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岡山市北区の火葬場建設問題
B産廃処分場跡地に火葬場建設 

青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2014年6月16日  
独立系メディア E−wave

無断転載禁

◆特集:住民無視で暴走する岡山市北区の火葬場建設問題
@高齢化社会と火葬場建設問題 D処分場跡地に石綿埋設の事実
A火葬と有害化学物質発生 E異常な処分場跡地買収価格
B最終処分場跡地に火葬場建設 F不透明で正当性なき立地選定
C処分場跡地の環境汚染 G産廃業者の許可取り消し処分

 私たちが火葬場問題に直接的に関与するきっかけとなったのは埼玉県川越市が計画した新斎場である。 以降、現在に至るまで問題解決に向けて調査などで協力している。

 そんな中、2014年1月、岡山在住の知人の弁護士が、環境総合研究所(東京都目黒区)を訪ね、岡山市が北区で計画している新斎場の建設について相談された。

 相談内容を聞いて驚いた。

 何と、民間の産廃業者が岡山県の産廃業の許可と施設の設置の許可を受け稼働させてきた産業廃棄物の安定型最終処分場の満杯となった処分場跡地を岡山市が買い火葬場を建設しようとしているというのである。

 私は永年、廃棄物紛争を専門とする弁護士約100人の任意団体、「ゴミ弁連」の顧問をしてきたこともあり、廃棄物訴訟に多くかかわってきたが、産廃処分場、とりわけ谷間に安定型5品目と言われる廃棄物処分する安定型処分場は、周辺への汚染の漏れがひどいことが多く、大部分住民側が勝訴している代物であるからだ。

 こともあろうか、そんな場所を岡山市が産廃業者から購入し、火葬場を建設するなどあり得ない話である。場所は下図にあるように岡山空港のすぐ南である。が処分場の位置を示している。


図3  産廃最終処分場の位置    出典:グーグルマップ 地形図

 周知のように産廃の廃棄物処分場には、安定型、管理型、遮断型の3種類があり、いずれも県が業者に設置許可をだし建設、維持・管理するとともに廃止についても、国が定めた状態となっていることが確認されるまでは閉鎖(廃止)などできない。

 もともと、表1にある(1)の安定型処分場は遮水シート、水処理施設などの設備が何も無く、谷間に安定型5品目の廃棄物を処分するだけのものだが、圧倒的に多くの場合、安定型処分場には5品目以外の廃棄物が処分されることで、環境汚染、環境破壊が起きている。

表1 日本における廃棄物処分場の種類

 
 国の安定型最終処分場についての<構造・維持管理基準>は

○擁壁等の安定を保持するため必要と認められる場合における埋立地内部の雨水等を排出する設備の設置、搬入された廃棄物を埋め立てる前に搬入車両から降ろして拡げ、安定型産業廃棄物以外の廃棄物の混入がないことを確認する展開検査の義務付け。
○安定型産業廃棄物以外の廃棄物の混入がないことを確認するため、浸透水の水質検査を義務付け。基準を超えた場合には、産業廃棄物の搬入及び埋立処分の中止その他生活環境保全上
必要な措置を講ずることを義務付け
○最終処分場周縁の地下水の水質検査の義務付け。水質が悪化した場合には、その原因の調査その他の生活環境保全上必要な措置を講ずることを義務付け
であり、

 さらに肝心な国の処分場の<廃止基準>は、

○浸透水の水質、ガスの発生、埋立地内部の温度について異状がないこと
○土砂等により開口部が閉鎖されていること

である。

 以下の表2は最終処分場における廃止基準の項目であり、赤枠をした部分が安定型最終処分場の廃止基準である。

 ざっと見ても、悪臭、火災、害虫、地下水質、ガス発生、温度、表面被覆、周辺の生活支障、地すべり、地盤沈下、浸出水などの項目すべてが満足できているか、大いに疑問を感ずる。

表2  最終処分場の廃止基準項目一覧

出典:環境省
 
 いずれにせよ、安定型最終処分場は、稼働中の汚染もさることながら「廃止」後の汚染が激しい。

 ゴミ弁連の弁護士と一緒に係ってきた最終処分場に関わる訴訟では、仮に安定型最終処分場の操業差し止め訴訟に勝ったとしても、その後の原状回復や環境保全対策に非常に時間がかかる。かつ安定型5品目以外の廃棄物が廃棄されている場合、地下水や浸出水の汚染が長い間つづく例が多いのが特徴であった。

 ところで、2014年6月14日、地元住民の依頼で講演する前に、住民らと現地(図3の赤枠内)を一通り視察した。


図3  産廃最終処分場の位置    出典:グーグルマップ 地形図

 下図(図4)は、ほぼ図3の赤枠内を拡大して示したものである。

 新火葬場の予定地は、図4で言うと、安定型最終処分場の西のはずれ、最も空港に寄った印辺りとされている。一方、安定型最終処分場の東はずれに集落がある。下の地図では、最も近い集落として示してある部分だ。道を挟んで北側には公立の幼稚園、小学校もある。


図4 安定型処分場跡地と新火葬場の予定地   出典:グーグルマップ

 図5は図4の安定型最終処分場部分を示したものである。図5に示した処分場跡地の敷地は、比較的フラットな面もあるが、多くは法面(法面)であることが分かる。


図5 廃止された安定型処分場跡地

 下は図5の処分場跡地の斎場建物予定地(★)前にあるゲート。


写真1 処分場跡地の斎場建物予定地(★)前にあるゲート
撮影 青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014-6-14


写真2 安定型最終処分場跡地
撮影 青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014-6-14

 よりによって、岡山市役所はこんな最終処分場の跡地を産廃業者から購入し、新火葬場を建設するという。まさに、空いた口がふさがらない。空前絶後である!!

 まして永年、産廃処分場問題で苦しめられてきた集落の人々は、今度は火葬場からの有害化学物質汚染に苦しめられることになりかねない。

つづく