2003.1.1〜2003.1.8 Version 1.3

(4)世界の環境を破壊する米国

青山貞一 Teiichi Aoyama
全体内容目次

その1  その2  その3  その5  本ホームページの無断転載を禁じます。 リンク歓迎です!
key word 正当性なき米国のイラク攻撃(4) No Justification for US Attack on Iraq(4)

持続可能な世界秩序を破壊するブッシュ政権
 
 2002年9月、フィリピンのマニラで世界から約100名の宗教関係者、アナリスト、研究者、NGOを招待し、9.11の同時多発テロに関連した米国の帝国化と米国主導のグローバリゼーションに関する「国際非戦会議」が米国大使館前のホテルで開催された。主催はフィリピンのNPO/NGOである。わたくしも招待を受け参加した。
この会議では、会議宣言も採択されている。当日講演したインドの作家、DR. NINAN KOSHYや米国の経済学者ウィリアム・タブ教授の論文は示唆に富む。掲載許可は頂いているが、膨大な量である。ファイルが入手でき次第公開したい。

米国の帝国化とグローバライゼーションのアジア地域への影響について議論したマニラ国際非戦会議

ところで我々は二十年も前から、国家間、地域間の相互依存性(Interdepencency)について議論してきた。グローバリゼーションは、地球上のある特定国家、地域における出来事、決定、行為が他の国や地域社会にまで著しい影響、それもマイナスの影響をもたらすことが問題視されている。グローバリゼーションは経済面で永年語られ問題にされてきた。しかも、その影響は今や経済だけでない。アメリカを震源とするグローバリゼーションは、いわば米国的諸価値を世界隅々まで拡延し、単一の価値観をいやおうなく多国、他地域に押しつけてくる。世界のアメリカナイゼーション的な意味をもっている。経済、金融、為替にとどまらず軍事、政治、さらに社会、文化にまで及ぶ。IT時代この傾向はさらにスピードアップ、加速化している。

【関連情報URL】
 米国の帝国化や米国主導のグローバリゼーション(=アメリカナイゼーション)やについては、以下を参照のこと。
    “Globalization: Concentrating the World’s Wealth and Power”
      PROF. WILLIAM K. TABB (Professor, City University of New York) 
    
 http://www.unilivre.org.br/centro/resenhas/tabb.htm
    http://www.nyupress.org/product_info.php?products_id=2295
   
    “Terrorism in a Globalized World: Prospects for Peace and Security in Asia”

     THE WAR ON TERROR、Making the World Safer for Globalization
     DR. NINAN KOSHY (Author, India) 

    http://fungchiwood.com/notwar-safer.htm
    http://202.64.82.162/daga/cca/resources/papers/issues/wot-ninan.htm
グローバリゼーションについて


 9.11の同時多発テロに対する米国の一連の戦争行為や報道管制、さらに人権の制限などは米国一国にとどまらず、途上国からEU、日本など世界の隅々にまで大きな影響を与えている。さらにNATOからIAEA、OECD、国連jに至る国際組織も、米国の一国により振り回されているのだ。事実世界のすべての国家、地域がブッシュ大統領の一般教書における
「悪の枢軸」に翻弄されている。ブッシュ大統領の父親が設定した「新世界秩序」(New Wordl Order)を現ブッシュ大統領は、まさに永遠の権力として強化しようとしている。これこそまさしく米国の「帝国」化である。

 強大な軍事、経済、情報の力を背景にした米国帝国にはどこの国の為政者も政治家もまっとな批判ができなくなる。ブッシュ大統領のペット犬化状態である。国連の安全保障委員会はまさにそれを象徴している。もともと国連に距離を置き、拠出金も滞っていた米国が国連を利用するのは決まって自分たちの戦争行為を正当化する場合である。しかも、ロシアがイラクの石油利権で簡単に国連新決議に賛同したように、米国が国連を利用するときは、すでに大方、経済や利権による根回しがロシア、中国、途上国を含めつけられているときだ。

 かくして、ブッシュ政権は、一方でアジア、中東で独断的で権益に満ちた戦争を次々にしかけ、他方で地球温暖化防止のための気候変動枠組条約(京都議定書)や核実験全面禁止条約(CTBT)、さらに米ロ弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM)など気候変動枠組条約締結国からの脱退など、を具現化している。まさにやりたい放題である。ITバブル崩壊後の米国経済は、今後ますます混迷と停滞の道を歩むものと推察される。問題は、アメリカ経済の停滞や混迷は、まさに日本を含め世界各国が感受せざるをえないことだ。米国との同盟関係は、政治、軍事、外交にととまらずそれ以外の分野での著しい弊害も一蓮托生として連座せざるをえないことになる。果たしてさまざまな国内の困難にあえぐ日本がそれに耐えうるかどうかも大きな問題となるだろう。

【関連情報】
 持続可能と言えば最も重要なことは、環境との本質的な共生の可能性である。2002年初冬、経済人を集めダボス会議が開かれた。その会議に米国のコロンビア大学とエール大学の共同研究の成果が報告された。その報告は環境面から見た国家の持続力、持続可能性のランキングに関するものであった。表8はそのランキングを示している。ランキングは、ESIと言う指標をもとに加重平均により数値化したものである。表からは何と米国51位、ドイツ54位。日本62位、英国98位とかなり下位に位置していることが分かる。イラクは北朝鮮とともに最低ランクにいる。おそらくこれは評価に値するデータが入手困難からだろう。しかし、米国、日本、イギリスなどのランクが著しく低いのは、GDP至上主義、経済至上主義そしてエネルギー多消費の国は環境面からみて持続可能ではないということを意味するものと思われる。ちなみに、経済と環境がほどよく調和している国としては、北欧を中心とした欧州の中小国、、カナダ、コスタリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどがあげられる。 もし、地球環境政策をESIに入れれば、米国は100位以下に転落するであろう。
 なお、表7のランキングは、その後、修正版が発表された。日本は62位から78位となっている。
 環境面から見た国家の持続可能性について
表8 環境面から見た国家の持続可能性ランキング ESI指数
1 Finland 73.7 49 Zimbabwe 52.9 97 Mexico 45.4
2 Norway 72.8 50 Honduras 52.9 98 United Kingdom 45.2
3 Sweden 72.2 51 United States 52.8 99 Guinea 45.2
4 Canada 70.4 52 Byelarus 52.5 100 Nepal 44.8
5 Switzerland 68.2 53 Israel 52.3 101 Gambia 44.5
6 Uruguay 66.2 54 Germany 52.1 102 Indonesia 44.5
7 Iceland 65.7 55 Nicaragua 51.5 103 Sudan 44.5
8 Austria 63.9 56 Thailand 51.3 104 Burkina Faso 44.2
9 Costa Rica 62.9 57 Papua N.G. 51.3 105 Iran 44.0
10 Latvia 62.8 58 Bosnia and H. 51.1 106 Togo 43.9
11 Hungary 62.6 59 Morocco 51.1 107 Philippines 43.5
12 Croatia 62.5 60 Jordan 51.0 108 Syria 43.3
13 Australia 62.1 61 Mozambique 50.9 109 Zaire 43.1
14 Panama 61.9 62 Japan 50.5 110 Ivory Coast 43.0
15 Botswana 61.8 63 Greece 50.4 111 Angola 42.6
16 New Zealand 61.8 64 Tunisia 50.2 112 Tajikistan 42.2
17 Argentina 61.5 65 Turkey 50.1 113 Oman 42.1
18 Slovakia 61.5 66 Romania 49.9 114 Trinidad & Tob. 42.0
19 Estonia 59.8 67 Ghana 49.8 115 Jamaica 42.0
20 Brazil 59.6 68 Czech Republic 49.7 116 Pakistan 41.6
21 Bolivia 59.5 69 Bulgaria 49.3 117 Azerbaijan 41.5
22 Colombia 59.2 70 Zambia 49.3 118 Burundi 41.2
23 Slovenia 58.6 71 Guatemala 49.2 119 India 41.0
24 Denmark 58.1 72 Macedonia 49.1 120 Uzbekistan 41.0
25 Paraguay 58.0 73 Malaysia 49.0 121 Ethiopia 40.9
26 Albania 57.6 74 Russia 48.8 122 Madagascar 40.6
27 Namibia 57.5 75 Algeria 48.5 123 Rwanda 40.2
28 Lithuania 56.9 76 Egypt 48.4 124 Niger 39.3
29 Portugal 56.8 77 El Salvador 48.3 125 Mauritania 38.8
30 Peru 56.5 78 Uganda 48.3 126 Libya 38.6
31 Laos 56.3 79 South Africa 47.9 127 Belgium 38.6
32 Bhutan 56.2 80 Tanzania 47.7 128 Guinea-Bissau 38.1
33 Netherlands 55.2 81 Dominican Rep. 47.6 129 China 37.8
34 France 55.0 82 Senegal 47.2 130 Liberia 37.6
35 Gabon 54.9 83 Mali 46.9 131 Turkmenistan 37.2
36 Chile 54.7 84 Malawi 46.8 132 Somalia 36.9
37 Congo 54.6 85 Bangladesh 46.7 133 Sierra Leone 36.3
38 Ireland 54.4 86 Italy 46.3 134 Nigeria 36.3
39 Armenia 54.2 87 Kazakhstan 46.3 135 Saudi Arabia 36.0
40 Moldova 54.2 88 Poland 46.1 136 South Korea 35.1
41 Central Af. Rep. 54.1 89 Myanmar 46.0 137 Ukraine 34.5
42 Mongolia 53.9 90 Kenya 45.8 138 Haiti 34.1
43 Ecuador 53.8 91 Lebanon 45.7 139 Iraq 32.9
44 Sri Lanka 53.3 92 Cambodia 45.6 140 North Korea 31.8
45 Kyrgyzstan 53.2 93 Cameroon 45.6 141 Kuwait 25.4
46 Spain 53.2 94 Chad 45.5 142 United Arab Em. 25.3
47 Cuba 53.2 95 Vietnam 45.5
48 Venezuela 53.0 96 Benin 45.5
出典:Environmental Sustainability Index 2002 Rankings
An Initiative of the Global Leaders for Tomorrow Environment Task Force,World Economic Forum

湾岸戦争の教訓、「戦争は史上最大の環境破壊である」

 12年前、1991年1月に勃発したいわゆる湾岸戦争は、イラクが隣国クウェートへの侵略と言う痛ましい国際法違反からはじまった。米国を中軸とした多国籍軍の攻撃であっという間に湾岸戦争は終結した。圧倒的な軍事力をもつ米英など多国籍軍の前に、イラクはなすすべがなかったというのが実態である。 しかし、問題はこれで終わらなかった。湾岸戦争では、米国など多国籍軍の圧倒的な武器弾薬に対抗し、イラク軍がクウェートの原油施設から膨大な量の原油をペルシャ湾に流出させ、クウェート内約1000本のうち最大700本に及ぶ油井を炎上させた。その結果、地球規模の著しい環境破壊が起こった。さらに米国に率いられた多国籍軍は劣化ウラン弾を多用していたことが後になって分かってきた。湾岸戦争の最大の教訓は、「戦争は最大の環境破壊である」ということだ。

         (環境総合研究所自主研究) 油井炎上の環境影響

        
中国新聞特集記事:劣化ウラン弾 被害深刻 湾岸戦争と劣化ウラン弾地図

       ※ 劣化ウランの恐怖、「湾岸戦争でアメリカは何をしたか」、VTR、35分、連絡先→03-3234-2127(電話)

 湾岸地域での戦争はたえず著しい環境破壊の可能性をはらんでいる。その意味でも世界各国はこの戦争を止め名ければならない。

劣化ウラン弾の健康被害を告発するセーラ・フランダース
(「湾岸戦争でアメリカは何をしたか」、VTRより)
湾岸戦争で劣化ウラン弾を装備したM1タンク
(「湾岸戦争でアメリカは何をしたか」、VTRより)
【関連情報URL】
青山貞一、湾岸戦争と環境影響、公害研究、VOL.21 NO3/WINTER 1992、岩波書店
  
環境総合研究所、湾岸戦争の地球環境への影響、自主研究報告書、1992
中国新聞特集記事:劣化ウラン弾 被害深刻
湾岸戦争の地球環境への影響

湾岸戦争時ペルシャ湾に浮かぶ海鵜とペルシャ湾汚染のシミュレーション画面
湾岸戦争時、クウェートで炎上する油井
(上記は、いずれも青山の大学での講義、「戦争と環境」のパワーポイントの画面)

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