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本コラムの分類<沖縄>
本連載は、2010年3月7日(日)、東京都三鷹市三鷹公会堂で開かれた普天間飛行場代替施設にかかわるシンポジウムで、青山貞一(東京都市大学大学院教授)が基調講演を行った際の内容の要旨である。 本連載では、当日、青山貞一が基調講演で話した内容をベースに、シンポジウムの質疑の内容、またジュゴン問題に関連した報告者である東恩納村琢磨氏が報告された内容などを拡充してある。 自己紹介のあと、まず最初に外交、防衛的視点から沖縄問題を考察した! 日本の米国追従、盲従論者の多くは、最終的に沖縄の海兵隊に係わる防衛について、「抑止論」、「抑止論」という....また抑止力に関連し、中国が軍備増強、増強という....。 しかし、マスコミも政治家もほとんど実態を知らずして沖縄の米軍基地、海兵隊の必要性を洗脳されているのではないか? この根源的問題について、以前、政策学校一新塾で行った「国際情勢の中の世界と日本〜潮目の変化を読む」をもとに話しました!(この部分で使用したパワーポイントは23枚) その基本的視座は、以下である。すなわち、中国の脅威と言うが、米国は過去10年で軍事費をドルベースで1.6倍増加させている。中国はその間、軍事費を増やして来ているが、絶対値で見れば、言うに及ばず米国の突出した異常な軍事費は不変である。中国の国力、人口、面積、経済力を考えれば、この程度の増加をことさら声高に叫ぶのは、ためにする議論である。 出典:青山貞一、戦争と環境、公共政策論(東京都市大学) 米国の単独覇権主義、単独行動主義は、イラク戦争、アフガン戦争が泥沼化していることを見てもすでに戦略、戦術的に破綻している。また異常な米国の金融資本主義はサブプライムローンシステムの崩壊、リーマンブラザース倒産による世界的金融危機を見るまでもなく、これまたシステムそのものが崩壊している。 中国脅威論は、ためにする議論であり、北朝鮮問題は、過去10年の経験から分かるように、日本はもとより米国でさえどうにも手に負えないものである。北朝鮮にそれなりに対応が可能なのは中国であることは誰の目にも明らかである。中国を敵視し、ことさら脅威論を喧伝するのではなく、北朝鮮問題を含め中国さらにロシアと積極的な外交を展開することが日本だけでなく、アジアの平和、安定にきわめて重要なものとなるだろう。 逆説すれば、極度な米国への日本の追随が、あらゆる意味で政治的、外交的、軍事的なリスクを自ら高めていると言えるのではないか? 出典:青山貞一、国際情勢の中の世界と日本、政策学校一新塾講演資料 そもそも過去15年間、地球規模で見た場合、紛争、戦争が起きた地域は圧倒的大部分が中東地域、バルカン半島地域である。さらにその大部分は、米国がエネルギー権益から中東諸国への侵略、新殖民地づくりを狙って、仕掛けたものであると言える。さらに米国は依然として世界の武器市場において半分以上の占有率をもっている。 まさに軍事、軍備は米国のマッチポンプ的利権であると言える。EU諸国はその現実、実態を分かってきている。旧東欧諸国も米英にしたがって行ったイラク派兵で、それを痛いほど分かってきたはずだ。分かっていないのは日本だけと言って良い。 出典:青山貞一、国際情勢の中の世界と日本、政策学校一新塾講演資料 米国の海兵隊(United States Marine Corps)は、以下の解説にあるように米国民を守る任務を一義としている。日米安保条約があっても、実質的には日本を守る任務より米国民の安全、権益を守ることを目的としている。しかも、アメリカ海兵隊は、米国本土の防衛が任務に含まれない外征専門部隊である。 簡単に言えば、米国から見て海外諸国、諸地域で米国の国益、権益のために戦争に従事する部隊といえる。したがって、ベトナムであれ、イラクであれ、アフガンであれ、米国が最初に直接実戦的に戦闘行為を行うのは、この海兵隊という言うことになる。しかも、海兵隊は陸海空軍と同じく、海兵隊も出撃自体には議会の承認を必要としない。 すこし考えれば分かることだが、軍事基地が集中する沖縄県は、抑止論の観点から見れば、すなわち仮想敵国から見れば、そこ(沖縄)を軍事的に叩き、殲滅させれば米国の実戦的戦力は壊滅されることになる。 すなわち沖縄が標的となることを知るべきである。 いくら日米安保などといっても、技術的には沖縄に核弾頭ミサイルが撃ち込まれればアメリカ海兵隊の戦力はまたたくまに殲滅されることになる。 その意味では、同様に、中国、ロシアなどを仮想敵国とした抑止論、また核戦争を前提とした抑止論はきわめて時代遅れである。ちなみに社会や経済との関連では、日本という国は、東京圏を中心に大阪圏、名古屋圏など極度に人口、経済が集中している地域に核が数発打ち込まれればひとたまりもないはずである。 いずれにせよ、21世紀はこれらハードな軍事的対立から外交を基軸としたソフトな国際対応に日本は能力を発揮すべきである。日本国憲法はその観点からも諸外国に対して、説得力があると思う。
<防衛力>と<攻撃力> 軍事評論家や防衛省の役人らがよく使う、俗耳に入りやすい<抑止力>に関する次のような論法。「朝鮮半島や台湾海峡で危機が起こったときに すばやく対応するために、一番機動力のある 海兵隊は沖縄にいる必要があるのだ」 しかし、これは有事の際にすばやく対応するという次元の議論であって、抑止力の話ではない。 海兵隊は有事の際に真っ先に戦闘地域に派遣される急襲部隊であり、海兵隊が「抑止力とは何ら関係がないというのは 軍事の常識」である。また、朝鮮半島情勢への対応についても、「もともとその役割は在韓米軍が担うべきもので、沖縄に海兵隊を配置する理由になどならない」 出典:孫崎享氏(元外務省国際情報局長) 以下は主に田端光永氏の抑止力に関する論評である! <抑止力> 抑止力というのは、「ある国が他国に対して軍事行動を起こした場合、必ず相手から、もしくは相手の同盟国から、自国より強い力で反撃される、そして結果は自国が負ける、あるいは自国も手ひどくやられることが確実に予見される、という状態を作っておくこと」 その予見される反撃が早いか遅いかは抑止力と関係ない。早かろうが遅かろうが、いずれは自国が負ける、やられるということがはっきりしていれば、その国は軍事行動を起こすことはないというのが抑止力だ。 海兵隊が沖縄にいなければならない、という議論は地理的条件、有事の現場への距離を問題にしているだけだ。 つまるところ対応が早いか遅いかであって、抑止力とは関係ない。 それに在日米軍は海兵隊だけでなく、沖縄・嘉手納には戦略空軍の基地があり、横須賀、佐世保には第七艦隊がいる。 これらすべてが抑止力を構成しているのであって、そのうちの海兵隊がグアムに移ったからといって、日本が攻撃されても米は反撃できなくなるなどということはありえない。 軍の抑止力は、<核兵器に対する抑止力>と<通常兵器に対する抑止力>に分かれる。だが、中国の軍事的な台頭によって、もはや米国が中国と一戦を構える意思を失っている。在日米軍は核に対する抑止力も通常兵器に対する抑止力も、いずれも提供できていない。 仮に尖閣諸島などをめぐり日中間で紛争が生じてもアメリカ軍は動かないだろう。 ましてや、米本土を核攻撃する能力を持つ相手に対して、他国をまもる目的でアメリカが核を使用することなどあり得ない。だから在日米軍の抑止効果は、もはや存在しないも同然である。 では、なぜアメリカは、抑止効果の無い海兵隊員を沖縄に配置し続け、新たな基地の建設を強硬に求めるのか。 アメリカの海兵隊が沖縄にいることの最大の理由は、年間6000億円にものぼると言われる日本の米軍駐留費支援にある。 いわゆる思いやり予算。日本は海外に駐留するアメリカ海兵隊の99%を国内に抱え、しかも、在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算として負担している。 日本は海外に駐留するアメリカ海兵隊の99%を国内に抱え、しかも、在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算として負担している。 ドイツの30%と比べてもこの数字は圧倒的に高い。つまり、アメリカは世界のどこの国よりも日本に海兵隊を置いた方が経済的に好都合であるという理由から、地域の抑止力などとは無関係に、単に世界中に海兵隊を派遣するためのホームベースとして、海兵隊の基地を日本に持ち続けたいというのが、アメリカの本音である。 地元の反対が非常に強い場合、アメリカは辺野古への基地建設をごり押しはしない。 理由は、アメリカは、反基地感情を刺激し過ぎることで、それが嘉手納など、アメリカ軍の海外戦略の生命線にまで飛び火することを最も恐れているからだ。 嘉手納などに比べればアメリカにとって普天間問題は小さな問題であり、それが少しこじれたくらいで日米関係が損なわれることもないし、問題が他の基地へと波及することは、アメリカは決して望んでいないからだ。 ところで21世紀、日本は、米国一極追随から欧州、アジアへ、極端な「脱亜入米」から「入亜、入欧」が持続可能な国づくりに必要である。私はこの間、EUの実態をドイツ、イタリアなど西欧諸国からポーランド、クロアチア、モンテネグロからバルト三国までつぶさに現場を見て来てきたが、国力、経済力の著しい差異があるにもかかわらず、それなりの国境を越えた外交、防衛、政治、経済、環境などの分野での協調、協力が進んでいることを見ている。そこでは長男が次男の面倒を見、障害がある子供の面倒を見るように、互恵的な相互扶助が進んでいる。 アジアでも日本は時代に合わない米国への一極的な追随から、EU諸国、アジア諸国との積極的な連携をとり、AU(Asian Union)的な地域安保、地域経済圏、非核化をすすめるべきときに来ていると考える。 出典:青山貞一、国際情勢の中の世界と日本、政策学校一新塾講演資料 筆者は過去10年、EU諸国を学会発表、現地調査などで訪問し続け、現在,EU諸国の大部分を訪問するに至っている。 以下はこの2010年2月に訪問したバルト三国及びスカンジナビア二国(デンマーク、フィンランド)及び2009年3月訪問したポーランドにおける写真である。 それぞれ経済金融問題など、G7などの先進諸国が抱える問題をもちつつも、歴史文化を大切にし、福祉、教育、環境問題に力を入れEUのなかで個性ある国づくりをしている。その一因は、外交・防衛への配慮をEU全体で対応していることがあると思える。 Aへ続く |