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環境立県
滋賀県の産廃委員会事情(2)


池田こみち

掲載日:2007年8月22日



 2006年12月にスタートした滋賀県RD最終処分場問題対策委員会も8月で第6回を数える。

 1月に事情(1)として委員会における委員長選出のどたばたを紹介したが、http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col0561.html お盆休み明けの第6回委員会は、8月21日、猛暑の午後、3時間半にわたって「生活環境上の支障」の特定のための各種調査結果の報告とそれを踏まえての支障除去のための「対策工法の検討」が俎上に上り、山場にさしかかった。

 今年3月からは、対策委員会からは数名の理工学系の委員6名が選出され、別途「専門部会」も設置され、検討が行われてきたのだ。

 当初から、嘉田知事が「来年度には対策に着手する」という公約を実現するため、委員会は夏までに、県としての対応について方向性を示すことが求められていたのだ。

こう説明すると、長年の懸案であった、産業廃棄物最終処分場の問題解決に向けいかにも順調に議論が進んでいるかのように見えるが、内情はなかなかどうして、一筋縄ではいかない結構な修羅場となっている。

 第6回では、梶山委員(弁護士)・早川委員(滋賀大学環境社会学教授)・池田(ERI)が事前に4時間ほど協議してとりまとめた、提案書を予め提出していたのである。この委員会には次のような課題がある。

<運営に関する課題>

・委員会は毎回3時間〜4時間行われるが、多くの時間が事務局(県)の資料 説明に費やされ、本来の意味の委員相互の議論を行う時間が取れない。

・座長の取り仕切りにも課題があり、すべてが委員と事務局の質疑応答的なやりとりとなり、議論が成り立たない。

・背後では応用地質(株)が委託を受け、資料作りなどをすべて取り仕切っているにもかかわらず、その姿はみえず、技術的なやりとりが非効率な面も多い。

・専門部会での議論と本委員会での議論がうまくかみ合わないため、同じ議論の繰り返しとなる。

・専門部会の議論の結果をすべて事務局が報告するため、専門部会の役割が見えにくい。そのため、専門部会をやめて一本化すべきだ、という提案が数名の委員からも出されたが、委員長が強硬に反対した。

・実際の所、汚染の実態を把握するための各種分析に際して、油分、金属類、VOCなどについてどのような分析方法を用いるべきか、どのような評価基準を適用すべきかといった議論は本委員会でかなりつっこんだ指摘も行ったが、最終的にはすべて、事務局の当初案どおり、公定法によるものだけとなっている。

・12名の「学識経験者」委員が参加しているが、出席していてもほとんど発言しない委員が多い。活発に意見を述べるのは決まって住民代表委員と理工系以外の委員、すなわち、梶山・早川・池田である。

・県は、この処分場問題がここまでに至った責任、背景を検証するため、別途総務部局に「検証委員会」なるものを設置している。すなわち、どれほど許認可権者であり、指導監督権者である滋賀県自身の責任があるか、という検証である。

 この委員会での議論は、我々が所属する対策委員会での議論や検討内容に大きな影響を及ぼすばかりか、それを踏まえなければ本来取るべき対策も見えてこないのが当たり前である。しかし、今の時点でまだ検証委員会の議論は対策委員会に伝えられず、滋賀県の責任は明示的に明らかにされていないのである。

・委員会には、国(環境省近畿地方環境事務所)の立場から2名、産業廃棄物処理事業振興財団から1名がオブザーバーとして参加している。それは、対策に係る費用を特措法の適用によって国の補助を受けるためである。そのため、時として、議論や検討の内容が市民のためというよりも、国から補助を得られやすいため、と思われるような内容に誘導されているような気がしないでもない。

 本来、第三者的な検討委員会であれば、委員相互が丁々発止と議論し、委員会としての意見を行政に提案していくことが本来だが、専門的な観点から意見を言わなければならない学識経験者の多くはほとんど押し黙っている有様だ。

 毎回、10〜20名ほどの市民の方々が熱心に傍聴者されているが、市民の間からも「3時間以上もなにも発言しない委員は何を考えているのか。」といった声も聞こえている。

 それもあって、実際はそうではないにしても、委員会を見ている限り、すべてを事務局が取り仕切り、一定の路線に誘導しようというような疑心暗鬼も生じている。

 やはり委員会の自律性、第三者性をいかに確保していくかが重要であることは間違いなく、そのためには委員となった一人ひとりがそれなりに覚悟を決めて関与しなければ意味がない。

つづく