エントランスへはここをクリック   

<今日の一枚>

加速化する
自然の破壊と財政の破綻
八ツ場ダム(4)


青山貞一


掲載月日:2007年10月17日

無断転載禁

◆青山貞一:加速化する自然と財政の破壊、八ッ場ダム(4)
青山貞一の八ツ場ダム関連ブログは→<公共事業


はじめに

 福田総理の地元、群馬県。その群馬県の吾妻郡長野原町から東吾妻町の吾妻川流域に計画され、中断後、4000億円をはるかに超える巨大な公共工事が猛烈な勢いで進む八ツ場ダム(やんばダム)。八ツ場ダム事業には、税金、公金の無駄遣いとして多くの行政訴訟(住民訴訟第四号訴訟)が起こされている。

八ツ場ダム住民訴訟1都5県ニュース 第18号

 すでに「独立系メディア」では何度か現地から報告しているが、今回は環境総合研究所の合宿で2007年9月14日から17日にでかけたので報告したい。

 今回の合宿では保養所周辺の間伐も行った。慣れないチエンソー使用で青山が指を怪我する一幕もああった。幸い外科医の娘でもあった池田こみち副所長の応急処置で事なきを得た。間伐で下の写真のように散髪後のようにさっぱりした。

北側から撮影 南側から撮影

 研究合宿の合間に、いつものように八ツ場ダムの現地を視察した。八ツ場ダム視察は今回で5回目である。今回は、鷹取敦調査部長も視察に加わった。


近くにある浅間牧場にて。背景は雄大な浅間山系。右側に高峰山や池の平が見える


群馬県六合村にある野反湖の湖畔でリラックス。霧が立ち込めとても幻想的。


●ダム事業による自然環境の破壊

 前回の現地視察からわずか1ヶ月。現場では、国土交通省が早く予算を消化しようとしてか、誰にでも見てとれるほど工事の進捗が早まっている。

 八ツ場ダム工事現場には、首都圏に近い場所であるにもかかわらず、大型トラックなどの工事車両、工事関係者以外ほとんど誰も訪れない。

 おそらく「日本における21世紀最大の自然環境の破壊行為」と思えるものだが、大メディアは、この巨大事業の実態を国民に伝えないのであろうか? 


国土交通省が発行する八ツ場ダムニュースの最新号に見るダム開発の傷跡(航空写真)
出典:八ツ場ダムニュース、国土交通省関東地方整備曲八ツ場ダム工事事務所、2007年8月10日発行



 以下はより多くのひとびとに現地の実態をつぶさに見てもらい一心で、渾身の一滴で撮影した写真4枚である。


2007年9月15日、群馬県吾妻郡長野原町にて撮影
撮影者:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix 


2007年9月15日、群馬県吾妻郡長野原町にて撮影
撮影者:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix 


2007年9月15日、群馬県吾妻郡長野原町にて撮影
撮影者:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix 


2007年9月15日、群馬県吾妻郡長野原町にて撮影
撮影者:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix 


●ダム事業による財政の破壊、破綻
  全国で建設中のダム149基の建設費が約9兆1000億円

 かつて、日本の土木系公共事業が、世界の先進各国中、絶対額、GDP比、面積比のいずれにおいても第一位であることをOECDが報じた。その後、一旦、事業費ベースで土木系公共事業費は減ったかのように思えた。

 しかし、建設省が国土交通省に看板を変えたあとも、河川系、道路系ともに世界に冠たる日本の土木公共事業(工事)天国は変わらない。国土交通省はその後も、「政」、「官」、「業」に「学」(誤用学者)、「報」(御用メディア)を加え、中国顔負けの官僚主導で日夜、国費、公費、税金の消費にひたすら走っている。

 わたくしは過去50数カ国の公共政策,公共事業を現地で自分の目で見てきたが、こんな先進国は日本以外にない。「中央官僚の功なって国滅ぶ」がこの国を依然として跋扈している。

 2007年8月30日の日本経済新聞一面に「ダム建設費膨張9兆円・149基調査、当初計画比1.4倍」という記事が大きく掲載されていた。

 記事の概要は、全国で建設中のダム149基の建設費が約9兆1000億円と当初見積もりの約1.4倍に膨らんでいることが日本経済新聞の調べで明らかになったが、工期の延長や設計変更などが主因で、見積もりの約16倍の建設費を計上しているダムもあるという。さらに無駄な公共事業の見直しで、いったん建設を凍結したダムでも建設再開の動きがあり、さらに建設費が膨らむ可能性が大きいと。

 記事の中に当初予算がその後大きく修正された事業のリストがあった。以下は、修正後の額で並べた主なダムの建設費の当初見積もりと実際の費用である。

 以下の表を見ると、日本の公共事業が小さく生んで大きく育てることが良く分かる。日本の将来、とくに財政面での将来は、防衛省と国土交通省を政治がコントロールできるかどうかにかかっている。

ダム名 県名 当初見積額
億円
(A)
実際の
建設費額
億円(B)
倍率
B/A
計画
策定時期
八ッ場 群馬県 2,110 4,600 2.1 1986年
大滝 奈良県 230 3,640 15.8 1972年
徳山 岐阜県 330 3,500 10.6 1976年
川辺川 熊本県 350 2,650 7.5 1976年
滝沢 埼玉県 610 2,320 3.8 1976年
湯西川 栃木県 880 1,849 2.0 1986年
志津見 島根県 660 1,450 2.1 1988年
出典:2007年8月30日の日本経済新聞一面記事より。赤色の強調は筆者

 ちなみに以下は平成18年度の公共事業関連予算である。国費が6兆2545億円、もうすぐ期限が切れる財政投融資が3兆6576億円などである。土木系公共事業の年度予算額からみても、上記のダム関連予算(複数年にまたがっている)がいかに大きなものであるかが分かる。


出典:国土交通省関係予算のポイント、国土交通省
http://www.mlit.go.jp/yosan/yosan06/yosan/03.pdf