エントランスへはここをクリック   


メアリー・スチュアート
とカナダ・ノバスコシアの
脱焼却・脱埋立政策
青山貞一 
掲載月日:2012年6月6日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 私たちは、世界に先がけて「廃棄物資源管理法」という州法を制定し、市民参加で成果をあげているカナダ最東端の州、ノバスコシア州(Nova Scotia Province)とその州都であるハリファックス(Halifax)に魅せられ何度も、ノバスコシア州を訪問している。

 このカナダのノバスコシア州では、先進国でありながら、何とゴミを一切燃やさない、安易に埋め立てない、すなわち「脱焼却」そして「脱埋立」を実際に社会実験し、10年以上にわたり実行しており、世界各国から大きな関心が寄せられている。

 下の地図はノバスコシア州の位置を示している(赤い部分)。何と、州都ハリファックスは、カナダの東端の大きな都市というだけでなく、北米の最東端にある都市でもある。日本から直行便はなく、ニューヨークやトロントなどで乗り継ぎ、まる一日かけないと到着できない。


ノバスコシア州の位置(カナダの東端)
出典:Wikipedia

 このカナダ・ノバスコシア州の脱焼却・脱埋立を目指した廃棄物資源化の法律や政策については、私たちが書いた以下の新聞の論点や論文を参照して欲しい。

青山貞一:ゴミ半減、カナダ・ノバスコシア州 5 年で実現
  読売新聞

青山貞一・池田こみち:カナダ・ノバスコシア州の廃棄物資源管理 
  月刊廃棄物


青山貞一:脱焼却、脱埋立への挑戦〜ノバスコシア州の循環型社会実験〜前編
  月刊廃棄物

青山貞一:脱焼却、脱埋立への挑戦〜ノバスコシア州の循環型社会実験〜後編 
  月刊廃棄物

 周知のように、日本は先進国で世界一、ゴミを出し、安易に焼却し、埋め立てている国であるが、カナダのノバスコシア州は、いわばゴミを出さず、しかもゴミを燃やさない、すなわち「脱焼却」 政策の元祖である。このような政策は、ゼロウエイスト政策と呼ばれるが、100万人規模の都市で実際に「脱焼却」を実現しているのは、このノバスコシア州くらいである。米国のサンフランシスコ市やオーストラリアのキャンベラ市などもゼロウエイスト政策に取り組んでいるが、全面的な「脱焼却」にまでは行っていない。

 ところで、青山や池田がカナダのノバスコシア州のこの「脱焼却」政策や「廃棄物資源化」政策を講演する際、必ず冒頭で以下のフレーズを話している。

 すなわち、スコットランドの詩人、アラン・ポールドが言うように、「スコットランド、それは全能なる「否」が支配する場所なり」である。 スコットランドは今は、英国の一部でありながら、あくまでも独自性を主張してやまない場所である。スコットランドを一言で称せば、それは簡単に長い物に巻かれない。寄らば大樹とならない、元祖、理不尽なことに「ノーと言える国」、それがスコットランドである。


スコットランド国旗


スコットランド紋章

◆スコットランド

 1707年の合同法(Acts of Union)によってグレートブリテン王国が作られるまでは独立した王国(スコットランド王国)であった。スコットランドの名称は、この地を統一したスコット人(Scots)に由来する。スコットランド・ゲール語では「アルパ(Alba)」と呼ぶ。ラテン語では「カレドニア」と呼ばれる。

 スコットランドはグレートブリテン島の北部3分の1を占め、南部でイングランド国境に接する。東方に北海、北西方向は大西洋、南西方向はノース海峡およびアイリッシュ海に接する。本島と別に790以上の島から構成される。

 首都のエディンバラは人口でスコットランド第二の都市であり、ヨーロッパ最大の金融センターの一つである。最大の都市であるグラスゴーは大グラスゴーの中心であり、スコットランドの人口の40%が集中する。スコットランドの沿岸部は北大西洋および北海に接し、その海洋油田の石油埋蔵量はヨーロッパ随一となっている。

 スコットランドの法制度、教育制度および裁判制度はイングランドおよびウェールズならびに北アイルランドとは独立したものとなっており、そのために、国際私法上の1法域を構成する。スコットランド法、教育制度およびスコットランド教会は連合王国成立後のスコットランドの文化および独自性の3つの基礎であった。

 
しかしながらスコットランドは独立国家ではなく、国際連合および欧州連合の直接の構成国ではない。

 スコットランドの花(The Flower of Scotland)が事実上の「国歌」である。


スコットランドの地理的位置(赤色部分)

政治
 1707年の連合法(Act of Union)によって、それまで同じ君主を冠してきたものの別々の王国であったイングランド王国とスコットランド王国は合邦し、グレートブリテン王国が成立した。

 この合邦は形式的には対等とされていたが、新国家の議会や王宮など主な機関は旧イングランド王国に座することになり、イングランドによる不公平な併合であったと考えるスコットランド人が少なくない。

 スコットランドは伝統的に労働党の支持者が多く、トニー・ブレア、ゴードン・ブラウンと2代続けてスコットランド出身の党首・連合王国首相を輩出しているが、先述の経緯からスコットランド独立を掲げる民族主義的な政党(スコットランド国民党)も多くの支持を集めている。

議会
 1707年の合同法でスコットランド議会は閉鎖され事実上廃止となったが、1998年スコットランド法の制定により1999年に再開された。

 スコットランド議会は一定範囲で所得税率を変更することができる他、スコットランド法でウェストミンスター議会留保事項と規定されている事柄以外について、独自の法令を成立させることができる。

 これまでに、福祉政策や狐狩り規制、公共施設内での禁煙などに関して、スコットランド独自の法令が施行されている。ウェストミンスター議会留保事項には、外交、軍事、財政・金融、麻薬取締り、移民の規制など、全国的に取り組む必要がある事柄が規定されている。

 スコットランド法はイングランドおよびウェールズとは異なって英米法ではなく大陸法を基調とする。

経済

 古くは石炭がスコットランドの主要産業であり、産業革命を支えた。

 1960年代に北海油田が開発されると、漁港アバディーンは石油基地として大きな発展をとげた。石油資源の存在はスコットランド独立派の強みとなっている。

 1980年代からは半導体産業や情報通信産業の誘致が盛んに行われており、スコットランド中部のIT産業の集積地帯はシリコングレンと呼ばれている。

出典:Wikipedia

 昔からスコットランドの国花は、アザミである。アザミは棘(トゲ)をたくさん持っていて、人を寄せ付けない。事実、その昔、スコットランドがバイキングの襲撃を受けたとき、アザミがバイキングの行く手を阻んだと言われている。


スコットランドの国花、アザミ
出典:NHK BSプレミアム


アザミの花  撮影:青山貞一

 スコットランドの首都、エジンバラにあるエジンバラ城は、遠くから見るとアザミに似ている。それは、刺々(とげとげ)しい姿で来る者を拒む、しかしアザミは美しい花も咲かせる。そう、それはスコットランドの精神文化を象徴する女性の国王、メアリー・スチュアートのようにだ。


スコットランドの首都、エジンバラ  出典:Wikipedia

エジンバラ
 
 エジンバラの地名は、「エドウィンの城」の意味。火山の溶岩の上に形成された街であり地盤が強固である。

 スコットランドの東岸、フォース湾に面するこの都市は、グラスゴーにつぐスコットランド第2の都市で、政治の中心。同国屈指の世界都市でもある。

 人口は2006年時点で463,510人。旧市街と新市街の美しい町並みは、ユネスコの世界遺産に登録されていて、旧跡も豊富。街の中心にカールトン・ヒルと呼ばれる小高い丘がある。

 毎年8月、エディンバラ・フェスティバルと呼ばれる芸術祭典が行われ、多くの観光客で賑わう。古くから行政府・商業都市として栄え、金融業や小売業が強い。なお英国国内では、ロンドンに次いで観光客が多い町である。

エジンバラの旅行ガイド
エジンバラ (トリップアドバイザー提供)

歴史

 古くは6世紀、元々天然の要害である急峻な地形を利用して築かれたケルト人の砦を起源とする。11世紀、スコットランド王マルコム3世はここに城をたて、その王妃マーガレットは小さな聖堂をつくった。


エジンバラの地理的位置

エジンバラ城
エジンバラ城 (トリップアドバイザー提供)

エジンバラ城
エジンバラ城 (トリップアドバイザー提供)

エジンバラ城
エジンバラ城 (トリップアドバイザー提供)

エジンバラ城
エジンバラ城 (トリップアドバイザー提供)

 1329年、ロバート・ブルース王はこの地に特許状をあたえている。ここまでにイングランドの幾たびもの侵入を退けたが、1437年、それまで首都だったパースでスコットランド王ジェームズ1世が暗殺されたのにともない、1492年にエディンバラに首都が移され、同年スコットランド議会が創設された。

 1603年にジェームズ6世がジェームズ1世としてイングランド王に即位すると、エディンバラの商業的・政治的重要性は低下した。

 1707年のイングランドとの合併によりスコットランド議会が解散するが、その後も古くからの堅固な城砦の街並みは保存され、スコットランド人の自主独立と反骨精神の歴史・伝統を今に伝えている。

 1767年、新市街の建設が計画された。18〜19世紀には文化的中心地としてさかえ、アダム・スミスやデイヴィッド・ヒュームなどの哲学者を輩出している。

 なお、イングランドへの併合後の1726年には、街名にちなんだ公爵位エディンバラ公が創設されている。

出典:Wikipedia

 それにつけても、今の日本社会には、まともな見識も批判精神もなく、すべてが利権で動いているように見える。私たちがこの一年徹底的に関わってきた3.11以降の「被災地復旧・復興問題」、「除染問題」それに現在全力を上げている「がれき広域処理」問題も、すべてが火事場泥棒や焼け太り的な利権が渦巻いている。

 こんなことをしていれば、必ずしっぺ返しが来るだろう。
 
........

 ところで、私と池田こみちが、今まで何度も出かけているカナダのノバスコシア(州)は、何と英国のスコットランドから大西洋を越え渡ったスコットランド人がつくった地域(州)である。英国から渡って北米の新天地でニューイングランドやニューヨークをつくったように、英国から北米ににわたりつくったのがノバスコシア(Nova Scotia)である。

 そのノバスコシア(Nova Scotia)は、ニュー・スコットランド(New Scotland)のラテン語訳である。

 上述のように、ノバスコシア州は世界の先進諸国の都市に先駆けて、ゴミを一切燃やさない脱焼却のまちづくりを実現している。それは何でもかんでもゴミにして燃やしてしまう日本と対極の位置にある。私たちが、がれき広域処理に反対しているのは、放射性物質問題以前に、安易に何でもかんでも燃やして埋める日本のゴミ政策を30年以上批判し、その代替政策を小さな自治体を中心に支援してきた背景があるからである。


出典:青山貞一のパワーポイント


出典:青山貞一のパワーポイント


出典:青山貞一のパワーポイント

 下は、カナダ・ノバスコシア州の旗である。×はスコットランド国旗と同じである。また中央にある立ったライオンこそ、本ブログの中心的テーマ、スコットランドのメアリー・スチュワート女王の祖先、スチュワート家の紋章である!!


ノバスコシア州旗 

 下の紋章は、スコットランドのメアリースチュアート時代の王室の紋章である。


Royal Arms of the Kingdom of Scotland (1559-1560)
Source: English Wikipedia

ハリファックスの旅行ガイド
ハリファックス (トリップアドバイザー提供)

ハリファックスの旅行ガイド
ハリファックス (トリップアドバイザー提供)

ハリファックスの旅行ガイド
ハリファックス (トリップアドバイザー提供)

ハリファックスの旅行ガイド
ハリファックス (トリップアドバイザー提供)

ハリファックスの旅行ガイド
ハリファックス (トリップアドバイザー提供)

 私たちが最初、何でカナダでも最も辺境にあるノバスコシア州で世界的に見て希有な「脱焼却」と「脱埋立」の政策が誕生したのか、それも市民参加によって生まれたのか理解できなかった。しかし、冒頭に掲げたアラン・ポールドの詩を読み、現地に行って見て、それは氷解した。

 スコットランドの血を引く、ノバスコシア州にあっては、たとえ世界中で前例、先例がない立法、政策であっても、それに必要性、合理性そして正当性があれば、どんなに難しいことであっても実現するために最大限の努力を払う精神を先祖から学んでいたからである!


2003年2月、はじめてノバスコシア州に現地調査ででかけたときの一枚
海が凍っていた。ペンギンになった池田こみちさん


2003年2月、はじめてノバスコシア州に現地調査ででかけたときの一枚
左から池田こみち、青山貞一、広田次男(いわき市在住環境弁護士)
2月は厳寒でマイナス10−20度であった!
場所はノバスコシア州の世界遺産、ルーネンバーグの漁港

ルーネンバーグの旅行ガイド
ルーネンバーグ (トリップアドバイザー提供)

ルーネンバーグの旅行ガイド
ルーネンバーグ (トリップアドバイザー提供)

 そんなこともあり、私たちはノバスコシア州の古里であり、先祖があるスコットランドに関心を持ち、いろいろ調べていた。

 今回、はからずもNHK BSプレミアムで希有で秀逸な女性国王、メアリー・スチュアートの生涯についてドキュメント番組を放映したこともあり、独立系メディアでスコットランドの精神文化の背景になっているメアリース・チュワートの特集を試みた。


出典:NHK BSプレミアム

つづく