エントランスへはここをクリック   

自然エネルギー財団

REvision2016 シンポ参加記

セッション2

日本は自然エネルギーの機会を

つかめるか

鷹取敦

掲載月日:2016年03月11日
 独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁


 2016年3月10日(木)、自然エネルギー財団が開催した 国際シンポジウムREvision2016 自然エネルギー飛躍の時 に参加しました。

 自然エネルギーの財団のサイトから動画を視聴できますが、すべて視聴すると1日かかりますので、当日のメモから講演の概要を紹介いたします。メモから作成したものなので、正確な内容を確認したい場合には、上記のサイトより、資料、動画をご覧ください。

■セッション2:日本は自然エネルギーの機会をつかめるか

 セッション2では、セッション1でみた世界の流れから立ち後れている日本の現状のリスクについて金融アナリストの観点から世界の動向を、そして日本のソーラー、風力の業界からそれぞれ取り組みと課題について、さらにIT産業の講演者から報告がありました。

モデレーター:大野 輝之
(自然エネルギー財団常務理事)


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 世界では欧州だけでなく途上国でも自然エネがいかに拡大しているか。価格が非常に安くなっている。

 なぜ、日本ではまだまだスピード、コストが劣るのか。世界とギャップがあるのか。工事コスト、系統接続の問題、環境アセスメントのコスト等の個々の問題に加えて、根が深い問題がある。

 日本は今では省エネでも先進国とは言えない。過去20年間、止まった状態。電力供給でもCO2を排出する石炭火力を高効率だからという理由で作ることになってしまっている。

 共通する問題として、世界のビジネスは切り替わっているにも関わらず、日本では脱炭素経済が政策の前提となっていない。


●化石燃料から自然エネルギーへ向かう投資の
 新しい潮流
ティム・バックレー
(エネルギー経済投資アナリシス研究所(IEEFA)
 エネルギー投資分析部長)


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 金融アナリストの観点から、オーストラリアの視点から。

 電力市場の転換は不可避であり、日本にとっても大きなリスク。予想されていたより世界は速く変化している。たとえば中国の石炭消費のピークは以前より前倒しされて2016年と予測されていたが、実際には2013年がピークだったと考えられる。中国が行動で示している。

 電力需要と経済活動をデカップリングする。(経済活動が大きくなっても電力需要は必ずしも大きくならないという意味)

 再エネは一度設置すると限界費用はゼロ(稼働に伴うコストがほとんどない)。その結果、火発が締め出される。建設した石炭火力を使う必要がなくなり、石炭は負け組となる。


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 インドも大幅にソーラーを設置し続けている。省エネ・効率化も進め、系統の増強もしている。日本、台湾企業がインド企業と連携。インド企業グループにより世界最大のソーラープロジェクトも計画されている。民間電力会社は火発建設計画を中止し、ソーラー発電に切り替えた。コストは平均で2桁%ずつ低下している。

 アメリカでは石炭火力が30%低下。変化に抵抗しようとしている石炭火力の会社の株価は大幅に下がっている。次々と倒産している。住友商事も炭鉱をタダ同然で売却した。


●さらなる太陽光発電の導入拡大に向けて
亀田 正明(太陽光発電協会事務局長)


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 太陽発電の導入実績は2015年は中国が一位。

 日本のFITによるソーラー発電の導入の実態は、累積認定量(認定を受けた量)に対して、累積導入量(実際に設置した量)は3分の1〜4分の1くらいしかない。(このうち住宅用はほぼ100%導入されている。)ローカルの系統が混雑し、再エネが無補償の出力抑制の対象となり市場が冷え込んでいる。認定の4割程度は稼働には至らないだろう。まだ導入目標と開きがある。

 ソーラーの便益として、CO2抑制、環境にやさしい、資源自給により国富流出を防ぐ、経済効果、雇用、夏季の昼間の電力需要の緩和、送電ロスを防ぐなどがある。2016年は電力コストの押し下げ効果が大きい。2030年再エネ比倍増でGDPを2.3%以上、押し上げる効果がある。


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 系統運用の問題に関してドイツに学ぶため調査に視察に行った。27%再エネを導入しているが、出力抑制はほとんど起きていない。2013年で抑制比率0.44%程度でしかない。(日本では20%などと見積もられていた。)

 系統の増強、ルールが変更され再エネを止める(出力抑制)のは最後で、抑制した時は補償される。再エネを無駄に捨てない仕組み。FITが安定して継続されている。

 ドイツでは、発送電の所有権の分離まで進んでいる(別会社にしただけでなく、発電会社と送電会社は株主まで別で完全に独立した関係)。日本はこのまま待っていると所有権の分離は2030年まで無い。

 日本での課題は、FITの安定運用、国民負担を減らすこと、電力需要の予測技術、自家消費の活用、系統への負担を減らすことなど。


●風力発電の導入拡大に向けた新たなビジョン
高本 学
(JWPA・日本風力発電協会 代表理事)


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 先月末(2016年2月末)、新たなJWPAウィンドビジョンを公表した。
http://log.jwpa.jp/content/0000289456.html

 基本概念はエネルギーセキュリティと温暖化問題。

 2030年には36.2GWの導入ポテンシャルがあると考えているが、政府は10GWと言っている。課題を議論していきたい。世界では風力は伸びているが、日本では伸びていない。

 コスト低減、系統の整備・強化、リパワリング(大型・高効率)、洋上風力、サプライチェーン(産業としての一貫した体制)の確立により風力発電の導入拡大へ。


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 系統接続をシミュレーションして、エリア毎の受け入れ容量、他エリアへの供
給量等のシナリオを短期、中長期の2つのシナリオを作った。

 オリンピック等の需要に伴うコストの高止まりの影響があるので厳しいものの、16〜18円/kWhを、2030年以降には8〜9円/kWh、グリッドパリティの達成へ。

 ソーラーと風力は補完関係にあり、出力抑制を減らせる。日単位ではなく時間帯単位の抑制を行うことで抑制を減らせる。

 洋上風力は着床から浮体式へ展開。


●気候変動対策と自然エネルギー
 −日本のビジネスの観点から
山崎 誠也
(富士通株式会社 環境本部
  グリーンソリューション推進部部長)


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

 電力を使う立場から。

 自社事業の紹介。日本気候リーダーズ・パートナー(低炭素社会を目指す企業グループ)の紹介。COP21パリ協定の紹介。

 GHG(温暖化ガス)実質ゼロへという方向を、事業リスクとしてではなく、課題解決ソリューションのビジネスとしてとらえる。

 自社グループでの自然エネ導入の紹介。コストが見合わないので、急拡大は難しい。

 再エネ普及へのICTの貢献。社内でマイクログリッドを作って実証実験し、1年で20%削減した。


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)


●セッション2討論


撮影:鷹取敦(Nikon COOLPIX S9900)

(自然エネの拡大のビジネスにとっての意味)

ティム・バックレー(エネルギー経済投資アナリシス研究所(IEEFA))

・企業として早い移行は難しいがそのままでは事業リスクとなる。
・石炭からソーラーへ1年で戦略を大きく転換した企業もある。

亀田 正明(太陽光発電協会)

・メガソーラーへの投資、家庭の住宅用ソーラー、それぞれ経済効果がある。
・分散型エネルギーでエネルギー消費の少ないライフスタイルの提案

高本 学(日本風力発電協会)

・風力発電に一番いいのは北海度、東北、九州。保守要員のための雇用も含め、地域創生に貢献できる。
・日本の風力発電の実力を上げる。

山崎 誠也(富士通株式会社)

・外から企業を見る目も厳しくなっていくだろう。(自然エネの導入が求め
られる。)

(日本の政策について)

ティム・バックレー(エネルギー経済投資アナリシス研究所(IEEFA))

・規制障壁で変化を防ごうとする企業は業績が低下していく。
・日本でも流れを止めようとするのではなく、機会をつかんで欲しい。

亀田 正明(太陽光発電協会)

・FITでソーラーは加速したが、ドイツの例から学べばまだ伸びしろがある。普及のための道を舗装することを進めて欲しい。

高本 学(日本風力発電協会)

・情報を公開して議論をして、普及を進めて欲しい。

山崎 誠也(富士通株式会社)

・方向性をしっかり示して、安定した政策として欲しい。

大野 輝之(自然エネルギー財団常務理事)

・自然エネへの転換は経済にプラス。生き残りに必要なこと。

つづく