山岡淳一郎のニッポンの崖っぷち: 衆議院総選挙、ここが争点編 いまこそ科学的根拠による コロナ対策を(兪炳匡)! Part3 トランススクリプト・池田こみち (環境総合研究所顧問) 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年10月25日 |
Part1 Part2 Part3 3.今後、医療提供体制をどう構築していけば良いのか。 司 会:こういうことをきちっと反省したところに立って、次どうするかを本来検討しなければならないのに、自民党総裁選から岸内閣を見ていると、それをかき消すようにまた選挙となっていき、非常に不連続性を感じるのだが、それでは、これから先、東京や大阪、アメリカなどは医療体制をどう確保していけばいいのか。警察庁がまとめた病院以外の死亡でコロナ感染した人というのが、今年の8月末までに817人いたというデータがあり、いろいろあるが、まずひとつは、患者さんが公立、公的な医療機関に集中していて、民間で診られる病院が非常に少ないということが、構造的な問題として医療崩壊の背景にあるのではないかとも考えられるが、この辺に関してはどう考えるか。 兪教授:はい、総論的なことをまず申し上げると、日本の政策立案者の思考回路がある意味硬直してしまったという気がする。過去30年間、私の本「日本再生のためのプランB」の中でも詳しく申し上げたが、日本は、高度成長が続くのではないかという幻想のもと、ひたすら企業の減税をして、それ以外の巨大な公共事業を続けた一方で、社会保障、特に、医療費というものが、常にコスト削減の主たるターゲットとなってきた。そのため、パンデミックになっても医療資源を拡大するという思考回路がない。医療に関しては右肩下がりが当然になってしまったので、右肩を上げるような政策がほとんど取れないのではないか、と言う気が する。 司 会:特に2001年の小泉政権以降、新自由主義的な手法で、とにかくどんどん削っていく、医療費の伸びを抑えるというやり方でずっと厚労省がやってきている。その中のひとつの象徴的な出来事が、公立・公的な病院に関して、全体の病院を急性期の診療をやっている病院がとれくらいあるか、近くに急性期の診療をやっている病院がどれくらいあるかを尺度にして、無駄な公立・公的病院はどんどん再編統合してしまえ、という議論がでて、突然2019年9月に424の公立・公的病院を名指して再編統合になると厚労省がやってしまった。これで名指しされた病院はビックリしたが、今回、その424の名指しされた病院の中で実際にコロナを受け入れた病院が200以上あったというデータもでている。あのまま公的公立病院がなくなっていたらコロナはどうなっただろうというのが正直な話としてある。公に対する国の支援ということについてどう考えるか。 兪教授:おっしゃるとおりだと思う。そもそも厚労省は医療の効率化と言う言葉をよく使うが、効率化という言葉が非常にミスリーディングだと思う。経済学的に言っても「効率」というのはその計り方は100以上あるわけで、どの効率指標をとるかは価値観の問題になる。算数の問題ではないので、厚労省がこの効率指標を用いましょうといっても、果たしてそれがどれくらい妥当性があるかは検証する必要がある。特に、歴史的に言っても、先進国の病気は、かつては感染症がきかったが、それは、患者の数でも医療費でも小さくなってきているという歴史的な流れがあるが、今回それが完全に入れ替わって、明らかに感染症の需要が大きくなったというわけで、これまでの効率の指標を使うべきでなく、改めるべきなんだが、それも出来ずに相変わらず病床削減に向かっているというのは非常に問題だと思う。 司 会:そうですね。これからもっと公の部分を太くしなければいけないのになかなかそうならない。そういう価値観の転換を野党がもっとはっきり出すべきだと思うのだが、30年間この新自由主義を倣い性としてその上に乗っているのが当たり前と考える国会議員も多いような気がする。その意識を変えるためには何をきっかけにすればいいか。 兪教授:やはり、ひとつは国際比較だと思う。やはり日本があまりに新自由主義的な資源配分に進みすぎたということをまず知ることだと思う。まず自画像を見よ!と。日本国内の時系列をおった変化を見るのも大事だが、国際比較をするとやはり日本の異常というか特異さというのが分かると思う。 司 会:公的病院の割合は日本の場合、病院数でいうと、全病院の20%位、病床数で言うと30%くらいだが、だが、日本と同じような国民皆保険制度のあるドイツやフランスと比べると、フランス、ドイツがだいたい65~85%くらいは公的セクターがもっているベッドだということだ。この辺の違いはいざというときの病床数に現れると思うが。 兪教授:そうですね。私もそう考えています。例外的にアメリカは公的なセクターが小さいと言えますが、日本の場合ももともとコロナ以前から公的病院はいわゆる高度医療、例えば、救急救命センターとか、災害拠点病院であるとか、こういった機能を担ってきたわけであり、こういう医療はそもそも小さな病院でばらばらにやっていては非常に効率がわるいので、救命救急医療の通常の報酬を低くすれば、救急救命の機能が分散化することを防げるのでそれは正当化できると思う。その一方で、救急救命を担っている病院には、通常の診療報酬とは別に公的な資金的補助金を出すといったことを本来やるべきだと思う。それをやらずに診療報酬を非常に低く設定しておいて、救命救急が不採算であるからといって.. . 司 会:大阪がインドより酷くなったのはそこに問題がある。維新府政が千里の赤十字病院に出していた補助金(確か億単位)をがっぽり引きはがしたり、色々なことで再編統合をやってきた結果があの数値にでている。 兪教授:あのような結果がでたということを大阪府民の方は是非自覚して頂きたい。 司 会:本質はそこにあるということで、目先のことに騙されず、本質をしっかり抑えておく方が良い。 兪教授:そうですね。診療報酬だけで採算・不採算とか、経済効率がよいとか、究極的に言えば、病院経営に関して効率がいい悪いというころ、儲かる儲からないと言うことについて言えば、そもそも医療の値段=診療報酬はすべて国が決めているわけなので、どの病院のどの診療科が儲かるかは全部、国のさじ加減で決まる。なので、例えば、小児科が経済効率が悪いと言っているが、国がその気になれば、明日から一番経済効率のいい診療科が小児科になる(できる)ことになる。つまり、診療報酬のさじ加減を少し盛ればいいだけ。それだけで、小児科が一番効率のいい診療科にもなるし、もっと言えば、医療セクターが日本のあらゆるセクターのなかで一番効率のいいセクターになるかもしれない。それは国のさじ加減一つでできるので、日本はマーケットが診療報酬を決めているわけではないので。国がなんらかのビジョンをもって診療報酬を設定するとか...先ほどの救急医療の場合、診療報酬を低くしても、一方で補助金で支えるという、あるいみ複雑なシステムの維持は必要だと思う。 司 会:日本の場合、公立・公的な病院が現実的に少ないと言うことは、頼ろうとする公の部分が細い訳なので、そこのベッドを増やせ増やせといっても現実には増えない。とすれば、病院のベッドをあけて人を入れようとするよりは、臨時のコロナ専用病院をつくり、そこにスタッフをおくり、そこで支えるほうがむしろ合理的なのではないかという気がするが。 兪教授:そうですね。私も、野戦病院とも言われているが、即席で構わないので,病院機能を持つ施設を臨時に作ってそこを医療スタッフをまわすということだが、どのようにしたら医療スタッフが供給できるかだが、ひとつは看護士の方も今、ワクチン接種に人がとられてしまっている。一般の病棟より給与の上限が高く設定されているため、色々な技能を持ったナースの方がそちらに行ってしまう。ワクチンを打つのにそんなに高い技能は要らないので、ナースが打ち手になる必要はないと思う。イギリスの例でいえば、キャビンアテンダントの方とか、幼稚園の先生とかそういう方々が即席でトレーニングを行えば、ワクチンの打ち手まわることができる。そういう形で看護士の確保をすると言ったことも必要。医師に関しては、コロナの専門医、ICUの専門医は日本に限らず世界的に不足している(図13)。 図13 医療提供体制の国際比較(主に2019年*) ⇒Fig-13 この表を見ると、ICUのスタッフについてみると日本は異常に少ない。単位人口当たりのICUのベッド数をみると、OECDの平均が12であるのに対し、韓国はほぼそれに近い11、日本はその半分の5しかない。アメリカの1/5、ドイツの1/7しかいないことになる。ベッドの数が少ない以上、専門家も非常に少ないと言うことになる。専門家を速成することが簡単ではないとすれば、私が提言したいひとつの解決策は遠隔医療。テレメディスンと言われているが、ビデオを使った遠隔診療で、大きく二つあって、ひとつはドクター対ドクターの遠隔診療(一人のドクターが遠くのドクターにアドバイスする)とドクターが患者さんを診るという二種類ががあるが、アメリカでも地方の小さな救命救急でICUのスタッフを雇うのは給料が非常に高いということもあり、また、患者も少ないので難しい。 ただ、難しい患者が入ってきたときに対応する必要があるので,一括して大学病院にコンサルト(相談)出来るような体制をつくっている。ビデオを使って画像を含め、検査結果なども血液検査、 MRI、CTのデータも遅れるようにして、相談が出来るようにするもので、アメリカでも非常に広まっている。日本でも若干真似はしているがあまり広まっていない。これもコロナを機会に、少なくともコロナに関しては例外的にであれ、厚生労働省が、法律を時限立法でもかまわないので変えて、足りない専門の医療・医師のアドバイスやコンサルテーションを日本全国の病院が受けられるようにする事も一案かと思う。 司 会:今日は、兪先生とともに、「ニッポンの崖っぷち、科学的な根拠に基づいたコロナ対策とは何か」についてお送りしてきた。やはり一次から三次防衛ライン事から言うと、先程来ご指摘になっているPCR検査というのがこの段階でも大事ということにりますね。 兪教授:そうですね。次の第6波を早期探知するためにも、今後完全に収束したことを確認するためにも大規模なPCR検査というのは必須だと思う。 司 会:今日は大変ありがとうございました。 出典:デモクラシータイムズ「いまこそ科学的コロナ対策を!(兪 炳匡) 【山岡淳一郎のニッポンの崖っぷち】20211005」 |