚を辞めたかがよく分かった。福井氏との議論は別途j紹介したいと思う。 ........ 日本がいかに土木系公共事業天国であったかを示す数値がある。 1990年代後半、日本は土木系公共事業の@総額、A対GDP比、B対面積比のいずれにおいてもOECD諸国で公共事業費がダントツに多かった。そのとき世界一の公共事業の種別は、全体の約1/3が道路関連事業費、2番目がダム・堰事業費であった。こんな狭い日本の国土を道路とダムで埋め尽くすつもりか!と言いたい。 日本のGDP対比の累積債務額も、かなり前から世界でワーストワンとなっている。 図2 主要先進国の公共事業費総額 出典:ナショナル・アカウント(1996)、OECD 図3 主要先進国の公共事業費(対GDP) 出典:ナショナル・アカウント(1996)、OECD 図4 主要先進国の公共事業費(対面積) 出典:ナショナル・アカウント(1996)、OECD 図5は、政府支出に占める公共投資(主に土木系公共事業)の割合を示したものである。図より明らかなように、わが国の公共投資の比率は欧米諸国と較べて異常に高い。 図5 政府支出に占める公共投資の割合の推移 出典:アニュアル・ナショナル・アカウント、OECD さらに、図6は日本と欧州各国の政府支出に占める公共投資事業の内訳をみたものである。 図より分かるように、日本では運輸、農林漁業、エネルギー関連などの経済サービスの配分比率がきわめて高い。他方、社会福祉、保健、文化などの配分比率が極めて低いことが分かる。これらの配分比率は、大きく変わっていない。 これらは何を意味するのか? 要約的に言えば、日本ははこもの、物づくり、ハードな公共サービスに偏重していることを意味する。社会福祉、文化、ソフトは公共サービスは常に軽視され、道路はじめ物づくりに偏っていたことを意味する。 図6 日本及び欧州諸国の公共投資事業別シェア 出典:アニュアル・ナショナル・アカウント、OECD 上述のように、公共事業費の1/3を占めるのは道路事業である。道路事業は、@揮発油税(ガソリン税の国税分)、A地方道路税(同地方税分)、B軽油取引税、C自動車取得税の全額、また自動車重量税は約85%が国と地方の道路特定財源となっている。以下の図5参照。 図7 道路特定財源の内容 出典:国土交通省 日本のメディアはまったく報じていない、また国会でも問題になっていないが、道路特定財源のもととなっているガソリン税、軽油引取税のうち、何んで軽油引取税が32.1円/リットルで、ガソリン税が53.8円/リットルであるのかの問題がある。 他の国は、もともと税率が低いうえ、両者の差はないか、ほとんどない。軽油はディーゼル車の燃料に使われるが、ディーゼル車は大気汚染物質を沢山排出するにもかかわらず税率が少なく優遇されている。実際、リッター当たりの軽油が安いことから中型分野のトラックで大気汚染が著しい直噴ディーゼル車が増加した経緯がある。 にもかかわらず軽油価格が安い理由は簡単。ディーゼル車は主にトラックなど産業、企業が使っているからである。ここにも、いつまで経っても産業優先、殖産興業という日本政府の姿勢が見える。より多くの大気汚染、公害を出すディーゼル車の使用を優先し、燃料費負担を少なくしているのである。 ところで高速道路の場合は、当然、有料道路の使用料金が使われるが、昭和47年に建設省が政令を改正し、高速自動車国道に係る<プール制>を導入した。また一般有料道路における一般道路事業との「合併施行方式」の導入した。国土交通省は、「このような根幹的法令の制定とともに、事業の採算性の確保等の観点から」高速道路に上記の制度を導入したとしている。 しかし、もともと日本道路公団、地方道路公社等の一般有料道路については償還満了による無料開放などとすることになっていたにもかかわらず、全国各地に不要な高速道路をつくりつづけるためいつになっても、高速道路料金は無料になるどころか、周知のように使用料は世界一高額となっている。まさに日本の高速道路建設の事業方式は国家による「詐欺」のようなものとなっている。 また現在期限切れを前に大騒ぎとなっている道路特定財源についても政府自民党は、道路を利権化する国土交通省や国、地方の政治家の恫喝的意向をくんで、暫定税率(「暫定」が聞いて呆れるが)を2008年の4月以降も延長としている。 ...... しかし、道路財源で重要かつ問題なのは道路特定財源だけでない。 国と地方を問わず一般財源や財政投融資(2009年に終了とされている)を含めた財源にある。1990年代後半から特定財源と一般財源の割合はほぼ等しくなっていることだ。すなわち、一般道路、高速道路が道路はガソリン税はじめ上記の特定財源や高速料金でまかなえないことに大きな問題がある。 たとえば、件の東九州自動車道のような国土幹線自動車道路の場合でも、国費(特定財源、一般財源)の他に、自治体が負担する一般財源が多くなっている。もちろん、国庫補助があるが、当然、その場合でも自治体が一般財源や起債で負担しなければならない部分が相当ある。それらを考慮すると、道路事業関連の累積債務は国、自治体ともに巨額なものとなるのである。 もちろん、高速道路本線以外の取り付け道路、インターチェンジなどでは、地方が負担する道路財源が大部分となり、一般財源の割合が大きくなっている。したがって、高速道路が通る自治体でも一般財源分の負担、借金が大問題となるのである。 このように旧建設省、現在の国土交通省は、ふたつのウソを国民についている。ひとつは道路特定財源のもととなる「暫定税率」であり、もうひとつは高速自動車国道に係る「プール制」である。 いつまでも道路をつくり続けようとする「関東軍」は、「暫定税率」の暫定を未来永劫とし、償還し無料とすべき高速料金を「プール制」にしつづけようとしているのである。 ...... こんな国は世界中日本だけであるが、「関東軍」ならぬ道路局、河川局は、たとえ国や自治体が倒産寸前になっても、いや倒産しても、道路やダムをつくり続けると思えるふしがある。それが旧建設省、現在の国土交通省の道路局や河川局が「関東軍」であると言うゆえんである。 さらに道路局や河川局は、いかに自分たちの間違いを指摘されても認めない。それは日本の官僚組織ならではの「無謬性」、すなわち自分たちがしていることには間違いがないとして過ちを認めないことに由来しているが、裁判などで旧建設省、現在の国土交通省の道路局などと対峙していると、その感を強くする。 今や世界的に有名になった「談合」や「官製談合」のもととなる「政」「官」「業」の鉄のトライアングルも、もとはといえば道路局や河川局が築き上げてきたものだ。 私は田中康夫参議院議員が知事だった頃の長野県に政策アドバイザーとして数年関与した。そこで明確に分かったことは、土木系公共事業の積算単価が異常に高いことだ。予算を取るための見積段階からすでに高いのである。 その現状追認の「政」「官」「業」のトライアングルは、かなり前から「政」官」「業」「学」「報」、すなわち、政治、行政、業界に加え学界、報道が加わった、より堅牢なペンタゴン(五角形)となっている。 図8 従来の利権構造 出典:青山貞一 公共政策論講義パワーポイント ↓ 図9 現在の利権構造 出典:青山貞一 公共政策論講義パワーポイント ダムや道路事業の推進過程を見ると、いかに土木工学分野の学者、研究者が上記のペンタゴンに駆り出され、結果的に巨大なダムや道路事業にお墨付きを与えているかが分かる。近年では土木系だけでなく環境分野の学者、研究者もいいように利用されている。 さらに、「関東軍」はダムや道路事業を推進する際に、立地予定地の地方新聞や全国紙の支局をペンタゴンに巻き込み、事業推進に利用している。以下は、八ツ場ダム建設に地方紙が利用されている具体的事例である。 ◆青山貞一:日本のメディアの本質を考えるJ巨大公共事業推進の先兵 いわば地域の世論を事業推進の方向に誘導するとともに、まともな批判をかわすのに、メディアが利用されているのである。 周知のように、指名競争入札をすると、もともと高い予算額ギリギリの額を談合を取り仕切る会社が応札し、他の会社は少しずつそれより高額の札を入れる。談合破りは二度と指名が掛からない。それがその道の常識だった。10数年前、知人の衆議院議員に依頼し、当時の建設省に係わる入札状況を調査してもらったことがある。建設省からの返事は、かなり一般競争入札が進んでおり、特命随意契約もほとんどなくなっているというものだった。 しかし、その後上述の長野県で見た現実は、トンデモハップンなものだった。現場では依然として官製談合と連携した指名競争入札が常態化していた。知事の号令一家、入札のあり方を変えたところ、20−30%入札額は下がった。もし、日本全国で数十年前から官製談合を徹底的に辞めさせていたら、おそらく日本の累積債務額はかなり低くなっていただろう。 いずれにせよ、現状追認と既得権益、既成事実の積み上げで強引に道路やダムをつくり続ける。それが官僚社会主義集団、それが旧建設省道路局、今の国土交通省道路局一族である! そんな中、あるブログに以下のような表題のコラムがあった!以下に全文を転載するのでご一読頂きたい。
まさにその通りだお思う。これが国民のいつわらざる心情である。 |