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昨日(2013年9月19日)、日本弁護士連合会環境公害委員会の廃棄物部会で講演を終えた後、1グラム当たり110万ピコグラムTEQ(日本の基準の1100倍、イタリアの指針の11000倍)という超高濃度なダイオキシンが検出された荒川区東尾久の都所有地に青山貞一、池田こみちのふたりで現地視察を敢行しました。 視察先は、すぐ隣に隅田川が流れる東京都の「東尾久浄化センター」、東京都立尾久の原公園、東尾久運動場、多目的広場、首都大学東京荒川キャンパスなどです。 青山は現地を視察するのはこれがはじめてです。 東京都荒川区東尾久の対象地域 出典:グーグルマップ 現地は全体で2〜3万坪もある広大な都有地で、東京都の下水処理場、超高層の住宅、区営住宅、大きな公園、テニスコートなどを含む運動場、首都大学東京荒川キャンパスなどがすでに立地されていました。 また、敷地の一角には、もともとそれらの土地を所有していたアデカという化学工業の企業の本社がありました。別途調べたら本社は2006年にできたとありました。 敷地の一角にあったアデカ本社ビル 図の左上の点線の外側 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 以下はWikipediaに見るアデカの概要です。
下は都立尾久の原公園の標識の前に立つ筆者。 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 汚染地域の施設配置図(出典:東京都下水道局) その昔、青山、池田は農薬工場が大爆発し、風下に大量のダイオキシン類が飛散したことで世界的に有名な北イタリアのセベソにも現地調査しています。私達が現地調査したときは事故から30年近く経過していましたが、セベソの工場一帯は高いフェンスがはりめぐらされ実質立ち入り禁止となっていました。 以下は現地調査後の詳細報告書(PDF)です。 ◆青山貞一・池田こみち: セベソのダイオキシン大事故から30年: イタリア、EUはセベソから何を学んだか〜現地調査を踏まえて〜 http://eritokyo.jp/independent/eforum-20062007-b-5-aoyama-seveso.pdf イタリアでは、セベソの事故を受け、土壌中のダイオキシン類の 環境指針は、 農地 10ピコグラムTEQ/グラム 住宅地等 100ピコグラムTEQ/グラム 工業用地 250ピコグラムTEQ/グラム と非常に厳しいものとしています。またドイツでも子供の遊び場は、100ピコグラムTEQ/グラムとなっています。 ちなみに日本における土壌中のダイオキシン類の環境基準は、1グラム当たり1000ピコグラムTEQ/グラム以下とイタリア、ドイツなどEU諸国に比べ一桁も高く、非常に甘いものとなっています。 今回、東京都が行った荒川区東尾久の都有地の下水処理場で検出されたダイオキシン類は最高で110万ピコグラムTEQ/グラムと日本の環境基準の1100倍、イタリアの住宅地指針の11000倍と超高濃度でした。 東京都が行った前回調査(平成25年1月)では、公園、住宅地などの表層土壌のダイオキシン類を調査しています。その調査では、子供が遊ぶ公園でも表層で最高1グラム当たり、6200ピコグラム、その後平成25年5月〜6月に行った深度調査では、地下2mの深さで1グラム当たり最高で44万ピコグラムTEQという超高濃度のダイオキシン類が検出されています。 現場では、一応1グラム当たり1000ピコグラムTEQを超える公園地域には低いフェンスがあり立ち入り禁止とされていました。しかし、何で立ち入り禁止とするのかについての理由については、小さな紙に書かれた簡単な説明だけしかありません。しかも全域を調査しましたが、全体でも10枚あるかないかと少ないものでした。 運動場に張り巡らされたフェンス 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 以下はダイオキシン汚染問題を告げる小さな紙の通知です。超高濃度ダイオキシン汚染を市民に知らせる情報は、この通知が広大な用地に10枚程度しかありません。 ダイオキシン汚染を知らせるフェンスにつけられた紙 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 フェンス越しに見た超高層住宅棟 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 超高層住宅棟近くの児童公園 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 超高層住宅等の裏側 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 ちなみに公園で遊んでいる子供に「何でこんなにフェンスが張られているの?」と聞いたところ、その子供は理由を知りませんでした。一方、飼い犬を連れ多くの住民が公園に来ていましたが、そのうちのひとりの女性に聞いたところ、一応ダイオキシン汚染問題について知っていました。 下は超高度のダイオキシン類が検出された東京都下水道局の用地。高いフェンスの向こうは首都大学東京荒川キャンパスです。手前に積み上げられているのが、工事現場で堀り上げられた土壌の仮置き土の山です。そこからは1グラム当たり2000ピコグラムTEQを超えるダイオキシン類が検出さており、それが全面的な調査へとつながるきっかけとなったのです。 超高度のダイオキシン類が検出された東京都下水道局の用地 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 下の写真は、東京都の東尾久浄化センターの正面玄関前に立つ筆者。 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 超高度のダイオキシン類が検出された東京都下水道局の用地 ブルーのシートがかかっていた 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 ところですでに立地されている首都大学東京荒川キャンパスの敷地でも1グラム当たり1000ピコグラムTEQが検出されていました。 昨日(2013年9月18日)、池田が隣の敷地内にある首都大学東京に電話を入れたところ、さんざんたらい回しにされた上、大学キャンパス内は基準値以内なので問題ありませんと答えたそうです。この電話の模様はすべて通話録音しています。 1グラム当たり1000ピコグラムTEQということですが、上述のようにイタリアやドイツでは子供の遊び場の基準が100ピコです。キャンパス内の土壌が基準以下かどうかにかかわらず、すぐ隣の東京都の土地から1グラム当たり1100000ピコグラムを超すダイオキシンが検出されていたとすれば、学生をあずかる大学の社会的責任としてまたリスク管理の上から学生等に事実やその対策を伝えるのが当然でしょう。 首都大学東京荒川キャンパス正門間に立つ筆者 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 首都大学東京の荒川キャンパスマップ(施設配置図) 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 首都大学東京の荒川キャンパス内部 撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-9-19 大学と東尾久浄化センターとの境界にたつ高いフェンス 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 現地調査でわかったのですが、首都大学東京荒川キャンパスでは、保健や医療に係わる学科があります。電話口に出た担当者は、1000ピコグラムで基準以下だから問題ないとくに学生には周知(適切な対応策などのアナウンス)はしていないと回答したようです。 私達環境総合研究所(東京都目黒区)では、過去依頼を受け実施した膨大な量の土壌サンプルのダイオキシン類を分析していますが、TEQ(毒性等量)で1グラム当たり1000ピコグラムという高い値は、まずめったにありません。 仮にTEQで1000ピコグラムという場合でも、ダイオキシン類のTEQ値(これは係数をかけた計算ででる値)で、1000ピコグラムちょっきりとなることはまずありません。たとえば1003など大部分は端数がでるはずです。 以下は青山の推察ですが、首都大学東京荒川キャンパス側は、1000ピコグラムであれば環境基準(1000ピコグラムTEQ以下)を下回り問題ないとすることを考え、分析結果が1001〜1004なら有効数字4桁目を四捨五入、1005〜1009なら有効数字4桁目を切り捨てて1000ピコグラムとした可能性が十分あります。 語義通り解釈すれば、分析値が1001ピコグラムなら、大学当局は、最低限、土壌を入れ替えるなりの措置をとらなければなりません。同時に当該部分周辺への立ち入りを禁止しなければなりません。 まして、イタリア、ドイツであれば、1グラム中100ピコグラムが住宅地あるいは子供があそぶ場所の指針なので、首都大学東京荒川キャンパス内の土壌中のダイオキシン濃度は、各所で1グラム中300〜900ピコグラムなどがあるので、大学キャンパスそのものが立地不適となるはずです。 以下に示すように、日本の土壌汚染対策法では、29項目の有害化学物質を調査することが義務づけられていますが、ここにはダイオキシン類は含まれていません。国の説明では、ダイオキシン類についてはダイオキシン類対策特別措置法を根拠に必要な場合測定することとなっているからです。
しかし、工場跡地、それも化学工業の工場跡地であれば、当然、ダイオキシン類(PCDD,PCDF,Co−PCB)についても分析するのが当然なのに、東京都は調査せず、たまたま敷地内にある下水処理センター関連の工事で測定したところ、超高濃度のダイオキシン類がでたということでしょう。 公園用地も大問題ですが、首都大学東京については、まったく、環境リスク管理も大学の社会的責任もなっていないとしかいいようがありません。
本件については、データの詳細についての情報開示はじめ、さらに調査を進めます。 下の写真は多目的広場。シートがかけられ、無残な姿となっていました。 シートがかけられ、無残な姿となっていた多目的広場。 撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400 2013-9-19 つづく |