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アンコール遺跡群現地調査報告


クバール・スピアン2Kbal Spean

青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda
2019年1月24日公開
独立系メディア E-Wave Tokyo 
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アンコール遺跡全体目次

<北東部郊外の寺院・遺跡>
バンテアイ・スレイ1
  バンテアイ・スレイ2  バンテアイ・スレイ3
バンテアイ・スレイ4  バンテアイ・スレイ5  プノン・クーレン
クバール・スピアン1  クバール・スピアン2   クバール・スピアン3 
べンメリア1  べンメリア2  ベンメリア3  ベンメリア4
コーケル1  コーケル2  コーケル3  コーケル4   コーケル5



クバール・スピアン2(Kbal Spean)

歴史

 残存する彫刻は、王スーリヤヴァルマン1世(在位1002-1050年)の治世時代に始まり、ウダヤーディチャヴァルマン2世)(在位1050-1066年[9])の時代に終わります。

 これら2人は11世紀に統治した王です。1,000本リンガは、他の彫刻を除いて、1054年のスーリヤヴァルマン1世の寄進により、その聖務者に属し、その地域に棲む隠者によって刻まれました。

 その地の碑文は、彫刻のほとんどがウダヤーディチャヴァルマン2世の治世になされたことを述べています。また、王ウダヤーディチャヴァルマン2世が1059年、ここに金色のリンガを捧げたと記しています。それは、シェムリアップ川がアンコールに注ぐその流れは、神聖なリンガを越えて清められると信じられていたからです。

 遺跡は、民俗学者 Jean Boulbet により1969年に発見されましたが、さらなる調査は、カンボジア内戦により中断されました。この地域は、1998年より安全な訪問を顕著に回復しまし。

構造


左: クバール・スピアンの岩床にある Sahasra lingas すなわち1,000本リンガ。
Source:Wikimedia Commons


右: 浅瀬の流れに格子状に配置されたヨニ
Source:Wikimedia Commons

 クバール・スピアンの橋は、自然の砂岩の橋です。モンスーンの季節のすぐ後、川の水位が下がり始めると、彫刻は橋の上流150メートルから橋の下流の滝にかけてよく見えます。

 この川に広がる11世紀の彫刻には、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ(またはマヘーシュヴァラ)の三神一体の神々が集まり、それに聖なる生き物があります。それらの彫刻において、ラクシュミーとともにいるヴィシュヌがヘビのアナンタの上にもたれ掛かり、シヴァとともにウマ (Uma) の別名で知られる配偶者パールヴァティーがナンディンに乗り、ヴィシュヌのへそから植物の茎が伸びその上のハスの花びらにブラフマーがいます。

 それにラーマやハヌマーンなどがあり、それらの彫刻は川床ばかりでなく川岸にも見られます。

 順次、川をせき止める自然の石橋がある浸食された水路の縁の小道に沿って歩くと、その1つとしてヴィシュヌとくつろいだ彼の足元にラクシュミーが座る夫婦の彫刻が見られます。橋の上流には、シヴァとウマ(パールヴァティー)が雄牛のナンディンに乗った彫刻あります。

 橋の下流およそ30メートルには、もう1つのヴィシュヌの彫刻があります。さらに下流の滝と滝壺までには、「千のリンガの川」("River of a Thousand Lingas")の名に相当するサンスクリット語の Sahasra lingas があり、粗い砂岩の川床に露頭するリンガの彫刻が橋の下流およそ6メートルより見られます。

 1995年にこの地を訪れたプノンペン・ポスト (Phnom Penh Post) のジャーナリスト Teppo Tukki によると、9世紀にさかのぼるいくつかのリンガが、25センチメートル四方、深さ10センチメートルの完全な格子模様の中に並んでいます。川はその上を流れ、天然の流水がそれらを5センチメートルほど覆っています。その聖なるものは、「クメール国王の力の経路」を生み出すよう設計されています。

 その彫刻の後、川は清水の淵に15センチメートル下がります。神聖なリンガの上を流れた川は清められることを果たし、下流の寺院群間へと通じて行きます。見られるリンガは、流れる水路にある「女性の本源」としてのヨニを表す方形の囲いの中にあります。

 これらのリンガを越えて、約40-50メートルにおよぶ川の流れは小岩の島を持ち、ついには滝壺に流れ落ちます。この川の経路の岩面上には淺浮彫り(bas reliefs)があります。

 ここにあるその浅浮彫りの1つは、中心像が見分けられない損傷を受けていますが、アンコール・ワット寺院の浅浮彫りに見られるものと同様、禁欲を表すシヴァではないかと推測されています。

 ここで見られるワニの彫刻の主意は判明していません。また、この場所の近くには、丸石がカエルのように彫られています。池として常に水をたたえた長方形の場所には、その壁に多くの「横たわるヴィシュヌ」の彫刻があり、またここにも1対のワニが彫られていますが、それらの尾は女性に握られています。川のこの水域に形成された小島には、雄牛(ナンディン)に乗ったシヴァとウマ(パールヴァティー)の彫刻があります。

彫刻


クバール・スピアンの川岸にある、神ヴィシュヌがヘビの神アナンタの上に横たわってくつろぎ、彼の足元には女神ラクシュミーが、またハスの花びらの上に神ブラフマーがいる彫刻。
Source:Wikimedia Commons

 川床や川の淵に彫られた彫刻は、多くのインド神話の場面および象徴を描いています。川の水位が下がることで見られる碑文もあります。

 乳海にくつろいで寄り掛かりヘビ(アナンタ)の上に横たわるヴィシュヌの形象や、ヴィシュヌのへそから出るハスの花に神ブラフマーがいるインド神話に特徴づけられるこれら彫刻の共通の題材は、創造を強調する役割をもっています。

 川のほとりには刻まれたこれらの彫刻が見られ、また流れる川にはリンガの普遍的象徴があり、いくつかの彫刻された破壊の神シヴァの浮彫りが見られます。川床に彫られている1,000本ともいわれるリンガは、「1,000本リンガの谷」のように、川に形成された川の渓谷にその名を与えています。また、ヴィシュヌは川床や川の縁周りによく似たものが彫られています。シヴァが彼の配偶者ウマ(パールヴァティー)とともにいる彫刻もまた認められます。

 彫刻は、破壊されかつ損傷してきてはいますが、彫られた神像は今もなお元の壮大さを留めています。考古学者の監督のもと、アーティザン・アンコールの卒業生が、クバール・スピアンの欠落した浅浮彫り彫刻のいくつかの部分を再現しています。

 周辺, プノン・クーレン国立公園内に位置しており、川の川口近くにはAngkor Centre for Conservation of Biodiversity (ACCB) があり、不正取引された動物の救出保護など保全活動が展開されています。


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