第二部 パネル討議
 「イラク戦争」を考える(概要)
 
2003年2月6日午後6時〜午後6時50分
東京大学駒場900番教室にて

2003.2.7
イラク攻撃不支持賛同署名受付中!

 第一部へ

パネリスト
・スコット・リッター(元国連大量破壊兵器査察官)
・姜  尚中(東京大学教授)
・首藤信彦(衆議院議員)
・高橋和夫(放送大学助教授)
・田中  宇(ジャーナリスト)
・石田英敬(東京大学教授・司会)


<通訳 星川淳氏、トランススクリプト 池田こみち氏>
(メモによるため、一部正確ではないことに注意。池田こみち)

Part1
石田:まずお一人ずつお考えを短めにお願いします。

高橋:二つの視点があると思う。

@コリンパウエルの国連安保理の証言の後半で、アルカイダとイラクの関係についてイラクの北部にテロリストの訓練基地があり、化学兵器、生物兵器を作っていてそれがヨーロッパに流れていると言う部分があったが、もしアメリカがそれを知っているなら、そこを先に爆撃しているはず。

Aアメリカのイラク攻撃の合理性について、サダムフセインは悪であると主張するが、80年代のイラン・イラク戦争のときに、サダムフセイン体制をしゃかりき支え、情報提供し、兵器の提供をし、クラスター爆弾を提供してきたのはアメリカである。その先頭に立ったのがラムズフェルド氏(現米国国防長官)であることは間違いない。

 これらのことは、アメリカはサダムフセインが悪であるというなら、80年代になぜそこまで肩入れしたのか。アメリカこそが悪ではないのか。論理矛盾である。この二人を査察すべきである。

首藤:1月27日、国連安保理でブリックス氏とエルバラダイ氏の報告があったが、それを生で見た人がどれだけいるか。日本のテレビは(正確な)情報を流していない。世界的な危機なのに、夜中のテレビは女性の裸やNHKではシルクロードを放映している。ブリックス委員長は、「よくここまできた。これからが本当の査察だ。」と言っている。エルバラダイ氏も、「イラクには核兵器は絶対にない・もう少し査察が必要だ。」と言っている。ところが翌日の新聞は全く違う内容だ。
 コリンパウエル氏の説明はあまりに幼稚でばからしい。はずかしい内容だった。ライブで見る情報と日本の情報は違いすぎる。ロシアの詩人の詩に次のようなものがある。「最初の戦争に責任者はいない。2つ目の戦争は、誰かの責任だ。そして、3つ目の戦争は自分の責任だ。」と。これからの戦争が止められないとすれば、それは私たち一人一人の責任と考えるべきだ。

姜 :リッター氏の発言を聞いて、アメリカのイラク攻撃は「大仕掛けのえん罪」であると感じた。死刑執行人は決まっている。わかっているのに止められない。この状況は北朝鮮問題に直結する問題だ。アメリカは北朝鮮の核問題を国連安保理に提起し、北朝鮮を孤立させようとしている。このことは日本と朝鮮半島にとって重大な問題だ。北朝鮮に核兵器があるのか。核実験をしていない段階で、核兵器は持っているとは言えない。

 体制の崩壊(倒壊)という目的は北朝鮮に対しても同じこと。アメリカにとって望ましい体制とすることが主眼ではないのか。それと連動する力が日本の中にも働いている。国家社会主義の国には今までも多くの残忍な抑圧や制裁があった。北朝鮮やサダムフセインをヒットラー視するのは危険だ。イラク攻撃は日本に直接影響を与える問題であることを考えるべきである。

田中:1月6日〜21日にイラクに行って取材を行った。サダムフセイン政権をつぶしたい人と潰したくない人がアメリカにもいる。潰したくない人がコリンパウエルやべーカー等だ。中東の国境線を維持して石油資源を分断しておきたいと思うのが潰したくない人の考え方。戦争をしたい人はイスラエルのシンパである。中東の混乱はイスラエルにとって有利となる。昨年12月、トルコ、イラン、サウジの通商代表がイラクに来ている。バクダッドの株式市場で12月に最高値がついている。そんな状況で戦争は本当にあるのか、とも思う。日本ではメディアが機能していないのが問題である。裏読みが必要だ。

リッター:12万人の米軍が現在湾岸に展開しており、彼らは野球をするために行っているのではないので、おそらく戦争は起こるのではないかと思われる。自分は愛国者である。軍人として国のため、国際社会のためにこれまでも闘ってきた。その私がアメリカ政府の方針に反対するのは、自分の信じる本来のアメリカの価値に反するものがあるからである。(イラク戦争に)反対することは売国奴や非国民ではなく、それこそが愛国的な行動であると思う。反戦こそがアメリカのためになることであり、友人ならば「友が酔っぱらって車を運転することを許さない」という言葉のとおり、 日本人も友人の酔っぱらい運転手の肩越しからそれを阻止してほしい。市民の声を政府に聞き届かせることが必要である。

Part2
高橋:15万人もの兵隊が既に現地にいっていることが悲観的。

首藤:ラマダン副首相と会ったが、イラクでは確実に戦争になると言うことで、カラシニコフという機関銃をみんなが持っている。アメリカも簡単に攻められない。戦争のキーワードは「動員」である。動員をはじめたらなかなか戦争は止められない。客観的に見て難しい。クウェート侵攻とは違って、自国を守ろうとする国を攻めるのは簡単ではない。しかし、(戦争を)止めるチャンスはあり、それをどう生かすかが問題だ。

田中:アメリカの戦略はどう変わったかを確認したい。石油がどうなるのか。
 日本は対米依存を強めざるを得ない。アラブを簡単に民主主義にすることはできない。中東のことをもっと知らなければ。中東流の民主主義を考えるべきだ。

司会:次に、@アメリカにおけるネオコン(Neo-Conservative)とは、A体制(regime)の問題、についてご意見をお願いしたい。

リッター:アメリカは法治国家であり、憲法によってたっている国である。しかし、法は常に便利なものではないことも事実である。多くの人が比較的安定した状態で暮らせるためのものであり、法がすべての人に平等を保証するためにある。アメリカの対外政策もアメリカの理念と整合性をもった政策であるべきだ。

 戦後の米ソ二極時代には一定のバランスがとれていたが、ソ連が崩壊し、真空化したことによってアメリカの一極化が進んだ。アメリカは、Super Powerになった。しかし、「絶対的な権力は絶対的に腐敗する」ということも事実だ。

 Neo-Conservativeは、現在、アメリカの意思決定システムを乗っ取った状態だ。一国主義的に世界支配をめざしそれを実現しようとしている。しかし、それは危険なことだ。アメリカは今、アメリカの価値を代表している憲法の精神とずれている。オサマビンラディンが国際社会にとって最大の脅威といわれるが、独善主義的な米国こそが最大の脅威である。

司会:アメリカのBushism vs フセイン体制についてどう考えるか。

姜 :Neo-Con.かLiberalか、RealismかIdealismかというと、今のアメリカには全くリアリズムがない。ジョージケナン氏ですらブッシュを批判している。相手を完全に殲滅する、空爆するというやり方は日本モデルをもって世界、アジアを叩くというやり方に他ならない。そこでは全くPower Politicsが成り立っていない。もし、国連安保理が拒否権を出さずに向って行った場合、帝国(Empire)としての米国が立法、司法、行政、軍のすべてを束ね、国連がその下請化するということが最も恐ろしいことだ。その両者(アメリカと国連)の間に補完関係が成立すると怖い。アメリカのように自分の気に入らないいやな奴をラベリングし、EvilだTerroristだと決めつけ、軍隊で潰して後始末を国連がするという構図になったら問題だ。

 79年のイラン革命の逆のこと。アメリカにNOという国に対しては、核攻撃すら辞さないというのは大変なことだ。汎暴力主義がひろまっているのはひどいことだ。戦争しかないと言う考え方は問題。いわゆる日本モデルが本来の平和主義(戦争放棄)としてモデルにならなければならない。

高橋:Neo-Con.は民主化すれば中東が思い通りになると思っているが、政府が親米だとその国の国民は反米、国民が親米だと政府は反米になる。査察が必要なのはブッシュの頭の中ではないのか。

司会:それにつけても嘆かわしいのは日本の状態ではないのか。

首藤:(イラク戦争)は複雑な戦争だ。ブッシュファミリーの怨念かということも当初あったが、それだけでなぜこんな動きになっていくのか。加えて、イスラエル・パレスチナ問題もある。危ないのはイラクかというと、むしろ危ないのはサウジ。石油の安定供給国としてイラク・サダムフセイン体制は中東の安定を考えている。軍事産業が存立できるか。そのためには敵国が必要。テロリズムと闘うような話では軍事産業は儲からない。敵国がどうしても必要となるのだ。現在でも小泉政権の人気があることが問題。(意味不明)

田中:アメリカの経済支配力は衰えつつある。アメリカは軍事を換金しようとしている。Neo-Con.はよくわからない。オサマビンラディンはアメリカにとってソ連に代わる格好の敵となっている。「文化の衝突」という本は、まさにアメリカにとっての(ビジネスの)企画書のようなものだ。日本人はもっと韓国や朝鮮半島と仲良くすべきだ。アメリカのプロパガンダに乗ってはいけない。

首藤:アメリカに毒されている。有事立法も同じ。他国の軍隊が駐留している国は、有事には他国の支配下におかれる、というのが事実だ。

リッター:イラクの大量破壊兵器の5〜10%は不明ということだが、炭疽菌については、91年に最後に製造されたが、96年に国連の査察で完全に破壊した。炭疽菌は製造後3年しかもたないので、今はないはず。また、化学兵器についても当時のイラクの設備は古くレベルも低いため5年しかもたない。83〜85年に作られたものは質が悪い。

 現在の査察は「full Access」を可能としているので無制限の立ち入りが可能。そのような状況下であらたに大量破壊兵器を持つことは難しい。UNMOVICは私が勤務していたUNSCOMの時の査察に比べて10倍有効に機能している。フセインの寝室にも立ち入ることができるのだ。

 なぜ査察官のなかで私だけがこのようなことを発言しているのかと言う質問だが、91〜97年のUNSCOM委員長だったスウェーデン人も私と同じ意見。8人のイギリスの査察官、フランス人も同じ意見だ。

 最近7年くらいの亡命者の発言にはあまり信憑性がない。特に戦争か平和かを決断するような材料としては使えない。

 今日、お集まりの皆さんは、戦争反対の強い気持ちをもっていることが伝わってくるが、問題はその気持ちを意思として政府に伝える行動を起こすことが大切。是非、日本がアメリカの属国とならないように、がんばってほしい。