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  Eワグナーが愛した天空の楽園、
ラヴェッロを行く

Ravello, Paradise in the sky
R.Wagnar loved


青山貞一 Teiichi Aoyama


2008年4月17日 
転載禁

■青山貞一 南イタリア紀行 アマルフィ海岸
@ ローマでそしてナポリで、しばし呆然
A 絶壁、絶景のアマルフィ海岸を行く
B 紺碧の空と海、絵画のようなアマルフィ
C アマルフィ大聖堂と広場
D アマルフィの市民生活
E ワグナーが愛した天空の楽園、ラベッロ
F ラベッロから夕暮れのアマルフィへ、そして夕日
G 夕闇迫るポジターノ

●2008年2月23日(土) 午後

 アマルフィで遅い昼食をとった。

 何しろソレントからアマルフィまで路線バスで揺られに揺られて来たため、珍しく車酔いになってしまって食事どころでなかったというのが本音だ。

 とはいっても、夢にまで見たアマルフィ海岸、必死になって写真を撮り、ビデオを撮るうちに昼過ぎになっていた。

 軽食のあと、アマルフィの北の高原にある欧州屈指の景勝別荘地、ラヴェッロ(Ravello)を訪れる。

 天気は上々だ。 

 アマルフィの海辺にある駐車場で路線バスの運転手に一日周遊券をみせる。この切符でラヴェッロまで往復出来るかを聞くと、すぐさまOKという返事が返ってきた。

 ソレントで買ったアマルフィバス周遊券で、何とラヴェッロにも行けるのだ。

 大げさに言えば、私の今までの人生でこれほど有意義なバス切符はない。わずか700円弱で世界一の美しい海岸を一日乗りたい放題、堪能できるのだから。 


アマルフィからラヴェッロにゆく途中の風景のひとこま
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 カンパニア州が経営するSITAバスはなぜか若い学生風の男性で満員だった。

 上の写真にあるアマルフィの海辺を後に、バスはラッタリー山脈の山すそに近い高原へ向け、つづら折りの道をひた走る。下の写真にあるように、走る道は一本調子の上り坂だ。


アマルフィからラヴェロに通ずる道路
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 途中にバスの乗り換え場がある。写真の場所で一端全員降ろされる。変!


乗り換え地(下側)の様子
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10
   
 何だこれは、と感ずるまもなく、全員がもくもくと山の谷間の道を登る。キツネに鼻をつままれた状態なので、しかたなくついて行く。


乗り換え地(上側)周辺の風景
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 数100m先を登り切った道の向かいの壁に、ラベッロ行きの標識(下)があった。そこで待つこと10分、新たなSITAのバスが来た。

 何とも不思議! どうなってんだどう?


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


○ラヴェッロの地形

 ここでラヴェロの地理と地形をおさらいしておこう。

 下図はグーグルアースによる3次元地形である。

 ラヴェッロは、アマルフィ海岸に比べ標高で約350m高い。ラヴェロはナポリとサレルノの分水嶺となっているラッタリー山脈の一部をなす。地形はアマルフィ海岸を一望するテラス、ハイランド<高原>にある。


ラヴェロはアマルフィの北にある

 ラヴェロからアマルフィ海岸はグーグルアースの3次元地形図で明らかなように、一大パノラマ状に開けている。

 高原から350mからの「世界一美しいアマルフィ海岸」のパノラマ展望が楽しめる。

 そんなこともあってか、11世紀の昔から富豪の別荘が数多く立地された。

 周辺の傾斜地では段々畑を使ったオレンジ、オリーブ、レモンなどの栽培が行われてきた。散在する小さな村々には、11から13世紀にかけ小さな教会が建てられている。

 このテラスは、季節によってブーゲンビリアや夾竹桃(きょうちくとう)が咲き乱れ、まさに天空の楽園となる。
 

アマルフィから見たラヴェッロ まさにアマルフィ海岸を見下ろすテラスである!

 乗り換え場所で乗った新たなバスは約15分でラヴェロに到着。バスはラヴェッロの入り口にあるトンネルの前の停留所で駐まった。

 全員下車。30名以上いた若者達が先に降り、徒歩でトンネルをとっとと抜けていった。トンネルを抜けると、古そうなラヴェッロ大聖堂(Ravello Duomo)と広場に出会った。

 ラヴェッロには教会、ルッフォロ荘、チンブローネ荘などの歴史的建造物がある。それらは11から13世紀にかけ建てられている。

○ラヴェッロの歴史と文化

 ラヴェロはアマルフィ海洋共和国時代非常に重要なまちであった。それはアマルフィが839年から1200年まで地中海貿易で重要な貿易力を持っていた時代に重要なものであった。 ラベッロは司教がスカラ(Scala)に移る以前の1086年から1603年まで教区のまちであった。

 ラヴェロは歴史的に芸術家、音楽家、作家らに究極の活動の場を提供してきた。その中には、リヒャルト・ワグナー( Richard Wagner), M. C. Escher, Giovanni Boccaccio, Virginia Woolf, Gore Vidal,, Sara Teasdaleといった音楽家、芸術家著名人が含まれる。

 1953年より毎年夏、ワグナーを記念し、ラヴェロ・フェスティバル "Ravello Festival"が開催されている。



基礎的情報 
面積  7 km2
人口     2,506人
 人口密度  358/km2 (927/sq mi)

出典:Wikipedia, English version


ラヴェロの教会
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 上の写真にあるラヴェロの教会(Duomo di Ravello)は11世紀後半に建築されている。教会の中央にある扉は、1179年に作られた青銅の扉があるが、私たちが訪問したときは閉まっていた。開いていたトンネル側の扉は有料の教会博物館に通ずる扉である。


ラヴェッロ大聖堂前広場の一角
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 今回教会の内部に入らなかったが、教会の内部には獅子がモザイクの柱を支える説教壇や 預言者ヨナを食べる怪物がモザイクでかたどられている説教壇などがある。


ラヴェロの教会の塔
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 説教壇は両方とも初期キリスト教教会の説教壇であるという。さらに、モザイクを小さい片で組んだ世界的にも珍しいゴーズマーティ様式の大理石の加工職人が 生み出した幾何学パターンもある。東ローマ帝国のビザンチン帝国の影響を受けた内装もあるという。

 ....

 ところで、私たちは入らなかったが、トンネルをくぐるとすぐの断崖絶壁に1270年に建てられたラフォロ荘がある。この荘は一年中庭にブーゲンビリア、夾竹桃などの花がさきみだれている。ラフォロ荘のテラスからはサレルノ湾のパノラマが広がっている。

 そのラフォッロ別荘では毎年夏に音楽祭がテラスで開かれている。ラフォッロ別荘の敷地には1270年に造られた塔、門、中庭、博物館などがある。

 このラヴェッロから見るアマルフィ海岸の自然景観は、まさに絶景と言われるが、。バス停のすぐ隣りにある見晴展望台から、ほぼ同じパノラマが楽しめる(写真下)。


パノラマ状に展開するラヴェロからアマルフィ海岸
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 ところでラヴェッロを一躍世界的に有名にしたのは、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 (Die Meistersinger von Nurnberg ) 、『ニーベルングの指環』 (Der Ring des Nibelungen ) 、『トリスタンとイゾルデ』 (Tristan und Isolde ) 、『パルジファル』 (Parsifal) などの作曲家として知られる、他ならぬドイツの著名な作曲家、リヒャルト・ワグナーがラヴェッロをこよなく愛したことにある。 

 ワーグナーがかの『パルシファル』の第二幕をこの地で作曲したことで知られている。

        <必見>ラヴェロ・フェスティバル公式Web
      このWebを見るだけでラヴェロのすべてが分かる!

ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー
Wilhelm Richard Wagner, 1813年5月22日 - 1883年2月13日)は、歌劇の作で知られる19世紀のドイツの作曲家であり、また理論家、文筆家としても知られる。

パルジファル』 (Parsifal)
3幕の神聖舞台祝典劇でヴァーグナーの楽劇では最も重々しく荘厳であり、初演に際しては全幕の拍手を禁止した。現在でもウィーンやバイロイトでは、第1幕の終わりで拍手をしてはならない。
本作はキリスト教の救済思想を色濃く反映しており、それが原因で(キリスト教嫌いの)ニーチェは最終的にヴァーグナーと袂を分かつこととなった。
なお本作で使用されるライトモティーフ「聖杯の動機」は、古いコラール旋律「ドレスデン・アーメン」をそのまま利用しており、この旋律はメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」の冒頭でも使用されている。音楽的には「聖杯行進曲」「花の乙女たちの踊り」「聖金曜日の奇跡」が有名。
 事実、ラヴェッロには、下の写真のリヒャルト・ワグナー通り(Viale Richard Wagner)がある。


リヒャルト・ワグナー通り
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 ラヴェッロでは毎年夏にルッフォロ荘で野外音楽祭が行われる。今では「ラヴェッロは音楽のまち」としても人気がある。また有名な映画の舞台としてもフィルム・コミッションにも使われている。

 実際、ラヴェッロには下のように、音楽のまちラヴェッロという標識もあり、まちのどこからともなくさまざまな音楽が聞こえてくる雰囲気が漂っている。


音楽のまちラッベロとある
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 下の看板は、2008年ラヴェッロで開催されるコンサートの行事案内である。年間を通じて膨大な数のコンサートがラヴェッロで開かれていることが分かる。


年間を通じての音楽祭のプログラム
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 教会広場からラヴェッロの北に向かう地点に、すばらしいチンブローネ荘(Villa Cimbrone)がある。この荘はアッコンジャジョコ家の邸宅として使われていたが、1904年イギリスのアーネット・ウィリアム・ベケット氏に買収されている。

 このチンブローネ荘にはビザンチン様式の回廊や建築物がたち並び庭園の海側に進むと大理石の像が並ぶ展望テラスがある。


チンブローネ荘のテラス
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 私たちは広場の横にある道を海側に向かって進む。

 その後、ラヴェッロの東端まで下の写真にある道を歩く。何ともすばらしい道だ。しかも、この道は11世紀から今までまったく変わっていないという。


ラヴェッロの歴史・由緒ある閑静な道
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


ラヴェッロの歴史・由緒ある閑静な道
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 途中、イスラム様式のホテルがあった。帰国後に調べたらこれは五ツ星ホテルであった。


イスラム調の五ツ星ホテル
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 ラヴェロの東はずれまで行く途中、ミノーリ(minori)に向かう道との帰路があった。


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 さらに東に進むと、グーグルの3次元地形図にもあったこんもりとした山の傾斜にそって白い石の家々が見えてきた。

 アマルフィ海岸地方では、山の急傾斜の裾のだけでなく、頂や高原にも沢山の小さな石の家が重なり合うように建っているのが大きな特徴だ。


ラベッロの東端の風景
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


ラヴェッロの東端から見た南斜面にあるアマルフィ海岸流の棚田
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 東端まで行った後、教会広場に引き返す。途中、木の枝や小さな瓦屋根の上にに猫が4匹が休んでいた。何とものんびりとした光景であある。


猫にとってもラベッロは楽園?
撮影:Nikon CoolPix S10

 今回の南イタリアの旅で一番癒された場所はと言えば、その実、このラヴェッロであろう。

 ここの風景が10世紀以上の長きにわたり分かっていないからかも知れない。

 欧州広しと言えど、芸術家や音楽家だけでなく、誰にでもラヴェロはまさに天空の楽園なんだろうか?


撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 下の写真は、何とラヴェッロのまち役場 Comune di Ravelloである。何とものんびりとした役場ではないか!
 

ラヴェッロの町役場
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 広場への帰路は別の道を歩いた。
 

ラヴェッロの石畳の坂道
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 かくして数時間ではあるがのんびり癒されるラヴェッロ訪問が終わった。

 路線バスでアマルフィまで帰る。だが、バス停で待てくらせど、路線バスは来ない。

 いらしらしても仕方ないので、教会広場やバス停でのんびりのびのび過ごすことにした!


広場にあった手工芸品の店のウィンドウ
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


広場にあった伝統工芸アクセサリーの店のウィンドウ。
かの国の大統領候補もこの店に来ていた
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


教会広場で写真を撮る筆者
イタリアには自生している松の木が多い

 それでも待てど暮らせど路線バスは来ない。

 駐車場にはたくさん猫がひなたぼっこしている。

 それをかまって暇をつぶす。どの猫もノラにしては立派である。岩合さんの向こうを張って猫マニアのために「ラヴェッロの猫」をご覧入れよう。

 どの猫ちゃんも、いずれ劣らず精悍でゆったりとした表情をしている。これもラヴェッロの土地柄か?


ラヴェッロのバス停にいたにゃんこ。なかなかすばらしい!
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


ラヴェッロのバス停にいたにゃんこ
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


ラヴェッロのバス停にいたにゃんこ
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 下はバス停の一角にある展望テラスで撮影した一枚。

 目の保養になる。テラスは工事中だったが、他のテラスが私邸の庭にあるのに対しここは公共テラスである。

 ラヴェッロの180度のパノラマが眼前に展開する。


バス停脇の展望テラスから見たアマルフィ海岸。目の保養になる!
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 展望台の下で猫がひなたぼっこしていた。この猫もなかなか立派。


ラベッロのバス停にいたにゃんこ
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 路線バスを待つこと1時間以上、やっと青色の路線バスが到着した。お客は私たち以外は2−3人だった。

つづく