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三鷹公会堂 辺野古シンポ
青山貞一基調講演要旨


J鍵を握る環境と安全

〜海洋生態系〜

掲載日:2010年3月9日
独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁

本コラムの分類<沖縄>
●特集:普天間代替施設問題を検証する(三鷹公会堂シンポ基調講演) 2010.3
@前提としての外交・防衛論 F不透明な立地選定 - 米国はグアムに決定!
A公共事業としての防衛・基地利権 G鍵を握る環境と安全 -環境アセス
B大メディアによる情報操作と世論誘導 H鍵を握る環境と安全 -オスプレイ
C政治家と利権 - 砂利 I鍵を握る環境と安全 -ジュゴン
D政治家と利権 - 土地 J鍵を握る環境と安全 -海洋生態系
E不透明な立地選定 - 民主党の”公約”? K10億円かけた辺野古アセスの根幹的諸課題

 本連載は、2010年3月7日(日)、東京都三鷹市三鷹公会堂で開かれた普天間飛行場代替施設にかかわるシンポジウムで、青山貞一(東京都市大学大学院教授)が基調講演を行った際の内容の要旨である。



 以下は、三鷹公会堂シンポにおける沖縄県名護市大浦に居住している東恩納琢磨さん(ジュゴン保護基金代表)が話された内容を含めている。


キャンプシュワブ米軍基地、大浦湾を背景に筆者(青山貞一)
 撮影:鷹取敦 Casio Digi Camera
 2009.2

 まず、大浦湾とキャンプシュワブ沖の位置関係を地図と写真で示す。


キャンプ・シュワブと大浦湾地域の概要図

 下はキャンプシュワブ及び大浦湾海域を示している。


辺野古・キャンプ・シュワブ・大浦湾

 日本政府の計画では、以下の写真に示すように、V字型滑走路の一部がキャンプ・シュワブ沖に立地されることになっている。

 しかし、空港建設事業は建設中だけでなく、供用後も海域の珊瑚礁や海洋生物、生態系への環境影響そして著しい騒音の影響が予想される。

 また大浦湾海域には稀少な海洋生物であるジュゴンが確認されているだけでなく、きわめて稀少な海洋生物、生態系が地域に存在することが各種の調査で分かっている。


辺野古・キャンプ・シュワブ・大浦湾


V字滑走路案(青山が図を作成)

 以下は環境影響評価書準備書に示された飛行場施設の位置と形状である。


出典:環境影響評価準備書


◆大浦湾の海洋生物と生態系

 
防衛省の当初案では、キャンプシュワブ沖のV字滑走路は大浦湾内に立地されることになっている。しかし、大浦湾は沖縄本島有数の珊瑚礁をはじめすぐれた海洋生態系の宝庫、メッカである。

 以下は三鷹公会堂で開催されたシンポジウムに沖縄県名護市の大浦湾から参加した東恩納さんが持参された大浦湾(Marine Life of Oura Bay)からの写真である。

 いずれも、大浦湾がすぐれた海洋生態系及び生物の宝庫であることを示している。

 下は大浦湾のユビエダ・ハマサンゴ群落。地域にはソノタサラサハた、ミズタマサンゴ、イシナマコ、コハナガタサンゴ、ハマクマノミ、ヒラシコロサンゴ、オキナワホンヤドカリなどの珊瑚や海洋生物が生息している。


ユビエダ・ハマサンゴ群落
出典:
大浦湾(Marine Life of Oura Bay)すなっくスナフキン

 下の写真は大浦湾のマングローブ群落の写真である。マングローブ林は熱帯夜亜熱帯の海岸や河口の海水と淡水が混ざり合う汽水域に発達する植物群落である。平成7年10月20日に名護市指定文化財(天然記念物)に指定されていることからも大浦湾のマングローブは貴重なものであることが分かるだろう。


大浦湾のマングローブ群落
出典:
大浦湾(Marine Life of Oura Bay)すなっくスナフキン

 下の写真は大浦湾の干潟のミナミコツキガニの群れである。大浦湾の干潟には、コモンガニ、トカゲハゼ、ハクセンシオマネキ、サクラ貝の仲間、ベニツケガニの仲間、ホウシュウノタマと卵カイなどが生息している。


大浦湾の干潟とミナミコツキガニの群れ
出典:大浦湾(Marine Life of Oura Bay)、すなっくスナフキン

 下の写真は大浦湾の海草藻場である。大浦湾を中心とするこの海域一帯には、ボウバヤモ、リュウキュウアマモ、リュウキュウスガモ、ホソエガサなどの絶滅危惧種の海草が広がっている。ジュゴンの食痕も見つかり(環境省レッドリスト:絶滅危惧種A類)その生息地と考えられている。


大浦湾の海草藻場
出典:大浦湾(Marine Life of Oura Bay)すなっくスナフキン

 大浦湾の沖の瀬には、オオシライトゴカイ、タマイワスナギンチャク、ワモンツツボヤ、パラオハマサンゴ、カクレクマノミ、パイナップルウミウシ、アオ珊瑚群落、オオシマハネガイなどが生息している。


大浦湾の沖の瀬
出典:
大浦湾(Marine Life of Oura Bay)、すなっくスナフキン

 このようにV字型滑走路の立地予定地には、日本有数の熱帯及び亜熱帯固有の海洋生態系が存在し、さまざまな希少な生物種が生息している。

 もし、この大浦湾が建設土砂、陸上部からの赤土などで汚染されれば、大浦湾の生態系や生物が絶滅する可能性がきわめて高い。

 今年の秋、名古屋市で国連生物多様性要約締結国会議が開かれる。

 このような年にこともあろうか、日本に残された数少ない熱帯、亜熱帯の生物多様性生物や生態系が破壊されることになれば、日本は世界中の笑いものとなるだろう!

Kに続く

出典:海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会