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八重山諸島短訪

F白浜港から奥西表の船浮港へ

青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学環境情報学部教授

April 2009 無断転載禁
初出:独立系メディア「今日のコラム」

青山貞一:八重山諸島探訪 
@東京から石垣島へ F白浜港から奥西表の船浮港へ
Aすべてがゆったり竹富島 G船浮に残る悲惨な戦争の爪痕
B世界有数のサンゴ、石垣島の白保 Hイリオモテヤマネコと奥西表の自然
C新石垣空港の工事現場 I奥西表・内離島近くの干潟
D石垣島の自然と景勝地 J再び竹富島へ:シーサーたち
E石垣島から西表島へ K現地視察経費概要

■2009年3月27日 

●上原港から白浜港へ

 上原港を出発した八重山観光フェリーは途中、ホテル・ニラカナイで2人を降ろした後、私一人を白浜港まで送ってくれることになった。ラッキー!


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 途中、道路には下にあるさまざまな警告板が張り出されていた。いずれもイリオモテヤマネコが飛び出すので注意しろといったものだ。

 この種の警告板は沖縄本島のやんばる地域をドライブすると、あちこちにヤンバル・クイナに注意という看板と同じだが、沖縄本島では今までついぞヤンバル・クイナにお目にかかったことはない。
 



 ただ今回石垣島の玉取崎からバンナ森林公園に向かう途中、...クイナといってやはり空を飛べない鳥が道路の際をちょこちょこ歩いていたのを見た。

 歩道部分だったのでまったく問題は無かったが、「やんばる」や「西表」など自然度が高い地域には、国際的に見ても珍しい固有種、しかもレッドデータブックでも絶滅危惧種に近い生物が生息しているから、車で移動する者は十二分に注意しなければならない。

 この3月ポーランドを現地視察した際、南東部でウクライナと国境を接する小さな美しい町、プリジミルを視察した後、ジェシェフへの帰路のことだ。

 ホテルがあるジェシェフへショートカットで帰ろうと、夕暮れの881号線を突っ走っていたら、突如、車の前を親子のシカが素早く横切っていった。幸い車にぶつかることはなかったが、よく見ると、あちこちにシカに注意という看板が立っていた。夕暮れや夜だとなおさら突然の横切りは怖い!

 事実、西表でも道路を横切ろうとしたイリオモテ・ヤマネコが自動車に轢かれた写真があった。確か日本固有種のネコは、イリオモテ・ヤマネコとツシマ・ヤマネコだけ
、国際的にも希少種であることを考えると、海沿いを回る道路とはいえ、運転手は注意の上にも注意を払わないといけない。


●2時間に一便....

 さて白浜港にミニバスが到着したのは午前9時40分。当然、8時35分の高速艇は1時間前に出港している。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 次の高速艇の出港時刻は10時55分ということになる。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 何しろ1時間に一本もない。しかし、この地では、いらいらせず、のんびりのびのびが鉄則だ。1時間15分待つことにした。

 後で高速艇の船長に聞いたら、白浜港から目的地の船浮港までの高速艇による所要時間は何と何と、わずか10分というから、医者ではないが1時間待って10分の診断・治療ということだ(笑い)。

 もっぱら問題は船浮に到着した後のスケジュールだ。

 下の時刻表見あるように、せっかく東京から飛行機2回、バス1回、船2回を乗り継いで船浮に到着しても、石垣島に日帰りで帰ることを考えると、12時50分の定期船で白浜港に帰らなければならない。
 
 となると、船浮に滞在する時間は、最大でも12:50−11:05=1時間45分しかない。

 食事に20分とると、実質的な滞在時間は1時間25分しかなくなる!

 ちなみに次の定期船は午後4時40分となる。その場合には白浜港着は午後4時50分。白浜港で送迎バスか路線バスを待って上原港まで行くのに40分は見ておいた方がよいだろう。となると上原に到着するのは午後5時30分だ。

 上原港から石垣島への帰りは、切符を買ってある八重山観光フェリー高速艇の場合、最終便が午後5時50分だ。

 もし、ちょっとでも遅れたり、天候不順で欠航となると、石垣島に帰れなくなる。翌日、那覇経由で東京に帰ることにも影響が出る。そんなことで仕方なく、船浮発12時50分の船でもどることとした(残念無念だが)。

 そもそも西表、しかも奥西表の最果ての陸の孤島に石垣島から日帰りは、かなり無理があるのだろう。これは助言を暮れたO先生もそう言っていたっけ。

 ただ、夏だと午後3時30分の船浮発、白浜港行きの定期便がある。その意味でもこの時期の西表島は足の便が極度に悪い。

 なにはともあれ、時間があるのノンビリ海や桟橋をながめる。

 すると、私が利用する高速艇の桟橋とは別の桟橋から、船が内離島や船浮方面に出港しようとしているではないか。これはどうも平田観光が企画している「船浮」と「内離島」探検ツアーの船のようだ。


平田観光の「船浮」と「内離島」探検ツアーのチャーターバス
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 
大型バスが到着するとすぐに運転手以外全員がチャーター船に乗り移り、白浜港を出港していった。


平田観光の「船浮」と「内離島」探検ツアーのチャーター船
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 下の写真の説明:白浜港を出た平田観光のチャーター船はすぐとなりにある内離島に接岸し、参加者は上陸して行った。非常に手際がよい!


内離島に接岸し、参加者は上陸
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 内離島では、西表炭坑の跡などを視察するらしい。


内離島の炭坑跡
出典:平田観光のパンフレットより


白浜港と内離島の位置関係
出典:グーグルアース


白浜港と内離島、船浮港の位置関係
出典:グーグルマップ


白浜港と内離島、船浮港の位置関係
出典:グーグルアース

 もうひとつは、春休みに先生に引率された中学生が島でキャンプをするために船をチャーターしていたことが分かった。うらやましい限りだが、まさか「私を乗せ照ってとはいえない(笑い)」。指をくわえて船を見送る。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 白浜港には公衆トイレはあるが、食堂などの飲食店はほとんどない。

 下は誰もいない真っ昼間の白浜港の桟橋。携帯で東京にいる池田さんにメールすると、「何とも寂しい」と返事が来る。確かに、ちょっと寂しい気分になる。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27


●白浜港から船浮港へ

 1時間強待って、やっとのことで高速船に乗り込む。

 直前になってあちこちから人数が増え約10人となった。なかには外国人もいた。船の中で聞いたらイギリスから来た生物・生態学の研究者とのこと。よくもまぁ、最果ての遠いところに来たものだ。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 彼らもアチコチとデジカメで写真を撮っていた。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 高速船は、白浜港を10時55分に出港し、一路、船浮桟橋に向かう。下の写真は白浜港をでて1分も立っていない。白いしぶきを上げ高速艇は進む。何とわずか10分で白浜港から船浮桟橋まで行くという。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 下の写真は出航後5分立った時点で撮影したもの。奥西表は湾が入り組んでいて、その湾に山が落ち込む地形となっている。なかなかすばらしい。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 下の写真に写っている島は、かつて炭坑があり、その後旧日本軍が防空壕などでつかっていた内離島だ。現在は無人島となっている。

 この内離島近くは写真にもあるように干潮時には干潟ができる。

 実は白浜港からすぐ対岸に見えるのが内離島だ。海に落ちる崖と、深い森を湛えた美しい島が内離島である。

 亜熱帯の数々の蝶が舞う。魚が水面で跳ねるなどまさに生命の輝きに満ちた内離島にも、かつて数々の悲惨の歴史があったという。

 現在無人島となっている内離島だが、戦前は石炭が多く埋蔵されていていた。そのため本土から甘い言葉に誘われてきた3000人の炭鉱労働者や朝鮮半島や台湾から強制的に連行されてきた労働者が過酷な労働条件とマラリアの蔓延などにより、多くの尊い命が人里離れたこの島で人知れず無くなっていったそうだ。


内離島近くは干潟の宝庫
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27


衛星から見た内離島
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 下は干潟の一部。完全な干潮にはまだ時間が早い。帰りには多くのすばらしい干潟に出会えた。


内離島近くは干潟の宝庫
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27

 そうこうしているうちに、高速艇は本当に10分で船浮桟橋についた。


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27


撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.27


つづく