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UR跡地巨大マンション
完売後「建築確認」取消
C問題の所在

青山貞一
Teiichi Aoyama池田こみち Komichi Ikeda
掲載月日:2016年2月5日
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁

                

◆問題の所在

 本件は、さまざまな問題を内包しており、大都市における今後のまちづくりに対して多くのものを提起しています。

 以下は想定される課題のうち、建築確認に関連するものです。

 (1)建築確認取り消しとなった箇所、課題

 (2)建築確認審査機関による確認審査内容の差異

 (3)建築基準法、関連法令を解釈する際の裁量

 (4)建築確認審査と住民団体の意向の強さ

 (5)規制緩和による建築確認の民営化

 なお、以下が建築確認の取り消しを求める過程で特に問題となった点です。

 @建築確認後に施行された文京区の「絶対高さ制限を定める高度地区」
  (平成26年3月16日施行)による規制(22m以下)絶対高さ規制(22m以下)
  に最初から「既存不適格」であったこと。

 AHANARE(はなれ)は居室ではないのに居室のようにしつらえていて名目上
   はドライエリアとしていること。
   http://mansioninstitute.com/wp-content/uploads/2015/12/plan_S_Ih.jpg

 B避難経路の問題(斜度がキツすぎるとか、手すりがないとか)
   最終的に出された東京都建築審査会の裁決では、次のように書かれています。

  「前面道路の傾斜を利用して、地下2階、地下1階、1階、2階をいずれも
   「避難階」と判断していた点について、1階平面図に表現されている駐車場
   及び1階住居部分は「避難階」に該当しないと判断し、その結果、安全設備に
  不備がある(建築基準法に違反している)と判断したものである。」


  以下は上記について、断面図で解説するフジテレビFNNニュースの一部です。


出典:フジテレビFNNニュース


出典:フジテレビFNNニュース

  上記のように、「避難路」のことが問題となったのですが、1階平面図に表現されている
  住居というのがHANARE(ハナレ)を指すのかも知れませんが、その辺は明確には
  わかりません。


◆規制緩和による建築確認の民営化

 ここでは、とりあえず想定される上記の5つの課題のうち、建築確認に関連するものの(5)、すなわち「建築確認」審査業務についての規制緩和について述べてみたいと思います。

 これは従来、建築主事がいる自治体が行っていた建築確認の確認業務を民間でもできるように規制緩和したことにあるように思えるからです。

 下はその経緯と概要です。

◆指定確認検査機関

 指定確認検査機関とは、建築基準法に基づき、建築確認や検査を行う機関として国土交通大臣や都道府県知事から指定された民間の機関である。それまで地方公共団体の建築主事だけが行っていた建築確認の民間開放を目的に改正された建築基準法が平成11年5月1日に施行されたことにより制度化された。

 指定確認検査機関の指定にあたっては、建築確認を取り扱うことが出来る建築物の範囲や業務の対象地域が定められるが、指定業務範囲内では建築主事と同等の権限を持っている。

 建築確認の民間開放は、建築確認の迅速化や違反建築物への行政対応の充実を目的としている。

 建築確認番号は、建築主事の場合は単純に数字で年度毎に受理される毎に第何号と交付されているが、民間の検査機関は独自の確認番号を交付している(例:固有の記号(機関の略称など)、西暦、固有の申請番号、区分(確:確認、変:計画変更、完:検査済)など)。

 民間検査の手数料については、その地域を管轄する建築主事とは異なり、別に出張費も発生する(大抵は最寄の事業所からの距離に依存した金額になる)。

 平成27年6月1日より改正建築基準法が施行され、これまで建築主事の元で行ってきた工事中の仮使用の手続きについては、指定確認検査機関でも行えるようになった[1]。

注釈
[1]指定確認検査機関等による工事中建築物の仮使用認定手続き要領 - 大阪府内建築行政連絡協議会HP

出典:Wikipedia
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 本件では、民間審査機関が出した「確認」に対し東京都建築審査会が住民団体から出た審査請求に対応し審査し、最終的に建築確認の取り消しを出したことになります。

 取り消しの原因は、上記のようにいくつかありますが、とりわけ傾斜がある坂道の途中に8階の大型マンションを建築する際の前面坂道への避難階の設置にかかわる問題であり、民間が出した「確認」は建築基準法の要件を安全上満たしていないというものです。
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 昔のように建築主事がいる東京都や基礎自治体が建築確認業務を一括して行っていた時代には原理的にありえないことが規制緩和による民営化により結果的に起きたことになります。民間企業が確認業務をする場合、どうしても依頼主の意向にそいやすくなる構図がないとはいえないからです。

 つまり規制緩和による民営化のマイナスの側面と言えます。この規制緩和は東京などマンション建築需要が著しく多い自治体にあって、行政不服審査法が施行されたあと、比較的短い期間で審査をしなければならないことから民営化の道が開かれたものです。事実、四国など地方の場合、民間審査機関は存在していません。


つづく