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2012年4月6日〜8日、緊急勉強会で沖縄に呼ばれ沖縄大学と南風原町で「がれき広域化」問題の講演をしてきたが、4月7日の午前と4月8日の午前から午後2時までの待機時間に那覇市を中心に環境問題、米軍基地、利権問題などに関連する地域を現地視察した。以下に視察の概要を速報したい。 ご案内いただいたのは、いつものように那覇市在住の川満氏である。この場をお借りして感謝の念を表したい。 (1)那覇新空港予定地 那覇周辺の環境・利権問題地域のなかで、特に重要なものは、沖縄本島に残された巨大な干潟+珊瑚の海を潰し、不要な巨大空港、那覇空港拡張をすることだ。実際には拡張ではなく、もうひとつ3000m級の滑走路をもつ巨大空港をつくるのがこの事業である! 滑走路増設施設計画(沖縄開発庁) 既存空港が航空自衛隊と共用となっているが、この航空自衛隊施設を他に移せば、沖縄県(約人口130万人)の民間航空需要は現在の空港施設で十分まかなえるはずだ。ちなみに首都圏では羽田、成田などで3000万人規模の人口の航空需要をまかなっている。 にもかかわらず、自衛隊との共用部分をそのままに、数1000億円をかけ、残された貴重な自然を壊してまで利権的に新空港をつくろうというのがこの計画である。 既存の那覇空港南端にある航空自衛隊共用部分 撮影:青山貞一 地元で聞けば、国民新党のS議員が辺野古だけでなくあらゆる土建利権に関わっているとのことであり、この議員をどうにかしないと、宮古、石垣などを含め沖縄の自然は極限までとことん壊され、税金が無駄に利権として使われると危惧していた。やっぱりである。S議員が政権内に残ったのは、まさに政権内にいないと利権の種がなくなるということなのだろう。 地元に言わせると、国土交通省のあらかじめ落としどころを決めた代替案などインチキ、出来レースの戦略的環境アセスメント(SEA)がすでに終わり、現在、実施環境アセスの方法論書段階にあるとのことである。しかし、この環境アセスも普天間基地の辺野古沖移設に伴うアセス同様の業者が関わっているとのことだ。 以下は別途書いた第一報の概要。 この那覇空港拡張事業は、本土ではあまり話題になっていないが、泡瀬干潟より遙かに巨大で石垣島のどの珊瑚の海よりも大きな地域を潰し、利権以外の何物も出もない3000m級滑走路を建設するというもので、現在方法論書づくりをしているそうだ。 那覇新空港予定地 撮影:那覇市在住の川満氏 何しろ予定地周辺の海浜は珊瑚と干潟が展開、ラムサール条約地のようだ! 撮影:青山貞一 以下は、YouTube動画で見た対象地域である。すばらしい珊瑚と干潟の海が一目で分かる! 動画撮影:青山貞一 2010年4月8日午後 拡張計画だが、既存空港の近くの珊瑚と干潟がある海域を埋め立てまったく新たに既存の3000m滑走路をもつ空港を建設する計画である。すでにSEA(戦略的環境アセスメント)が終わり、事業環境アセスの方法論書段階にあるとのことだ。現地に行ったが、何しろ広大な珊瑚の海であり、干潟であり石垣島の白保より大きいと感じた。 予定地から見た既存の那覇空港施設への入り口 撮影:青山貞一 特別第一種事業なので当然事業主体は国土交通省(沖縄開発庁)であるが、沖縄県や那覇市も関係しており、県議会、那覇市議会でも以前から問題になっているものの、経済浮揚論が強くなり、たとえば圧倒的に自民党議員が多い那覇市議会では、賛成派が多くなっているとのことだ。 以下は沖縄開発庁のWebである。 http://www.dc.ogb.go.jp/Kyoku/information/nahakuukou/katudou-keikaku.html 巨額の事業となるが、すでに巷では既存空港を手がけた地元ゼネコンや元請けとなる東京のゼネコンの名、さらに環境アセスを手がける業者の名が上がっていた。 ちなみに辺野古の環境アセスは巨額の費用が問題となっているが、当初公表されたのは86億円だが、地元専門家の間では、実際は合計で100億円以上かけていると懇親会の時に話題になっていた。 (2)沖縄科学技術大学院大学 OIST これは那覇市ではなく恩納村だが、その昔、フリージャーナリストの横田一さんがしっかりと取材されたように、尾身議員(元沖縄開発庁長官)が中心となり、沖縄県復興を理由に、不要な国立大学法人として沖縄科学技術大学院大学OISTを新設したもので、これも数100億円という巨額の税金が使われている。 出典:OISTの公式Webより 沖縄県の失業率、年収レベルは全国最悪である。この大学設立の目的は県内大学や研究機関、企業との交流を促進し、新産業創出や地場産業の高度化などで沖縄の経済を活性化することになっているが、この大学でやろうとしていることは、そんなこととは無縁、学長らに米国人を採用(以前、年収が巨額であることが問題になりましたが)地元から完全に浮き上がっている。 新たな米国用施設ができたくらいにしか思われていない。また一学年の院生は20名と、東京にある政策研究大学院大学同様、教育より国際レベル研究に重点が置かれていることから分かるように、到底、地場との連携は難しいというより困難であろう。開講は2012年秋からである。 この沖縄科学技術大学院大学事業の環境アセスは、日本工営である。 (3)那覇港湾施設の移設計画 沖縄県には新たな米軍基地をつくらないといいながら、周知のように民主党は、狂ったように普天間基地の辺野古移転を進めようとしている。 しかし、新たな米軍施設は辺野古基地だけではない。那覇港にある米軍関連物流、軍事機器関連コンテナヤードを別の場所に移す計画がある。 地元で那覇軍港と呼ばれている港湾計画であり事業である。この現場も見てきた。 現状の那覇港湾施設周辺 撮影:青山貞一 フェンス内は既存の那覇港湾施設 撮影:青山貞一 以下は那覇港湾施設についての解説。 那覇港湾施設は、沖縄県那覇市にある在日米軍基地で、アメリカ陸軍が使用する。旧称と通称は那覇軍港である。アーミー・ポートやナハ・ミリタリー・ポートとも呼ばれた。 施設番号はFAC 6064である。国場川の河口南側、明治橋の西側、陸上自衛隊の那覇駐屯地の北側に位置する。2008年(平成20年)3月末時点の面積は55.9ヘクタールである。移設条件付きの全面返還が日米間で合意されており、現在は、全面返還に向けての準備が進められている。 (4)北朝鮮ミサイル迎撃用PAC3 周知のように松下政経塾系民主党政権は、北朝鮮の衛星打ち上げに関連し、一気に自衛隊とPAC3などの軍事機材を沖縄本島(那覇空港)、宮古島、石垣島 に配置し、さらにイージス艦も配置している。 沖縄本島へのPAC3などの陸揚げは、どうも上記の那覇軍港から行ったようである。近くまで行ったが警戒が厳しく詳細は分からなかった。 松下政経塾政権で一気に行われたPAC3の沖縄県配備 なお、石垣島関連のPAC3配備については、Eforum(環境行政改革フォーラム)の正会員でもあり、沖縄大学で桜井国俊先生の研究生としていらしたWさんが石垣に行かれたくさんの写真をとられ青山にご送付いただいたOさんには、出迎え、がれき講演会などでもお世話になっている(深謝)。 いずれにしても、野田、前原など自民党より右翼の現在の民主党政権は、自民党でもしなかったこと、しかも増税、TPP同様、国民が頼んでいないことを勝手にあれよあれよという間にやっている。非常に危険だ! (5)ラムサール条約地、那覇市漫湖周辺の乱開発 実は那覇市長は「不動産屋市長」とよばれるくらい那覇市にある米軍基地跡地をオリックスと大和ハウスなどの都市産業に誘導し、残された自然や景観を壊す高層ビルやマンションを多数たてさせているという。 沖縄にはラムサール条約地があるが、そのひとつ那覇市と豊見城市にまたがるところにある漫湖周辺でも古い葬祭場を再開発し、そこへのアクセス道路をつくる名目で、道路が出来た後、漫湖周辺で大型マンション建設が予定を画策しているという現場に行った。 下の写真は、その用地から漫湖を見たものである。 那覇市と漫湖 撮影:青山貞一 以下は漫湖の概要。 漫湖は、海面とほぼ同じ高さの汽水域である。1960年代からメヒルギ(マングローブ植物)の植樹などを通し、陸地化が進んでいる。 シギ・チドリ等の渡り鳥の中継地となっており、101種の鳥類が生息している。 1977年(昭和52年)11月1日に国指定漫湖鳥獣保護区(集団渡来地)に指定されている(面積174ha、うち特別保護地区58ha)。また、1999年5月にはラムサール条約の登録湿地に登録された。 冬には世界的にも希少な渡り鳥であるクロツラヘラサギが10個体程度休息する他、モモイロサギガイやオキシジミなどの貴重な貝類も生息している。 生活排水の流入などによる水質の悪化、土砂の堆積などが問題となっている。南西湖岸に漫湖水鳥湿地センターがあり、湿地の生物を間近に観察するための回廊が伸びている。 出典:Wikipedia (6)おもろまち米軍施設跡地に30階のマンション これは2009年、地元の医者が中心となっている那覇市おもろまちの市民団体に呼ばれ講演にでかけたときの案件である。 那覇市は、もともと米軍基地が市役所に払い下げるとき、5階建ての市役所を建設する目的で、旧土地所有者からやすく土地を購入しながら、その後、市長等がその米軍基地跡地をオリックスと大和ハウスに払い下げ、何と30階建てのマンションを建設できるように土地利用規制を都市計画審議会で改正させた。 昨年春、鷹取さんと沖縄を視察したとき、すでに、この地にビジネス棟がたてられていたが、今後、超高層マンション棟を2棟建設するとのことである。 以下は2009年8月5日、現地の住民団体に呼ばれおもろまち問題で講演したときのパワーポイントの一部である。 翁市長は、那覇を六本木にすると息巻いているほどの時代錯誤、KYの政治家だが、4期近く市長をしており、市議会は自民党が圧倒的となっている現状では、市民運動も圧殺され、監査請求、住民訴訟などの法的手段も蹴散らされている。 市民運動は今回別途新たな訴訟を提起するとおっしゃっていた! この30階のマンションが出来ると、世界遺産でもある首里城から見た那覇の景観が一変し、ちんけな高層ビルが景観を破壊することになる。 (7)沖縄少年会館取り壊し問題 私が那覇市で定宿としている東横インからそれほど遠くない中心市街地にある由緒ある「沖縄少年会館」が那覇市により取り壊しの憂き目にあっている。 この沖縄少年会館は、戦後まもなく荒廃した環境の中から、沖縄の子ども達を守る目的で、沖縄教職員会、沖縄PTA連合会、沖縄婦人連合会、沖縄県青年団協議会、沖縄校長協会の5団体を母体とする「沖縄子どもを守る会」(初代会長:屋良朝苗)が結成され、沖縄の青少年の健全育成の場として沖縄少年会館を建設した。 竣工まもないころの沖縄少年会館 出典:現地でもらったがんばろう沖縄少年会館パンフより この沖縄少年会館は那覇市久茂地公民館が正式名称で、沖縄県本土復帰以前の混乱期に全国からの寄付金で建設され、建設当初の経緯・理念を含め文化的歴史的価値を有する建築物でもあり、下の新聞記事にもあるように、沖縄復帰のシンボルともなっていた。 ところが、この建築物の老朽化を理由に、那覇市議会は、この少年会館の建築物を大和ハウスのマンション内に移設し、少年会館(久茂地公民館)の建築物の取り壊すことを決議した これは不動産屋の異名をとる那覇市長の民活、復興策がその背景にある。先の米軍施設の返還用地にオリックスと大和ハウスによるおもろまちの巨大な超高層マンション同様、公共施設用地を民間に廉価に払い下げ、そこに高層マンションを次々建築させるのがその中身である。 それにしても、今の沖縄は異常である。米軍基地の移設、米軍基地の跡地利用がどれもこれも「利権の種」となり、結果的に米軍基地は場所を変え存続し、跡地は都市産業の食い扶持となっている。 辺野古しかし、泡瀬干潟しかり、おもろまちしかり、アメリカ村しかり、科学技術大学院しかりである! 当然、これに反対し、建築物の保存しようという市民運動がいくつも起きている。 保存運動を行っている市民と一緒に撮影(筆者は中央) 撮影:那覇市在住の川満氏 (8)那覇市と南風原町の一部組合による焼却施設 那覇市はいうまでもなく沖縄県の首都である。人口は32万弱だが、何とゴミ焼却施設は市内になく、一部事務組合をつくって隣の南風原町という小さな町との境界線上に設置している。 巨大な那覇市・南風原町により一部組合の焼却炉 撮影:青山貞一 南風原町の人口は3万人ちょっとである。しかも、一部事務組合でつくった焼却炉はもともと処分場があった場所であり、大きな墓地まであるところである。 ただ、その中に沖縄県随一の進学校(高等学校)がある。 今回私が沖縄に呼ばれたのは、一義的には沖縄大学でがれき広域化問題の緊急学習会で講演することだったが、その翌日、東京に戻る航空機を待つ時間にこの南風原町の新川地区(ここに焼却場がある)で地区長や住民が集まるので講演して欲しいとのことで、1時間講演し質疑応答後、すぐに那覇空港から東京に向かった。 何とその南風原町長が恩納村長とともに、がれきの受け入れを表明したそうだ。 しかし、上述のような理由で、那覇市の焼却場が南風原町にあり、その中心が新川(あらかわ)地区なので、この新川地区が地区として受け入れに反対すれば、南風原町長は受け入れを撤回せざるをえなくなる。 理由は、焼却場を設置するときに苦渋の選択で最終的に何かあった場合は必ず南風原町の新川地区の地元同意をと!したからのようだ。 もし、この焼却場が操業をストップすれば、那覇32万人のゴミ処理がストップすることになる。 そんなことで、講演後、区長さんはこの新川地区では90%が反対だとおっしゃっており、私の講演と矢ヶ崎先生の講演によりそれがより明確になったものと思われる。
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