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嘉田知事、栗東産廃問題で頓挫
〜ご都合主義でまたまた
「第三者委員会」設置?〜

青山貞一 
東京都市大学環境情報学部、同大学院教授
環境行政改革フォーラム代表幹事
25 April 2009
独立系メディア「今日のコラム」

 
 昨日、滋賀報知に以下のような小さな記事があった。
 

RD処分場の対策工選定 県が周辺7自治会と会合
=今後の進め方で意見聞く=


滋賀報知 平成21年4月24日(金)

◇湖南・栗東市

 有害物が流出しているRD最終処分場(栗東市小野)の対策工事の選定について県は、三十日夜、周辺七自治会の役員を栗東市役所に集め、これまでの経過を説明したうえで、第三者機関設置を含めた今後の進め方について意見を聞く。 

 対策工事を巡っては、県は処分場周辺を遮水壁で囲い込む原位置浄化策を提案。これに対して、周辺自治会は処分場底部の破壊された粘土層を修復する栗東市調査委員会の工法案を支持している。

 これを受け、嘉田由紀子知事は工法選定について、客観的な立場で評価できる第三者機関を設置するとしている。

 滋賀県が栗東にある件(くだん)の産廃最終処分場問題を巡り、住民代表と会合し、意見を聞くという記事だが、実はこの記事は重要な事実を見逃しており、結果的に読者への情報操作による世論誘導となる可能性が大である。

 問題は、記事中にある「第三者機関設置」である。

 嘉田由紀子氏が滋賀県知事に就任以来、滋賀県における最大の環境問題に栗東市の産業廃棄物最終処分場問題がある。

 栗東の最終処分場問題は、実質的に不法投棄の温床となっている安定型最終処分場に、本来、埋め立て処分してはいけない産廃を永年にわたり処分(=不法投棄)したため、埋め立て物から各種の有害化学物質が地下水に浸透したり、硫化水素などの有毒ガスが吹き出すなど、大きな環境問題そして周辺住民への健康問題となっていることにある。

 嘉田知事は就任早々、新幹線の栗東駅設置問題やダム問題とともに、永年の課題である上記の最終処分場問題に対応することになる。

 この不法投棄の温床となっている最終処分場が周辺地域住民にとって、かくも大きな問題となった背景には、滋賀県の関係部局が許可業者である産廃業者及び同じく設置許可を出した最終処分場への適切な行政指導を怠ったことがある。

 行政指導には、勧告、公表、命令の三段階がある。滋賀県は勧告はなんどもだしたが、操業停止命令など命令はほとんどださず、結果的に産廃業者の違法な埋め立てを放任することになったのだ。

 本来、徹底的に業者を指導し、操業停止命令などを早い段階で出すべきであったが、滋賀県はそれを怠り、知事名での警察や検察への刑事告訴もつい最近になって行っており、結果として何の効果ももたらさないばかりか問題解決がさらに難しくなっている。
 
 嘉田知事就任後、まさに「第三者委員会」を設置し、1年以上、相当の回数を費やしてその委員会で不法投棄や環境汚染の原因l究明、対策手法などを学者、専門家、市民代表などで審議してもらってきた。委員の中には大学教授(滋賀大学、京都大学、立命館大学、福岡大学)、弁護士(ゴミ弁連会長の梶山正三弁護士)、専門家(池田こみち環境総合研究所副所長)、栗東市議らが含まれる。

 以下はその第三者委員会の開催風景とメンバーリストである。


滋賀県RD最終処分場問題対策委員会の開催風景。
出典:滋賀県


 出典:滋賀県

 相当回数、委員会開催後、「第三者委員会」は対策案を知事に提案した。この委員会運営、関連調査だけでも1億円はくだらないはずだ。

 本来、第三者委員会は、まさに当該問題に利害関係を持たない専門家らによる委員会であるはずだ。

 しかし、実際は今まで不作為をきめこみ結果的に問題を大きくした滋賀県庁の役人らが委員に、「第三者委員会」が出した対策案は金と時間がかかり現実的ではないと、不法投棄された産廃をその場に閉じこめる対策案に誘導することになった。

 役人は同時に嘉田知事にもその別案の刷り込みを行った。

 永年この問題に苦しんできた地域住民は、「第三者委員会」が出した本質問題解決案に賛意を示したが、嘉田知事は何と、上述の要約すれば「滋賀県庁の役人と御用学者の合作案」に傾注し、結果的に「第三者委員会」が知事に提案した対策案を反故にしてしまったのである。

 当然のこととして、嘉田知事の豹変に怒った周辺住民や自治体の多くは、不法投棄された産廃をその場に閉じこめる対策案を拒否した。

 本来、影響を受け被害者である周辺住民にとって「第三者委員会」の結論は、永年の問題を救済してくれる案であるはずだったのが、「第三者委員会」を設置した嘉田知事自身により反故にされてしまったのである。

 結局、役人と御用学者の合作案は、住民団体に拒否され、滋賀県は暗礁に乗り上げることになった。

 .......

 冒頭の滋賀報知の記事にある新たな「第三者委員会」は、もちろん、知事が就任直後に設置して一年以上十数回も議論を重ねてきた委員会とは別物となるのは間違いない。

 私なりに推察すると、今後、県が設置する「第三者委員会」とは、専門家として推奨案を提案した当初の委員会の委員を排除し、役人や役所の言い分を代弁してくれるいわゆる「御用学者」や「御用ンサルタント」、「市議」らによって構成される公算が強い。

 これで一体どこが「第三者」委員会なのだろうか。

 当初の委員会委員への説明も必要となるだろう。市民派を標榜して当選したはずの嘉田知事の看板倒れ、と言う以外にない。
 
 果たして嘉田知事自身がこんないい加減かつご都合主義で新たに「第三者委員会」を設置して良いものだろうか? 自分の都合にあうまで「第三者委員会」を設置するのだろうか? 信じれないことだ。

 そもそも当初の「第三者委員会」の設置、委員選定の最高責任者は嘉田知事自身である。説明責任、結果責任など何らまともな責任を果たすことなく、役人や御用学者からの助言で対策案を反故にし、再度、「第三者委員会」を設置すること自体、政治家として許されないだろう。


<参考>
青山貞一:迷走する嘉田滋賀県知事@〜RD最終処分場問題
青山貞一:迷走する嘉田滋賀県知事A〜公開されない3つの議事録
青山貞一:迷走する嘉田滋賀県知事B〜メディアによる徹底追求

池田こみち:環境立県、滋賀県の産廃委員会事情(1)
池田こみち:環境立県、滋賀県の産廃委員会事情(2)
池田こみち:環境立県、滋賀県の産廃委員会事情(3)
池田こみち:環境立県、滋賀県の産廃委員会事情(5)〜地元住民集会
池田こみち:大詰めを迎える、滋賀県栗東のRD産廃処分場対策委員会
池田こみち:問われる市民派知事の判断・滋賀県産廃処分場対策