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<目次> 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 @歴史 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 A橋梁 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 Bトンネル 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 C変電所 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 D技術 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 E設計 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 F文化 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 G提案 真夏の碓氷峠遺産探訪〜信越本線碓氷線 H補遺 この夏(2010年8月13日〜22日)、群馬県の北軽井沢をベースに、各種の環境調査を行った。その合間を見て、今まで行ったこと、見たことない史跡、遺跡、景勝地を見て回った。 そのひとつに高崎(群馬)→横川(群馬)→軽井沢(長野)→直江津(新潟)の間を結んでいた信越本線が、長野新幹線の開通、開業により廃線となり不通となったが、横川〜軽井沢間、通称、碓氷峠部分が我が国でも有数の鉄道遺産として保存されていることを聞き、旧信越本線の碓氷線区間を見学、視察した。 2010年8月15日(日)、皆で車に分乗し、北軽井沢→白糸の滝→旧軽井沢→旧旧旧国道18号線経由で現地を視察した。当日は好天、絶好の鉄道遺産視察びよりとなった。 その昔、最大の難所とされた碓氷峠は、現在、長野新幹線、関越自動車道ともにトンネルをぶち抜き走行しているが、当時の上越本線碓氷線(鉄道)は、日本初のドイツから技術導入したラックレールによって急勾配を登るアプト式鉄道により横川駅から軽井沢駅を走行していた。 開通当初の明治初期には蒸気機関車が走っていたが、橋梁が18か所、トンネルが26カ所もつづく碓氷峠において、とくにトンネル内の煙害対策の難しさから、国鉄で最初の電化が行われたのも信越本線が最初となった。実際、トンネル内のばい煙、粉じん対策にあたった鉄道職員が殉職している。
より詳しくは、信越本線は明治18年10月(1885年)に高崎から横川まで、また軽井沢から直江津までは明治22年に開業したものの、横川から軽井沢までの通称、碓氷峠部分は急勾配のため軌道の路線選定に紆余曲折した。 単位:m 旧信越本線碓氷線主要地点の標高 出典:グーグルアースにより青山が作成 結局、明治26年4月に高崎から直江津まで全線開通する。しかし、横川から軽井沢の11.2kmの区間は、平均斜度が1000分の66.7(66.7/1000)もあるため、当時の蒸気機関車による走行は困難であり、当時ドイツで使われていたアプト式が採用され昭和38年まで使われていた。 <信越本線年表>(本稿に関わるもののみ掲載) 1885年(明治18年)10月15日 【開業】高崎駅 - 横川駅 【駅新設】飯塚駅、安中駅、磯部駅、松井田駅、横川駅 1886年(明治19年)12月1日 【延伸開業】上田駅 - 軽井沢駅 【駅新設】田中駅、小諸駅、御代田駅、軽井沢駅 1893年(明治26年)4月1日 【延伸開業・全通】横川駅 - 軽井沢駅 【停車場新設】熊ノ平(給水給炭所) 【複線化】横川駅 - 丸山(信号場)、矢ヶ崎(信号場) - 軽井沢駅 1912年(明治45年) 5月11日 【電化】横川駅 - 軽井沢駅 (直流600V・第三軌条式。日本初の幹線電化) 1963年(昭和38年)6月21日 【電化】軽井沢駅 - 長野駅 7月15日 横川駅 - 軽井沢駅(直流1500V)粘着運転開始 9月30日 横川駅 - 軽井沢駅 アプト式廃止 1964年(昭和39年) 8月24日 【電化】長野駅 - 直江津駅 1997年(平成9年)10月1日 長野新幹線開業 【路線廃止】横川駅 - 軽井沢駅 (-11.2km) 【第一種鉄道事業廃止・移管】軽井沢駅 - 篠ノ井駅 (-65.6km)(→しなの鉄道線) 【駅廃止・移管】中軽井沢駅、信濃追分駅、御代田駅、平原駅、 滋野駅、田中駅、大屋駅、西上田駅、坂城駅、戸倉駅、屋代駅 上述のように、横川〜軽井沢の11.2kmには、当時の日本の土木技術の粋を集め橋梁が18カ所、トンネルが26カ所がつくられた。これらの鉄道施設は、昭和38年に日本で最初に電化されるが、新線開通時の平成9年10月に横川〜軽井沢の11.2km区間が廃止された。 区間廃止後、国鉄、JR、群馬県など地元自治体により上越本線旧横川〜軽井沢区間の軌道、橋梁、トンネルの延長で約半分が自然環境と調和する歴史的文化的な遺産として保存され、軌道部分が「アプトの道」という名の遊歩道(トレール)となり一般開放されている。 なかでも群馬県安中市松井田にある第三橋梁、通称、めがね橋(下の写真)は、芸術性高い構造物として国指定の重要文化財となっている。 第三橋梁、通称、めがね橋 撮影:青山貞一、CoolPix S8 2010.8.15 下の写真は第三橋梁の横川側にある第五隧道(=トンネル)。この程度の照明があるので歩くのに懐中電灯などは不要である。 第五隧道(トンネル) 撮影:青山貞一、CoolPix S8 2010.8.15 なお、本稿末に現在「アプトの道」として遊歩道となっている区間を示した。この区間では、橋梁18カ所のうち6か所、トンネルが26カ所のうち5カ所と第6号トンネルの入口(出口)が公開されており歩いて視察できる。また旧国道18号線の沿道で軽井沢から横川に向かって第6号、第5号、第4号橋梁を視察することができる。 実際の視察は、長野県側(軽井沢)から旧国道18号線(旧道)を横川側に下る場合は、第三橋梁(めがね橋)のすぐ近くにある駐車場に車を置き、徒歩で40m弱の第三橋梁に登り、そのまま横川までの4.8km(アプトの道、遊歩道もともとは軌道)の上を歩くことができる。 その他、始点(終点)である横川駅のすぐ近くにある「アプトの道」の始点から入り第三橋梁までの4.8kmを歩ける。また第二橋梁と第三橋梁の中間地点に、碓氷湖(坂本ダム)がある。ここへは「アプトの道」からも行ける。人造湖ではあるが、風光明媚な景勝地であり、釣りもできる。 さらに国の重要文化財となっている旧丸山変電所近くにある「峠の湯」という温泉施設の駐車場に車を置き、第三橋梁側あるいは横川側のいずれの方向に歩くことも可能である。またこの近くには、江戸時代に「箱根関」とともに日本の三大関所の一つとなったという中山道の「碓氷関所」もある。 旧丸山変電所(国指定重要文化財) 撮影:池田こみち、CoolPix S10 2010.8.15 碓氷湖(坂本ダム) 撮影:青山貞一、CoolPix S8 2010.8.15 いずれも無料で開放されている。またトンネル内は照明があるので懐中電灯などは不要である。装備としては、運動靴など簡単なトレッキング装備で十分であるが、夏場は第一トンネルから横川駅までの区間は日射を遮る施設が一切ないので、日傘、帽子などをお勧めする。 さらに「峠の湯」は本格的な温泉施設でもあり、入力料金は大人で500円なので、どこから「アプトの道」に入った場合でも温泉でひと汗流すのがよい。 また横川駅前に有名なおぎのやの「峠の釜めし」の本店がある。ぜひ、お昼は本店で「峠の釜めし」を食べられたい。この釜めしは、廃線後、JR軽井沢駅や長野道の横川ICなどで売られているが、やはり往時に思いをはせ、本店でいただくのが格別である。 「峠の釜めし」で全国的に有名なおぎのやの本店 撮影:青山貞一、CoolPix S8 2010.8.15 つづく |
出典:青山貞一、CoolPix S8 2010.8.15が撮影した写真をもとに筆者が独自に作成した