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キーワード:新型コロナウイルス、COVID-19、致命率、CFR、死亡者数/感染者数、 リスク総合評価、Case Fatality Rate、世界各国、世界地域、日本、 G7,G20、BRICS、ASEAN、旧社会主義諸国、北欧諸国、 中南米カリブ諸国、アフリカ諸国、中東諸国、 第一回目調査、第ニ回目調査、第三回目調査、第四回目調査 過去の調査結果は以下 ◆第一回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち ◆第二回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち ◆第三回 致命率(CFR)による世界各国・グループ別COVID-19リスク評価 青山貞一・池田こみち はじめに 本調査の目的は世界各国。地域、経済グループ等を対象に、致命率(CFR:死亡者数/感染者数)を明らかにすることである。本調査はその第四回目である。 本稿では、致命率(CFR: Case Fatality Ratio)をCOVID-19感染がもたらすリスクの代表的な指標として、総合評価を行うこととした。それは、単なる感染者数、死亡者数だけでなく、感染者がその国、地域で死に至った背景、具体的には、今回のようなパンデミックに対応できる救急搬送体制から病院数・病床数・医療設備・医師・看護士などの医療リソースの充足度、また、医療体制の有無、さらには国や自治体のリスク管理政策の妥当性など、如何に死者を減らせるか、医療崩壊に至らずに済むかを反映した指標であると考えたからである。 なお、CFRが10%の場合、感染者100人の場合、10人が死亡者となる。CFRが5%の場合は、感染者100人の場合、5人が死亡者となることになる。 その結果、これまで分からなかったCOVID-19がもたらす「医療に関するカントリーリスク」についての国際比較が可能となりつつある。 ◆COVID-19リスクの調査評価指標 本調査では、2020年7月15日時点での105各国の致命率を求め、評価している。第一回目は2020年5月15日、第二回目は2020年6月3日、第三回目は2020年6月24日、第四回目は2020年7月15日である。 以下は致命率とは何かの説明である。 まず、類似の指標として死亡率があるが、致命率と死亡率との関係は以下の通りである。分母が罹患数の場合が致命率、分母が人口の場合が死亡率である。ここでは、世界各国のCOVID-19に感染した人を対象としているので、致命率となる。 <用語解説> 致命率 (CFR: case fatality rate) は、疫学において特定の疾病に罹患した母集団のうち、その感染が死因となって死亡する割合。致命率は通常、%で表されリスクの測定値を表す。 なお、致命率は英語ではCase Fatality Ratioであり、略称CFRである。致命率が、10%の場合、感染者の10人に1人が死亡数、5%の場合、20人に1人の場合の死亡数となる。 CFRはさまざまな目的に援用できるが、これが増えるのは、総じて死亡者が増加することの警報である。 CFR(致命率)は、各国の救急搬送(ネットワーク)、救急医療、病床数、院内リスク管理体制、医師・看護数、既往症・持病者対応、高齢者対応など院内感染、医療崩壊に通ずる重要な観点の総合指標と言える指標である。
◆調査対象国 次に調査の対象だが、第一回同様、世界105ヵ国とともに、以下に示す国家グループを対象としている。但し、国際機関、事務局は含めていない ①G7加盟国(7ヵ国) ②EU加盟国(27ヵ国) ③G20加盟国(19ヵ国) ④北欧諸国(5ヵ国) ⑤それ以外国(3ヵ国) ⑥アフリカ諸国(25カ国) ⑦BRICS加盟国(5ヵ国) ⑧旧社会主義諸国(17ヵ国) ⑨中南米島嶼諸国(15ヵ国)、 ⑩中東諸国(14ヵ国) ⑪アセアン加盟国(10ヵ国) 注)一部、11グループ間で重複している国がある。 調査対象国は全部で105である。 ◆調査年月日時 調査日は、2020年7月15日 UTC 午前4時34分(日本時間で午後1:34)である。 ◆基本データの出典 国別のCOVID-19感染者数、死亡者数などの基本データの出典はJohns Hopkins University(JHU,米国)である。 ◆赤色線 赤線はCFRの全世界平均値である。今回の場合CFR=3.9である。各グラフではこれを赤線で入れている。 ◆第四回調査により判明した顕著な傾向と事実 <全体の傾向> 1.経済圏別の平均値の推移 ・WHO及びジョンズ・ホプキンズ大学がとりまとめている全世界のCovid-19感染が確認されている国と地域は188にのぼる。 5月15日~7月15日の2ヶ月の推移は以下に示すとおり、減少傾向となっており、 105ヶ国を対象としている本調査では、3.9%となった。 感染者数 死者数 致命率(CFR) 本調査 第一回調査日 5月15日 4,477,000人 303,400人 6.35% 4.4% 第二回調査日 6月 3日 6,405,000人 380,800人 5.93% 4.1% 第三回調査日 6月24日 9,293,000人 478,000人 5.15% 4.0% 第四回調査日 7月15日 13,286,000人 579,000人 4.35% 3.9% その理由としては、2ヶ月で感染者数が約3倍に増加したことがあげられる。また、半年間に及ぶ全世界での経験の下、患者への対応が改善され死に至る数も減ってきていることや、感染者の年齢層が高齢者から若年層へと移行して広がることにより、無症状キャリアが増加し、重篤者の数が減ってきていることも考えられる。 経済圏別には総じて、横ばいから微減傾向となっているが、感染が爆発的に増加したアフリカ諸国では、4.1%から2.9%へとCFRの低下が大きい。その背景には、データの不確実性もあるものと思われる。 多くの地域でCFRは僅かながら低下傾向にある中で、中南米諸国は横ばい、中東地域は微増となっている点に注目すべきであろう。 世界105ヵ国のCFRの全平均は、4.4→ 4.1%→ 4.1% →3.9%へ減少している。 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2.地域別の推移 (1)G7諸国 ・G7諸国は先進国であるにもかかわらず、この2ヶ月でグループのCRF平均値は10%~9.6%へとわずかに低下したものの、世界で最も高い値となっている。フランス、イギリス、イタリアのヨーロッパの3ヶ国が14%~17%と極めて高く、全体の平均を押し上げている。 ・G7のなかで、最も感染者数が多いのは、アメリカ(US)で全世界の感染者数の1/4以上を占めている。その背景には、検査数が多い(ニューヨーク州では毎日5~6万人を検査)ため、陽性者数が多数発見されていることがあるが、死亡者数も世界の約24%を占めるに至っている。感染拡大当初の1月~3月にはニューヨーク州ではピーク時、一日に750人超の死亡者が出ていたことから医療の逼迫もCFRを引き上げる要因となったことは明らかである。全米のCFRは5月には6.1%だったが、7月15日には4.0%へと低下している。分母が大きくなっていることがその理由の一つといえる。特に5月半ばから6月にかけて経済活動を再開したあと、それまでの数値を上回る勢いで感染者が急増したことが大きな原因となっている。 ・G7のなかで、ドイツと日本はほぼ同じような推移をたどり、5月末から6月中旬にかけて僅かにCFRが増加したものの、7月には再び低下し、4.5%前後で推移している。日本では、6月中旬以降、再び感染が拡大しつつあり、若者から高齢者に伝播することによりCFRの増加へとならないように注意が必要である。 (2)G20諸国 ・G20諸国の平均CFRの推移は5月15日(6.2%)から7月15日(5.7%)へと僅かに低下した。上位はフランス、イギリス、イタリアなどのヨーロッパ勢が10%を超えるレベルとなっておりG20諸国の平均値を押し上げている。次いで、カナダが8.0%と高い値で推移している。 この二ヶ月の傾向を見ると; ・右肩下がりに低下傾向を示した国:フランス、ブラジル、インドネシア、アメリカ、アルゼンチンとなっている。これらの国々のなかで、ブラジル、インドネシア、アメリカ、アルゼンチンはいずれも感染者数が膨大に増えたことにより相対的にCFRが低下しているため、今後、タイムラグがあって、死亡者が増加しCFRが上昇に転じることも考えられる。 ・日本のように5~6月にかけて上昇し再び低下したのはイタリア、カナダなど。 ・5月から7月にかけて僅かずつでも上昇傾向を示した国:メキシコ、ロシア、サウジアラビアなどである。 各国とも経済の再開と共に再び感染拡大の傾向が見られており、感染が貧困層や高齢者、障害者などの弱者に及んだ場合には再びCFRが増加に転じることも危惧される。 出典:Global Note (3)EU諸国 ・EU加盟27ヶ国全体のCRF平均値は5月に6.7%だったものが6.2%まで僅かに改善している。経済活動が再開されてから各地で再び感染の拡大が見られていることがその背景にあると思われる。 ・EU諸国の中で最もCFRが高いフランスでは、EU諸国の平均を大きく上回り、5月~6月は19%に迫るレベルだったが、7月に入り17%まで2ポイント低下している。ヨーロッパではイギリス(UK)が最も多く、45,000人を超えている。イギリスが離脱した後のEU内においては、フランスの死者数は30,000人とイタリア(35,000人)を下回っているが、CFRは、フランスが17%、イタリアが14%と3ポイントフランスが高くなっている。 ・4回の調査の推移を見ると、ほとんどの国が低下傾向を示しているなかで、ハンガリーとリトアニアが上昇傾向を示し、アイルランドも上昇したまま横ばいとなっている。 ・スウェーデンは当初からCovid-19に対して特別な対策を講じずに感染を放置したとして批判を受けてきたが、その後は政府が方針転換し、マスクを初めとする予防策を積極的に講じるようになったためか、5月に13%だったものが7月には7.3%まで大幅に改善しており、重篤化する人数が減ってきていることがうかがえる。 スウェーデンの感染者数、死亡者数、CFRの推移 ・EU内では、ドイツが当初から感染者数、死者数ともに低く維持してきたことが注目されてきたが、2ヶ月の間で大きな変化は見らず、CRFは4%半ばで推移している。 (4)それ以外の国(スイス他全3ヶ国) 上記の経済圏に属さない先進国、アイルランド、スイス、ニュージーランドを見てみると、各国とも大きな変化はなく横ばいとなっている。アイルランドとスイスはほぼ同レベルであり、ニュージーランドは1.4%と低く維持されてきた。同国ではアーダーン首相がいち早く勝利宣言を行い、経済活動も再開している。 (5)BRICS・ASEAN諸国 BRICS諸国(ブラジル、ロシア、中国、南アフリカ)は、グループ平均が3.7%~2.9%へと低下している。この中では中国が5%と最も高く、次いでブラジルが3.8%となっている。ブラジルは先に中南米諸国のところで述べたように、感染者数が急増しているため、CFRは右肩下がりに低下しているが、医療が逼迫する中、今後再び上昇する可能性もある。インドは2.5~3.0%で横ばい、南アフリカは減少傾向を示している中、ロシアは5月には0.9%だったものが1.6%まで右肩上がりに上昇している。中国を初め各国とも感染者数は増加傾向にあるため、引き続き警戒が必要である。 ASEAN諸国は、グループの平均が2.1%から1.5%へと右肩下がりに低下している。このグループの平均が低い背景には、早期の段階から対策を強化したシンガポールが0.1%と低いのに加えて、カンボジア、ラオス、ベトナムなどの東南アジア諸国が0%となっている点が大きく寄与している。 一方で,フィリピン、インドネシア、ミャンマーでは感染者数が急増し、相対的にCRFは低下している。タイとマレーシアはいずれも2%以下で安定した推移となっている。 (6)旧社会主義・北欧諸国 中国、キューバと旧ソ連邦諸国のグループ平均は3.7%前後で横ばいとなっている。このグループで特筆すべきは、CFRが13~14%と極めて高いハンガリーである。 7月15日時点で、4,258人の感染者に対し、595人が死亡している。2ヶ月前の5月中旬は、感染者数が3,417人に対して、死亡者数442人であり、CFRは12.9%だったので、この2ヶ月で感染者数が25%増、死亡者数は35%増と感染者数の増加を死亡者数の増加が10ポイント上回っていることが大きく影響している。多くの国々が横ばいから低下傾向を示す中、上昇傾向を示している点が注目される。ハンガリーでは、感染者の40%が首都ブタペストに集中しており、大都市部の高密度が影響していると考えられる。 (7)中南米及び島嶼国 ・中南米地域では、多くの国と地域で感染者数が増加しているため、CFRが減少傾向を示すなか、メキシコは増加傾向を示している。メキシコでは、2ヶ月前の5月15日には10.5%だったものが、7月15日の第四回調査では12%へと増加してい る。 ・一方、メディアでも連日報じられているブラジルは、感染者数が200万人を突破し、急増しているがCFRはこの2ヶ月で6.8%から3.8%へと大幅に減少し右肩下がりとなっている。 ・その他の国をみると、対象としている16ヶ国の中で、8ヶ国が微増傾向を示し、感染者急増の中、まだまだ死亡に至る人数が増えていることがわかる。増加傾向が著しい国は、ペルー、グアテマラ、エル・サルバドル、チリとなっている。 経済が脆弱で貧困層が集中する都市部での感染拡大や高齢者層への感染拡大が課題となっていることが伺える。 (8)アフリカ諸国 ・中南米諸国と同様に減少傾向を示している国が多いが、対象としている21ヶ国のうち8ヶ国では増加傾向となっている。スーダン、アンゴラ、エチオピア、赤道ギニア、ザンビア、ガーナなどで増加傾向を示している。 ・ジンバブエは5月に11%だったものが、7月には1.9%へと大幅に減少している。その背景には、感染者数が5月は34名だったものが2ヶ月後の7月には1064人へと大幅に増加していることがある。データの不確実性はあると思うが、アフリカ諸国では、今後もゆっくりと貧しい地域に感染が広がっていくことが心配されており、致命率が上昇する可能性もあり得る。 ・ボツワナでは7月の調査でCFRが0.3%と低くなっている。その背景は、感染者数が5月~7月の間の3週間ごとに、24人⇒40人⇒89人⇒399人と増加しているなか、死亡者は1人のままとなっていることがある。 (9)中東諸国 ・中東諸国では4回の調査の平均値が、3.2%から3.7%へとわずかに上昇している。対象としている14ヶ国のなかで、イエメン、シリア、イラン、イラク、トルコ、サウジアラビアなどが前回から上昇傾向を示し、中でも戦争が続くイエメンでは5月に18%だったものが2ヶ月後の7月には28%へと10ポイント上昇している。 政情不安が人々の健康にも大きな影響を及ぼしていることがはっきり浮き彫りになっている。 まとめ WHOが指摘するようにCovid-19による世界規模のパンデミックは、依然として拡大傾向にあることから、CRFは相対的に全世界的に低下している。しかし、地域別、年齢別、社会的な背景など細かく見ていくと、戦争状態にある地域、高密度な都市部や貧困層が集中する都市部周辺地域、高齢者施設などでのクラスターも多く見られ、引き続き、医療体制を適切に管理しながら維持していくことが必要であることは間違いない。 ◆全世界CFR調査結果 ①世界105カ国の平均CFR(全詳細グラフは巻末参照) 世界105ヵ国のCFRの全平均は、4.4→ 4.1%→ 4.1% →3.9%へ減少している。 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-27 ②世界の地域別・経済圏別の致命率(CFR) 以下のグラフの上にある数値及び左のグループ説明の右にある数値はCFR=死亡者数/感染者数(Case Fatality Ratio)である。 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-27 ③G7・G20・EU諸国の国別致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 G7諸国の国別致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 G20諸国の国別致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 ④EUの国別致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 G7・G20・EU以外の国別致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 ⑤BRICS、ASEANの致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 ⑥旧社会主義諸国・北欧諸国の致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 ⑦中南米島嶼国の致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 ⑧アフリカ諸国の致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 ⑨中東諸国の致命率(%)の推移 出典:青山貞一・池田こみち 第四回 致命率(CFR)による世界各国・地域別 COVID-19リスク総合評価 2020-7-17 |