アンコール遺跡群現地調査報告  プリア・ピトゥ1（Prah Pithu） 青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda 2019年１月24日公開 独立系メディア E-Wave Tokyo 無断転載禁 |
| アンコール遺跡全体目次 ＜北部の寺院・遺跡＞ プリヤ・カーン プリア・ピトゥ１ プリア・ピトゥ２ ◆プリア・ピトゥ１（Prah Pithu） プリア・ピトゥ（Prah Pithu）は、カンボジアのアンコール遺跡における5つの寺院からなる寺院遺跡群です。  アンコール遺跡・寺院地図 プリア・ピトゥ（Prah Pithu）は、アンコール・トムのすぐ北に位置しています。  出典：グーグルマップ プリア・ピトゥは下図のように、プリア・ピトゥT、プリア・ピトゥU、プリア・ピトゥV、プリア・ピトゥXと４つの離れた寺院から構成されています。  出典：グーグルマップ  glimpse of Temple "T" - Preah Pithu group Source：Wikimedia Commons 遺跡 プリア・ピトゥ（Prah Pithu）の寺院群は、アンコール・トムにあるバイヨンの北、テップ・プラナム (Tep Pranam) の前方（東）に位置します。 その寺院群は近接していますが、それらは2つを除いて、同時代に建造されたものではなく、12世紀前半-13世紀頃（13-14世紀）、スーリヤヴァルマン2世（在位1113-1150年）からジャヤーヴァルマン8世（在位1243-1295年）の時代にかけて構築された寺院群とされています。しかし年代の特定には至っておらず、その順列は明らかではありません。 それらの寺院は T、U、X、V、Y のアルファベットで分類されています。「X」は仏教寺院であり、それは未完成のままでおそらく最も後期のものです。その他はヒンドゥー教寺院です。 5つの寺院は状態が悪く、上層部は崩壊していますが、それらの彫刻は興味深いものであり、またその場所は静寂に包まれ、樹木が茂ってほとんど人はいません。大抵は涸れている濠が、寺院群の一部を取り囲んでいます。それらはまず1908年に Jean Commaille により、その後1918年から1920年にアンリ・マーシャルによって整備されました。  プリア・ピトゥ寺院群の構成 Source：Wikimedia Commons 寺院「T」・「U」  寺院Tと少年僧 Source：Wikimedia Commons これらの寺院はまず間違いなく同時に建造されたもので、同じ東西軸上にあり、単一の濠によって囲まれています。 それらは西を向いており、入口にはナーガの欄干と2つの基壇に十字型のテラスがある。寺院「T」は、東西45メートル、南北40メートルの砂岩の周壁を持ち、東西の主軸上に2つの塔門（ゴープラム〈ゴープラ〉）があります。 聖所は、高さ約6メートルの[5]装飾された3層の基壇上にあり、その台座の上にある大きなリンガを保護した祠堂を持っています。地上にある西側の扉のまぐさ（リンテル）の断片には、「乳海攪拌」を様式化した描写が見られ、壁はデヴァターや花の模様が、バイヨン様式で装飾されています。 寺院「U」は「T」に似るが、より小さくて[5]簡素です。その周壁は東西35メートル、南北28メートルで塔門はありません。2層の基壇上に祠堂があり、西の扉のまぐさは、ヴィシュヌとブラフマーの間に、カーラ（kala、キールティムカ）の頭で踊るシヴァのいる三神一体を示しています。 内壁にはドヴァラパーラが彫られており、柱の基部の盲アーチはアンコール・ワットの時代に特有なものです。 北側のまぐさには「乳海攪拌」のもう一つの描写があります。 寺院「X」  寺院 X 聖室内にある2列の仏陀像 Source：Wikimedia Commons 寺院「X」は、寺院「U」の約100メートル東にあり、一辺40メートル、高さ4メートルの大きな基壇上に建っています。濠が涸れている場合は真っ直ぐに到達可能です。 その様式は前述の寺院と同様であるが、より大きくかつその装飾は不完全です。「X」は仏教寺院であり、聖室の壁には、彫刻された二列の仏陀像があります。さらにまぐさは仏教のモチーフを示しています。 しかしながら最も関心を引く遺構である有名な釈迦の断髪を描くものはそこにはありません。東に向かうラテライトのテラスは結界石（シーマ石、sema 〈仏の形象描写の刻まれた境界石〉）によって囲まれ、聖域の境界を定めていまあす。 寺院「V」  寺院V Source：Wikimedia Commons 寺院 Vは残存する濠の外側、寺院「U」の北に、寺院「V」はあります。それは東に向いており、二重の前庭より始まり、周壁はありません。西には渡り参道があり、それは長さ40メートルの十字型テラスに終わって、王宮広場の北東の角に通じています。 その聖室は、2層の彫刻された基壇上に建ち、寺院群のうち最も大きく3.8メートル四方で、大きな1.5メートルのリンガを祀っています。そのアンコール・ワット様式の外部の装飾は未完成です。 寺院「Y」  寺院 Y 南側の半フロントン Source：Wikimedia Commons 寺院「Y」は、基壇や階段を持たず、「V」の北側の、土でできた台地の上に建っています。それはアンコール・ワットの時代からバイヨンの時代の間のものです。 東に向かって、入口としての長い拝殿（マンダパ、mandapa） があり、前庭によって高さ0.95メートルのリンガを祀った3.5×3.0メートルの聖室につながっています。 より大きな部屋はほとんど崩壊していますが、その西側には2つの注目すべき半フロントン（fronton、ペディメント〈破風〉）があり、北にクリシュナによるアスラ（阿修羅）のバーナの敗北が、南には大きく3歩を踏み出すヴァーマナが描写されています。 プリア・ピトゥ２につづく アンコール遺跡全体目次 |