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キーワード:新型コロナウイルス、COVID-19、致命率、CFR、死亡者数/感染者数、 リスク総合評価、Case Fatality Rate、世界各国、世界地域、日本、 G7,G20、BRICS、ASEAN、旧社会主義諸国、北欧諸国、 中南米カリブ諸国、アフリカ諸国、中東諸国、 はじめに 前提について 致命率(CFR)の解説は本稿末尾にある。 5月15日からほぼ3週間おきに世界の主要国の新型コロナウィルスによる致命率(死亡者数/感染者数) を見てきたが、日本においては、今回の新型コロナ感染症(COVID-19)に感染して、すぐに死に至るわけ ではなく、おおよそ3週間のタイムラグをおいてから重篤化し亡くなるケースが多く見られている。 下図は、その日本における感染者数と死亡者数を示したものだが、死亡までのタイムラグにはばらつきが あるものの、それぞれのピークに概ね3週間のずれがあることがわかる。 ただし、この3週間というタイムラグは、あくまでも日本の実証例であり、他国にそのまま当てはめられるも のではない。このタイムラグは、高齢者割合、重篤者割合、既往症割合、医療実態(病床数、医療スタッフ 数、医療機器、医療技術、ICU、対症療法医薬品使用など)により異なってくることが推定されるからである。 また、中国やイタリアで猛威を振るっていた感染拡大の初期のころ(2019年末から2020年4月頃まで)と半年 が過ぎて世界に広まった7月~8月では、感染から死亡に至る期間も当初に比べて長くなっている可能性も考 えられるため、どの時点で評価するかによっても異なる。 しかし、現時点では他国の詳細データがないため、本調査では、従来のCFR調査の対象国とグループの すべてに3週間のタイムラブをあてはめ掲載してみた。 図1 日本の感染者数と死亡者数の時系列グラフ 出典:作成:鷹取敦環境総合研究所代表 このことから、この間実施してきたCFR調査対象国について、感染から死亡までに概ね3週間の タイムラグがあると仮定して改めてCFRを算出してみた。 ◆調査年月日時 調査日は、2020年8月26日 UTC 午前4時28分(日本時間で午後1:28)である。 ◆赤色線(グラフの横線) 赤線は本調査が対象とする105ヶ国の8月26日時点の平均CFR値である。今回の場合CFR =3.4となり、3週間前の8月5日から0.3ポイント低下した。 ◆第六回調査により判明した顕著な傾向と事実 <累積感染者数と死亡者数によるCFRの推移> 5月15日~8月26日の3ヶ月半の推移は以下に示すとおり、減少傾向となっており、105ヶ国を対 象としている本調査では、3.4%となった。 図 世界の累積感染者数と日別感染者数のグラフ:2020年8月26日時点 (出典:JHUM, Coronavirus Resource Center) 世界の累積COVID-19感染者数 Source:Johns Hopkins University 世界の累積COVID-19死亡者数 Source:Johns Hopkins University 図 世界の累積死者数と日別死者数のグラフ (出典:JHUM, Coronavirus Resource Center):2020年8月26日時点 世界の日々のCOVID-19感染者数 Source:Johns Hopkins University 世界の日々のCOVID-19死亡者数 Source:Johns Hopkins University 第1回調査から3ヶ月半で、世界の感染者数は約5.3倍、死亡者数は2.7倍へと増加している。 感染者数の増加が止まらないことから、致命率は引き続き低下傾向となっており、この間に 1ポイン低下した。 図 世界の累積感染者数と日別感染者数のグラフ:2020年8月26日時点 (出典:JHUM, Coronavirus Resource Center):2020年8月26日時点 また、第四回調査以降、世界的に感染者が3・4月頃のような高齢者から、若者世代に広がって おり、無症状や軽症の患者が増えていることから、死亡者数は各国とも抑えられている。その背景 にはウイルス事態の変異(遺伝子レベルの変異)も指摘されているが、総じて、新型コロナウィルス とのこの半年余りの闘いを経て、医療関係者の経験・知見が積み重ねられ死亡者が減少している こともひとつの要因と言える。 一方、各国や地域の動向を細かく見ていくと、それぞれの国、地域によって社会経済状況が異な り、医療体制が感染者数の増加に追いつかず、死亡者が増加している地域もあり、依然としてパン デミックのリスクは続いている状況である。 (1)世界の地域別・経済圏別の致命率(CFR) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 経済圏地域別にみると、先進国グループであるG7の致命率は5月中旬から6月末までは10%であっ たものが8月下旬には、7.8%まで低下しているものの、依然世界でもっとも高い致命率となっている。 G20諸国とEU諸国はいずれも、6%台だったものが8月末で4.9%まで低下、北欧諸国、中東、中南米、 旧社会主義国が4~5%だったものが3%台まで低下、アフリカ諸国とBRICSは6月以降2%台で推移、 ASEAN諸国が2%から1.5%に低下、という状況となっている。 感染が早く始まった西ヨーロッパ諸国では既にピークは過ぎたものの、急激に拡大した中進国(中国 を除くBRICS)では、感染者数の増加が著しく、CFRは相対的に低下している。また、感染がゆっくり広 まった中南米、アフリカ諸国、アジア諸国などではCFRが低下するペースは遅く、横ばいとなっている。 地域別では唯一、中東諸国がこの3ヶ月半で2.7%から3.6%へと1ポイント増加している点が注目される。 世界105ヵ国のCFRの全平均は、4.4% ⇒ 4.1% ⇒ 4.0% ⇒ 3.9% ⇒ 3.7%⇒3.4%へ 減少している。 ( 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (1)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移>世界の地域別・経済圏別の致命率(CFR) 図より、感染から死亡までのタイムラグを3週間と仮定した場合の致命率の推移を見ると、先に述 べたように感染が早い段階で始まった地域では6月初旬をピークに劇的に低下し、概ね2%前後まで 下がっていることがわかる。 ASEAN地域では、7月になって初めて死亡者がでた国や地域があり、6%に増加しているが、その 後再び低下している。 一方、中南米、アフリカ、中東などの途上国にあっては、感染の拡大が遅かったこともあって、 先進諸国ほどの低下は見られていない。 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (2)G7諸国について (2)-1 死亡数及び発症数の累積値によるのG7諸国の致命率の推移(%) 第六回 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 G7諸国の平均CFRは7月に入ってようやく低下し初め、10%台であったものが8月に入り、 ようやく7.8%まで低下したが、依然として世界で最も高い値となっている。 フランス、イギリス、イタリアのヨーロッパの3ヶ国が12%~14%と極めて高く、全体の平均 を押し上げている。フランスでは19%から12%へと低下したが、イギリス、イタリアは13~14% のまま横ばいとなっている。各国とも、6月下旬に一旦ピークアウトしたかに見えたが、経済の 再開と共に人の移動が活発化し、再び感染者数が増加している。 このグループでは日本のCFRが7月から8月にかけて大きく改善しているが、その背景には 感染者の急増があることに注意する必要がある。若者、無症状の感染者の増加が相対的に CFRを低下させている 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-9 (2)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移>G7諸国の致命率(CFR) ・タイムラグを考慮した場合、G7諸国平均の数値を見ると、5月には9.2%だったものが8月には2.0% まで大きく改善している。 ・フランスは、5月中旬に24%だったものが、8月下旬には1.3%まで大幅に低下している。初期の段 階での対応がいかに困難であったかを物語っている。 ・イギリスは途中から死亡者数の数値に見直しが加えられたため、7月以降の数値が算出されていな い。 ・イタリアはヨーロッパにおける感染の震源地でもあり、死亡者のピークは5月以前にあったと思わ れる。その後は低下しているが、8月に入り、5.4%と高止まりとなっている。 ・アメリカに隣接するカナダは5月には5.4%だったものが8月には1.4%まで低下し安定している。 ・一方米国は、CFRは低下しているものの、5月末からの経済再開とともに感染者数が爆発的に増加し、 相対的にCFRは低下しているが深刻な状況に変わりはない。
・ドイツは感染者数が多い一方で、死亡者が少なく、EUにおける優等生とされてきた。しかし、夏に なって再び感染者数が増加してため、検査数を増やすなどして対応している。 ・日本は初期の段階で高齢者の死亡が多く、5月のCFRは8.5%と高かったが、その後6月から7月にか けて一旦下火になり大幅に感染者数、死亡者数とも減少した。しかし、7月以降は感染者数が急増し、 若年層の無症状キャリアが増加したことで相対的にCFRは低下しているに過ぎない。重症者、死亡者 が減っていることは評価できるものの、一方で後遺症の問題が指摘されていることもあり、感染者数 を減らす方策を積極的に講じていく必要がある。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (3)G20諸国について (3)-1 死亡数及び発症数の累積値によるのG20諸国の致命率の推移(%) 第六回 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・G20諸国の平均CFRの推移は5月15日(6.2%)から8月26日(4.9%)へと3ヶ月半で1.3 ポイント低下した。8月下旬になっても上位はフランス、イギリス、イタリアなどのヨーロ ッパ勢が10%を超えるレベルとなっておりG20諸国の平均値を押し上げている。次いで、 メキシコが11%、カナダが6.8%と高い値で推移している。 ・G20諸国の中で、世界の平均3.4%を下回っているのはブラジル、米国、日本、インド、 トルコなどだが、これらの国では、感染者数が急増していることによるCFRの低下であ り、楽観視できない。 ・特にCFRの推移のグラフが右肩下がりとなっているブラジル、インドネシア、米国、日本 においては、感染者の急増が見られていることからこの数値だけで楽観することは出来 ない。 ・中国は5.5%から4.9%へと変化が少なく、既にピークを過ぎて感染がコントロールされて いる様子がわかる。 ・CFRの数値は1~2%台と低いものの、南アフリカ、オーストラリア、ロシア、サウジアラビ アなどでは、7月以降右肩上がりのグラフとなっている点に注目すべきである。感染者数 の増加だけでなく、死亡者も増加していることを意味している。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (3)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移>G20諸国の致命率(CFR) ・タイムラグで見た場合、G20諸国の平均CFRの推移は、5月中旬に6.7%だったものが、8月末に は2.5%まで低下している。 ・国別には先に述べたように、感染が早く広がったフランス、イタリア、イギリスなどが5月に高い数 値となっているが、多くの国で、5月中旬に発症し、6月初旬に死亡する割合が高く、その後は低下 していることが分かる。 ・しかし、中国では5月以前にピークが来ており、7月に収束後の武漢以外の都市での再拡大がCFR を再び上昇させていることが分かる。 ・メキシコ、ブラジル、インドネシア、米国、日本、インド、南アフリカなどは、グラフが右肩下がりと なっているが、これらの国々では感染者数が急増しているため相対的にCFRが低下している。 ・オーストラリアは5月のCFRは低かったが、その後増加し他の国とは異なる推移を示している。 ・トルコ、韓国、ロシアなどでは、この3ヶ月半CFRの数値に大きな変化が見られないが、感染者数 は増加傾向にある。 ・このグループでは、BRICSの5ヶ国が含まれるが、これらの国々は人口で世界全体の43%、国 土面積で29%(各大陸に分散)、世界経済(購買力平価)で30%を占めていることから、これらの 国々の影響力はパンデミックにおいても無視できない。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (4)EU諸国 (4)-1 死亡数及び発症数の累積値によるのEU諸国の致命率の推移(%) 第六回 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・EU加盟27ヶ国全体のCFR平均値はこの3ヶ月半で6.7%だったものが4.9%へと約2ポイント低下 している。経済活動が再開されてから各地で再び感染の拡大が見られていることがその背景 にあると思われる。 ・総じて、東欧諸国の数値が低く維持されている。 ・この3ヶ月半、CFRの数値は各国とも右肩下がりに低下しているが、なかでもスウェーデンでは、 5月中旬に13%だったものが8月末には6.7%までほぼ半減した。同国は当初からロックダウンや マスクの義務化などの対策は行ない方針を貫いていることから、今後の推移が注目される。 ・多くの国が右肩下がりのなか、イタリア、ハンガリー、アイルランド、リトアニア、ラトヴィアなどで は、グラフが山型になっており、6~7月にかけてCFRが高くなったことを示している。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (4)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> EU諸国の致命率(CFR) ・タイムラグを考慮した場合のEU諸国のCFR平均値は、5月に感染して6月に死亡した割合が5.8% だったものが、7月中旬以降感染し8月に死亡した割合では1.9%まで低下している。 ・各国とも5月に感染し6月に死亡した割合が高くなっているが、特にフランス、イタリア、スウェーデン、 スペイン、ブルガリア、クロアチアなどで顕著である。 ・多くの国で7月以降は比較的安定しているが、ギリシャ、フィンランド、リトアニアでは、一旦低下し たCFRが7月以降再び上昇に転じている点が注目される。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (5)G7・G20に属さない先進国(アイルランド、スイス、ニュージーランド) (5)-1 死亡数及び発症数の累積値によるG7・G20に属さない先進国(アイルランド、スイス、ニュージーランド)のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・ニュージーランドは長期間感染者ゼロが続いていた、8月に入り、再び感染者が出始めた ことから、アーダーン首相は速やかに対策を打っている。それによって今後の増加がどこま で抑えられるかが注目される。 ・アイルランドとスイスは7月末まで横ばいとなっていたが、その後は減少に転じている。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (5)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> G7・G20に属さない先進国(アイルランド、スイス、ニュージーランド) ・累積数で見ると大きな変化が見られないが、タイムラグを考慮するとスイスの改善が 大きいことが分かる。フランス、イタリア、ドイツと国境を接していることから早い段階で 感染が拡大し、5月中旬には10%と高い値だったが、その後は一挙に2~1%以下へと 低下している。 ・ニュージーランドの死亡者数は5月中旬に21人だったものが、その後一人増えただけ で、22人のまま推移しているため、CFRは0となっている。 ・アイルランドでは、6月上旬から中旬にかけて感染した人が3週間後の6月中旬から7月 上旬に死亡した割合が8%まで高くったがその後は低下している。 その内訳を見ると、以下の通りである。8月に入って死亡者数は14名だが、感染者数が 倍増していることがある。感染者数は増加しても死亡者数が減っていることを示している。 6/ 3~6/24の死者数62人は、三週間前の感染者数1239人の5.0% 6/24~7/15の死者数26人は、三週間前の感染者数 325人の8.0% 7/15~8/05の死者数17人は、三週間前の感染者数 279人の6.1% 8/05~8/26の死者数14人は、三週間前の感染者数 583人の2.4% 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 以下の図は、タイムラグを考慮した場合の感染者数・死亡者数とCFRをグラフに示したも ので、アイルランドと日本を例示してみた。 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 (6)BRICS諸国・ASEAN諸国 (6)-1 死亡数及び発症数の累積値によるBRICS諸国、ASEAN諸国のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 BRICS諸国(ブラジル、ロシア、中国、南アフリカ)は、グループ平均がこの3ヶ月半で3.7% ~2.8%へと低下している。前回の第五回から変化がない。中国を除き、感染者数では、アメリ カについて2位がブラジル、3位インド、4位ロシア、5位南アフリカとなっておりこの4ヶ国で853万 5千人超の感染者数となっており、世界の感染者数の35%を占めている。死者数は4ヶ国で約 205,800人となっており、世界の1/4に迫っている。 ・5月にはブラジルが6.8%と最も高かったが、8月にはブラジルが感染拡大の影響でCFRが 3.2%まで低下した。そのため、早い段階で感染が終息した中国は5.5%~5.3%で横ばいとな っているが、この地域では、もっとも高くなっている。ブラジルは先に中南米諸国のところで述 べたように、感染者数が急増しているため、CFRは右肩下がりに低下しているが、大統領の 危機意識が低いことが問題視されており、今後再び上昇する可能性もある。 ・インドは3.2~1.8%へと低下したが、急激な感染者数の増大がその背景にある。 ・南アフリカは7月から8月に掛けて上昇に転じている。インド、ロシアと同様に、感染者数の 急増が背景となっている。 ・ロシアでも5月以降CFRは右肩上がりに漸増傾向(0.9~1.7%へと倍増)を示しており、政権 への批判が噴出している。中国を初め各国とも感染者数は増加傾向にあるため、引き続き警 戒が必要である。 ・ASEAN諸国は、5月以降、グループの平均が2.1%から1.5%へと右肩下がりに低下していた が、8月末は1.5%のまま横ばいとなった。このグループの平均が低い背景には、早期の段階 から対策を強化したシンガポールが0.1%と低いのに加えて、カンボジア、ラオス、ベトナムなど の東南アジア諸国が長期間死亡者を出さなかったことが大きく寄与している。ただし、ベトナム ではこれまで死亡者ゼロで推移してきたが、7月末から死者が出始め、8月26日時点では、1029 人の感染者に対して、死亡者は27人まで増加したため、CFR高くなっている。 フィリピン、インドネシア、ミャンマーでは感染者数が急増し、相対的にCFRは低下している。 タイとマレーシアはいずれも2%以下で安定した推移となっている。ブルネイは月以降、2.1%で 横ばいとなっている。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (6)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> BRICS及びASEAN ・BRICS諸国では、タイムラグを考慮したCFRはこの3ヶ月半で4.5%から1.9%まで低下して いる。 ・中国は感染拡大が早かったため他の国より早く一段落しているが、その他の国々はロシ アも含めて現在も感染が拡大しているため、CFRは相対的に低下している。 ・ASEAN諸国はベトナムで7月末に死者が出たことにより、一気にCFRが上昇したが、その 後は感染者数も増加しているため、CFRは大きく低下した。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (7)旧社会主義国・北欧諸国 旧社会主義国 (7)-1a 死亡数及び発症数の累積値による旧社会主義国のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・中国、キューバ及び旧ソ連邦諸国のグループ平均は7月中旬以降に低下し初め、今回の調査では、 3.1%と前回に比べて0.3ポイント低下した。このグループでは依然としてハンガリーが12%と極めて高 いレベルで推移している。 ・ハンガリー以外の国々は、CFR自体は低いが、アルメニア、ロシアにおいて僅かながら上昇傾向を示 し、ロシアでは、5月の0.9%から2倍近い1.7%まで上昇した。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (7)-2a <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> 旧社会主義諸国 ・3週間のタイムラグを考慮したこのグループのCFRの推移は4.7%から2.0%へと大きく低下している。 ・国別で見ると、クロアチア、ブルガリアで5月に発症した人の6月に入ってからのCFRは極めて高く、 早い段階で感染が拡大したことがわかる。その後は各国とも減少しCFRは安定している。 ・その中で、ハンガリーは8月後半に再びCFRが上昇に転じていることが注目される。 ・リトアニア、ウクライナでは、8月にかけて再びCFRが上昇傾向を見せている点が注目される。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 北欧諸国 (7)-1b 死亡数及び発症数の累積値による北欧諸国のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・北欧諸国では、スウェーデンが5月には13%であったものが、8月には7.1%まで低下しているものの このグループの中では最も致命率が高く平均値を押し上げている。 アイスランドは0.5%で横ばいとな っており、安定している。 ・北欧諸国では、地域平均のCFRが5.1%から3.5%へと1.6ポイント低下している。 ・中でもスウェーデンのは、5月中旬に12.5%だったものが、8月末には6.7%へ半減し、地域の平均値を 押し下げている。この数値からも当初の感染拡大の勢いが裏付けられている。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (7)-2b <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> 北欧諸国 ・タイムラグを考慮した北欧地域のCFRは平均で3.1%から1.3%へと1/3に低下している。これは、もっぱ ら、スウェーデンが大きく寄与している。 ・スウェーデンは5月の発症者が6月に入って死亡した割合が8%と高かったがその後は、1.5~1.3%に抑 えられている。 ・ノルウェーも6月のCFRが高く、その後低下しているが、フィンランドとともに、再び8月に入ってタイムラグ を考慮したCFRが上昇している。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (8)中南米諸国 (8)-1 死亡数及び発症数の累積値による中南米諸国のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 CFRが減少傾向を示している。地域平均のCFRは5月中旬に3.7%だったものが8月下旬には 3.3%と僅かに低下しほぼ横ばいで推移している。 ・感染者数の多い国(アメリカ及びBRIS)に次いで6位~8位がペルー、メキシコ、コロンビ アと中南米諸国で占められている。 ・感染者数が世界2位のブラジルでは、CFRが6.8%から3.2%へと3.6ポイント低下してい るが感染者数の拡大がCFRを相対的に低くしている。 ・メキシコは7月末まで上昇傾向を示し12%を超過したが、8月に入り1ポイント低下し、 11%となった。 ・メディアでも連日報じられているブラジルは、8月に入り感染者数が370万人を上回り 400万人に迫る勢いで急増しているが、相対的にCFRはこの2ヶ月半6.8%から3.2%へと大幅 に減少し右肩下がりとなっている。 ・その他の国をみると、対象としている16ヶ国の中で、依然として8ヶ国が微増傾向を示し、 感染者が急増するなか、死亡に至る人数が増えていることがわかる。7月から8月にかけ てボリビア、パナマ、ペルー、グアテマラ、エルサルバドル、チリ、コスタリカなどで上 昇傾向が見られる。 経済が脆弱で貧困層が集中する都市部での感染拡大や高齢者層への感染拡大が課題 となっていることが伺える。南半球地域は、季節が秋から冬へと移っており、感染の拡大し やすい気象条件となっている。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (8)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> 中南米諸国 ・タイムラグを考慮した場合、この地域のCFRは5.6%から3.4%へと2ポイントほど低下している。 ・アメリカに隣接するメキシコでは、5月に発症した患者が6月に死亡する割合が23%超と高かっ たがその後は低下し、8月末には9.1%まで下がっている。しかし感染者数が急増しているため、 今後も予断を許さない状況が続いている。 ・その他の多くの国で6月のCFRが高くなっているが、ペルー、ウルグアイ、エル・サルバドール、 パラグアイ、コスタリカなどでは、ゆっくりと感染が拡大しているためか、7月、8月にCFRが上昇し ている。 ・そうしたなかで、キューバは僅かに上昇しているものの0.8~1.1%と低く維持されている点が注目 される。社会主義国として、医療制度が充実していることを示した数値と言える。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (9)アフリカ諸国 (9)-1 死亡数及び発症数の累積値によるアフリカ諸国のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・CFRの地域平均は4.1%から2.7%へと低下しているが、多くの国で感染がゆっくりと拡大しているため、 相対的にCFRは低くなっている。 ・中南米諸国と同様に減少傾向を示している国が多いが、8月に入り、対象としている21ヶ国のうち4ヶ 国では依然として増加傾向となっている。ジンバブエ、エジプト、スーダン、南スーダン、ザンビアなどで 増加傾向が見られる。 ・ジンバブエは5月に11%だったものが、7月までに1.9%へと大幅に減少したが、その後、8月末にかけて 再び増加に転じ2.7%となっている。その背景には、感染者数が5月は34名だったものが2ヶ月半後の8月 5日には4300人、8月26日には6200人へと大幅に増加したことがある。 死亡者数は6月中は一桁だったものが、7月15日には20人、その後81人、166人と急増している。データの 不確実性はあると思うが、アフリカ諸国では、今後もゆっくりと貧しい地域に感染が広がっていくことが心配 されており、致命率が上昇する可能性もあり得る。 ・ボツワナでは7月の調査でCFRが0.3%と低くなっている。その背景は、感染者数が5月~8月の間の3週間 ごとに、24人⇒40人⇒89人⇒399人⇒804人⇒1562人と5月から8月末までに65倍も増加しているなか、死 亡者は3人にとどまっていることがある。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (9)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> アフリカ諸国 ・タイムラグを考慮したCFRでみると、アフリカ地域の平均は、5.1%~2.3%へと低下している。 ・6月前半の致命率が高い地域もあるなか、7月後半や、8月に入ってCFRが高くなっている地 域も見られる。 ・ザンビアは7月後半の致命率が31%と極めて高い。これは、6月後半の発症者数が418人であ るのに対して、3週間後の7月後半に死亡した人数が131人と多いことに起因している。 その後は、感染者数が1895人から6793人へと4900人近く急増したのに対して、三週間後の死亡 者数は109人の増加(CFR=2.2%)で収まっていることによる。 ・今後もアフリカ地域では集落が点在していることもあり、医療サービスが行き届かない場合に CFRが急増することも考えられる。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 (10)中東諸国 (10)-1 死亡数及び発症数の累積値による中等諸国のCFR(%) 注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第六回目報告である。 ・中東諸国では6回の調査の平均値が、3.2%から3.6%へとわずかに上昇している。 ・対象としている14ヶ国のなかで、イエメンが突出しており、5月中旬以降、CFRが右肩 上がりとなり、18%から29%にまで上昇した。 ・シリアとイラクは6~4%の範囲で推移しているが、7月中旬以降やや上昇傾向を示し たことが注目される。 ・その他の国々はいずれも2%以下で推移しており、イエメンを除けば、地域の平均は 1.7%となる。 ・レバノンは右肩下がりにCFRが下がっているが、その背景には、7月以降の急激な感染 者数の増加がある。5月15日には891人だった感染者数が8月26日には15倍以上の13,687 人まで増加している。8月4日にレバノン中心部港湾地域で起きた化学物質の爆発事故以 来、生活が不安定となっていることがうかがえる。 ・この地域で最も感染者数、死亡者数が多いのは早い段階から感染が広まったイランであ り、最新の累積CFRは(20.900人/363,300人=5.8%)となっているが、感染者数・死亡者数 共にこの増加は約3倍となっている。 ・一方で、戦争状態にある、イエメン、シリア、イラクについてみると、この調査を開始した5月 中旬から8月下旬までの間に、感染者数はそれぞれ,イエメン23倍、シリア49倍、イラク67倍 に増加し、それらに対応して、死亡者数がイエメン37倍、シリア32倍、イラク57倍と突出して いる。データの正確さに問題がある可能性は否定できないが、政情不安、事故や戦争等に よる生活の不安が人々の健康にも大きな影響を及ぼしていることがはっきり浮き彫りになっ ている。 出典:青山貞一・池田こみち 第六回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-9 (10)-2 <3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移> 中東諸国 発症・死亡のタイムラグを考慮した中東諸国の致命率(%)の推移 ・タイムラグを考慮したCFRをみると、中東地域の平均は5月中旬に6.8%だった ものが4.5%まで低下しており、累積でみたCFRより高い割合であることがわかる。 平均値からイエメンを除くと、8月末のこの地域のCFRは3.2%となる。 ・イエメンは5月中旬以降の発症者の3週間後の致命率は、55%にも達していた が、その後は21%まで低下している。 ・一方、シリアは7月に入ってから致命率が1.3%から13%へと10倍も急上昇しそ の後は僅かずつ低下している。戦争状態にある地域では、感染が死に直結する可 能性が高いことをうかがわせる。 ・イラクは、イエメン同様に6月上旬から中旬にかけての致命率が約24%と高く、 その後は一気に低下し、8月には3%まで下がっている。 ・レバノンは累積のCFRで見ると単純な右肩下がりであるが、タイムラグを考慮 すると7月から8月にかけてCFRが上昇し、5月中旬(1.3%)の2倍以上(2.8%) となっている。 ・ヨルダンの累積CFRはこの3ヶ月半の間に1.5%~0.8%と右肩下がりに低く推移 されてきたが、タイムラグを考慮した場合には、前半は0.3%前後で推移してい たCFRが8月に入って一気に12%まで上昇する事態となっていた。しかし、実際の 数値を見てみると、7月中旬から8月にかけて発症数26人のうち三週間後までに死 亡したのは3名であり、感染者数、死亡者数ともに低く維持されていることがわ かった。 以下は感染と死亡の3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移 出典:青山貞一・池田こみち・鷹取敦 第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-8-29 まとめ 今年の初めから春までは、夏になれば収束するといった楽観論が世界を駆け巡っ ていたが、実際のところ、人類は世界各地で夏には早くも第二波の大きな波に襲 われ、先の見えないウィルスとの闘いを強いられている。 これまで分析してきたように、人が感染を免れるかどうかは、それぞれの暮ら す国や地域の政治力(政治家のリーダーシップ)、行政力、科学技術力、社会経 済力など様々な要因によって大きな違いがあることがはっきりしてきた。経済力 だけではウイルスには勝てない。 ウイルス自体がその遺伝子配列を変えながら変異し続け、人や物とともに飛行 機や鉄道などに乗って世界を移動し、人から人へと感染が広がるなか、如何に感 染を防げるか、死に至らずに済ませられるか、まさに、人間の総力が試される時 と言えるだろう。 地域別、年齢別、社会的な背景など細かく見ていくと、戦争状態にある地域、 高密度な都市部や貧困層が集中する都市部周辺地域、高齢者施設などでのクラス ターばかりでなく、人々の日常的な生活の場(食事、会合、娯楽、移動など)も 感染の温床となっていることが分かってきている。 日本では第二波のピークアウトがささやかれているが、引き続き、世界各国、 各地域の動向を注意深く観察し、各地の取組から学び、少しでも早く収束できる ように、一人一人が真摯にこの事態に向き合う必要があるだろう。 いかに感染率(陽性率)を減らすことができるか、万一感染しても人に感染さ せないようにするにはどうしたらいいのか、また、重症や死に至らないようにす ることができるか、データをしっかり分析しわかりやすく市民に示しながら、進 むべき道、とるべき対策を示すリーダーシップが求められている。 ひとたび感染した場合には、急速に重篤化して死に至ることも考えられること 、また、若年層であっても深刻な後遺症を引き起こすこともあることなどから、 引き続き、医療体制の適切な維持を最優先に取り組む必要がある。 1)検査態勢の拡充にによる感染者の特定と隔離 2)感染経路の追跡と濃厚接触者の追跡調査の徹底 3)科学的なデータに基づいた市民へのリスク・コミュニケーションの徹底 4)先をみた政策・対策を早め早めにうっていくこと などがまずは重要となるだろう。 ◆解説 COVID-19リスクの調査評価指標 本調査の目的は世界各国。地域、経済グループ等を対象に、致命率(CFR:死亡者数/感染者数)を 明らかにすることである。すでに以下のように五回調査をしている。 過去の調査結果は以下 ◆第一回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち ◆第二回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち ◆第三回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち ◆第四回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち ◆第五回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち 本稿では、致命率(CFR: Case Fatality Ratio)をCOVID-19感染がもたらすリスクの代表的な 指標として、総合評価を行うこととした。それは、単なる感染者数、死亡者数だけでなく、感染者がそ の国、地域で死に至った背景、具体的には、今回のようなパンデミックに対応できる救急搬送体制か ら病院数・病床数・医療設備・医師・看護士などの医療リソースの充足度、また、医療体制の有無、さ らには国や自治体のリスク管理政策の妥当性など、如何に死者を減らせるか、医療崩壊に至らずに 済むかを反映した指標であると考えたからである。 なお、CFRが10%の場合、感染者100人の場合、10人が死亡者となる。CFRが5%の場合は、感 染者100人の場合、5人が死亡者となることになる。 その結果、これまで分からなかったCOVID-19がもたらす「医療に関するカントリーリスク」についての 国際比較が可能となりつつある。 本調査では、2020年8月5日時点での105各国の致命率を求め、評価している。第一回目は20 20年5月15日、第二回目は2020年6月3日、第三回目は2020年6月24日、第四回目は2020 年7月15日、第五回目は2020年8月5日である。 以下は致命率とは何かの説明である。 まず、類似の指標として死亡率があるが、致命率と死亡率との関係は以下の通りである。分母が罹患 数の場合が致命率、分母が人口の場合が死亡率である。ここでは、世界各国のCOVID-19に感染した 人を対象としているので、致命率となる。 <用語解説> 致命率 (CFR: case fatality rate) は、疫学において特定の疾病に罹患した母集団のうち、その感染が 死因となって死亡する割合。致命率は通常、%で表されリスクの測定値を表す。 なお、致命率は英語ではCase Fatality Ratioであり、略称CFRである。致命率が、10%の場合、 感染者の10人に1人が死亡数、5%の場合、20人に1人の場合の死亡数となる。 CFRはさまざまな目的に援用できるが、これが増えるのは、総じて死亡者が増加することの警報 である。 CFR(致命率)は、各国の救急搬送(ネットワーク)、救急医療、病床数、院内リスク管理体制、医師・看 護数、既往症・持病者対応、高齢者対応など院内感染、医療崩壊に通ずる重要な観点の総合指標と言 える指標である。 |