① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 図6は先に紹介したカリフォルニア州沿岸計画のサンディエゴ地域ブロック図である。 沿岸管理計画ではサンディエゴの沿岸域を、①(原発や海兵隊基地があるペンデルトン)から⑫(メキシコ国境のインペリアルビーチ・ティファナ川渓谷)までを12の地区に分けている。今回の現地視察では、それらのほぼ全域を現地踏査したが、以下ではそのうち主な地域について現地で撮影した写真を元に報告している。 ![]() 図6 カリフォルニア州南部の「サンディエゴ沿岸地域」 本章の対象となるPoint Loma and Federal Landsは上図の8 出典:カリフォルニア沿岸計画 ![]() 図16 カリフォルニア沿岸管理計画の 第8地域<Point Loma and Federal Lands> 出典:カリフォルニア沿岸計画 図8は、図10の凡例である。上から農耕地、森林資源、開発地/市街地、汽水域/沿岸に近い河川、沿岸道路を示す。凡例では、さらに下の2つの大きな凡例で沿岸域の気候ゾーン、流域ゾーン、沿岸域そのもの、資源管理ゾーンを示している。 ![]() 図8 カリフォルニア沿岸計画における管理対象地図の凡例 出典:カリフォルニア沿岸計画(California Coastal Plan) ■サンディエゴ 第8地域(Point Loma and Federal Lands) 沿岸地域管理計画、サンディエゴの第8地域はPoint Loma and Federal LandsTである。 図20は、グーグルアースによりPoint Loma and Federal Landsを南からをみたもの。 ![]() 図20 グーグルアースによりPoint Loma and Federal Landsを南からみたもの。 Point Loma and Federal Landsは図中、下方の半島。 最下端はメキシコとの国境線に近い。 図21はPoint Loma and Federal Landsを北北西からみたものである。手前の半島(岬)の先端がPoint Lomaである。図18でサンディエゴ湾の中に島に見えるのが米海軍第3艦隊基地となっているCororadoである。Point Lomaから海軍基地が一望できる。また基地の対岸がサンディエゴ港、写真中左側にはサンディエゴ空港がある。 ![]() 図21 グーグルアースで3次元展開した Point Loma and Federal Lands 図22は真南からPoint Loma and Federal Landsを見たもの。右に島のように見えるのがCoronade海軍基地である。 ![]() 図22 グーグルアースで3次元展開した Point Loma and Federal Lands Point Loma はもともと米海軍はじめ連邦政府の海岸線を含む図19に示す土地、約700エーカーが海軍使用地として不要となったので、公園・リクレーションを管理する公共機関(国立公園サービス局)に移管され、市民が誰でも秀逸な眺望が楽しめ憩える公園としたものである。入園料は一人当たり約5ドル。 このPoint Lomaには以下の写真にあるカブリロ国立記念碑(Cabrillo National Monument)がある。現在記念碑となっているJuan Rodriguez Cabrillo は、1542年6月にメキシコを出発し、西欧人が最初に現在の米国の西海岸を探検し発見、その後の開発を導いたとされている。三ヶ月後、カブリオは図18に示す現在のサンディエゴ湾に到着したという。カブリオはサン・サルバドールという名の帆船で現在の図19の半島の突端の東側で現在記念碑がある近くの地に停泊したとされている。カブリオはこの探検の最中死亡するが、彼の帆船の乗組員は北部のオレゴンまで到達する。その後、帆船は冬の北風でメキシコまで押し返されたと。そしてカブリオはその偉業により、1913年、カブリロ国立記念碑がたてられている。 ひとことで言えば、カブリオはカリフォルニアはじめ現在の米国西海岸に住んでいた原住民、インディアンから欧州人が「探検」の名の下に土地を収奪した最初の人物ということになるのだろう。1542年といえば、すでにスペインがメキシコを侵略し、支配した後であるので、メキシコを侵略、支配した欧州人系の探検家がはじめて今の米国西海岸を発見したということになるのかも知れない。カブリオはいわば西インド諸島を1492年に発見したコロンブスのカリフォルニア版とも言える。 ※Juan Rodriguez Cabrilloの詳細 ![]() 写真34 Point lomaにある国立ガブリオ記念碑 (Cabrillo National Monument) 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 逆光モード望遠で撮影 2007.11.23 そのPoint Lomaは、現在、サンディエゴ市街を一望できる岬公園として、サンディエゴ市民や観光客のリクレーションの場となっている。下の写真は、Point Lomaからみたサンディエゴと米海軍第3艦隊の基地のコロナド(Coronado)である。 ![]() 写真35 Point lomaの国立ガブリオ記念碑近くからサンディエゴ市街を臨む 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 逆光モード望遠で撮影 2007.11.23 半島の突端にある岬、Point Lomaは上述のように現在は、米海軍からリクレーション用地として海岸線を含む地域一帯が開放され歴史自然公園となっている。市民は歴史自然公園にある2マイルのトレールで、世界一の眺望が歩きながら堪能できる。眺望以外にもバードウォッチング、フィッシング、ハイキング、自然探索、野生動植物観察などが体験できる、まさに環境学習の場でもある。 カブリロ国立記念碑がたつ地点からは、東にサンディエゴ湾、西に太平洋、さらに南にメキシコとの国境がパノラマ状に一望でいる。この公園からの眺望は世界一と言われている。 Point Lomaを含むサンディエゴの地はもともと砂漠であった。写真36はそれを彷彿とさせる。Point Lomaにはほとんど植生らしい植生は存在していないように見えるが、多様なサボテンが群生している。 ※Point Lomaの植生・自然 ![]() 写真36 Point lomaからメキシコ国境側を臨む。手前に野生のサボテンが 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 2007.11.23 以下の写真37、38、39、40は半島から太平洋側を見下ろしたもの。すばらしい自然海浜、海岸線が続いている。実はこの場所に、今でも大砲が置かれている。その大砲は日本軍が真珠湾攻撃でハワイを奇襲した際、米国本土の西海岸まで来ることを想定し、設置したものである。 直下の写真の建物は、トレールの途中にあるトイレである。 ![]() 写真37 Point lomaから太平洋側を臨む 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 逆光モード望遠で撮影 2007.11.23 トレールの一角からカリフォルニア固有の地形と地質が見られる。トレールには何のフェンスもなく、ひとつ足を踏み外すと100m近い断崖絶壁から太平洋岸の海岸線まで落下することになる。 ![]() 写真38 Point lomaから太平洋側を臨む 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 2007.11.23 トレールから直下の自然海浜の波打ち際が見える。太平洋岸の潮だまりには、さまざまな海洋生物が生息している。またこのPoint Loma沖には鯨が遊泳しており、冬場にはサンディエゴの港から観光用の鯨ウォッチングの船が毎日就航している。 ※潮だまりの海洋生物 ※鯨ウォッチング ![]() 写真39 Point lomaから太平洋側を臨む 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 逆光モード望遠で撮影 2007.11.23 この日は絶好の好天で、太平洋側の海はエメラルドグリーンとなっていた。写真では、岩から先が100m以上の崖(Clif)となっている。 ![]() 写真40 Point lomaから太平洋側を臨む 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 逆光モード望遠で撮影 2007.11.23 Point Loma岬の突端の高台に灯台がある。もともと1951年に帆船が就航している時代、灯油を使ったランプの灯台が建てられたが、カリフォルニアが合衆国に組み入れられた後、米国政府の沿岸調査によりPoint Lomaでもっとも高い現在の位置に沖を就航する船舶のための灯台が設置された。海水面からの高さは422フィートである。 ※Point Loma灯台の歴史 ![]() 写真41 Point Lomaにある現在の灯台 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 2007.11.23 ![]() 写真42 Point Lomaにある現在の灯台 撮影:青山貞一 デジカメ Nikon CoolPix S10 2007.11.23 ![]() 写真43 Point Lomaにて。筆者 撮影:天田芳穂氏 2007.11.23 以下はConorado側から見たPoint Loma。崖の高さは100m以上ある。 ![]() 写真44 Conorado側から見たPoint Loma 関連サイト ここでは、カリフォルニア沿岸計画の内容を筆者の現地視察及び資料調査から評価してみたい。 ⑧Point Loma and Federal Lands を以下のリストとの関連で沿岸域の土地利用・資源管理、環境配慮の観点から評価すると、次のことが指摘できる。
Point Loma and Federal Landsの沿岸地域は入り組んだ湾と岬など複雑な地形にとんでいる。また特異な地質と植生をもっている。土地利用はもともと連邦政府、とくに海軍の用地であったが、大規模な用地がリクレーションなど自然公園用地として移管され、市民や観光客に世界一の眺望など、憩いの場を提供している。確かにこれほどの絶景は世界広しと言えPoint Lomaにしかないと思える。 しかもPoint Loma岬一帯の海岸線はすべて自然海浜となっており、海洋生物はじめ生態系の保全に配慮されている。Point Lomaから100m以上下にある海岸線や潮だまりに市民が下りることができる。市民はPoint Lomaの眺望とともに、自然海浜で海洋生物などの環境学習を体験できる。 <評価の視点・項目>
つづく ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ |