偽・ロハス!? 青山貞一 2006年12月22日 |
今日手元に送られてきた月刊雑誌「グローバル・ネット」の2006年12月号の36頁に、「エコ贔」と題して、今はやりのロハスを厳しく批判しているコラムを見つけ読んでみた。 ちなみに、この頁は、以前、独立系メディアで批判した例の「日本環境ジャーナリストの会のページ」となっている。これについては以下を参照のこと。 ◆青山貞一:官製談合と随意契約(2) 〜外郭団体を介した「行政」と「報道」の危うい関係〜 コラムの筆者いわく、「今、流行のLOHASはこれに『地球環境問題に関心のある知的な人』という部分が加わったものだ。困るのはそれが『限られた一部の人間のもの』として価値を置かれ、なおかつ『お金をかけられる』と定義し、かえって余計な消費をあおっている点である。それは新手のマーケッティング戦略に過ぎない。そこで教えられる生活様式、言い換えれば『買い物や消費の仕方』をせっせと実行することで『知的セレブ気分』を味わうことに乗せられてしまうと、本来の意味や精神が置き去りにされ、LOHASとは真逆の人になってしまう」と。 本来コラム全体を示さないといけないが、筆者がここで言わんとしていることを私なりに要約すると、日本で流行りつつあるLOHASは新手の商業主義にすぎず、環境や健康に良いと言う触れ込み、キャッチフレーズで高額の各種商品を売らんかなと言う、セレブと言う言葉同様、消費者が踊らされることを危惧している、と思える。 私もそれを危惧する。 私が知る範囲で申せば、新手の商業主義のLOHASの宣伝に利用されている?有名人のひとりは、超スモーカーのはずだし、もうひとりの有名人は超高級料理の高カロリーの美食家である。 今までの生活スタイルを心底反省し、禁煙し、またベジタリアンとなるならわからないわけではない。つまり反面教師としての社会的役割だ。でも、おそらくそうではないだろう。 常日頃、地球環境、環境保全とあちこちで言っている有名人だからこそ、新手のLOHASにピエロのように利用されているのではないか、と上記のコラムニスト同様、私も危惧している。そこでは、有名人の自己顕示欲とそれを利用する新手の商業主義(エコビジネスならぬエセビジネス!?)との間で、妙な利害の一致があるのだろう。 ところで、35年以上前、私が「成長の限界」報告で有名なローマクラブ事務局にいたとき、「隣のスーパーに行くのにつっかけ代わりに車を使う」とか「バターを電気のこぎりで切る」ような生活と揶揄したことが現代の社会生活であちこちで起こっている。 しかも、そのような生活をしているひとの多くが、地球環境がどうのこうの、原発がどうのこうとの言っているからお笑いだ。 現在私が在籍する大学でも、超がつくヘビースモーカーの先生がISO14001の環境管理を論じ、地球環境保全を論じている先生が車で毎日通勤している。しかも、重い荷物があるわけでなく、体調がわるいわけでもないのに。 この10月、私がいる学部(環境情報学部)の設立10周年記念パネルがあり、中国、ネパール、米国など海外からお呼びしたパネリストとともに私も講演した。その後、パネル討議になった。テーマは環境教育である。 私の番が来たとき、すかさず話したのは、環境教育を言うなら、まず先生がどれだけ言っていることと、行っていることが言行一致しているかだ、と話した。筑波にいる知人の環境研究者が行った国際アンケートによれば、日本人は諸外国同様以上に、環境問題に関する認識が高い。しかし、環境保全の行動となると最も低いとされていた。これについても話した。 LOHASでもISO14001でも良いが、そこで真に問われていることは、言行一致のライフスタイルのはずである。 大気汚染や健康影響を問題としている者がタバコをガンガン吸い、自動車やタクシーを乗り回しているようでは話にならない。しかし、それが日本の実情ではないだろうか? 一昨年、健康増進法に間接喫煙(副主流煙)の有害性が明記され、世界保健機関(WHO)は、間接喫煙者への影響が直接喫煙者より3倍も大きいことに警鐘を鳴らしている。 私たち環境総合研究所の国際研究でも喫煙によるダイオキシン摂取、それも1日1箱の喫煙による主流煙と副流煙の合計で、WHOの勧告値の下限値に近いリスクをもたらすことも分かっている。おそらく身近にあってこれほど有害なものはないだろう。 冒頭で引き合いに出したコラムを書いた人は、次のようにも言っている。すなわち、「今、流行のLOHASは『健康と環境に配慮した生活のためにお金をかけることができる人』的なニュアンスがある。それは数年前からブームの”セレブ(celebrity=選ばれた人)"という概念とよく似ている。」 と。 肝心なことは、私たちひとりひとりが新手の商業主義に踊らされない確かな目を鍛えることだ。また専門家もエセ、偽と本物を識別するための視点について情報提供することである。 その昔、湾岸戦争が勃発したとき、TBSのニュース23にゲストとして呼ばれた。終了後、最近なくなられた某著名な反公害運動の闘士(後に大学教授)それに超有名で環境問題にも熱心なキャスターと一緒に控え室に行った。すると、二人がいきなりタバコに火をつけた。しかもチェーンスモーキングだ。もちろん、二人とも私にMay I smoke? など、ひとことの断りもない。 数年前まで参議院議員だったやはり著名な環境問題に熱心だった知人も、やはり超ヘビースモーカーだ。 まさにこれが日本の実態を如実にあらわしている。 ちなみに、池田こみちさんが、以前、ダボス会議で発表された世界各国の環境保全力ランキングをブログにしたことがある。日本は当時、62位、現在でも40〜50位の範囲のはずだ。 なぜ、日本がかくも低ランクなのか、日本人は自問自答すべきだろう。 事実、私は授業で学生にかならずこれを考えさせるようにしている。 <参考> ・健康増進法 ・厚生労働省健康局、健康増進法第25条について ・福井県、健康増進法の施行に伴う受動喫煙の防止について ・青山貞一:喫煙によるダイオキシン摂取のリスクアセスメント,2003年度国際ダイオキシン会議論文 ・喫煙によるダイオキシン摂取のリスクアセスメント(東京新聞) ・池田こみち:日本の環境保全力は世界の62位 2002年2月6日 ・池田さんが考える日本のランキングが低い理由の一部。 世界でももっとも食品を廃棄している国 世界でもっともゴミを焼却している国 世界の半分以上のダイオキシン類を排出している国 世界でもっとも焼却炉を輸出している国 世界でもっともごみの焼却に税金を投じている国 総じて、日本の環境政策は、Back End Thinker タイプ。End of Pipeタイプです。日本語で言えば対症療法。 ・An Initiative of the Yale Center for Environmental Law and Policy (YCELP)
and the Center for International Earth Science Information Network (CIESIN)
of Columbia University, in collaboration with the World Economic Forum
and the Joint Research Centre of the European Commission, Environmental Sustainability Index
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