エントランスへはここをクリック    

議員の「海外視察」の実態
青山 貞一 

掲載日:2004.8.1、8.15
未曾有の財政危機 破綻寸前の都道府県財政 県議会の反応は? 
問われる政策提言、制度設計能力 「報酬・年俸」の実態 「政務調査費」の実態
「海外視察」の実態 米国地方議会の議員数と年俸

◆「観光旅行」が常態化する議員の海外視察

 ここに都道府県議会議員による海外視察に係わる実態調査報告がある。

 この実態調査報告書によると、全国議長会主催の海外視察では、議員一人一回当たりの平均経費は105万円となっている。他方、都道府県議会議員による海外視察の場合は、議員一人一回当たりの平均経費は83万円となっている。

 国会議員はもとより日本の津々浦々の地方議員は、視察と称して国内、海外にでかける。しかし、その多くはただ見てきただけのことが多い。納税者から頻繁に監査請求を受けていることに象徴されるように、「観光旅行」と変わらないのが実態ではないか。

 民間はもとより、海外行政研修でも現地調査報告書の提出が義務づけられているのが常識である。しかし、一部を除き、まともな現地調査報告書など、ついぞ見たこともない。

 旅行をしてくれたツーリストがあらかじめつくった報告書を提出している議員もいる。随行職員(=行政職員が出向?)がまとめている場合もある。民間では到底考えられないことだ。行政でもまともな出張報告がないなんてことはありえない。

日刊ゲンダイ 2004.8.3
■ 総額5億円の「海外視察」今夏も衆参100人が出発■

▼ 国会では対立、お楽しみは呉越同舟 ▼

 臨時国会が始まったが、永田町のセンセイ方の頭の中は“夏休み”だ。物見遊山と批判の強い「海外視察」も予定通りで余念がない。

「臨時国会の会期をめぐって与野党がスッタモンダしていた最中から、議員は“だいたいこの時期には出発できるだろう”と見込んで、航空チケットの予約を入れていました。会期が8日間で決着した途端に、具体的な日取りや訪問国までスイスイ決めてしまったのです」(政界関係者) 難問山積なのに夏休みに海外ツアーに出るOLと変わらない。今度の海外視察(別表)は衆参合わせてザッと100人。経費は衆院約3億2000万円、参院約2億円の総額5億2000万円。一人当たり約500万円の“豪遊”だ。費用はすべて血税から賄われる。

 視察目的も取って付けたようなものばかり。「日本への農産物の輸出量が多い」(衆院・農林水産委)、「欧州の安全保障についての見識を深める」(同・安全保障委)、「制定直後のEU憲法の調査」(同・憲法調査会)……。現地大使館の案内で関係者の話を聞いたり、施設の見学が大半だ。

朝日新聞 (2004年08月14日 03:31)
■衆参175人外遊ラッシュ バカンスで相手不在でも


 国会議員の夏の海外視察ラッシュがお盆明けから始まる。「公費による物見遊山」との批判がつきまとうが、すでに出発した分を含め、衆院は19班約100人、参院は15班約75人を送り出す。04年度の海外視察予算は衆院約3億3000万円、参院約2億円。計5億3000万円の大半が夏に費やされる。

 衆院議員の視察は、総選挙を秋に控えていた昨年より増え、行き先は欧州に集中している。ただ、バカンスのさなかということもあり、訪問国は決まっても面会相手が決まらないケースも。

 郵政事業などの調査のため独仏を訪れる総務委員会の一行は、フランスの郵政公社ラ・ポストの視察を希望したが、職員が夏休み中で所管省庁の訪問にとどまりそうだ。

 国土交通委員会は7月にイタリアで高速道路事業を視察したが、「道路公団民営化法が成立してから行っても……」(同委関係者)と身内からも意義を疑問視する声も漏れている。

 一方、参院は独自性をアピールしようと、政府の途上国援助(ODA)調査を目玉に据えた。(1)中国、フィリピン(2)タイ、インドネシア(3)メキシコ、ブラジルの3班に分かれて事業の効果などを調べ、参院が重視する決算審査に反映させたい考えだ。

 また、自民、民主、公明3党の国対委員長らは22日から10日間、イタリア、トルコを訪れる。欧州における憲法改正の実情調査が目的だが、与野党の国対委員長の「呉越同舟」は00年以来4年ぶり。民主党の川端達夫国対委員長は「与野党なれ合い」との批判に「恒例の視察。批判されることではない」と、意に介さない。秋以降の政局をどうみるか、それぞれのハラを探り合う狙いもありそうだ。


長野県議会議員の場合

 長野県議会の場合はどうか? 
 
 【参考】長野県議会議員平成8年度から平成12年度の海外視察実施状況

 長野県議会議員らの海外視察に関連する県民(弁護士)からの監査請求について以下に一例を示す。

 本件では、議員1名と職員1名のイタリア、フランス約10日間の視察に約386万円が支出されている。

 監査請求を受けた本件の場合、海外視察先、日数、人員を勘案すると、ひとり当たり193万円はきわめて高額である。さらに長野県議会の場合、議員一人職員一人で574万円と言う例もある。この海外出張では、出張先がアメリカ、アルゼンチン、ブラジル、出張期間が2週間弱となっている。
 
 ちなみに、現在、大学(国公立大学、私立大学)では、教員(教授、助教授、講師等)の一回当たりの海外出張は文部科学省の規定により、最大15万円までしか航空運賃の補助がでない。これは往復の航空運賃に対してである

 以下の監査請求の詳細は、末尾にあるURLからアクセスすることが可能。

 【参考】長野県議会議員の海外「視察」、公費使用額ランキング
       (1997年〜2001年6月) 

 なお、長野県議会で最近開かれた会合では、海外視察制度につき平成17年度まで凍結を継続する模様である。

長野県職員に関する措置請求の監査について

第1 監査の請求

 1 請求人
   (住所部分を略) 倉科浩彰ほか32名(別記のとおり)
   請求人代理人
   (住所部分を略) 弁護士 松村文夫
   (住所部分を略) 弁護士 内村 修

 2 請求書の提出
  請求書の提出は、平成13年12月20日である。

 3 請求の内容
  提出された長野県職員措置請求書による請求の要旨は、次のとおりである(原文のまま)。

請求の要旨
 長野県議会議長吉田博美、及び同議会事務局職員(随行職員)小林弘一が、平成12年12 月22日か31日までの間、イタリア及びフランスで行った「欧州地方行政視察」は、航空運賃 約166万円、現地宿泊料約37万円、現地交通費約73万円、ガイド・通訳費77万円その他を 「視察旅費及びガイド料」として、合計379万4845円を、知事、支出手続担当者らをして、各 々公金から支出させた。

 この「視察」は、旅行代理店が企画したものであり、計画当初から遺跡・名所・美術館・サッ カー観戦・文化商業施設等の見学をする観光目的のものである。しかも「視察日程表」と「欧 州地方行政視察報告書」を比較検討すると、・サッカーの試合日程の変更に合わせてスタ ジアムを「視察」していること、・「ローマ市庁舎訪問」、「フィレンツェ観光局視察」、「地場産 業振興策視察(皮革製品工場視察)」、「ミラノ市庁舎視察(イタリア環境政策とリサイクル対 策)」、「ミラノ市内ゴミ分別回収システム視察」は、行っていないこと、・福祉施設視察以外 は、事前のアポイントメントさえもとっていないこと、などが明らかとなり、その実態は「視察」に 名を借りた観光旅行であることは一目瞭然である。このような旅行に対して公金を支出するこ とは、明らかに違法不当である。


監査の実施

 知事は、違法不当な公金を費消した上記2名に対して、その返還を求める権利と義務を 有するものである。よって、監査委員は、知事に対して、次のとおり勧告するよう求める。

                   記   
 知事は、上記旅行をした者に対し、旅行代金全額(旅費及びガイド料を含む)を長野県に 返還するよう請求すること。


4 請求の受理
  本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条所定 の要件を具備しているものと認め、平成13年12月20日にこれを受理した。


5 請求人等の証拠の提出及び陳述
  請求人及び請求人代理人に対して、法第242条第5項の規定により、平成14年1月15 日に証拠の提出及び陳述の機会を設けた。


第2 監査の実施

 1 監査対象事項
   平成12年12月22日から同月31日までの間に実施された欧州地方行政視察(以下「本 件海外視察」という。)のために支出された旅費等について監査対象とした。

 
 2 監査対象機関
   議会事務局について監査を実施した。

 
 3 関係人調査
   法第199条第8項の規定により、関係人として、吉田博美前議長(以下「前議長」という。) から意見を聴取し、また、本件海外視察に係る旅行業務を扱った旅行代理店に対して文書照 会による調査を行った。


第3 監査の結果
  本件海外視察に係る旅費等の支出を違法不当とする請求については、その一部について 理由があるものと認める。
  したがって、法第242条第3項の規定により、知事に対し、別項のとおり勧告する。
  以下、事実関係の確認及び判断について述べる。


(別紙2)前議長から聴取した意見(要旨)

1 視察地の決定について

 ・ イタリアは先進国中最悪の財政状況であったが懸命に努力し、今は日本が最悪となって いる。日本経済、特に活力に満ちた長野県づくりのために、今回の視察地は三つのコンセプ トを目的として決定した。つまり、イタリアは観光対策と商業対策の二つのコンセプト、フラン スは福祉問題・少子高齢化を一つのコンセプトとして視察の目的とした。ほかにイタリアでは スポーツ振興、青少年健全育成、ゴミ収集も視察することとした。

 ・ 長野オリンピックでもボランティア活動に参加したが、私の理念は現場主義であるので、駐 車場での外国人対応などを行っていた。今回の視察は歴代議長の慣行として行ったが、決 められた形式、挨拶、説明を受けるのではなく、実際に現場に入って行き、自分でいろんな 人にモニタリングをして、肌で感じたものを大事にして県政に役立てようと考えた。

2 現地における視察と成果

 ・ 長野県体育協会総務委員長の立場でもあったので、長野県のサッカー振興のため、ロー マのサッカー場ではセリエAの試合並びに駐車場、競技場の外観、サポーターの応援、セキ ュリティ対策などを中心に視察した。30分程度と時間が少なかったが、この雰囲気を大事に し、競技力向上とともにワールドカップ開催を契機として是非とも長野県にプロサッカーチー ムを作りたいものだと思った。

 ・ ヴァチカンでは寺院と美術館が観光対策として必ずセットされており、善光寺も信濃美術 館や東山魁夷館とセットにすると良いのではないかと思った。また、ローマでは観光バスを一 定の場所に駐車させ、観光客はほとんど徒歩で移動しており、日本の観光地は参考にすべ きではないかと思った。また、バリアフリー対策も行き届いている印象を持ったほか、一層の 国際化に伴って増加が必至と思われる置き引き、スリ対策について現場で調査した。

 ・ 城下町であるフィレンツェでは、環境対策、交通渋滞対策のためのパークアンドライド方 式を松本市に当てはめられないか、などの感想をもった。ゴミの分別収集も進んでいた。ま た、イタリア人家族の方と懇談したところ、イタリアはファミリー意識が強く、今でも大家族が多 いようであり、日本の核家族化の現状や青少年健全育成などを考える上で勉強になった。

 ・ ローマ、フィレンツェ、ミラノでかなり多くの外国人観光客に対し、イタリアに来た理由や日 本への旅行について尋ねたところ、日本は遠い、旅費も高い、場所さえわからないなどであ った。今後、外国人観光客の誘致が課題となるが、ヨーロッパからの観光客の誘致を期待す るより、近くて安く来られる韓国、中国、台湾を中心とした観光対策を構築すべきであり、今 後長野県の空港、駅、ホテル、美術館等の観光地ではハングル文字や漢字をあらゆるところ に使用すべきだと思った。

 ・ ブランド商品と長野をどう結びつけるかということを考え、ミラノの専門店の前で若い日本 人女性にもリサーチをした。買物は平均20万円程であり、日本ではコンビニ、海外ではブラ ンドという買物指向が伺えた。ブランド品を安く売るアウトレット店は軽井沢で成功している が、長野や松本を視野に入れて誘致し、高速交通網とリンクさせ、善光寺-松本城-アウト

出典:http://www.giin-fushigihakken.net/fushigi/others/kansa.html

 行政、議会を問わずこの種の公金の不正支出問題の監視に果たす市民団体「全国市民オンブズマン連絡会議」の役割は非常に大きい。

 全国市民オンブズマン連絡会議は、毎年、「全国(都道府県・政令都市)情報公開度ランキング」の今年度分の結果がまとめ公表している。この情報公開度では、毎年違うチェックポイントで調査を行なっている。

 以下は、「議会の海外視察」について全国市民オンブズマン連絡会議が問題とした2002年3月の報告に関連した「K嬢の長野県政ウォッチング日記」の一節である。

K嬢の長野県政ウォッチング日記
2002/03/21 (木) 「情報公開の産物」より

 今年度のチェックポイントのひとつに、「議会の海外視察に関する情報」が含まれている。この調査のために「全国市民オンブズマン連絡会議」の構成団体のひとつ「県民オンブズマン会議」が情報公開請求を行なったことがきっかけとなり、長野県議会における数々の不可解な海外視察の実態が徐々に明らかになってきた。

 ごく最近にも、以下のような視察を住民監査請求の対象にしている。視察の内容が殆ど観光、というのに加えて、この視察には幾つもの問題点があると思われる。

・自費で参加した議員もいる中、渡航に議員の家族も加わり、その分まで公費が支出されているケースも散見されること

・渡航費用が議会事務局ではなく、林務部の「予備費」から捻出されていること(県側は、年度末だったので…と釈明しているようだが)

・海外視察制度のうちの「各種団体推薦」による渡航だが、推薦した団体の役員に複数の県議が着任していて、この視察にも参加している。つまり、自分で自分を推薦し、海外渡航費用をせしめた…と思われなくもないこと

などと、これまでのケース以上に問題が多いように思われる。まずは県監査委員の判断を待ちたいものである。

http://www.giin-fushigihakken.net/fushigi/others/sakura/sakura-mokuji.html
出典: 2002/03/21 (木) 情報公開の産物


◆「チェック」だけならオンブズマンの方が格段上

 地方議員の多くは、自分たち議員の主たる機能を知事、市長はじめ行政のチェックにあると思っているようだ。これは全国どこでも同じ。 しかし、単なるチェックなら全国市民オンブズマンやNPO/NGOの方がずっとましである。

 そもそも彼らは無報酬、自前で知事や市長などの行政幹部や行政職員のチェックをしている。たとえば、全国市民オンブズマンは年に一度、500頁を超える報告書を公開している。他方、県議会議員の場合はどうだろう。彼らは1300〜1500万円もの年収を得ている。

 同様に、行政のチェックなら、いわゆる監査請求、住民訴訟が有効である。地方自治法にある住民訴訟制度(第1号訴訟〜第4号訴訟)を活用した首長や行政幹部の監視はそれなりに効果を発揮している。オンブズマンは弁護士、行政書士などの専門家が多く、それらの監査請求、住民訴訟までを手がけることが多い。しかもボランティアで。

 原告適格性や処分性の問題で非常に評判の悪い行政訴訟だが、それでも6%程度の勝訴率がある。もっぱら、この住民訴訟制度は、行政だけでなく議員活動の監視にも効果を発揮している。

 たとえば実質は公費を使った懇親会に過ぎない議員による野球大会は、全国各地の弁護士等オンブズマンの住民訴訟を受けた。オンブズマン側が全面的に勝訴。今では私費でしかできなくなっている。もちろん、ここでも住民訴訟に要する費用は納税者なり弁護士の自弁だ。納税者側が勝訴した場合でも、必ずしもかかった経費全部が被告側からとれることはない。

 全国市民オンブズマンの行政及び議会に対する監視機能が高い大きな理由は、オンブズマンの多くが弁護士であり、監査請求、住民訴訟などの司法審査、すなわち訴訟を提起できることにある。行政、議会を第三者として監視するために司法を活用しているわけだ。

 以下は、全国市民オンブズマンによる全国都道府県議会の情報公開度ランキング調査の結果である。

 田中県政となって以降、議会に対しても厳しい県民、市民オンブズマンの目が注がれるようになった。その結果として長野県議会は一九九八年の前回二十五位から三位に浮上したと報じている。

 議会の情報公開度が上昇するきっかけとなった、長野県議会のスキャンダルについては、別途詳しく報告したい。

 【参考】 第8回全国情報公開度ランキング
      
(都道府県・政令指定都市)


全国市民オンブズマンによる「政務調査費」等
の公開度の最新調査結果について


長野県会 全国3位!? 情報公開度 オンブズマン調査
信濃毎日新聞 2003年8月28日

 自治体の不正支出問題などに取り組んでいる全国市民オンブズマン連絡会議は二十七日、全国四十七都道府県議会の情報公開度について、独自基準に基づき採点したランキングを発表した。それによると、長野県議会は一九九八年の前回二十五位から三位に浮上した。

 連絡会議は、議員海外視察に関する文書や政務調査費の収支報告書、常任委員会会議録などの文書を分析した。

 長野県議会は、使途が不透明と指摘されてきた政務調査費(本年度当初予算で二億三百万円余)について、今年五月交付分から、領収書を添付し収支報告するよう義務付け、情報公開の対象とした。また「観光旅行だ」などと問題化した海外視察は二〇〇五年三月まで凍結しており、ランクが上がったとみられる。

 ただ、政務調査費の収支報告は年度ごとのため、実際に公開対象となるのは来年度。海外視察も凍結期間後の扱いについては決まっていない。

 ランキング一位は、前回最下位の愛媛。前回は全文書が非開示だったが、今回、海外視察について詳細な報告書を公開した点が評価された。二位は鹿児島(前回九位)。一方、最下位



次へ