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ワシントンの利己主義に乗っ取られた世界
The world hijacked by Washington’s selfishness:
Global Times editorial  6 April 2021

翻訳:池田こみち Komichi Ikeda(環境総合研究所顧問)
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年4月27日 公開

 


Illustration: Chen Xia/GT

今、世界中でCOVID-19ワクチンに関するアメリカの身勝手さが話題になっている。世界で最も人権について語る先進国が、パンデミックで深刻な被害を受けている他国へのワクチン輸出を拒否しているのだ。ワシントンは、他の国とワクチンを共有する前に、まず自国民にワクチンを接種させることに固執している。

現在、アメリカ人の4分の1以上がコロナウイルスの完全な予防接種を受けており、約40%の人が少なくとも1回の予防接種を受けている。すべての人がワクチン接種を希望しているわけではないので、5月中旬以降、国内ではワクチンが余ってしまうことが予測される。その一方で、多くの発展途上国ではワクチン不足に悩まされている。人口250万人のアフリカのナミビアでは、これまで2回分のワクチンを接種した人は128人しかいない。

ワクチンに関する「アメリカ・ファースト」の醜悪な教義は、インドでのコロナウイルスの爆発的感染急増によって明らかになった。同国では人道的な災害が発生している。しかし、インドがワシントンに求めたワクチン原料の輸出規制の緩和は却下された。米国務省のネッド・プライス報道官は火曜日、国の優先事項は 「安全で効果的なワクチンを何百万人ものアメリカ人に、それを利用できるすべてのアメリカ人に確実に配布することだ」と述べた。ワシントンはまた、インドや南アフリカなどからのCOVID-19ワクチンの特許を放棄してほしい、という要求を断った。

現在までのところ、米国はパンデミックとの世界的な戦いにほとんど実際には貢献していない。世界で最も先進的な国として、感染症の流行との戦いではお粗末な仕事をし、他の国にポジティブな経験を貢献することができなかった。中国は、昨年、世界的に不足していたマスクや人工呼吸器などの物資を大量に輸入した。ワシントンは、世界保健機関(WHO)を長期間にわたって攻撃し、ウイルスに対する世界的な協力体制を弱体化させた。ファイザー・ビオンテック社のCOVID-19ワクチンは、パンデミックに対抗するためのワシントンの最も重要な製品である。しかし、今までは主にアメリカ人と限られたアメリカの同盟国を守るために使わ
れてきた。

「アメリカ・ファースト」は非常に未熟でお粗末な原則だが、アメリカでは、超党派の行動の実践的な指針となっている。ドナルド・トランプの前政権は、この原則に沿って発言し、行動していた。バイデン政権も、口にはしていないが、実はこの原則に沿って行動している。

アメリカの各選挙区を通じて政治中枢に伝達されたアメリカの利己主義は、アメリカの民主主義の下で一種の「正義」をさえ形成している。一方、ワシントンは「人権」という考え方を世界に広めようとしている。まるで全人類に同情しているかのように振る舞い、驚くべきことに、そのことについて全く忸怩たる思いを抱いていないのである。

世界は、アメリカが国際的な正義を定義する権利を乱用することを許すことはできない。ワシントンは、発展途上国へのワクチンの比例配分を拒否している。世界は共同でこれを非難し、ワシントンに頭を下げさせるべきだ。まるでネズミが道を横切ってみんなに追われるように。しかし、今日に至るまで、アメリカは自分たちが世界の道徳的リーダーであると傲慢に主張してきた。中国とロシアがワクチンを世界に共有しようとしていることを「ワクチン外交」だと非難する始末だ。米国は完全に白を黒と呼び、黒を白と呼んでいる。

米国は様々な国の国家安全保障の概念を誤解させ、乗っ取ってきた。これがアメリカの傲慢さの原因だ。世界は平和な発展の時代にあるが、米国のエリートは、地政学的なゲームをするための資源を最も豊富に持っているため、多くの国の地政学的安全性に対する不安をうまく煽ってきた。現在進行中のCOVID-19パンデミックは、各国が近年遭遇した最大の安全保障上の衝撃であるが、多くの国は地政学的神話に深く陥り、ワシントンに乗っ取られてしまった。そのため、ワシントンの悪行を甘んじて受けてしまったのだ。

実際、インドはアメリカのトリックの犠牲者となった。インドは、パンデミックが発生する前からすでに経済的に低迷していた。インドと中国との関係は、米国によって厳しく操作されており、他の国に提供されるワクチン支援でさえ、中国がターゲットになってきた。しかし今、インドは突如として世界的なパンデミックの震源地となってしまった。インドは、自分たちだけでは対処できず、アメリカからは何の支援も得られず、中国からは恥ずかしくて支援を受けられないという苦境に立たされている。

要するに、アメリカは近年、全世界に害を及ぼしているのだ。自称世界のリーダーであるにもかかわらず、経済、安全保障、パンデミック対策の面で責任ある国として行動することができなかった。しかし、ワシントンは「道徳的な高み」を維持しながら、命令を出すことに成功した。それを甘やかしてきたのは、インドのような国を含めた世界だと言ってもいいだろう。(皮肉なことに)私たちは、自分たちが引き起こした悲劇に苦しんでいるのだ。