エントランスへはここをクリック   
  
夕張市は他人事ではない
自治体財政ワースト・ランキング
@実質公債費比率


青山貞一 
武蔵工業大学環境情報学部
掲載日:2007年1月3日
転載禁


@  A  B  C  D  E

はじめに 大阪府の粉飾決算が発覚!?

 朝日新聞は師走もおしせまった2007年12月30日、以下のスクープ記事を掲載した(関西版)。

 大阪府は、本来返済すべき借金を一部先送り、3年間で総額約2600億円の資金を転出、財政赤字を実態より少なく見せることで、財政再建団体への転落とならないよう偽装したというものである。企業で言えば粉飾決算、収支決算の「偽装」でもあろう。

 また府知事選に関連し、大阪府には累積債務が4兆3000億円あるという話しがでている。半端でない数字である。

大阪府が「赤字隠し」 3年間で2600億円
2007年12月30日

 大阪府が2004年度以降、府債(借金)の返済を一部先送りして3年間で総額約2600億円の資金を捻出(ねん・しゅつ)、財政赤字を実態より少なく見せかけていたことが朝日新聞社の調べで分かった。こうした操作をしなければ、府は今年度にも財政再建団体へ転落する恐れがあったが、捻出資金を一般会計に繰り入れることで転落を回避した。事実上の「赤字隠し」とも言える手法で、府はこうした実態を議会や金融機関、投資家に情報開示していなかった。府幹部は「違法ではないが、適切なやり方ではなかった」と説明している。

 以下略

大阪府が「赤字隠し」 3年間で2600億円 朝日新聞


■財政再建団体は夕張市だけではない

 ※本論は筆者が大学の学部で行っている講義「公共政策論」
   の自治体財政問題の一部をなすものである。


 財政破綻や財政再建の自治体では、北海道の夕張市が有名である。

 だが、総務省(旧自治省)が発表している自治体財政の健全度(不健全度)を表す各種財政指標を見ると、財政難に陥っている自治体は何も夕張市だけでないことがよく分かる。

 新年の本ブログ連載では、自治体の財政健全度(不健全度)を徹底分析し、読者に公表する。

 財政健全度として用いる指標は、@実質公債費比率、A起債制限比率、B経常収支比率、C財政力指数などである。これにより、財政破綻に陥っている、財政破綻のとばくちにいる自治体は夕張市だけでないことを知ってもらいたい。

 そのうえで、自治体が財政破綻する原因は何かを分析し、では私たち納税者は一体どうすればよいか、知事、市町村長は何をなすべきかについて提案したい。


新たな自治体財政健全度指標としての「実質公債費比率」 

 シリーズ第1回目は、実質公債費比率で見た全国自治体財政健全度ワーストランキングである。

 実は、国(総務省)は2006年4月から地方債制度を「許可制度」から「協議制度」に移行した。許可から協議に移行することで、財政面での地方分権を明確にしようという試みである。簡単に言えば、自治体が借金をするに際し、いちいち国に許可をもらわなくても自己責任で行えるということを意味する。

 それに伴い新たな財政指標が導入された。
実質公債費比率」である。この実質公債費比率」だけで評価、判断した場合、あの神戸市も、横浜市も夕張市一歩手前であることが分かる。 まず公債とはなにかについて解説しよう。

 公債(こうさい)は、国、政府関係機関及び地方公共団体が行政運営上必要な財源を借入により調達した場合の当該借入、又は当該借り入れの際に発行された証書、証券である。

 大別すると、国債、政府関係機関債及び地方債の総称である。その公債も調達(発行)しすぎると@財政破綻、A将来世代の償還の負担が増大するなど深刻な問題を引き起こす大きな原因となる。

 ところで本論で最初に用いる財政健全度に関連した指標である実質公債比率は、公債費による財政負担の程度を示すものである。

 従来の起債制限比率に反映されていなかった公営企業(特別会計を含む)の公債費への一般会計繰出金、PFIや一部事務組合の公債費への負担金、債務負担行為に基づく支出のうち、公債費に準ずるものを公債費類似経費として実質的に算入している。

 すなわち従来、公債費比率で評価していたものを、評価の対象を公債費だけでなく、@公営企業(特別会計を含む)の公債費への一般会計繰出金、APFIや一部事務組合の公債費への負担金、B債務負担行為に基づく支出のうち、公債費に準ずるものを評価の対象に加えたのである。当然この実質公債費比率の方が実態を反映した指標となる。

 以下はその実質公債比率を数式で示したものである。この比率は、現在、公債費による財政負担の健全度を示すものとして大いに注目されている。





実質公債費比率
(当該年度の元利償還金+ 公営企業元利償還金への
一般会計繰出金等公債費類似経費)
−(元利償還金等の特定財源 +
普通交付税の基準財政需要額算入公債費)

標準財政規模 − 普通交付税の基準財政需要額算入公債費

 実質公債比率はパーセント(%)で表される。

 以下にあるように、実質公債比率が18%以上の比率となると、2006年4月以前のように、地方債の発行に際して国の許可が必要となる。また25%以上の団体は、一般事業等に関連して自治体が発行する起債が制限され、事実上自治体の重要な機能が失われることになる。

18%以上の団体 ………引き続き地方債の発行に国の許可が必要
25%以上の団体 ………一般事業等の起債が制限

 ちなみに全国的に自治体の財政破綻で有名となった北海道の夕張市の平成17年度(2005年度)の実質公債費比率は、28.6%である。

 ところで、私たちが知らなかっただけで、民間企業であればとっくに破産、倒産となっている自治体は多数ある。破産、倒産とまでは行かなくとも、自治体としのて重要な機能、すなわち自分で政策や事業を考え、企画し、実施することが財政面から困難になっている自治体はすでに多数あるのである。


実質公債費比率で見た都道府県、財政ワーストランキング 

 表1は、2005年度の全都道府県の主要財政指標として実質公債費比率を悪い順で示したものである。全国ワーストワンは、長野県である。比率は20.1%である。したがって地方債の発行に際し国の許可が必要となっている。

 地方債の発行に際し国の許可が必要となっている都道府県は、長野以外に北海道、兵庫県、岡山県などがある・

 おそらく大阪府もの地方債の発行に際し国の許可が必要な自治体となっていたはずである。もっぱら、長野県の場合、田中康夫知事から自民党系の村井仁知事に代わっているので、地方債の発行に際し国の許可が難なくでる可能性があるが、県財政が全国一悪いことには変わりないことが分かった。


表1 2005年度財政ワースト・ランキング
    (
都道府県:
以下は平均より悪い都道府県を表示
都道府県名 実質公債費比率
長野県 20.1
北海道 19.8
兵庫県 19.6
岡山県 18.8
島根県 17.9
高知県 17.3
東京都 17.1
佐賀県 17.0
宮城県 16.8
秋田県 16.3
広島県 16.0
鹿児島県 15.9
栃木県 15.9
茨城県 15.7
大阪府 15.5
福井県 15.5
埼玉県 15.4
山形県 15.4
都道府県平均 14.9
(注) 平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均であり、財政力指数は単純平均である。
出典:国の平成17年度データ、平成17年度 地方公共団体の主要財政指標一覧より筆者が作成


実質公債費比率で見た政令指定都市、財政ワーストランキング 

 次に、人口規模で100万人以上の政令指定都市はどうか?

 表2に2005年度の政令指定都市の主要財政指標としての実質公債費比率を示した。なんと、政令指定都市では、神戸市、横浜市千葉市、福岡市、広島市、名古屋市、仙台市、京都市がすでに地方債の発行に際して国の許可が必要な18%を超している。

 もっぱら、政令指定都市の平均実質公債費比率は19.1%となっており、18%の引き続き地方債の発行に国の許可が必要限度をはるかにこえている。政令指定都市の平均実質公債費比率は1全市町村の公債費比率の平均値、14.8%、全都道府県の平均値、14.9%にくらべ大幅に高くなっていることも大きな課題である。

 神戸市、横浜市、千葉市の実質公債費比率は、夕張市の28.6%には及ばないが、すでに23〜24%と危険水域に入っている。今後、よほど財政改善に励まないと、夕張化することもありうる危険水域に入っている。あの神戸市が、あの横浜市がとお思いになるだろうが、これは事実なのである。これら政令指定都市は、いずれも長野県同様、ハコモノ事業(横浜市のサッカー場など)、埋め立て事業(神戸市の埋め立て事業、空港建設事業など)、土木事業などにご執心だった自治体である。 

表2 2005年度財政ワースト・ランキング
    (全
政令指定都市) 
 
団体名 実質公債費比率
神戸市 24.0
横浜市 23.3
千葉市 23.0
福岡市 21.9
広島市 21.1
名古屋市 21.0
仙台市 18.9
京都市 18.0
川崎市 17.9
大阪市 17.4
静岡市 15.2
札幌市 14.0
さいたま市 12.2
北九州市 11.6
平均 19.1
(注)平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均 であり、財政力指数は単純平均である。
出典:国の平成17年度データ、平成17年度 地方公共団体の主要財政指標一覧より筆者が作成


実質公債費比率で見た全国市町村、財政ワースト・ランキング 

 表3は、2005年度の全国の基礎自治体、市町村の実質公債費比率である。北海道の夕張市は、28.6%でワースト8位に位置している。逆に言えば、夕張市よりさらに財政が悪い市町村が7団体もあることになる。実質公債比率が25%を超えると一般事業等に関連して自治体が発行する起債が制限されることになるが、25%以上の自治体は、実に30団体ある。

 そのうち、北海道の自治体が9団体でトップ、青森県、山形県、福島県、長野県、奈良県、高知県、沖縄県がそれぞれ2団体となっているが、確かに夕張市と同じ北海道の市町村が圧倒的に多いことが分かる。ただし、25%未満にも同様の傾向があり、今後、25%超に入ってくる可能性は高い。

 なお、全市町村の公債費比率の平均は、14.8%で全都道府県の14.9%とほぼ同じ水準にあることが分かった。

 財政悪化の想定される原因については別途まとめてコメントしたい。

表3 2005年度財政ワースト・ランキング
    (
市町村:
指数が20より悪い市町村を表示
都道府県名 団体名 実質公債費比率
北海道 歌志内市 40.6
北海道 上砂川町 36.0
長野県 王滝村 33.3
沖縄県 座間味村 30.6
福島県 泉崎村 30.1
山形県 新庄市 29.9
兵庫県 香美町 28.8
北海道 夕張市 28.6
北海道 洞爺湖町 28.2
長野県 泰阜村 28.2
北海道 浜頓別町 27.7
山形県 長井市 27.7
福島県 双葉町 27.3
沖縄県 伊平屋村 27.2
北海道 知内町 27.1
北海道 礼文町 26.9
奈良県 東吉野村 26.7
岐阜県 東白川村 26.5
高知県 大豊町 26.4
大阪府 摂津市 26.4
北海道 赤平市 26.3
北海道 三笠市 26.3
青森県 深浦町 26.2
兵庫県 芦屋市 26.1
北海道 中頓別町 26.0
岩手県 藤沢町 25.9
鹿児島県 十島村 25.9
高知県 安芸市 25.9
青森県 田舎館村 25.7
奈良県 川上村 25.6
大阪府 泉佐野市 24.8
群馬県 嬬恋村 24.7
青森県 東通村 24.6
岡山県 笠岡市 24.5
北海道 砂川市 24.4
島根県 奥出雲町 24.4
福島県 矢吹町 24.3
島根県 斐川町 24.2
秋田県 八郎潟町 24.2
長野県 辰野町 24.2
北海道 奥尻町 24.2
奈良県 曽爾村 24.1
福井県 越前町 24.1
北海道 利尻町 24.0
青森県 西目屋村 24.0
兵庫県 神戸市 24.0
北海道 様似町 23.8
島根県 飯南町 23.8
兵庫県 赤穂市 23.8
北海道 興部町 23.8
北海道 神恵内村 23.7
山口県 山陽小野田市 23.7
北海道 広尾町 23.7
岩手県 普代村 23.6
北海道 美唄市 23.6
岡山県 備前市 23.6
奈良県 山添村 23.6
山梨県 山中湖村 23.6
島根県 川本町 23.5
新潟県 南魚沼市 23.4
青森県 田子町 23.4
高知県 須崎市 23.4
沖縄県 伊是名村 23.4
島根県 邑南町 23.3
北海道 標津町 23.3
北海道 美幌町 23.3
徳島県 勝浦町 23.3
北海道 倶知安町 23.3
神奈川県 横浜市 23.3
北海道 愛別町 23.3
北海道 留萌市 23.2
北海道 紋別市 23.2
和歌山県 北山村 23.2
北海道 浜中町 23.2
北海道 江差町 23.2
島根県 隠岐の島町 23.2
愛媛県 大洲市 23.1
高知県 大月町 23.1
新潟県 胎内市 23.1
宮城県 村田町 23.1
京都府 笠置町 23.1
千葉県 印西市 23.1
島根県 安来市 23.1
兵庫県 淡路市 23.0
千葉県 千葉市 23.0
山形県 金山町 23.0
千葉県 印旛村 23.0
島根県 西ノ島町 22.9
山口県 美祢市 22.8
北海道 滝上町 22.8
山形県 白鷹町 22.7
北海道 大空町 22.7
福島県 鏡石町 22.7
京都府 南山城村 22.6
島根県 雲南市 22.6
島根県 美郷町 22.5
石川県 能登町 22.5
青森県 佐井村 22.5
福島県 白河市 22.4
鳥取県 日野町 22.4
長野県 南木曾町 22.4
熊本県 長洲町 22.4
長野県 朝日村 22.4
長野県 清内路村 22.4
山口県 光市 22.4
山形県 南陽市 22.3
京都府 精華町 22.3
奈良県 御所市 22.3
青森県 外ヶ浜町 22.2
鹿児島県 屋久町 22.2
兵庫県 養父市 22.0
山形県 川西町 22.0
福島県 石川町 22.0
福岡県 福岡市 21.9
愛知県 半田市 21.9
福岡県 東峰村 21.9
新潟県 魚沼市 21.9
和歌山県 日高川町 21.8
北海道 当別町 21.8
長野県 筑北村 21.8
香川県 多度津町 21.8
兵庫県 西宮市 21.8
福島県 三春町 21.8
山形県 寒河江市 21.8
滋賀県 彦根市 21.7
島根県 松江市 21.7
新潟県 十日町市 21.7
長野県 根羽村 21.7
山梨県 甲府市 21.7
青森県 むつ市 21.7
北海道 長沼町 21.6
大阪府 泉大津市 21.6
鹿児島県 西之表市 21.6
三重県 四日市市 21.6
奈良県 香芝市 21.6
静岡県 吉田町 21.6
北海道 幕別町 21.5
奈良県 大和高田市 21.5
北海道 新ひだか町 21.5
長野県 小川村 21.5
鹿児島県 三島村 21.5
長野県 平谷村 21.4
北海道 日高町 21.4
山口県 田布施町 21.4
北海道 弟子屈町 21.4
宮城県 柴田町 21.4
北海道 浦河町 21.4
福島県 本宮町 21.3
広島県 北広島町 21.3
山形県 高畠町 21.2
岡山県 岡山市 21.2
島根県 浜田市 21.1
埼玉県 八潮市 21.1
鳥取県 倉吉市 21.1
長野県 小谷村 21.1
青森県 黒石市 21.1
奈良県 広陵町 21.1
広島県 広島市 21.1
福島県 喜多方市 21.1
和歌山県 みなべ町 21.1
長野県 木曽町 21.0
愛知県 名古屋市 21.0
岐阜県 土岐市 21.0
山形県 村山市 20.9
北海道 増毛町 20.9
北海道 せたな町 20.9
高知県 本山町 20.8
山形県 米沢市 20.8
沖縄県 南大東村 20.8
青森県 鰺ケ沢町 20.7
静岡県 牧之原市 20.7
岩手県 平泉町 20.7
千葉県 白井市 20.7
新潟県 柏崎市 20.7
鹿児島県 天城町 20.7
鹿児島県 知名町 20.7
宮城県 大河原町 20.7
兵庫県 神河町 20.7
広島県 庄原市 20.7
北海道 根室市 20.7
群馬県 みなかみ町 20.7
長野県 売木村 20.6
高知県 日高村 20.6
岡山県 新見市 20.6
東京都 三宅村 20.6
北海道 岩内町 20.6
宮城県 加美町 20.6
京都府 綾部市 20.6
京都府 和束町 20.5
青森県 大鰐町 20.5
福島県 西会津町 20.5
福岡県 広川町 20.5
岡山県 和気町 20.4
北海道 北竜町 20.4
北海道 美瑛町 20.4
岡山県 吉備中央町 20.4
静岡県 下田市 20.4
奈良県 宇陀市 20.4
北海道 苫前町 20.3
長野県 長和町 20.3
岡山県 西粟倉村 20.3
石川県 七尾市 20.3
岩手県 紫波町 20.3
青森県 三沢市 20.3
秋田県 三種町 20.3
徳島県 佐那河内村 20.3
愛媛県 久万高原町 20.3
北海道 猿払村 20.3
北海道 本別町 20.2
北海道 南幌町 20.2
長野県 中条村 20.2
茨城県 水戸市 20.2
山口県 周防大島町 20.2
長野県 山ノ内町 20.2
北海道 浦幌町 20.2
鹿児島県 さつま町 20.2
北海道 網走市 20.1
徳島県 那賀町 20.1
埼玉県 長瀞町 20.1
長野県 大桑村 20.1
広島県 三次市 20.1
山梨県 甲州市 20.1
鹿児島県 宇検村 20.1
岩手県 矢巾町 20.0
千葉県 木更津市 20.0
鹿児島県 大和村 20.0
島根県 海士町 20.0
北海道 遠軽町       20.0
全国市町村 平均 14.8
(注)1 平均欄の比率及び指数のうち、経常収支比率、実質公債費比率及び起債制限比率は加重平均であり、財政力指数は単純平均である。ただし、経常収支比率及び財政力指数の全国市町村平均については、特別区を含まない。
出典:国の平成17年度データ、平成17年度 地方公共団体の主要財政指標一覧より筆者が作成



つづく