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<論考>九十九死に一生

頸椎骨折手術Informed Consent全記録

G関連する費用

青山貞一
Teiichi Aoyama

掲載月日:2010年12月3日
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


 Informed Consent の定義にもあるように、入院、検査、治療、手術などの費用やその費用対便益、費用対効果は患者及びその家族にとってきわめて重要な要因となる。

 あらかじめ十分な説明がなく、高額な治療、手術が行われたり、ある医療目的を達成するに際しては、代替的な医療、方法がある。それらの比較検討あるいは優先順位を検討する際にも費用がどうなるかは患者やその家族にとって大切になるだろう。

 いくら生死に関わる事項であるからといって、すべてを主治医に任せてはならない。

 実際、今の医療の現場では、必ず主任となる医師が患者にあらかじめ代替的医療、優先順位について説明するときに、それぞれの費用について説明しているはずであるが、知人、友人からは大部分が医師にまかせっきりで、Informed Consentをしっかりしている例はあまりない。

 今回の医療行為は、大別して
 11月10日 旗の台脳神経外科での初動検査 と
 11月11日-11月30日 慈恵医科大学付属病院での外来検査、入院、治療、手術の2つに分けられる。

 費用には保険診療(医療)、非保険医療、高額医療がある。大部分の手術を含め検査、治療、投薬、手術は保険対象診療(医療)となっている。

 医療費の仕組みについて
 高額医療費計算について

 11月10日の旗の台脳神経外科では、CT断層撮影1回、MRI断層撮影1回の検査が行われ、それにもとづき専門医の診断、所見が出された。初診料、検査はいずれも保険対象で支払総額(自己負担額)は約9,000円であった。

 11月11日以降の慈恵医科大付属病院で中心的な医療行為となる手術及び輸血は総額で保険対象で総額347,700円、麻酔は2,700円が自己負担額となっている。これらは高額医療行為なので還付の対象となるが、その手続きは今後となる。

 次に入院関連費用があり、これが全体として大きな額となる。入院料等が40,149円、入院料等(包括)が187,638円となっているが、これらは手術、輸血、麻酔以外の日常的な検査(血圧、血糖値、体温、血中酸素飽和度、血液、尿、心電図など)、投薬・点滴(気管支拡張、ブドウ糖、ステロイド剤、抗生剤)などが含まれているものと推察できる。

 入院時の食事代は、12,480円となっている。日数と朝食、昼食、夕食の回数で割ると一食あたり平均250円程度の自己負担となっていることが分かる。

 また11月11日から12日までの救急病棟での6人部屋への1日入院費用は保険対象で上記に含まれるが、11月12日午後〜11月30日午前までの18日間の入院は、個室に入っていた。これは保険適用外のいわゆる差額ベッドであり、18日×@2万6千円=合計468,000円となっている。


差額ベッドの個室   1泊当たり2万6千円也

 その他としては、初診料、医学管理費、診断書作成費、個室での電話代などがある。ギブス(カラー)は慈恵医科大学病院ではなく、直接業者への支払いとなった。2万6千円であったが、これは保険対象なので、申請により後日7割分が還付されることになっている。

 総額では個室の差額ベッド代を含め114万円であった。今後、高額医療還付やギブスの保険対象分の還付が期待できる。また私の場合、生保特約に入っているので、差額ベッドについて1日最大1万円が支払われる可能性がある。

 すべてが保険適用外とすると、総額で300万円程度となるので、それなりの医療行為であったことが分かる。

 実際には3割負担の保険診療と高額医療費還付があるので、自己負担分はかなり少なくなる。

 ところで、大学病院から発行された入院診療費領収書には費用細目がほとんどなく、手術費、麻酔費、入院費、差額ベッド代など大ぐくりである。たとえば、検査、治療、投薬の回数などはまったく分からず、差額ベッド以外の入院費用についても不明である。

 一方、医師が患者に対応して行う各種の説明やInformed Consentに関わる費用がまったく計上されていない。これはあらかじめ聞いていたことだが、医師はそれなりの時間を費やす行為であり、重要な行為でもあるので、日本の現代医療における大きな課題であると考えられる。

 もちろん、その都度、たとえば専門医師の人件費から逆算し、人日あるいは人時間で経費を計上することも考えられるだろう。しかし、現状ではそれらは大ぐくりとなっている手術料、入院費、差額ベッド費などのなかに何らかの形で含められているのか、それともまったくゼロなのかは不明である。常識的に考えると差額ベッド費が以上に高額なので、推定ではあるが、病院医療経営は、この差額ベッド費が重要な鍵を握っていると思える。

 このように、入院診療費領収書ベースで費用細目を分析、評価することはきわめて困難であることが分かる。まして現状で手術の方法、医療の方法ごとに、主治医がInformed Consent段階で、この方法を採った場合はいくら、他方、この方法だといくらと提示することは不可能に近い。

 とはいえ、私の場合、初日の外来検査初日の段階で、専門医師は、大別し手術をする場合、しない場合についてかなり詳細な説明を受け、入院一週間後の手術前日におけるInformed Consentでは、さらに手術をする場合でも、当初案、第二案、第三案と優先順位についての説明を受けた。

 しかし、第一案の手術と第二案、第三案の手術が費用面から見てどう異なるかについての説明はなかった。また手術次第では大量の輸血が必要となることなどの説明を受けたが、これについても費用との関連はなかった。

 費用についてはおおむね以上だが、今後、高額医療の還付、保険対象分の還付、差額ベッド費還付などの手続を順次行っていくので、最終的にどうなるかについても報告できればと思っている。

 一方、仮に手術などが保険対象、高額医療対象であっても、入院日数が2ヶ月、3ヶ月、それも個室での入院となると、単純に差額ベッドの80万円、160万円と自己負担額が鰻登りに増えることになる。欧米はじめ世界各国を旅行してきた私としては、そもそもなぜこの程度の個室で、1日当たり単純に2.6万円〜3万円もかかるのか理解しにくいのは事実だ。

 見舞いにこられたひとからは、欧米、さらに東南アジア諸国では、入院日数を少なくする医療を目指しており、ご自身の東南アジアでの体験でも盲腸炎手術では数日、相当大規模な手術でも術後は1週間以内が相場となっているという話しを聞かされた。

 同氏によれば、費用面から見た日本の医療の最大の課題は、ここにあるとさえ述べていた。私の経験でも理解できる!

つづく