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国連憲章、国際法に明らかに反する「先制攻撃」で開始した米英のイラク攻撃だが、二週間が経過した。日本政府は、この「正当性」がないイラク戦争を支持した。イラク戦争を日本が支持することは、国連憲章に反するのみではない。同盟関係を規定する日米安全保障条約の第一条、そしてなによりも日本国憲法の第九条に抵触することになるだろう。実際、日本の国際法学会に所属する国際法学者の80%が米国のイラク先制攻撃を「違法」と認めている。 戦争を国際紛争の解決に用いないと明言した国が、北朝鮮問題で米国にお世話になるからイラク戦争を支持せざるを得ないとするのは明らかに詭弁であろう。
もとより、米国がイラクを攻撃する名目上の動機は「テロリスト掃討」から「大量破壊兵器廃絶」、そして「フセイン政権転覆=圧政からのイラク国民の解放」、「中東全体の"民主"化の拠点化」と、次々に変わっている。 イラク戦争は「大量破壊兵器廃絶」に名を借りた米英のイラクへの侵略行為であると世界の過半の人々が思っている。動機、目的は変われど、この戦争は米国によるイラク侵略としか言いようもない。 フセイン政権やバース党がどれだけ非民主的そして独裁政権であったとし、だからといって、それを理由に他国を侵略することは絶対許されないだろう。米英の対イラク攻撃はどうみても自衛権の行使でもない。世界の世論はフセイン政権よりブッシュ政権の方が世界にとって脅威と感じていることからも米国の対イラク攻撃には正当性はないのである。
ここ数週間、米英両国はイラクの軍事施設への攻撃にとどまらず、一般市民生活に必須なインフラ施設、市場など、明らかに軍事関連以外の施設に1万発を超える爆弾を投下してきた。そのなかには、巡航ミサイルに加えクラスター爆弾、デージーカッター、マイクロ波弾、劣化ウラン弾など、どうみても「大量破壊兵器」に準ずる兵器が含まれている。大量破壊兵器の掃討、廃棄に大量破壊兵器に準ずる膨大な量の兵器を使うことは許されない。 かくしてイラクは最新兵器の実験場、旧型爆弾の在庫一掃の場と化した。罪なき膨大な数の幼児、子供、市民が犠牲となっている。さらに米英による戦争行為は、地域のさまざまな環境や歴史的資産を著しく破壊し続けている。 1万
一方、米英両国がイラクを攻撃する最大の理由とされてきた生物、化学、核兵器などの大量破壊兵器は、米国のマスコミが幾度となく発見されたと報道するものの、依然として発見されていない。このまま推移すると、米英が自国などから生物、化学兵器をイラク国内に持ち込み、「ここにあった」などと言いだしかねない状況にある。さらに米国はイラクの隣国シリアに隠されているなどとして、今後、シリアを攻撃しかねない状況にある。 そもそも世界最大の大量破壊兵器の保有国は、ほかならぬ米国である。イラクが大量破壊兵器を保有していると断定し、先制攻撃に突入した経緯からして、もしこのまま大量破壊兵器が発見されない場合、イラク戦争による多数の死傷者はじめ国土、都市、環境を破壊したすべての償いを米英がしなければならないだろう。
かくして米英両国は大量破壊兵器の廃絶そっちのけでイラクの政権転覆にやっきとなってきた。イラクといえども主権国家である。主権国家を世界最大の軍事大国が一方的に侵略しているのがイラク戦争の実像ではないだろうか。もともと査察によりイラクを丸腰状態とした後の戦争の軍事的結末は誰の目にも明らかである。軍事的、政治的に見てフセイン政権崩壊は時間の問題であった。 今後の大きな課題は、政権崩壊後の戦後処理である。米国は自国の主導を譲らない。しかし、元来、正当性ない侵略戦争をはじめた米国が仮にどれだけ血を流したからと言って他国に傀儡政権を樹立したり、その国の資源エネルギーなどを搾取して良いわけがない。
米国はアフガン戦争で戦後復興を主導した。だが、その具体的な方法は米国の大石油資本、ユノカル社の中央アジアにおけるトップエージェントだった親米アフガン人、ハミド・カルザイ氏をアフガン臨時行政機構議長(首相)につかせ、まさに傀儡政権を樹立した。カルザイ氏はその後大統領となりブッシュ政権の念願だった天然ガスパイプライン建設に着手している。 ブッシュ政権はイラクにあっても、戦後復興の名の下に親米イラク人を暫定統治機構、臨時行政機構などにつかせ親米傀儡政権を樹立し、世界第二の埋蔵量をもつ石油に関する利権はじめ、さまざまな権益を米国系企業に与えようとしていることは間違いない。すでにブッシュ大統領のお膝元、テキサス州の石油資本やブッシュ政権内の各閣僚が関与するエネルギー産業、軍需産業、ゼネコンなどが復興費を当て込んで計画を練っていると言う報道も後を絶たない。
同時に、新保守主義(ネオコン)メンバーのひとり、元米中央情報局(CIA)のジェームズ・ウルジー元長官は、次のことを公言してはばからない。すなわち「イラク戦争は新たな中東づくりの一部にすぎない。敵は@イランの宗教支配者、Aイラクやシリアのファッシスト、Bアルカイダなどのテロリストだ。米国と連合軍の進軍は続く」と。 世界各国は、米国をして「勝てば官軍」とさせてはならない。わたくしたちは、米国のイラク先制攻撃は何ら正当性がないことを主張してきたが、今回の戦争で次第に明確になってきたことは、次の二点である。 すなわち、この戦争は米国の新保守主義者の言い分にあるように、一方で武力で侵攻し、中東諸国に親米そして親イスラエルの傀儡政権を樹立させる新たな帝国主義戦争である。とともに、他方で中東地域の石油、天然ガスなどのエネルギーを収奪する新たな植民地主義戦争である、と言うことである。
このように、21世紀の世界各国のあり様を根底から揺さぶり破壊するのがブッシュ・ドクトリンであり、米国の対イラク戦争である。戦後復興もこの策略にそって行われるのは明白である。このような策略に加担することは、全世界の不安定性を増加するだけである。 2003年3月、米英両国が出したイラク攻撃に関する「新決議」が国連安保理で承認されない場合、日本政府は戦後復興費を拠出しないと言明していた。現実には米英は国連安保理で「新決議」が承認されないと見るや決議1441などが先制攻撃の論拠となるとして、戦争に突入した。米国に追随する日本は、無節操にもそれさえ支持した。 日本政府は、自ら言明していた通り正当性がない戦争の戦後復興に一切拠出してはならない。戦後復興はイラク国民自身の手にゆだねるべきである。決してアメリカ政府の意のままにさせてはならない。日本政府は、このような戦後復興の名を借りた侵略政策に対して、貴重な国民の税金を一円たりとも拠出してはならない。 一方、日本政府は「人道支援」を強調している。我々は人道支援への拠出を否定するものではない。しかし、過去の歴史をつぶさに見るにつけ、日本政府の人道支援が現地で十分効果を上げ、機能しているは言えない状況がある。したがって、たとえば「国境なき医師団」など、実績と信頼性があるNPO/NGOを日本政府は財政面から積極的に支援すべきである。 さらに日本政府は盟友である米国に対し、戦後復興に拠出した国の間で完全な国際一般競争入札を行うなど、これにより米国系企業さらにブッシュ政権に関連する企業に復興事業が優先的にまわらないよう進言すべきである。くれぐれも世界各国から集めた資金が勝てば官軍として米国系産業、企業の利権とならないよう監視しなければならい。 |