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長野県の審議会事情(6)
〜浅川ダムに関する県との事前質疑応答〜


青山貞一

2007年12月23日



 2007年12月21日、長野県庁3階の特別会議室で公共事業評価監視委員会の今年第3回目の委員会が開かれた。

 本来、「浅川ダム」問題は公共事業評価監視委員会の審議にかけられるべきものである。しかし、長野県は2007年はじめから、浅川ダム事業を公共事業評価監視委員会ではなく、河川法の河川整備計画*に関する有識者会議を別途設置し、そこで審議したことを理由に7月9日、国土交通省に河川整備計画を認可を申請、わずか1ヶ月ちょっと後の8月22日、国土交通省が認可していた。

 ※正規名は、信濃川水系長野圏域河川整備計画(浅川)

 それを受け、2007年12月20日に2008年度予算の財務省原案で、長野県内治水ダム事業として浅川ダム(長野市)に事業費2億5000万円(うち国費は半分の1億2500万円)を盛り込んだ。
 
 同委員会では午後3時から「浅川ダム」問題の扱いについて議論となった。
実は第3回委員会開催に先駆け、委員から事務局である長野県に対して浅川ダムを公共事業評価監視委員会にかけず、国土交通省に認可申請及び財務省に国庫補助申請をしたことについて質問を文面で出していた。

 以下はそれに対する県側の回答である。参考のため全文を掲載する。


 長野県公共事業評価監視委員会の質問に対する回答

 長野県公共事業評価監視委員会からのご質問の回答は、以下のとおりです。長 野 県

【1.公共事業再評価の手続きについて】

1−1
 県の公共事業評価監視委員会に諮る案件か否かの判断はだれが行うのか。
 
 県の公共事業評価監視委員会に諮る案件は、副知事を委員長とする長野県公共事業再評価委員会で決定しています。

 長野県公共事業再評価実施要綱により県が作成する再評価案は、同実施要綱(第3)及び長野県公共事業再評価実施要領(第3)に該当する全ての事業について、各部局が再評価の素案を作成し、これに基づき長野県公共事業再評価委員会において再評価案を決定します。

 県の公共事業評価監視委員会には、この再評価案を提出し、そこでの意見を踏まえ、長野県公共事業再評価委員会において作成した対応方針案を部長会議に諮り、最終決定します。

 なお本年度の再評価については、6月22日の再評価委員会において、4件の再評価案を決定するとともに、浅川ダムについては、報告事項としました。

1−2 今回の浅川ダム計画を県の公共事業評価監視委員会に諮らなかった理由と根拠。

 今回の浅川における治水専用ダムは、平成15年度の再評価において、評価監視委員会からの意見も踏まえ、県として現行のダム事業を中止するとの方針を決定し、その後、検討を進めてきた結果として、新たに河川整備計画に位置付けた計画です。

 この河川整備計画は、平成9年の河川法改正に伴い創設された制度で、計画の対象期間内(一般的に20年〜30年間)に河川管理者が実施する具体的な河川整備の内容を定めるものであり、今回の浅川における治水専用ダムも実施予定の具体的な河川整備の内容の一つとして河川整備計画に盛り込んだものです。

 河川整備計画策定にあたっては、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる他、「必要があると認めるときは、河川に関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。」(河川法第16条の2第3項)とされており、事業の実施、計画の妥当性に関し、行政内だけでなく、第三者である学識経験者等の意見も聴いたうえで策定することとされています。

 浅川に関しても、この河川法で定めるところにより、11名の学識経験者を選定し、現地調査を含め3回の会議を開催し、学識経験者からの意見聴取を行ったうえで河川整備計画を策定しています。

 このように、河川整備計画の策定にあたっては、「再評価を行うに当たり、学識経験者等の第三者から構成される長野県公共事業評価監視委員会を設置し、意見を聴くものとする」との長野県公共事業再評価実施要綱第6で規定している主旨と同様の手続きを規定しています。

 これらのことから県としては、こうした経過により策定、認可され、河川管理者としての意志を明らかにした河川整備計画の内容に関して、再度、別の第三者機関から意見を聴く必要はないものと解しています。

 なお根拠については、県実施要綱第7「再評価の評価方法は、国が策定した評価方法を準用する」との規定により、国の再評価実施要領第4の1(4)で定められている「河川事業、ダム事業については、河川法に基づき、学識経験者等から構成される委員会等での審議を経て、河川整備計画の策定・変更を行った場合には、再評価の手続きが行われたものとして位置付けるものとする。」との条項を適用しています。

1−3 長野県公共事業評価監視委員会設置要綱第2第3項で定める「その他必要と認める事業」とは何か。

 設置要綱の「その他必要と認める事業」とは、市町村長から審議の依頼があった市町村の再評価対象事業です

 県の再評価に関する要綱、要領は、国の「建設省所管公共事業の再評価の実施要領」(平成10年3月27日付け)に基づき作成しています。

 この国の再評価実施要領では、事業評価監視委員会の設置について、「市町村は、自ら事業評価監視委員会を設置する方法に代えて、都道府県の事業評価監視委員会に依頼する方法も採りうるものとする」(第5第1項)とされています。

 そのため県の公共事業評価監視委員会設置要綱では、市町村の再評価案を、県の評価監視委員会が審議することを念頭に、「その他必要と認める事業」(第2第3項)の規程を設けたものであり、平成10年度には、県の評価監視委員会へ44市町村62箇所の再評価案件を諮っております。

 なお、平成18年度の第1回公共事業評価監視委員会では、事務局より、上記の規程は、市町村事業を想定したものであると説明をしております。

【2.従前の浅川ダム計画について】

 2−1 前回の浅川ダム計画は中止とされているとする根拠。


 平成15年度の再評価に際しては、まず県としての意志決定機関である長野県公共事業再評価委員会において、「長野県治水・利水ダム等検討委員会の答申を尊重し、ダムによらない治水・利水対策を策定し、現行事業を中止する」との再評価案を県として決定し、長野県公共事業評価監視委員会に提示した。これに対し、この県案とすることで異存ない旨の意見を同委員会から受け、この意見を踏まえ、同様の主旨(現行事業を中止すること)を浅川ダムに関する県の対応方針とした経過があります。

 従って、県としては、一旦、多目的ダムである浅川ダム計画を中止する方針を決定したうえで、今日に至ったものであり、本年度の委員会の中での「中止」との発言は、こうした経過を指してのものである。

 なお、国庫補助事業上は、県から国に対して正式に中止する旨の報告は行っていないため、代替案策定を開始してから今日に至るまで、多目的ダム建設事業はゼロ要求のまま継続扱いとなっており、平成20年度からは治水ダム建設事業として国庫補助事業を再開するよう国に要望をしている。

【3.基本方針等における今回の浅川ダムの位置付けについて】

3−1 河川整備基本方針における今回の浅川ダムの位置付け。


  平成9年の河川法一部改正に伴い、河川整備に関して基本となるべき事項(基本方針、基本高水、計画高水流量等)については、河川整備基本方針で、具体的な河川整備に関する事項を河川整備計画で策定することになっています。

  一級河川に関しては、河川法第9条において、「一級河川の管理は国土交通大臣が行う」としたうえで、同条第2項において、「国土交通大臣が指定する区間(以下「指定区間」という)内の一級河川に係る国土交通大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、当該一級河川の部分の存する都道府県を統括する都道府県知事が行うこととすることができる。」と規定しています。政令によれば、一級河川に係る「河川整備基本方針」は水系を単位として国土交通大臣が策定し、「河川整備計画」に関しては、国・県が各々の管理区間について定めることとされています。

 浅川が位置する信濃川水系の河川整備基本方針に関しては、現在、国土交通省において策定作業が進められていますが、河川法附則第2条において、「河川整備基本方針が定められるまでの間においては、この法律の施行の際、現にこの法律による改正前の河川法第16条第1項の規定に基づき当該河川について定められている工事実施基本計画の一部を、政令で定めるところにより、新法第16条第1項の規定に基づき当該河川について定められた河川整備基本方針とみなす。」との経過措置が定められていることから、現行の信濃川水系工事実施基本計画を同水系にかかる河川整備基本方針とみなして、浅川の河川整備計画の策定を行っています。

  ちなみに、工事実施基本計画は水系全体の治水対策の骨格を表すものであるため、水系内に存在するすべての一級河川に関して基本高水、計画高水等が規定されるものではなく、本川及び主要な支川に関する諸元のみが規定されています。

 浅川に関する治水計画の諸元は、河川整備計画策定に際して県が検討を行い、工事実施基本計画に基づく千曲川本川の計画との整合性を確認し、確定させたものです。

3−2 浅川ダム工事着手に至るまでの一連の行政手続きにおける現時点の段階。 

本年8月22日で浅川の河川整備計画が認可となったことにより、浅川治水専用ダムは、河川法で定めるところにより、浅川に関して河川管理者が行う河川整備の内容の一つとして確定したことになります。

 現在は、工事発注のための準備として、県単独費により、概略設計、水理模型実験等を進めており、本作業に関しては、必要となる経費を本年6月県議会に補正予算として計上し、議会の承認を得て進めています。
  
 なお本質問に関連し、河川法第23条(流水の占用の許可)、同第24条(土地の占用の許可)、同第25条(土石等の採取の許可)、同第26条(工作物の新築等の許可)、同27条(土地の掘削等の許可)に関する手続きが進められているかとのご質問がありましたが、いずれも河川管理者以外の者が河川区域内で行う行為に関する許認可であるため、河川管理者が行う河川整備に際しては、いずれの手続きも行う必要ありません。

【4.その他】

4−1 高水協議会からの提言に対し、これまで県からの回答がない理由。

 

 高水協議会設置要綱に記載されているとおり、同協議会は「基本高水流量について多様な視点からの検討及び研究」「雨量、洪水情報等の共有」等を行うことを目的として設置したものであり、同協議会からの提言書の中でも記載されているように、「さまざまな課題について議論を行った結果をとりまとめたもの」つまり、個々の会員の意見として提出されたものであります。

 提出いただきました提言は、今後新規に河川計画を策定する際の参考とさせていただく所存であります。