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初秋の

「信濃の鎌倉」を行く

(5)常楽寺

青山貞一・池田こみち

掲載日:2014年9月19日
独立系メディア E-wave Tokyo
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初秋の「信州の鎌倉」を行く
(1)はじめに (4)別所温泉 (7)中禅寺薬師堂 (10)塩田城跡
(2)信濃国分寺 (5)常楽寺 (8)龍光禅院
(3)北向観音 (6)安楽寺 (9)前山寺 日本史年表

 別所温泉の日帰り湯、「あいそめの湯」に入浴し終えたのが9月16日の午後4時少し前でした。

 本来なら、ここで拠点の北軽井沢に帰るのですが、今回は、ぜひとも別所温泉地区から塩田・前山地区に点在する「信州の鎌倉」の寺社仏閣をひとつひとつ訪問しようということになりました。

 ただ、大部分の寺社仏閣にある資料館や特別展示などの時間は午後4時までである。しかし、一番訪問したかった安楽寺は幸いにも午後5時までに入れば国宝の八角三重の塔が見られます。

 そんなこともあり、午後4時から私達の「信州の鎌倉」巡礼がはじまりました。

 具体的には別所温泉地区では、安楽寺、常楽寺(以上、別所温泉地区)、前山寺、中禅寺、龍光院、塩田城(以上前山町地区)を訪れることにしました。幸いにも、どの寺も駐車場があったので、これら名所旧跡の全部を訪れることができました。

 日帰り湯、「あいそめの湯」に入浴後、最初に訪れたのは、北向観音を所有、管理している常楽寺です。

 その昔は、別所温泉地区にあった長楽寺、安楽寺、常楽寺を指し「三楽寺」といいました。現在、長楽寺は焼失し、北向観音堂の参道入口に碑を遺すのみとなっています。

 別所温泉の常楽寺の位置は、下の地図にあるように、別所温泉駅、北向観音からも歩いて行ける距離です。駐車場があるので、車でも行けます。


常楽寺の位     出典:グーグルマップ

 下は、常楽寺の駐車場からみた周辺の風景です。常楽寺に限らず、「信濃の鎌倉」の寺社仏閣はいずれも、山を背景にしており、山の麓に位置しています。


常楽寺の駐車場からみた周辺の風景
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


駐車場から常楽寺本堂に登る石畳
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


常楽寺本堂下にて
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400  2014年9月16日

 下は常楽寺のすばらしい萩(はぎ)。


常楽寺のすばらしい萩(はぎ)
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


常楽寺のすばらしい萩(はぎ)
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400  2014年9月16日


常楽寺の概要

 常楽寺は北向観音の本坊であり、ご本尊は『妙観察智弥陀如来(みょうかんざっちみだにょらい)』です。

 常楽寺は北向観音堂が建立された天長二年(825年)、三楽寺(※)の一つとして建立されました。

 その後、正応五年(1292年)四月、信乃国(信濃国)塩田別所常楽寺で書写されたと記述のある「十不二門文心解)」が金沢文庫に遺されており、また、本堂裏の北向観音の霊像が出現した場所には、弘長二年(1262年)の刻銘のある石造多宝塔が保存されていて、鎌倉時代に天台教学の拠点として大いに栄えた常楽寺の歴史を証する貴重な文化財となっています。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

常楽寺の歴史

 安楽寺はその禅宗としては、鎌倉の建長寺などと並んで日本では最も古い臨済禅宗寺院の一つです。天正十六年(1588)ころ、高山順京が曹洞宗に改めました。

 「建長(鎌倉の建長寺)と塩田(安楽寺)とは各々一刹により、或は百余衆或は五十衆、皆これ聚頭して仏法を学び、禅を学び、道を学ばんことを要す云々」これは大覚禅師語録(建長寺開山蘭渓道隆の遺書)の一節です。

 これにより安楽寺は鎌倉時代中期すでに相当の規模をもった禅寺であり、信州学海の中心道場であったことがうかがわれます。

 鎌倉北条氏の外護によって栄え、多くの学僧を育てていたこの寺も北条氏滅亡(1333年)後は、寺運も傾いて正確な記録も残っていませんが、国宝、重要文化財等数多くの鎌倉時代の文化遺産を残し、信州最古の禅寺のおもかげを残しています。

 ちなみに本家の鎌倉にも同じ名前の常楽寺があります。

 常楽寺の境内には、本堂、御船の松、重要文化財 石造多宝塔、七色もみじなどがあります。 なお北向観音の本坊である常楽寺には以下の文化財があります。

 ・常楽寺本堂(上田市指定有形文化財)
 ・常楽寺石造多宝塔(国の重要文化財) - 弘長2年(1262年)の銘あり。
 ・常楽寺石造多層塔(上田市指定有形文化財)


◆常楽寺本堂

 まず、駐車状から階段を上がり最初に目に飛び込んでくるのは茅葺(かやぶき)の本堂です。本堂の屋根が茅葺であることに驚かされますが、「信濃の鎌倉」にある多くの寺社仏閣の本堂の屋根のほとんどは、茅葺となっていました。

 本堂は平成15年に修復工事を行った際、建立当時の建築様式に改めています。堂内には当時そのままの色彩を残す格天井が美しく、また、ご本尊は阿弥陀仏には珍しい宝冠を頂いています。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


常楽寺の本堂
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日

◆『御船の松』

 次に『御船の松(みふねのまつ)』です。『御船の松』は樹齢350年と言われています。少し離れて眺めますと、宝船の形にみえてきます。この宝船で阿弥陀様が極楽浄土へとお連れくださるようです…。


常楽寺の『御船の松(みふねのまつ)』
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


常楽寺の『御船の松(みふねのまつ)』.後ろは本堂
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


◆『重要文化財 石造多宝塔』

 『石造多宝塔(せきぞうたほうとう)』は、北向観世音様が出現した所で、高さ2メートル85センチの安山岩で出来ており、国の重要文化財に指定されています。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


◆『七色もみじ』

 モミジとカエデが挿し木されています。毎年、秋には色鮮やかに変化し、種類によって紅葉する時期が少し異なるため、比較的長い期間楽しめると思います。

 季節柄、今回は七色もみじの写真は撮影できませんでした。10月〜11月にはすばらしい七色もみじが見られるものと思われます。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8  2014年9月16日


つづく