エントランスへはここをクリック   

日航機事故から30年

川上村墜落稜線現地調査

捜索・救援可能性

青山貞一 Teiichi Aoyama *1,*2
池田こみち Komichi Ikeda *2
鷹取敦 Atsushi Takatori *2
*1 東京都市大学名誉教授
*2
環境総合研究所(東京都目黒区)

August 24, 2015
独立系メディア
E-wave Tokyo
無断転載禁
1.走行経路 2.写真撮影解析 3.GIS解析 4.3次元解析 5.捜索・救助
 
 以上の現地調査と解析から、日航機の墜落現場は、下の地図の
にある地点、すなわち長野県川上村からであれば、比較的容易に高天原山と三国山の間の尾根であることが判明したことが推察できます。


墜落現場を含む周辺地域の標高と墜落現場の位置
出典:鷹取敦、青山貞一 環境総合研究所


出典:鷹取敦、青山貞一 環境総合研究所
出典:中嶋初女さん(川上村居住、67歳)が書かれた墜落後の高原天山の尾根に立ち上がった煙と火の
    NHKスペシャル日航ジャンボ機事故:空白の16時間〜"墜落の夜"30年目の真実

 日航機は1985年8月12日の18:56分(当日はまだ十分目視ができた)に高天原山と三国山の間の尾根に墜落したにもかかわらず、現実には長野県北相木村、長野県南木村、そして群馬県上野村の山や尾根が捜索の対象となり、いわゆる御巣鷹の尾根(=高天原山と尾根で三国山の尾根の近く)であることが判明するまでにはNHKスペシャルによれば16時間も要したこととなります。

 もちろん、横田の米軍C130H輸送機や座間のUH−1ヘリ、さらに自衛隊のV107などのヘリは上空から火の手や煙があがっている地点を確認していますが、当時はGPSが存在しない時代、TACAN(タカン)と呼ばれる測位機では、具体的な山、尾根、沢などの位置とは数kmの誤差で分からなかったことにになります。

 さて、本調査では、では長野県川上村側から1985年8月12日の18:56分に高天原山と三国山の間の尾根に墜落したことが目視できたとして、では墜落地点まで車や徒歩で救助に駆けつけるのに、どのくらいの時間を要したのかについて推計してみました。

(1)川上村役場→三国峠まで

 まず、川上村役場から三国峠までの車での所要時間について計測してみました。事故は8月12日なので、問題なく三国峠は通行が可能です。さらに18:56から1時間は標高も高く,見晴らしも良いので目視が可能です。

◆三国峠(みくにとうげ)

 埼玉県秩父市中津川と長野県南佐久郡川上村大字梓山を結ぶ峠。埼玉県側の秩父市道大滝幹線17号線(旧中津川林道)と長野県側の川上村道192号梓山線(旧梓山林道)の接続点にあり、三国山から三宝山に続く尾根を超える。標高1740メートル。長野県と埼玉県を直接結ぶ唯一の車道である。また、信濃川水系の川(日本海側河川)と荒川水系の川(太平洋側河川)を分ける中央分水嶺の峠。すぐ北にある三国山(標高1818メートル)が、信濃国(長野県、信州)・上野国(群馬県、上州)・武蔵国(埼玉県、武州)三国の境点。

周囲には沢や崖が多い、長野県側の道路は舗装されているが埼玉県側の道路は舗装されていない、また両県側とも外灯が配備されていない等の道路事情から通行には細心の注意が必要である。なお、秩父市道大滝幹線17号線(旧中津川林道)の三国峠側の一部は通年夜間(17:00 - 翌朝8:00)通行止め、また12月1日から翌年4月30日は終日通行止めとなっているので、この間は埼玉県側からの来訪が事実上不可能なっている。
野生のシカが多く生息しており散策中に目にする機会も多い。

出典:Wikipedia

◆天原山(たかまがはらやま

 群馬県と長野県の県境にある標高1,978.6mの山である。別名、蟻ヶ峰・ショナミの頭。秩父山地北部の群馬県と長野県の県境に位置し、群馬県側では南部の多野郡上野村大字楢原、長野県側では中東部の南佐久郡川上村大字梓山と南相木村の各一部である。山頂には「蟻ケ峠」という名称の二等三角点が設置されている。

 当山の群馬県側の尾根には1985年8月12日に発生した日本航空123便墜落事故の墜落現場(北緯36度0分5.41961秒東経138度41分37.68596秒[1]、標高1,565m付近)がある。多くの報道では「御巣鷹山に墜落」と伝えられていたが、正確にはこの「高天原山に属する尾根」である。しかしその後、墜落地点である高天原山の尾根は当時の上野村村長であった黒沢丈夫により「御巣鷹の尾根」と命名されている。


長野県川上村から見た高天原山  出典:グーグルアース

◆天原(たかあまはら、たかあまのはら、たかのあまはら、たかあまはら、たかまのはら、たかまがはら)

 『古事記』に含まれる日本神話および祝詞において、天津神が住んでいるとされた場所のことで、有名な岩戸の段も高天原が舞台である。原文は漢文であるため、どの訓が正しいかはある程度推測にとどまる。ただし、『古事記』冒頭には「訓高下天云阿麻下效此」とあり、天は「アマ」と読むように指定がある。通常は、「たかまがはら」という格助詞「が」を用いた読み方が一般的であるが、この読み方が広まったのは歴史的には新しいとされている。

 『古事記』などでは、地上の人間が住む世界である葦原中国や、地中にあるとされる根の国・黄泉に対し、天上界にあった、と記述された。古くから神話に書かれていることを現実だと見なして解釈しようとする人たちがおり、大和、九州、北陸、富士山他(後述)、実在の場所であったとの説も多数となえられた。

出典:Wikipedia

 下はグーグルマップを使って川上村役場から三国峠までの来るまでの所要時間を計測したものです。私達が現地で使った県道68号線で梓山行き、その後、川上村道192号梓山線で三国峠までは1時間15分で行くことが可能です。

 なお、梓山地区の標高は約1300m、一方、三国峠の標高は標高1740mです。三国峠の標高は墜落現場より200m近く高いので墜落現場は、三国峠から十分に見えたはずです。


川上村役場→三国峠までの距離と時間、ルート
出典:グーグルマップ ルート・時間探索

 下はグーグルストリートビューによる三国峠から高天原山の眺望です。正面の山が高天原山です。また右に登ると三国山となります。その間の反対側の尾根に日航機事故現場があります。


三国峠から高天原山の眺望
出典:グーグルマップ ストリートビュー


三国峠の標高(1740m)
出典:グーグルマップ ストリートビュー

 下の写真は埼玉県側から車で上ってきた三国峠から見た高天原山のピークです。


三国峠から高天原山の眺望
出典:グーグルマップ グーグルストリートビュー

(2)三国峠→村道で高天原山南斜面まで

 三国峠から現場の高天原山の尾根近くまでは下の地図にあるように、川上村道192号梓山線が続いています。所要時間は車で25分程度、ちなみに徒歩で44分程度です。


三国峠から現場の高天原山川上村側斜面の村道最高地点まで 車で25分
出典:グーグルマップ ルート・時間探索


三国峠から現場の高天原山川上村側斜面の村道最高地点まで 歩いて44分
出典:グーグルマップ ルート・時間探索

(3)代替ルート(ショートカットルート)
   川上村役場→高天原山南斜面の村道最高地点まで

 ところで、さらに調べて見ると、上記の地点まで三国峠を経由しないで川上村道192号梓山線により登れることが分かりました。何と、
川上村役場から50分です。上記のルートの半分の時間で行けることが分かりました。


川上村役場から高天原山南斜面の村道最高点までのショートカット 車で50分
出典:グーグルマップ ルート・時間探索

 下の写真は、高天原山の川上村斜面の村道の最高度点の写真です。左が高天原山側、右(道路手前方向)が川上村役場方面です。


高天原山の川上村斜面の村道の最高度点の写真
出典:グーグルマップ

(4)村道で高天原山南斜面から現場まで

  さらに高天原山の川上村側(推定1800m)から墜落現場は下の地図にあるように高天原山まで登り、その後、尾根伝いに下るだけで到達することが分かりました。
 
 下の写真の位置から墜落現場までは登り、降り直線で約2.9kmです。尾根つたいに下るのは良いとして峠まで登るに1.5倍の距離を見ておく必要があるでしょう。


川上村村道の最高地点から墜落現場までのルート(黄い太い点線)
出典:グーグルマップ


川上村村道の最高地点から墜落現場までのルート(黄い太い点線)の距離測定
出典:グーグルアース
 

川上村村道の最高地点から墜落現場までのルート(黄い太い点線)の断面表示
出典:グーグルアース

 以下は実際に昇魂ノ魂から高天原山頂上まで登った方がおり、その方の所要時間はほぼ1時間50分でした。
   http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-639024.html


出典:黒土地理院地図

 なお、以下は自由に東西南北移動が可能かつズームアップ、ズームインが可能な
ヤフー地図です。地図は三国山から高天原山があります。地図には標高と等高線がついています。また右下にはスケールがあります。



 以下の2枚のグーグルアースの衛星写真は、いずれも墜落現場と高天原山の位置関係を分かりやすく示したものです。一枚目の写真では、高天原山、墜落現場、現在の御巣鷹の尾根駐車場の位置関係がよくわかります。また、二枚目の写真では、長野県川上村の側から高天原山の山頂と墜落現場との関係をみたものです。

 いずれも高天原山に登れば墜落現場まで比較的容易に行けることを示しています。


墜落現場と高天原山  グーグルアースの衛星写真 2010年5月13日


墜落現場と高天原山  グーグルアースの衛星写真  最新2013年12月30日

 なお、以下は自由に東西南北移動が可能かつズームアップ、ズームインが可能な
ヤフー地図です。地図はほぼ真ん中に「昇魂之碑」が位置し、左下に高天原山があります。地図には標高と等高線がついています。また右下にはスケールがあります。




◆結論

 以上、解析してきたように、日航機墜落地点は、間違いなく長野県川上村の梓山地区からみれば、高天原山と三国山の稜線の間の群馬県側の尾根にあることが明らかです。さらに梓山地区から三国峠まで車で上れば、さらにその位置は明確なったと思えます。

 仮に夕闇から夜になっても、間違いなく日航機事故による火の手や煙が立ちこめているのを十分目視できるので、高天原山と三国山の稜線の間の群馬県側の尾根に墜落したことは十分確認できます。

 一方、墜落現場への自衛隊、警察、猟友会、消防団などの救助については、自衛隊ヘリなどの位置確認が迷走し、結果的に墜落から16時間を要したことからすると、川上村側から墜落位置が容易に確認でき、川上村役場から高天原山南斜面川上村側の林道まで車で50分、その後の登山、尾根つたいに下る時間を含め最大2〜3時間として、墜落後3〜4時間で現場に到着可能と推察できます。

 もちろん、川上村側の場合も上野村側からの場合同様、林道の最後部から尾根まで徒歩で行くのは高密度の樹木などがあり容易ではないでしょう。

 以上の分析から、大切なことは、川上村の第一通報者の証言を大切にして、現場の特定作業を行えば、より早く現場に到達できたことは間違いありません。今回の教訓は石に刻んでおく必要があります。



国土地理院デジタル標高データによる対象地域の3次元表示
出典:鷹取敦、青山貞一 環境総合研究所
中嶋初女さん(川上村居住、67歳)が書かれた墜落後の高原天山の尾根に立ち上がった煙と火
出典:NHKスペシャル日航ジャンボ機事故:空白の16時間〜"墜落の夜"30年目の真実