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一昨年、私は「除染」は「移染」そして「利権」という論考を書いた。つまるところ、「除染」は「汚染」を他に移す「移染」でしかなく、最終的に海に流れ込む。そして、巨額の公金、税金が浪費されると言うのが私が論考を書いた趣旨だ。 その後、米国からその論考を掲載したいという雑誌の編集者からの連絡があり、以下を書いた。以下は英文の論考である。 ◆Teiichi Aoyama, Decontaminate the Fukushima decontamination project “Josen”(the decontamination of radioactive substances) equals to “Isen”(the relocation of contaminated materials) and to the “Concession”for the related organizations. 邦題:「除染」は「移染」そして「利権」 さてやれやれ、やっぱり、「除染」は「移染」そして「利権」でしかない事件が起きた。 既報のように、取り除いた汚染土壌や枝葉、それに放射性物質などの汚染の洗浄水を除染作業現場近くの川などに廃棄していた事実が内部告発から明るみに出た。がれき広域処理などで濡れ手に粟状態のゼネコンの現場監督自身がそれを指示していたことまで分かってきた。 がれき広域処理に係わる費用でも、当初の処理見込み量にもとづいた当初の契約額と実際に処理量があまりにも違うことが宮城県議会で指摘され、ゼネコン側が400〜500億円も行政側に返したり、またろくに何もしない自治体に300億円もの公金を環境省がバラまいていたことが明るみになっている。 ◆池田こみち瓦礫受入除外自治体に340億円の交付金の笑止千万 今回の問題も発注元である環境省が契約違反とみて調査を始めたらしいが、もとより環境省自身がおよそこの種の事業を担当する当事者能力が全くないことが大問題である、と私達はここ1年半、指摘し続けてきた。 今回の一件以前から、「放射性物質、放射能は水に流す」をことを実質容認してきた経済産業省、原子力関連委員会、環境省が、何を今更という事件である。 何度も指摘するように、原発から30〜50km圏内の自治体で局所的に汚染を一旦除去し、そこにお年寄りなどを戻そうとする今の環境省とゼネコン主導の「除染」は、ほとんど本質的な意味はなく、結果的に「移染」そして「利権」に帰結するだけである。 以下は、当初(2011年12月10日)に書いた「除染」は「移染」そして「利権」の論考である。 2011年11月3日、日本弁護士連合会主催により福島市公会堂で開催された脱原発シンポの第一部でプレゼンした私は、最後に残念ながら「除染」は、結局「移洗」にしかならず、何兆円という膨大な費用は、結局利権の種になると断言した。 ◆日弁連・福島シンポジウム「脱原発から廃炉への道筋」第1部 You Tube また神戸大学の山内教授は、「除染しても、放射性物質は別のところに移動するだけ。なくなりはしない。まだら状の分布が変化するだけ。雨が降れば、山からセシウムが流れてくるので、多摩川河川敷の放射線量は、どんどん上昇する。東京都民の水がめのダム地底には、高濃度のセシウムが堆積している。大雨が降れば、流れ出す。除染は、ゼネコンが税金に群がるためにでっち上げられた茶番劇。壮大な無駄遣い。まだら状になっているセシウムの分布図を変化させるだけの除染は、まったくナンセンス。小学生でも分かる。霞ケ浦などの湖・沼の線量は上昇してゆく」と言い切っている。 さまに、まだら状になっているセシウムの分布図を変化させるだけの除染は、まったくナンセンスなのである。 ◆神戸大学・山内知也教授:除染しても拡散する放射性物質 子どもや妊婦はまず避難してほしい Actio 東京新聞の2011年12月8日朝刊では、「造ることで稼ぎ、壊れても稼ぐ… 大手ゼネコンが握る「除染利権」」という見出しで、除染業務は独立行政法人・日本原子力研究開発機構(原子力機構)が元請けとなり、大手ゼネコンによる3つの共同企業体(JV)に下請けされると報じた。 同紙はさらに、受注するJVは、もともと原発建設の受注でトップスリーを占める大手ゼネコンであることが分かったという。 下の東京新聞に掲載された図は、原子炉の建屋を受注したゼネコンの勢力図である。原発建屋のうち福島第一原発及び福島第二原発は鹿島建設がすべて受注していることが分かる。 出典:東京新聞の2011年12月8日は、「造ることで稼ぎ、壊れても稼ぐ… 大手ゼネコンが握る「除染利権」」 以下は東京新聞記事のリード部分である。
私は常々、日本のダムや道路、原発などの公共、公益事業は、「政」「官」「業」「学」「報」、すなわち政治家・政党、官僚・省庁、業者・業界、御用学者、御用報道機関による強固な五角形(ペンタゴン)のもとに推進されてきたと述べてきた(以下のUstream動画や論考を参照)。 ◆青山貞一: 原発と民主主義(一問一答) USTREAM Ch5 ◆青山貞一:情報操作による世論誘導@日本固有の仕組み 「政」「官」「業」「学」「報」のペンタゴン 原子力村は、原発事業におけるまさに利権のペンタゴンであるが、問題のひとつは、自民党政権下ではなく、民主党政権でこんなとんでもない利権行為が白昼堂々と行われてきたことだ。 最近私が書いた論考にあるように、こと原発事業に関しては、自民党も民主党もない。民主党の場合は、電力労連、電機労連など労働組合も積極的に政策、事業を支援してきたことからして、民主党政権下でも自民党顔負けのこの種の利権が容認されていると見てよいだろう。 ◆青山貞一:政治資金報告書等に見る政治家の非常識 B電力・電機系議員への献金 何ともやりきれない、しかも日本的な話ではあるがまぎれもない事実である! 下図は、同じく東京新聞記事にある除染モデル事業でゼネコンのJVが受け持つ市町村である。 出典:東京新聞の2011年12月8日は、「造ることで稼ぎ、壊れても稼ぐ… 大手ゼネコンが握る「除染利権」」 今回の事業は、本格的除染に先立つ、除染モデル事業だそうだが、内閣府から除染モデル事業を一括受注した独立行政法人・日本原子力研究開発機構(原子力機構)が鹿島、大成、大林組の3社に受注させ、さらにその3社がそれぞれのゼネコン傘下企業に再委託したそうだ。 モデル事業は総額で、約190億円だが、JV全体への委託額の総額は72億円で、みのもんた氏がキャスターを努めるテレビ番組でピンハネ疑惑が提起された。
当初、原子力機構は、ピンハネを否定したが、どうみてもこれはピンハネ以外の何物でもない。さらにおかしいのは、原発事故を起こした側の国所管の原子力機構と原発の建屋建設を受注してきた巨大ゼネコンが堂々と業務を受注していることにある。 さらに今回のモデル事業の後、巨額に及ぶことが想定される本格的な除染事業が上記のJV各社とその傘下企業により大々的に行われることだ。 先の東京新聞では、「除染事業の受注に期待を寄せていた福島県内の建設業者の一人は「(ゼネコンは)下請けも県外の系列会社を連れてくるだろうから、地元に落ちる金は少ない。そもそも除染は人海戦術が柱で、高度な技術はそれほど必要ない。ゼネコンにやらせる理由はまったく見当たらない」と憤る。除染モデル事業を委託された原子力機構は、事故隠しを重ねた旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の流れをくみ、政策仕分けで見直しを指摘された高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を運営する。その原子力機構と、原発建設に携わるスーパーゼネコンが事故の後始末を再び仕切る構図が浮かぶ」と言うように、地元福島県などの雇用にも結びつかない手配師としての原子力機構と大手ゼネコンによる利権の構造が丸見えである。 しかも、冒頭に書いたように、いくら除染しても飯舘村などの山間地では、雨が降れば放射性物質が市街地に流れてくる。当該地域は地形が複雑で里山が多い。となれば、除染事業は未来永劫続けざるを得なく、税金や公金が原発を推進し、原子炉建設に関わってきたゼネコンにとどめなく流れ込むことになる。まさにゼネコンなどにとって除染は打ち出の小槌となるのである。 また除染で取り除いた汚染された土砂等をどう管理するのかも、まったく不透明である。 出典:環境省資料をもとに環境総合研究所が作成 そんな中、除染後の土砂を入れたドラム缶を海洋投棄する案が検討され始めた。まさにやりたい放題。利権配分と現状追認のペンタゴンそのものである! 移洗の最終的な行き先は海であり、海洋汚染である。 海と言えば、当然ながら魚介の汚染である。 ◆青山貞一:福島原発事故で本当に怖いのは魚介汚染 出典:マリンブルー21資料もとに環境総合研究所が作成
日本という国は、正直者が絶えず馬鹿を見る本当に不幸な国である。 環境省は今回の一連の不祥事について、今後は監督指導を徹底していくとしているが、監督指導だけでは済まされない。 除染作業の前後で効果が出ていない現場については、事業者負担で徹底的な作業のやり直しを行うなど、痛みを伴う措置を取らない限り、国民の税金をいくらつぎ込んでも無駄になる。また、効果のない除染を推進することを非公開の場で検討してきた環境省や専門家の責任も厳しく問われるべきである。 |