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岡山市北区の火葬場問題
@高齢化社会と火葬場建設 

青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2014年6月16日  
独立系メディア E−wave

無断転載禁

◆特集:住民無視で暴走する岡山市北区の火葬場建設問題
@高齢化社会と火葬場建設問題 D処分場跡地に石綿埋設の事実
A火葬と有害化学物質発生 E異常な処分場跡地買収価格
B最終処分場跡地に火葬場建設 F不透明で正当性なき立地選定
C処分場跡地の環境汚染 G産廃業者の許可取り消し処分

 日本には市町村の数(1742)より少ないものの約1500か所の火葬場がある。 
 
 出典:日本の火葬場一覧

 今後、ドイツ、イタリア同様、先進国にあって極度な高齢化社会を迎えている日本では、当然のこととして亡くなるひとの数が増える。実際、首都圏では人が亡くなっても 火葬が一週間待ちなどという地域が続出している。

 図1を見れば明らかなように、日本、ドイツ、イタリアの高齢化が著しいがとりわけ太線の日本の高齢化が群を抜いている。図では2050年前の予測値も示しているが、日本は現在だけでなく、将来もダントツであることが分かる。


図1 先進諸国における高齢化の進展    出典:経済白書

 統計的には市町村にひとつ弱ある火葬場だが、当然のこととして従来、何十年と使ってきた火葬場の施設が老朽化している。その結果、各地で火葬場の建設計画がもちあがっている。

 周知のように日本では法律では土葬はじめ他の埋葬を禁じてはいないものの、圧倒的に火葬が一般的であり、墓地同様、火葬場をどこかに立地、建設しなければならないことは理解できる。

◆火葬にかかわる法規

 日本では、墓地、埋葬等に関する法律第3条の規定により、原則として、死体(もしくは妊娠7か月以上の胎児)は、死後(もしくは死産後)24時間以内は火葬してはならないとされている。(但し、感染症法30条の規定により、同法で定められている疾病、すなわち一類から三類までの感染症や新型インフルエンザ等の感染症による死亡の場合はこの限りではない。

 該当感染症については感染症法の項および関連法令条文を参照)。また、火葬を行なう場合には、当該死体に係る死亡届等を受理した市町村長の許可が必要であり(墓地、埋葬等に関する法律第5条)、この許可を受けずに火葬した場合には、墓地、埋葬等に関する法律違反となるほか(「罰則」規定同法第21条)、刑法第190条「死体遺棄・死体損壊罪」に問われる可能性もある。

 なお、墓地、埋葬等に関する法律では土葬など火葬以外の方法を禁じてはいないが、環境衛生面から行政は火葬を奨励しており、特に東京都(島嶼部以外では八王子市、町田市、国立市など10市2町1村を除く)や大阪府などでは、条例で土葬を禁止している。

出典:Wikipedia

 しかし、この火葬場建設はすこぶる課題が多いと言える。

 火葬場建設をめぐる課題は、単にゴミ焼却場やゴミ処分場建設の場合と同様、国民、住民にとって自分の家の近くにつくられては困る。つくってもらいたくないという、いわゆる嫌悪施設・迷惑施設であるという意味からの問題だけではない。

 専門的になるが、日本の火葬場建設固有の問題もある。

 何しろ秘密裏に行われてきたことから国民にあまり知られていないが、火葬場建設で専門的に問題となるのは、火葬に伴い発生する有害化学物質の存在である。さらにそれらの有害化学物質が周辺地域にどう広がるかという問題もある。

 しかも、日本では火葬に伴い発生する有害化学物質、とりわけ猛毒のダイオキシン類、水銀、六価クロムなどが法的規制の対象外となっている。その規制は火葬場を建設、稼働する自治体などにまかされているのである。

 さらに、火葬場の計画、立地に際し環境影響評価、いわゆる環境アセスメント手続がなぜか適用除外とされている。他の大部分の公共事業に適用されている環境アセスメント(環境影響評価)や廃棄物処理法にもとづく生活環境影響調査が、なぜか火葬場建設には義務付けられていないのである。

 これらの手続があれば、不十分な場合もあるが、火葬場事業に関連する計画、設備、技術などの情報が開示される。しかし、手続が存在しないことにより、火葬場の計画、建設、稼働に関連する情報が公開されない。実際、これらの情報は市議会議員にも提供されないことが多い。

 したがって、火葬場建設の予定を知った住民は、逐次、市役所の情報公開条例に基づき、開示手続を使って市役所に情報を請求することになる。しかし、立地位置の選定過程や用地買収経緯、費用、火葬場の炉に関連する情報などは、ほとんど公開されないのである。

 逆説すれば、火葬場の建設に関連する上記の法的規制や手続(適正手続という)が適用除外となっていることをいいことに、市役所や事業者のやりたい放題がまかり通っている現実がある。その結果、立地選定、用地買収、関連調査、計画策定、施設建設にからむ疑義も生まれることになる。また行政と地権者、調査コンサルタント、火葬場建設業者との間での癒着や、利権的な関係が生まれることになる。

 本来、行政の暴走をチェックし、食い止めるべき市議会は、多くの場合機能せず、暴走する市役所などの行政を追認している現実もある。 このように、今の日本では公共事業、とりわけ火葬場建設については、およそ民主義国家とは言えない現実と実態があると言える。
 
つづく