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福島第一原発事故捜査で
地検は思考の壁を越えられるか?

青山貞一
掲載月日:2012年12月30日
 
独立系メディア E−wave Tokyo


 まず、以下の記事を一読していただきたい!

◆福島第1原発:津波「過小評価」に注目 検察が任意聴取
http://mainichi.jp/select/news/20121230k0000m040061000c.html
毎日新聞 2012年12月30日 02時30分

 上記の記事は以下にあるように、東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑などの刑事告発を受理した検察当局への取材をもとに書かれたものである。

◆東電幹部を任意聴取=政府関係者も広範囲に―原発事故捜査・検察当局 
 12月9日 時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121209-00000008-jij-soci

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑などの刑事告発を受理した検察当局が、東電幹部ら告発対象者を含む関係者を広範囲に任意で事情聴取していることが8日、分かった。地震や津波の予測や、事故を防ぐ対策が可能だったかについて、認識を確認するなどしたとみられる。

 検察当局はこれまで、東電や政府の関係者、国会議員ら100人を超える主要な事情聴取対象者をリストアップし、うち約50人について既に聴取した。早ければ来年春にも刑事処分する方向で捜査を本格化させている。

 東京、福島両地検は8月、東電幹部らが地震や津波への対策を怠り、周辺住民に傷害を負わせたなどとする告発を受理し、捜査を開始した。

 関係者によると、検察当局は約20人の専従体制を敷き、東電や旧原子力安全委員会、旧原子力安全・保安院、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を所管する文部科学省の担当者らの聴取を進めてきた。

 検察当局は、事故を誘発する地震・津波の発生が予測できたかを捜査の焦点と捉えている。東電は大地震時に発生する津波を最大15メートル超と試算していたが、5.7メートルまでの対策しか取っておらず、こうした試算の位置付けや、試算を受けた津波対策などについて、当時の幹部らから事情を聴いたとみられる。

 検察当局は既に、原発敷地内に立ち入って事故現場も確認。事故と被害との因果関係を探るため、被災者からも説明を受けたもようだ。

 業過致死傷容疑などの捜査では、予見可能性に加え、被ばくを傷害と認められるかどうかなど課題が多く、立証には困難が予想される。 

 冒頭に掲げた毎日新聞の記事では、のっけから

> ◇予測の難しさ 立証の壁に

とある。

> 立証には困難が予想される。

など、最初からメディアが立証には困難が予想されるというのは僭越である。

 福島第一原発事故の関係当事者、そしてその近くにいるいわゆる原子力ムラ関係者にいくら任意の取り調べをしても無理に決まっているだろう。

 私達がこの秋(2012年10月9日)、東北電力女川原発に現地調査で行ったとき、東北電力側が作成し、私達に示した33枚のパワーポイントにあるように、3.11の津波への対応から見た福島第一原発と女川原発への事前対応の根本的な違いこそ、地検当局は注目すべきである。

 以下に東北電力女川原発現地視察と現地での議論について書いた青山のブログである。

◆東北電力女川原発現地視察+議論 敢行記
◆青山貞一;東北電力女川原発現地視察+議論 @はじめにー事前準備ー
◆青山貞一;東北電力女川原発現地視察+議論 A敷地入構とレクチャー
◆青山貞一;東北電力女川原発現地視察+議論 B福島第一原発との違い
◆青山貞一;東北電力女川原発現地視察+議論 C今後の取り組み
◆青山貞一;東北電力女川原発現地視察+議論 D東北電力vs東京電力


女川原子力発電所の法面の前で 
左、池田こみち、右、青山貞一 撮影:鷹取敦

 周知のように、東北電力女川原発の方が東京電力福島第一原発よりも格段に震源地に近くにあるという重要な点もある。

 この種の記事では、取材し、記事を書く側、すなわちメディア側の能力や知見が大きく問われるだろう。
 
 私たちは、今まで国民側の<鵜呑度>を問題にしてきた。

 これは日本国民が他の諸国に比べ圧倒的に、マスメディアの記事や報道を鵜のみにする、具体的に言えば、70%以上の国民がマスメディアの記事や報道を鵜のみにしているという事実である。

 ちなみに、日本は調査対象となった数十ヶ国の中で、一番<鵜呑み度>が高く、2005年度調査で72.5%であるのに対し、同じ年の調査で英国は12.5%と最も低いことが分かっている。

◆国際鵜呑度調査結果

        2000年      2005年   単位:%
日本      70.2       72.5
韓国      64.9       61.7
中国      64.3       58.4
オランダ    55.7       31.7
ドイツ      35.6       28.6
フランス    35.2       38.1
ロシア     29.4       36.0
アメリカ     26.3       23.4
イギリス     14.2       12.5

出典:日本リサーチセンターより青山、池田が<鵜呑度>指標を考案

以下<鵜呑度>に参考する論考、動画

◆青山貞一:マスコミ報道「鵜呑度」、日本人70%、英国人14%

◆青山貞一:<検証>世界で最も「情報民度」が低い国民が日本人である

◆青山貞一:世界で最も「情報民度」が低い国民が日本人である(続編)


 この種の問題では、メディアやジャーナリストが政官業側の言い分、さらに地検側に言いくるめられる可能性が高い。その結果、

>  ただ、聴取を受けた研究者の1人は「海岸の地形などで津波の高さは大きく変
> わる」と予測の難しさを強調する。仮に東電や国の過失が認定できたとしても、
> 事故と傷害の因果関係なども立証しなければならない。ある検察幹部は「予断を
> 持たず徹底的に捜査しているが、立証は非常に厳しい」と話す


などとして、結果的に地検側の不起訴を誘導することになってしまう。

 すなわち、地検側が記者に

> ◇予測の難しさ 立証の壁に

などと言ったメディアの論調に呼応するかのように、・・・・立件せず、最終的に起訴猶予、不起訴となるのは目に見えている。

 その昔、40年近くも前のことだが、私が大学を卒業し、アジア経済研究所の出版部に勤めていたときに読んだ小説のなかに、難題に立ち向かう場合の私達の思考の在り方にヒントを与えてくれるものがった。

 それは、『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』などの著作で有名なロシアの小説家、ドフトエフスキーの著作であった。


ドフトエフスキー

 そこには次のようなことが書かれていた。

 すなわち「自分の前に壁が立ちはだかっているとき、多くの人々はただただその壁をよじ登ろうとする。しかし、壁のずっと先の横を見たら、壁は自分の前にだけあるのであって、その先には壁はなく、歩いて壁の反対側に行けた」ということだ。

 この種のことは日常的にも良くあることだ。単一で直線思考、頭が硬い日本人には無理だろうが、同じ目標に到達する上で、実は多数の経路、ルートがあるものだ。日本人の多くは、ひとつだけに凝り固まって結局、あきらめてはいないだろうか?

 実は帝政ロシア下で活躍したロシアの作家には、その種の示唆、暗示をくれる者が多いと思う。たとえば、「桜の園」などの戯曲で有名なチェーホフが書いた「六号室(1892年)」などその典型であると思う。


チェーホフ

 帝政ロシア下で政治犯が投獄された六号室の担当者が「どうみても、この投獄された者の言い分の方がまっとうではないか」と思い出し、足繁く六号室に通い、「囚人」と議論をしていくうちに、その担当者自身が当局によって投獄されてしまうという小説である。

 このチェーホフの「六号室」は、当時、疎外論でよく引用されていた。

 ひるがえって、<鵜呑度>で分かるように、日本人は洗脳されやすく、思い込みが激しく、単一思考のひとが多い。世界一、大マスコミの記事や報道を信じやすい日本国民自身も問題だが、その記事を書き、報道しているマスコミ関係者の多くも同類であると思える。

 さらに言えば、冤罪事件に象徴されるように、警察、検察関係者の多くも同類ではないの
か? 

 事実認識と自分の価値判断をないまぜにしていないだろうか?

 予断、偏見なく、第三者として独立した捜査と判断をしてもらいたいものである! 


写真出典はWikipedia