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グリーンピース鯨事件に有罪判決
-青森地裁-

青山貞一 

September 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


 グリーンピース(GPJ)に関連した鯨肉裁判の初審判決が青森地裁であり、以下のようにGPJ側の主張をすべて退け、刑法の窃盗罪を適用した不当なものとなっています。イラク戦争に反対のグループが自衛隊の官舎の郵便受けにビラを入れたのを住居侵入罪に問われ逮捕・起訴された事件にある意味、類似しています。

 もっぱら、反戦ビラ配布目的で立川にある自衛隊官舎内に立ち入った3名は、一審で無罪となり、控訴審で有罪となり、上告審の最高裁で棄却され東京高裁の有罪判決が確定しています。

 今回のGPJの鯨肉事件も反戦ビラ配布事件も、いわば<国策>に歯向かった者への仕打ちなんでしょうかね! 

 環境だ、自然保護だ、生物多様性の国際会議を愛知県で開催などと良いながら、やはり日本という国は、国益という名の私益が優先する野蛮な国なんですね。

 「鯨食は文化だ」、とか「喫煙は個人の嗜好だ」などという言い訳が、今の国際社会で通用すると思っていること自体、おかしいのです。

 国側が国費を使って調査捕鯨の名の下に必要を超えるクジラを捕獲し、船員らが自宅に持ち帰っていることこそ窃盗あるいは横領行為を容認したり、大量破壊兵器がなかった米英のイラク攻撃を時の小泉首相が一方的に支持する憲法違反的な行為を黙認し、正義感からそれらの行為に対して、体を張って抗議した市民団体のメンバーが窃盗罪や住居侵入罪で逮捕、起訴され有罪になっています。

 これはまさに国策としかいいようもありません。 

グリーンピースメンバー2人に有罪 鯨肉窃盗事件で地裁

 調査捕鯨船の船員らが土産名目で自宅あてに送った鯨肉を運送会社から持ち出したとして、窃盗と建造物侵入の罪に問われた環境NGO「グリーンピース・ジャパン」(GPJ)のメンバー2人に対し、青森地裁(小川賢司裁判長)は6日、懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)の有罪判決を言い渡した。2人は控訴する方針。

 判決によると、GPJメンバーの佐藤潤一(33)と鈴木徹(43)両被告は2008年4月16日、青森市の西濃運輸青森支店の配送所に侵入し、塩漬けの「ウネス」と呼ばれる鯨肉が入った段ボール箱(23.1キロ)を盗んだ。

 GPJ側は「船員が鯨肉を無断で持ち帰る『横領行為』を告発するための証拠を確保した。自分たちで利用する意思はなく、箱を持ち出したのは正当な行為」として無罪を主張した

(2010年9月6日14時9分 朝日新聞)

 下の写真は今年一月、東京で開催されたイベントに参加された佐藤潤一氏(真ん中)、右はグリーンピースジャパン事務局長の星川淳氏、左は筆者(青山貞一、東京都市大学)である。

◆青山貞一・池田こみち:グリーンピースジャパン「クジラ肉裁判」初公判直前イベント参加記
◆青山貞一:グリーンピース・ジャパン20周年記念イベント参加記 




 GPJへの内部告発の中に、「鯨に病気(癌)があってもそのまま流通させている」*、という内容もあったようで、食物連鎖の最上位に位置するクジラがいかにPCBやダイオキシン、重金属類などで汚染されているかについての調査こそ、国が行うべきです。

* 佐藤潤一氏の罪状認否より
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/speech_t2_html
−−−引用開始
内部告発者は、「私は捕鯨に賛成だが、実際に行われていることが『調査捕鯨』という名にふさわしくない」と語ってくれました。南極海で大量のクジラ肉を投棄していること、そして船員がクジラ肉を大量に持ち帰っていること、さらに癌などの病気がクジラに見つかったとしてもその肉を販売にまわしていることが耐えられなかったと言います。

 政府がすべきことをせず、内部告発に基づきGPJメンバーが行った行為を単なる刑事事件で有罪とする日本の司法のありようは、民主主義国家としてきわめて異様、異常です。

 ところで、日本全国各地の小中学校で鯨肉が給食にでているという共同通信の記事があります。GPJが告発した問題と大いに関連がありそうです。

 共同の記事には「日本鯨類研究所が調査捕鯨で捕獲した在庫がだぶつき、消費拡大のため給食用に割安で提供されていることや、食文化を継承したいとの自治体側の思惑が背景にあるようだ」とあります。

 実にイヤな世の中になってきたものです。

鯨肉給食復活、5千校超で実施 小中学校の18%
2010年9月5日 06時02分

 1987年の南極海での商業捕鯨中止などで激減した鯨肉の学校給食が徐々に復活、給食を実施している全国の公立小中学校約2万9600校のうち、2009年度に一度でも鯨肉の給食を出した学校は、18%に当たる5355校に上ったことが4日、共同通信のまとめで分かった。 

 鯨肉の給食は1970年代まで大半の小中学校で一般的だったが一時激減。復活したのは日本鯨類研究所が調査捕鯨で捕獲した在庫がだぶつき、消費拡大のため給食用に割安で提供されていることや、食文化を継承したいとの自治体側の思惑が背景にあるようだ。 

 調査期間は6〜8月。給食に出した学校の内訳は小学校が4009校、中学校が1346校で、40都道府県に上った。 使われる鯨肉は南極海で捕れたクロミンククジラなどで、特定の業者を通じ学校に渡っている。

 鯨研によると、昨年の市価は1キロ当たり2060円だが、給食用は3分の1に割り引いた。捕獲量の3〜4%に当たる約150トンが学校給食枠。 メニューは竜田揚げが目立ち、カツやケチャップなどでつくるオーロラソースあえもあった。

(共同)