長野県の審議会事情(7) 〜浅川ダム事業は本当に 一端中止されたのか〜 青山貞一 2007年12月23日 |
2007年12月21日に開催された今年度第3回目の長野県公共事業評価監視委員会の中心議題となった、浅川ダム事業は本当に一端中止されたのかについて、ダム問題の草分け的存在で、現地調査を繰り返し、今でも「ダム日記」を書きつづけているまさの・あつこさんに伺ってみた。 以下は、まさのさんの所見である。 ..... 県の回答を整理すると「中止されていなかった」ということになります。 ※県の回答は以下を参照のこと。 ◆浅川ダムに関する県との事前質疑応答 つまり、平成15年、 1) 「長野県治水・利水ダム等検討委員会」の答申を尊重し、県が、「ダムによらない治水・利水対策を策定し、現行事業を中止する」との再評価案を県が決定、 2) 県が「長野県公共事業評価監視委員会」に同案を提示。 3) 最終的に、それを浅川ダムに関する県の対応方針とした ところが、 4) 「県から国に対して正式に中止する旨の報告は行っていないため」 5) 「多目的ダム建設事業はゼロ要求のまま継続扱いとなっており」 6) 「平成20年度からは治水ダム建設事業として国庫補助事業を再開するよう国に要望をしている」 単に「継続扱いだった、再開だ」と。中止ではなかったと。 「中止した」という決定の報告を「県が国にしなかったから」中止じゃない、という考え方に議論の余地は多いにありますが 問題は、 1. 河川整備基本方針を、いまだに旧河川法16条にもとづく工事実施基本計画を、新法16条に付された附則「経過措置」によって「みなし河川整備基本方針」として、「基本高水」の見直しをやっていないこと。(見直しても旧法下で決めた「基本高水」を踏襲しているのが大半の水系なので、見直したからどう変わるかという議論は別として、) 2. 従来のダムの形状から、「穴あきダム」への形状の変更がある。これは新法16条の2で基づいて、関係住民の意見を反映する措置をとらねばならないとされている河川整備計画の策定時に十分にその是非、B/Cが別々にしっかり議論されるべきことです。 その措置が、不十分だったこと。(たとえば、浅川ダムの穴あきダム計画では、洪水の軽減効果は、私の取材によれば5ミリ程度です。そんな案が通るほど、長野県民はアホなんですか?そうではない。そんな案であると知らされていない、というのが現状ではないでしょうか。) この二つの問題、 河川整備基本方針における問題と(16条) 河川整備計画における問題は(16条の2) 全国に共通しています。 もう少し詳しくいうと 河川整備基本方針については、今年度末までに、国交省は109水系のほとんどを策定する、として、この2年猛スピードで策定してきたのに、浅川を含む信濃川水系は今、「策定作業が進められています」(県回答)という状態(他の大河川ではもうほとんど策定済み)。それはなぜか?そして100年の長期スパンのことを決める方針なのに、それがいまだに旧法にもとづく「みなし基本方針」のまま、それを上位計画に持ったまま、先に穴あきダムを決定するのは適正か?適正なわけがありません。 それから、「本流」と「支流」の間で起きている問題ですが、長野のケースで言えば、 浅川の存在意義はなんなのか?実は、浅川の治水は信濃川本流の治水のために存在している、と言っても過言ではありません。洪水時に、信濃川に流れ込まないようにするために、浅川をせき止める。浅川ダムはそのためのもので、浅川で起きてきた洪水は信濃川との合流地点で起きているものだから、浅川ダムができたとしても浅川ダム下流部から信濃川に合流するまでの間に流れ込む水は、依然として、合流部で溢れます。 問題は 1)長野県は、県民に対する責任を果たすよりも、国が管理する信濃川に流れこまないようにするための責任に重きをおいていること。 2)それなのに、そうした説明をしていないこと。 3)つまり実際に過去起きた洪水の原因(信濃川に流れ込まない よう、合流部で樋門を閉めてしまうため、合流部の浅川下流で洪水が起きる)を明らかにせず、ダムを作ればそれが解消されるかのごとき幻想を振りまいていること(地元メディアもそれに荷担してきたこと)。 4)この「信濃川治水のための浅川」という構図が、あまりにもメディア関係者を含め、河川の専門家以外には理解されてきていないこと。(地元住民は案外知っているのですが、これが人々の認識を変える上で重要なことであると、しっかり認識していないために、きちんと広めていないこと) 5)実際には浅川ダム予定地よりも下流に、合流地点まで何本も 支流があり、浅川ダムを作ったところで、合流地点での洪水問題は解消されないこと 6)合流地点でおきる洪水問題を解消するには、支流「浅川」を管理して県民の安全に責任を持つ長野県が、本流「信濃川」を管理する国と協議をして、信濃川の安全のために浅川が存在するという考え方でいいのか、県民に聴いた上で、決めていかなければならないのですが、国任せで、何が問題なのかを県民に知らせないまま、国の言う通りにしてきたこと。 7)これをしてこなかったがために、何が起きたか?ダムができること、および、それが問題解決をするという誤解を前提として、本来、合流地点で水に浸かる洪水常襲地帯に、町営の住宅団地を造ってしまったために、問題がさらに増えてしまった。間違った解決方法と説明不足が、新しい問題を生んでしまった。 以下は青山。 ということは、まさのさんの所見からも浅川ダム事業はこの間、中止されなかったことになる。 |