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自然力を生かし
幸せが実感できる
持続可能なまちづくり
D国、地方の借金を増やす
土木系公共事業

青山貞一 
掲載月日:2013年9月3日
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁

目 次  
@ 1世紀後を見据える    E 国を滅ぼす巨大事業
A 自然との共生    F 発想を変えよう
B 「循環型」まちづくり    G 必要な社会変革者
C 「幸福」まちづくり    H 青山からの政策提言
D 「脱」土建公共事業   

 次に、土木公共事業では「幸福」は到底得られないことがあります。



 OECDの1996年調査結果を紹介。日本がいかに土建国家であるかを可視化! これには参加者がびっくりされていました。

 データは古いのですが、日本がいかに土建国家であるかが一目瞭然です。



 下のグラフは単位面積当たりで見た土木系公共事業費の国際比較です。日本の40倍の面積、約3倍の人口を持つ米国と比べても日本の異常さが分かります。



 大きな問題は、土建系公共事業費が先進諸国で突出して多いことだけでなく、それが永年継続してきたことです。



 もちろん、国により予算の組み方が異なるので、単純な比較は難しいのですが、下図を見ると英国、米国、ドイツなどで10%前後の土建系公共事業費が、日本の場合には、この当時、35%から40%にも達していたことが分かります。ただし、他国と比較できるように日本の場合は、一般会計だけでなく特別会計の当該年度分の費用も含まれているはずです。

 現在、日本の土建系公共事業費は上記よりかなり減っています。しかし、今の自民党政権は、国土強靱化法案に見られるように、過去を彷彿とさせるような土建関連公共事業費を一般会計、特別会計に計上しつつあります。さらに3.11以降、被災地の復旧、復興を理由に19兆円など、巨額の補正予算を組んでいますが、それらの多くが日本各地の土建系公共事業に流用されているのは、ご承知の通りです。

 ところで日本にはバブル期に約50万の土建関連会社、600万人の土建関連雇用がありました。バブルがはじけてから関連雇用は減りましたが、こんなおかしな国は他にはありません。

 本来資本主義、市場経済国家であるはずの日本ですが、世界で社会主義が一番成功した国は日本はであると揶揄されるように、こと土建系公共事業はなぜか他国に比べ突出して大きいのです。当然この原資は税金であり建設国債、赤字国債などの借金です。

 こんなことをしていて国民、町民の幸福度は上がるわけはありません!



 ところで、ここ10年、ダム建設で全国的に有名となったダムに八ッ場ダムがあります。

 私は、研究所の北軽井沢別荘が八ッ場ダムの工事現場の近くにあることもあり、ここ8年間、30数回も現場に足を運びました。

 八ッ場ダムの工事現場は下の図にあるように群馬県北西部、長野原町にあります。長野県には、右下の図にあるように多数のダム、数え切れないほどの砂防ダムがあります。なかでも利根川水系の上流部に計画、実行されている八ッ場ダムは巨大です。



 日本の長期にわたる巨大土木系公共事業は、小さく産んで大きく育てる、すなわち予算は当初は小さいのですが、次第に大きくなって行くのが通例です。

 八ッ場ダムも通例に漏れず次第に大きくなり、下の表にあるように4600億円となっていますが、実際現場では信じられないほどの道路、橋梁、トンネル、軌道などの付け替え工事が行われており、そのための予算は水資源特別会計ではなく、道路特別会計となっているなど、総額は間違いなく4600億円をはるかに超えているはずです。



 下は八ッ場ダムの計画図を立体写真に落としたものです。一番下(南)にあるダム本体は2013年9月時点ではまだ出来ていません。

 確かにダム本体はできていませんが、地質的に脆弱な渓谷の自然を破壊し尽くし、道路、橋梁、トンネル、河川改修、砂防ダムなどが、これでもかこれでもかとこの間工事が進められています。

 まるで土建工事のデパートの観を呈しています!


八ッ場ダム事業の計画対象地域の全体図

 以下は付け替え道路、新設道路の工事現場です。




青山貞一:急ピッチで進む八ッ場ダム関連工事


撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


一般県道の湖面1号橋梁工事現場を動画撮影する青山貞一
撮影:鷹取敦、CASIO EX-H20G 2013.4.28

一般県道の湖面1号橋梁の工事現場の遠景。
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28


一般県道の湖面1号橋梁工事現場を動画で撮影する青山貞一
撮影:鷹取敦、CASIO EX-H20G 2013.4.28

 一方、下の図は八ッ場ダム広報センターにあった八ッ場ダムの模型に見るダム本体の完成予定図です。ただし、模型ではダムに水が入っていません。


八ッ場ダムの模型に見るダム本体
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28

 本体工事部は、堤頂長が336m、本体築堤高が131mもある巨大構造物となります。


撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28

 本体工事の位置については8年ほど前、渓谷をトレッキングした際、本体工事位置を見渡せる見晴台の頂上から写真を撮っており、それに国土交通省の本体工事の設計図を重ねたグラフィックスをパワーポイント化しています。


見晴台から見た本体工事予定位置に設計図を重ねたパワーポイント
出典:青山貞一が東京都市大学の公共政策論用に作成

 上の吾妻渓谷をグーグルマップの地形図で見ると下のように、渓谷で700m以上ある標高が一気に500m台に落ち込んでいます。八ッ場ダムの本体工事の予定箇所は、下の地形図の少し左(西側)にあります。


作成:青山貞一

 下のグラフは、東京都の過去から現在の長期水需要予測です。ハリネズミのような図の付け根が各年度に策定された長期計画における需要量、その右肩上にある○や△が将来予測値です。

 見て分かるように、各年度の予測値は実際の水需要(図中の太い実戦)をはるかに上回る荒唐無稽なものであるかが分かります。

 本体工事以外、ほぼすべて完了している工事現場がある長野原町では、すばらしい自然や環境が破壊され、地域社会が壊され、人間の社会的関係もズタズタとなっています。不要な公共事業でこんなことがおきていいはずがありません。


 東京都の過去の水需要予測と実際の水需要


つづく