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がれき広域処理・除染キャンペーンに
国税30億円

鷹取 敦

掲載月日:2012年3月7日
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 環境省が「みんなでがれき処理」と称して、広報キャンペーンを始めた。


朝日新聞・「みんなでがれき処理」 国、異例の広報キャンペーン(2012/3/6)
http://www.asahi.com/national/update/0306/TKY201203060255.html

 「みんなの力でがれき処理」――。東日本大震災発生から間もなく1年、宮城、岩手の被災がれきを他の都道府県で受け入れる広域処理への理解を求める異例の広報キャンペーンを、環境省が展開中だ。

 「毎日がれきを見ることで、人々はあの日の悲しみを思い出す」。膨大ながれきを背景に男性の声が響く。6日夜、全国で放映予定のテレビCMの一場面だ(一部地域除く)。ナレーションは、宮城県女川町出身の俳優、中村雅俊さん。同省によると、被災地の現実を訴えるCMは、中村さんも出演する震災特別ドラマ「3・11その日、石巻で何が起きたのか〜6枚の壁新聞」(日本テレビ系)の放送時間帯に流れる予定という。

 がれき処理は放射能汚染不安による住民の反対で進まず、環境省は焦りを募らせている。細野豪志環境相は「深刻さをわかってもらいたい一念で広報をしている。税金を使う話なので効果ある方法をとりたい」と話す。

 がれきの広域処理の受け入れを表明する自治体がきわめて少なく、表明した自治体の説明会に参加した住民の多くから強い反対の声が上がっていることから、キャンペーンによって事態を打開しようということであろうか。

 ところで、環境省は災害廃棄物(がれき)の広域処理に関して企画書の募集を3月5日に公示した。
公示「平成24年度東日本大震災に係る災害廃棄物の広域処理に関する広報業務」の企画書募集ページ
http://www.env.go.jp/kanbo/chotatsu/kikaku1/h240305c.html
 上記ページに示されている企画競争説明書には予算が1,500,000千円=15億円と記載されている。
平成24年度東日本大震災に係る災害廃棄物の広域処理に関する広報業務に係る企画書募集要領
http://www.env.go.jp/kanbo/chotatsu/kikaku1/pdf/20120326/h240305ca.pdf
 記事にあるようにテレビCMはすでに開始されていることから、CM以外にさらに最大15億円の「広報業務」を発注しようということであろう。

 ちなみに除染についても同様に15億円の予算で広報業務の企画募集が行われている。合わせて最大30億円の広報業務+すでに実施されているCMに投じられている税金を合わせれば、相当の額の税金が「広報」に投じられることになる。
平成24年度東日本大震災に係る除染等に関する広報業務に係る企画書募集要領
http://www.env.go.jp/kanbo/chotatsu/kikaku1/pdf/20120326/h240305da.pdf


 ところで「がれき」の広域処理を全国の自治体、住民から拒否されているのは、「被災地の実態を知らないから」であろうか。これまでに何度も指摘したように、がれき処理の安全性について検討している「災害廃棄物安全評価検討会」も除染について検討している「環境回復検討会」も非公開、議事録も不開示で開催されている。

◆鷹取敦:議事録作成をやめた「災害廃棄物安全評価検討会」
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col107.htm

 会議へは当事者である自治体の参加もなく、結論を国が一方的に決めて、それを自治体や住民に受け入れよ、というのが現状であり、これが受け入れが進まない本質的な理由である。広域処理の「必要性」「妥当性」について、定量的、客観的なデータを示して公開で当事者参加で議論をするという「正当性」あるプロセスで進めないことが問題なのである。

 それをメディアに数十億の税金を投入することで、世論形成・世論誘導しようというのが、上記に指摘した「広報業務」である。メディアに膨大な税金を投入したのでは、報道の方向性にも影響を与える。公共事業を推進する際に全面広告等をうってきた従来の手法と同じであり、まともな合意形成を避けていることに他ならない。

 被災地では、復興やがれきに係わる事情も考えも地域によって異なる。広域処理よりも地元で処理する事業を始めて欲しいという首長や、今後の津波対策のための防波堤を作るのに使って欲しいという首長もいる。それにも関わらず一律に広域処理が被災地のため、と国が決めつけることは地元の個別の状況を無視していることに他ならない。

 メディアに膨大な税金を投入することでは被災地は救われない。透明性、当事者の参加を得た議論を通じて、被災地の復興につながるよりよい方法を見つけ出すために、税金を使ってもらいたい。それこそが「絆」である。