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 荒川区東尾久

高濃度ダイオキシン対策計画

住民無視の報告会@

 
青山貞一 (東京都市大学名誉教授)
 池田こみち(環境総合研究所顧問)


掲載日:2014年8月19日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁

@  A  B

 昨日、夜7時から8時30分まで、荒川区の首都大学東京の講堂で開催されました東京都の住民説明会に、研究所がある目黒区から参加しました。車を飛ばして約1時間です。お盆明けで道が空いていたので、7時ぎりぎりになんとか滑り込むことができました。

 問題はすでに多数の動画、ブログなどで紹介していますが、現場は、アデカという会社の工場跡地を東京都が購入し、その上に下水道局の施設、建設局の都市公園、荒川区の区民公園や都営高層住宅さらには首都大学東京荒川キャンパスなどを建設し永年供用してきた後、下水道局の施設を拡充するため土地を掘削したところ、超高濃度の土壌中ダイオキシン汚染が発見された、というところです。

 以下は昨年現地調査後に執筆した論考です。

◆特集:基準千倍超ダイオキシンの荒川区東尾久
◆青山貞一:基準千倍超ダイオキシンの荒川区東尾久、都有地現地調査
◆池田こみち:東京・荒川区で環境基準の1100倍―ダイオキシン検出週刊金曜日
◆池田こみち: 荒川区超高濃度ダイオキシン、メディア各社報道経緯
◆池田・青山:東京で国の基準1100倍超のダイオキシン検出You Tube

◆特集:東京都荒川区内工場跡地から基準千倍超の土壌ダイオキシン
◆池田:荒川区内工場跡地、基準千倍超の土壌ダイオキシン、メディア報ぜず
◆青山貞一:基準千倍ダイオキシンの発生原因についての推察 


東京都荒川区東尾久の対象地域   出典:グーグルマップ


汚染地域の施設配置図(出典:東京都下水道局)


汚染地域の衛星画像  出典:グーグルマップ

 問題は下水道局用地に限らず、上記の広大な公園、大学などにおいて1000pg-TEQ/gを遙かに超える汚染が発見されたことにあります。ちなみに下水道局用地の地下2mからは100万pg-TEQ/gを超える汚染が検出されています。

 東京都は一時期、都内各所にあった大きな工場用地跡を購入し、そこに都営アパートや都市公園などを次々に建設してきましたが、いずれも後に高濃度のダイオキシンや六価クロムなどの重金属汚染が確認されています。日本には米国のスーパーファンド法がないため、跡地の汚染などをろくに調べず購入した東京都は、汚染の除去や対策に要する膨大な費用を後から当該企業に請求することが難しく、また企業側もなかなかそれに応じないという問題が頻発しています。

 荒川の例では昨年夏まで膨大な調査を下水道局、環境局、建設局、首都大学東京を中心に行ってきて、それらのデータをもとに東京都の環境審議会の部会(水質土壌部会)が原因究明(いまさらですが)のため昨年度は11月に2回、今年度は4月と7月28日の2回部会を開催してきました。しかし、審議会の委員はどうみてもダイオキシン類の同族体、異性体などから原因を究明できるような専門家はおりません。水質土壌部会で協議し合意した内容を親委員会に諮り審議会で了解を得たという手順を経て手続きなどを進めるということとなっています。

◆東京都環境審議会(親委員会)メンバー
市川 まりこ 東京都環境学習リーダー
大前 和幸  慶応義塾大学教授
小河原 孝生 特定非営利活動法人生態教育センター理事長
河口 真理子  (株)大和総研 環境・CSR調査部長
窪田 亜矢 東京大学大学院准教授
交告 尚史 東京大学大学院教授
駒井 武 独立行政法人 産業技術総合研究所 
    地圏資源環境研究部門副研究部門長
下村 彰男 東京大学大学院教授
末吉 竹二郎 国連環境計画 金融イニシアティブ特別顧問
高橋 洋二 日本大学総合科学研究所教授
田辺 新一 早稲田大学教授
冨田 鏡二 東京商工会議所 環境委員会代表幹事
  (東京ガス株式会社 上席エグゼクティブ・スペシャリスト 環境部長)
中村 晶子 弁護士
西岡 秀三 独立行政法人国立環境研究所特別客員研究員
平田 仁子 特定非営利活動法人気候ネットワーク東京事務所長
古米 弘明 東京大学大学院教授
堀  政彦 財団法人日本自動車研究所 客員研究員
森口 祐一 東京大学大学院教授
諸富 徹 京都大学大学院教授
矢野 博夫 千葉工業大学教授
芳住 邦雄 共立女子大学大学院教授

◆東京都環境審議会 水質土壌部会メンバー
大前 和幸  慶応義塾大学教授
小河原 孝生 特定非営利活動法人生態教育センター理事長
駒井 武   東北大学大学院教授
古米 弘明 東京大学大学院教授
村頭 秀人 弁護士
大塚 直 (臨時委員) 早稲田大学法学学術院教授
中杉 修身(臨時委員) 独立行政法人国立環境研究所特別客員研究員

出典:東京都公式Web

 そのくせ、膨大なダイオキシンデータのうち、汚染原因特定のために欠かせない肝心な同族体、異性体データはこの間すべて審議会で解析中ということで、池田が2013年秋に開示請求しても公開せず、まともにコピーさせると開示手数料が30万円近くになるということで、最終的に110万ピコグラムという最高値が出た検体についてのみ、黒塗りで開示してもらい、その他の部分はCDでもらうこととなりました。

◆特集:東京都荒川区東尾久高濃度ダイオキシン詳細データ非開示の怪!
◆青山貞一:東京都、荒川区東尾久のダイオキシンデータ なんと非開示
◆池田こみち:荒川区工場跡地高濃度ダイオキシン 都へ情報開示請求

 東京都の一連の情報公開、情報提供に関する問題点については環境行政改革フォーラムの最新論文集(Vol.6、No.1、2014年6月)にとりまとめています。

 一方、その道の専門家である池田は、さらに超がつく専門家、宮田秀明摂南大学名誉教授に原因究明上のポイント、すなわち同族体、異性体からアデカという元々その地にあった企業の製造物、製造過程からどういうプロセス、構造でダイオキシン類が生成される可能性があるかなどについて調査をすすめました。

 これについては、以下も参照のこと。
◆青山貞一:基準千倍ダイオキシンの発生原因についての推察 

◆敷地概要

 住所:荒川区東尾久7−2
 面積:74,000u
 土地履歴:大正 7年〜昭和54年 旭電化工業(株)
      昭和58年〜昭和59年 旭電化工業(株)による汚染土壌対策工事
                (水銀及び鉛)
      昭和60年 工場跡地が東京都へ引き渡される
      平成 4年〜平成11年 高度処理施設(砂ろ過施設)工事
      平成18年〜     西日暮里系ポンプ室建設工事

 注)旭電化工業(株)は現在 (株)アデカとして電解法によるか性ソーダの
    製造からスタートし、現在はプラスチックの添加剤など多様な化学
    製品の製造を手がけている。

   沿革は以下の通り。
   http://www.adk.co.jp/company/history.html


アデカの沿革

1916年 - 古河合名会社(現在の古河機械金属株式会社)、東京電気
      (現在の株式会社東芝)、桂川電力(現在の東京電力株式会社)
      が中心になって東京電化工業所を設立、電解法によるか性ソーダ
      を製造。
1917年 - 株式会社に改組し旭電化工業株式会社を設立。
1919年 - 硬化油の製造開始。
1928年 - 農業薬品製造部門を分離して日本農薬株式会社を設立。
1929年 - リス印マーガリン製造開始。
1949年 - 東京証券取引所一部に上場。
1969年 - ミツワ石鹸、第一工業製薬と合同で「日本サンホーム」(
      現・P&Gジャパン)を設立。
2006年 - 株式会社ADEKAに社名変更、本社を荒川区に移転。

 以下はWikipediaに見るアデカの概要。
株式会社ADEKA
ADEKA CORPORATION

種類 株式会社
本社所在地 116-8554
東京都荒川区東尾久七丁目
2番35号
設立 1917年(大正6年)1月27日
(旭電化工業株式会社)
業種 化学
事業内容 化学品(約70%)、食品(約30%)
代表者 代表取締役社長
中嶋 宏元(CEO兼)
資本金 228億99百万円(2009年3月31日現在)
売上高 連結:1761億86百万円
単独:1250億23百万円
(2009年3月期)
総資産 連結:1925億17百万円
単独:1539億25百万円
(2009年3月31日現在)
従業員数 連結:2697名
単独:1541名
(2009年3月31日現在)
決算期 3月31日
主要株主 日本トラスティ・サービス信託銀行
(株)
(信託口4G) 7.22%
日本トラスティ・サービス信託銀行
(株)
(信託口) 7.11%
日本マスタートラスト信託銀行(株)
(信託口) 6.93%
朝日生命保険相互会社 3.73%
(2009年3月31日現在)


敷地の一角にあったアデカ本社ビル 図の左上の点線の外側
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19

 東京都環境審議会の専門部会は今も続いているのですが、東京都は突如,お盆明の8月12日に首都大学東京荒川キャンパス講堂でダイオキシン対策の計画案を説明し、その直後に公聴会を開催すると発表しました。

 池田はその情報をホームページでゲットし、急遽、昨日(18日月曜日)の午後7:00−8:30に現地、荒川区東尾久7丁目の敷地内にある首都大学東京荒川キャンパス講堂で開催される住民説明会に、池田・青山で参加することになったわけです。


写真 説明会の様子  参加者はまばら


写真  環境局 課長の説明   壇上で発言したのは2人だけ

 問題はこの間、東京都の審議会で原因究明、対策などを東京都主導で着々と審議してきたのに、突如、唐突に対策計画説明会をお盆明け、しかも最もこの問題に関心が高いお母さんたちが参加できない夕飯時に設定したこと、しかも急に日時を一方的に決め、周知の方法も恣意的なものだったために、参加者がほとんどいなかったことです。

つづく